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AIが部活動の問題を解決!?教育現場での人工知能は先生の強い味方

AIが部活動の問題を解決!?教育現場での人工知能は先生の強い味方

全国の中学高校において部活問題が話題になっていることをご存知の方もいることでしょう。部活により、顧問である先生だけでなく生徒も疲弊してしまっていると主張するメディアもありますが、実はこの問題、AI(人工知能)で解決できるかもしれません

スポーツ庁の調査によると(2017年の調査結果)、中高生の運動部活への参加割合は中学校で約7割、高校で約5割となっています。これだけ多数の生徒が部活に参加していることから、顧問を担当する先生が大幅に不足しており、顧問の先生が実は担当するスポーツや競技の初心者のケースという問題もあります。

実際の部活での競技指導に不安を覚えている方もいるでしょうが、いずれAI(人工知能)が部活の指導で大変な先生を支えながら競技指導をキッチリとサポートしてくれる未来がやってくるかもしれません。

そんな、まさか!?と思いますよね。ということで、今回はAI(人工知能)がどのように部活動に伴う問題の解決に貢献し、先生をサポートしていくのかについて一緒に考えてみましょう。

AI(人工知能)がもたらす可能性を理解するためには、まず「部活問題」を理解する必要がありますので、はじめにこの問題について詳しくみていきましょう。

AI(人工知能)導入に関する話は3章の「AI(人工知能)を用いた部活問題への解決策」から触れていきます。AI(人工知能)の可能性について手っ取り早く理解したい方は、3章の「AI(人工知能)を用いた部活問題への解決策」へ進んでしまいましょう。

部活問題とは

部活動のイメージ

現在、指摘されている部活問題としては、

  1. 先生の部活負担増による長時間労働、
  2. 連日の長時間練習により生徒が疲弊、

の2点があります。これらをもう少し詳しく見ていくと、

先生の部活負担増による長時間労働

多くの生徒が部活に参加していることから、全ての先生で対応しないと運営できない状況が生まれており、強制的に全ての先生に対し部活顧問が割り振られています。

一般的に、先生は本来の職務である授業準備や校内打ち合わせ報告資料準備などに加えて、部活顧問対応が求められています。しかも、先生の約半数は全く経験のない競技の顧問を担当している実態もあり、指導のため自腹で本などを購入し勉強する必要に駆られているようです。

また、部活の時間には安全確保の観点から、顧問である先生が張り付く必要があり、平日の朝と夕方に加えて土日の時間も顧問対応に取られてしまいます。先生は部活の時間以外から、授業や校内打ち合わせ報告資料の準備などの作業時間を捻出しなければならず、結果的に長時間労働せざるを得ない状況となっています

このような背景から、部活顧問を拒否する権利を、と国に主張する先生の団体もあります。しかしながら、部活の設置や活動内容については、国や教育委員会が定めているわけではなく(教育課程外)、各学校が自由に決めることができることになっています。

このため、部活問題は国や教育委員会の立場から見ると、各学校が自ら決めた方針に基づき、各先生が自主的に部顧問を担当している、ということになっています。つまり、各学校内部の問題とされているわけです。

連日の長時間練習により生徒が疲弊

連日の朝練1時間や放課後の練習2~3時間、更に土日の4時間以上の練習により生徒は時間/体力を大きく削られています。この結果、自宅での学習が困難となってしまうのに加えて、授業中は眠くなってしまい学習に遅れが生じることになります。なかには、昼休みの練習に向けて午前の休み時間中に昼食を済ませることが暗黙の強制になっているケースもあります。

ここまで部活動による問題をお伝えしてきましたが、それでもなぜ先生および生徒の両者が疲弊してしまう部活が続けられているのでしょうか。次に、部活は必要である、という逆の立場からの意見を見てみましょう。

部活の必要性について

部活が日本のスポーツのトップレベルの質を決めるとともにトップ選手を排出している
野球、サッカー、陸上競技などの競技における日本のトップレベルの質向上の背景には、日本全国の部活という巨大な裾野の広さと、日々の部活を通じた選手レベルの向上があります。過去のスポーツ界のヒーローは部活なしには生まれなかったとも言えます。

集団における課題解決スキルの取得

部活の教育的意義は、目的や理念の一致した集団の中で生徒たちが自ら考え課題を解決することにあります。このスキルは社会人となり自ら集団を組織あるいは集団に所属した場合に必要不可欠なスキルとなります。

社会性の育成

部活では同学年以外の先輩後輩との交流により、他人に対する礼儀、他人を指導するスキル、部員で協力して成し遂げる喜びや、他人のために動くことの大切さを学ぶなど、社会性が育成されるメリットがあります。

確かに、これらの意見からは部活にも良い面はたくさんあることが理解できますよね。実際、毎日楽しく部活に参加している生徒、また生徒たちから熱い尊敬を集める顧問の存在もあるわけで、部活を全否定することはできません。

しかしながら一方で、先に説明した部活問題が存在しているのも事実です。旧来の部活のあり方が問われる時期にあるかもしれません。

さて、ここでやっとAI(人工知能)の登場ですが、AI(人工知能)はこれらの問題を解決する可能性を秘めているのです。

AI(人工知能)を用いた部活問題への解決策

明るい光のイメージ

AI(人工知能)により、部活問題をどのように解決し先生や生徒たちを助けることができるのか考えてみましょう。

AI(人工知能)による解決案は、

  1. 先生の授業準備負担の軽減
  2. 競技指導負担の軽減、

の2点です。

次に、それぞれについて細かく確認してゆきましょう。

AI(人工知能)による、先生の授業準備負担の軽減

リラックスしているイメージ

AI(人工知能)による先生の授業準備負担の軽減については、英国ロンドンにあるペイクマン小学校で実施されているAI(人工知能)活用事例が参考になるでしょう。

ペイクマン小学校では、算数に苦手意識を持つ生徒を対象にAI(人工知能)を活用したマンツーマンのオンライン授業を行っています。ただし、生徒に教えているのはあくまでも人間の先生であり、AI(人工知能)は人間の先生をサポートする役割を担っています。このAI(人工知能)活用により、人間の先生の作業負担の大幅削減を実現できています。AI(人工知能)の役割は以下のとおりです。

