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機械学習にすぐに使える!時系列データとその分析方法とは

機械学習にすぐに使える!時系列データとその分析方法とは

最近のニュースでは、「データ活用」や「データ分析」など、データという言葉をよく耳にしますよね。データとは、数字や記号で表された事実で、身近なところだと天気の気温や湿度、テストの点数などがデータになります。現在、さまざまな分野でデータを分析して活用が進められています。

そして、データを活用するために使われているのがAI(人工知能)。AI(人工知能)は、目的に沿った予測や分類ができるようにするため、機械学習で過去のデータを学習します。

例えば、多くの人が使っているお天気アプリ「ウェザーニュース」は、気象に関するデータをAI(人工知能)に学ばせて、予報確率が90%以上の高い精度を出しています。これはデータ活用の一例です。この他にも現在は、さまざまなデータを日常生活や企業活動の向上のために使用しています。

そんな有効利用されているデータの1つが時系列データ。時系列データは、AI(人工知能)の学習手法の機械学習でも使う機会が多いです。そのため機械学習を行うなら時系列データについて学んでおきましょう。

そこで今回は、時系列データとその分析方法などについてお伝えします。

時系列データとは

時系列データのイメージ

時系列データとは、一定の間隔(1分、1時間、1日、1か月、1年など)で測定されるデータのことです。これは時間が進むにつれて変化し蓄積されるデータで、例えば気象観測の1時間ごとに観測する気温や湿度などが時系列データになります。

そして、時系列データが変化する要因が次の4つです。

  • 傾向変動:長期的に見た大きな変化、上昇(増加)か下降なのかの傾向を表す
    例:人口増加、GDPの成長など
  • 循環変動:ある周期性を持っている変化、上昇と下降の動きをセットで含む
    例: 3~10年程度の期間で繰り返し起こる景気循環など
  • 季節変動:季節で繰り返される変化、1年周期の変動パターンを見るのが特徴
    例:ゴールデンウィークや夏季休暇、年末年始の旅行者数など
  • 不規則変動:短期的な変化、上記の3つでは説明できないことを示すもの
    例:自然災害の影響を受けた株価変動など

そして、このような時系列データを分析することを時系列分析といいます。

時系列分析とは

時系列分析のイメージ
時系列分析とは、時系列データが時間とともに変化する要因を発見するための分析です。では時系列分析について、野菜の白菜で説明しましょう。

白菜といえば、寒い冬の食卓に並ぶお鍋に欠かせない定番食材ですよね。そんな白菜は今年の7月下旬から価格が上りはじめ、昨年の9月よりも3割から4割も高くなっています。この価格高騰の要因は夏の「干ばつ」と「ひょうの被害」。

この場合で、7月からの白菜の価格変化が時系列データ、その要因を解明するのが時系列分析です。そして、このような時系列分析でわかった要因をもとに、今後の売上予測や販売戦略に活用できます。

では実際に、時系列分析を応用していることを紹介しましょう。

時系列分析を応用するとできること

できることのイメージ
時系列分析は、次のようなことに応用されています。

不動産価値の将来予測

大和ハウスグループの株式会社コスモスイニシアは、時系列分析のAI(人工知能)を用いた投資シミュレーションで、不動産価値の将来予測ができる『VALUE AI(バリューアイ)』をサービス提供しています。このシステムでは各不動産の時系列データを使って時系列分析を実施。その結果から現在と将来に予測できる課題を見つけ出し、今後の不動産経営の計画立案などに役立てられるサービスです。

農作物の生産予測

富士通は、高知県とITベンチャー企業の株式会社Nextremerと共同で、時系列分析にAI(人工知能)を使った農作物の生産量予測ができる「高知県園芸品生産予測システム」を開発しました。農作物の販売取引で有利な条件を得るためには、2~3週間先までの出荷量の把握が必要ですが、従来では難しい状況でした。このシステムでは農作物の生育から出荷までのデータを一元管理するので、生産管理の効率化と3週間先までの生産量予測が可能になり、農作物の単価上昇も期待できます。

株式取引

NECは、株式取引に時系列分析とAI(人工知能)を使用した「AI売買審査支援サービス」を提供しています。このサービスでは時系列データを分析して、不公正な取引の見せ玉*1・仮装売買*2などを検出。その検出したことの根拠も導き出します。

2020年1月より株式会社SBI証券では、AI売買審査支援サービスの運用を開始し、金融取引でのリスク・不正への対策業務の効率化を期待しています。

*1見せ玉:自分の株注文を有利にするために、意思のない大量発注で、ほかの人に相場状況を誤解させる行為
*2仮装売買:第三者に誤解させるため、同一人物が売買の当事者になって取引すること

これらの時系列分析を応用したサービスには、時系列データが使われています。その時系列データには、各企業などで蓄積してきたものを使う場合や、Webサイトで公開されているオープンデータが使用されています。