<英国ロンドン ペイクマン小学校におけるAI(人工知能)活用事例>

  • 過去の約10万時間分のオンライン授業の内容をAI(人工知能)が機械学習することにより、授業の学習効果が高まった成功パターンを抽出し、学習すべき内容/指導方法を最適化のうえ蓄積します。
  • 先生からの生徒への問いかけに対する、生徒の反応(応答までの所要時間)から生徒の理解が追いついていない兆候が見られた場合、先生が重要な教育ポイントの説明をスキップしてしまった場合、あるいは先生の説明が早口すぎて生徒が興味を失ってしまった場合など、その都度、AI(人工知能)が検出し人間の先生に伝えます。

人間の先生には難しい、生徒ひとりひとりの学習状況の判断にAI(人工知能)を利用することにより、クラス単位の授業にも関わらずマンツーマン授業が可能になる点は素晴らしいですよね。また、学習すべき内容/指導方法の全てをAI(人工知能)が理解/把握しているため、先生の準備作業時間を大きく削減することもできそうです。

事例としてもう1件、米国のジョージア工科大学で行われている、生徒からの質問にAI(人工知能)が答える事例について見てみましょう。

<米国のジョージア工科大学におけるAI(人工知能)活用事例>

1学期中に約300名の生徒からの約1万件のオンライン質問に対し、AI(人工知能)で全て対応するというものです。背景には、その質問数の多さから従来の人間の教員8名では到底対応できなかった点があります。AI(人工知能)に切り替えることにより、現在、生徒は相手がAI(人工知能)だと気付かずQA対応を行っています

以上の事例より、AI(人工知能)により部活問題である先生の長時間労働問題が解決できそうですよね。

AI(人工知能)による、競技指導負担の軽減

リラックスしているイメージ

次に、AI(人工知能)による、部活問題である先生の競技指導負担の軽減について考えてみましょう。実は、競技指導へのAI(人工知能)活用は既にいくつかの事例があります。今回は卓球、フットサル、ゴルフの事例について見てみましょう。

<競技指導へのAI(人工知能)活用事例 卓球コーチロボット「フォルフェウス」>オムロンが開発した世界初の卓球コーチロボットです。「フォルフェウス」はカメラで対戦相手(人間)と球の動きを検出し、ディープラーニングの結果より対戦相手(人間)のレベルを判断します。「フォルフェウス」は対戦相手(人間)のレベルに合わせてラリーを続けることができます。
<競技指導へのAI(人工知能)活用事例フットサルのシュートやゴールシーンを自動抽出>

NTTドコモが開発したAI(人工知能)技術「スポーツ動画センシング」は、複数台のカメラで撮影した試合映像より、プレイヤーやボールの動きを自動検出することにより、シュートやゴールシーンを自動抽出することができます。選手は自動抽出したシュートやゴールシーンの映像をスマホやタブレットなどで参照することにより、手軽に自分のプレイを振り返ることができます。

<競技指導へのAI(人工知能)活用事例 ゴルフレッスンサービス「RIZAP GOLF」>

「RIZAP GOLF」は、パーソナルトレーニングのライザップとソニーが共同開発したゴルフレッスンサービスです。ソニーが独自開発したゴルフ用のセンサーとアプリにより、スイング映像とセンサーデータを同期させたうえで独自アルゴリズムによりスイング映像の必要な部分を抽出します。生徒は自分の映像を繰り返し確認することができます。

AI(人工知能)活用は、全く経験のない競技の部活顧問を担当する先生にとって、極めて頼もしいパートナーになってくれるでしょう。また、間接的には競技指導の効率化により、生徒の練習時間短縮も実現できる可能性を大いに秘めています

まとめ

以上、今回はAI(人工知能)の導入が、部活問題に対してどのような解決策を提示し、どのように先生をサポートしていくのかお伝えしてきました。

  • 部活問題の事例として、先生の部活負担増による長時間労働と、連日の長時間練習により生徒が疲弊するという状況がある
  • 部活動は、旧来のあり方が問われる時期にある
  • AI(人工知能)の活用による、先生の授業準備負担の軽減が可能である
  • AI(人工知能)の活用による、競技指導負担の軽減が可能である

この他にも、間接的には競技指導の効率化により生徒の練習時間短縮も実現できそうですよね。

現在の中学高校において校長となっている方々は80年代に生徒の非行問題が深刻だった時代を経験しています。こういった方々は当時、部活を通じて生徒指導を実現できた成功体験を持ち、スポーツを通して人間指導をしていくべきという認識を持つ人が多いことが、教育課程外である部活にのめり込んでいる中学高校が多い背景にある、という指摘もあります。

中学高校の先生もいずれ世代交代となります。AI(人工知能)を活用した部活を推進する先生の増加により部活問題が解決すると共に、今後、部活から多数のトップアスリートが誕生してくることを期待しましょう!

参照元 中高生の運動部活への参加割合
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