このうちのオープンデータは、無料で機械学習に必要な多くのデータを使えるので非常に便利です。そこで次は、すぐにでも時系列分析に使える無料の時系列データを紹介しましょう。

すぐに使える時系列データ

すぐ使えるイメージ
では、すぐに機械学習でも使えるオープンデータの時系列データが次の3つです。

日本銀行:時系列統計データ検索サイト

日本銀行は、私たちが普段使っているお金(紙幣・貨幣)の発行や、日本国内の物価や金融システムの安定を図る役割をしています。その日本銀行のWebサイトから、為替相場(円と外国通貨との交換比率)、企業物価指数(企業間取引での商品価格の変動)、国内銀行の預金・現金・貸出金など、日本銀行に蓄積されている金融関連の時系列データをダウンロードできます。

使用例:これらの時系列データを使って景気の実態を分析が可能

日本銀行時系列統計データ検索サイト

気象庁:過去の気象データ

気象庁が蓄積してきた過去の気象の時系列データを使用できます。Webサイトでは、目的に合わせて観測地点・項目・期間・表示オプションを選択。例えば、観測地点を東京都の羽田、項目を気温、期間を最近1年、のように目的に合わせて選択し時系列データをダウンロードします。

使用例:民間気象事業者になって独自の天気予報を発信することが可能

気象庁:過去の気象データ

政府統計の窓口

政府統計の窓口は、総務省統計局が整備している政府統計のポータルサイトです。このサイトでは、政府機関が実施してきた統計調査の時系列データを利用できます。そのデータには日本の総人口や就業率、食料自給率などがあります。

使用例:消費者物価指数(消費者が購入する商品・サービスの小売価格の変動)は、年金の改定や経済施策に利用されている

政府統計の窓口

今回紹介した3つのように無料で利用できる時系列データは、他にもあるので目的に合うものを探しましょう。では次に、時系列データを使って分析する方法を紹介します。

時系列データを使って時系列分析をする方法

分析のイメージ

主な時系列分析に使用されている方法は、次の5つです。

  • ARモデル(自己回帰):時系列分析の手法の中で基本になるのがARモデル、過去の時系列データを使って現在の値を回帰分析(予測)する
    例:失業率や株価の分析に使用されている
  • MAモデル(移動平均):MAモデルは時系列データの、ある期間のデータを平均した値で表す方法、細かく変化しているデータの傾向をわかりやすくしたい場合に用いる
    例:株価や気温の変化
  • ARMAモデル(自己回帰移動平均):ARMAモデルは、ARモデルとMAモデルを組み合わせた手法
    例:データマイニングツール(データから有益なヒントを発掘するツール)などに使用
  • ARIMAモデル(自己回帰和分移動平均):ARIMAモデルは、ARMAモデルでデータの差分(引き算)操作を加えた手法
    例:株価のように何かの影響を受けて上昇・下降するトレンド(傾向)がある時系列データの分析に用いる
  • SARIMAモデル(季節自己回帰和分移動平均):SARIMAモデルはトレンドを分析できるARIMAモデルに、長期的な季節による周期変動を考慮した手法
    例:株価の変動を週・月・年で分析に適している

以上の5つが時系列分析で使われている主な方法です。そして次は、これらの方法を使って時系列データを分析するときにポイントがあるのでお伝えしましょう。

時系列分析をおこなうときのポイント

ポイントのイメージ
時系列分析を行うときのポイントは、次の2つです。

  • トレンド、周期性を分析する場合は、長期間の時系列データが必要:短期間でトレンドが大きく変化していても長期間で見ると、ほとんど変化が見られない場合がある
  • 一時的な影響による大きな変化:ハロウィンやバレンタインデーのようなイベントなど、一時的な影響は、その時だけ急激に需要が増えるが、その変化が大きすぎると機械学習での予測精度が悪くなる

以上の2つが時系列分析を行うときのポイントなので、これらを考慮して機械学習で時系列分析をしましょう。

まとめ
さて今回は、機械学習で使う時系列データについてお伝えしました。時系列データは、一定の間隔(1分、1時間、1日、1か月、1年など)で測定されたデータです。例えば気温や湿度などの気象観測データも時系列データの1つで、時間とともに時系列データが変化する要因は、次の4つです。

  • 傾向変動・・・長期的に見た大きな変化、例:人口増加、GDPの成長など
  • 循環変動・・・周期性を持っている変化、例: 3~10年程度の期間で繰り返し起こる景気循環など
  • 季節変動・・・季節で繰り返される変化、例:ゴールデンウィークや夏季休暇、年末年始の旅行者数など
  • 不規則変動・・・短期的な変化、例:自然災害の影響を受けた株価変動など

そして、時系列データを分析することを時系列分析といいます。時系列分析は、時系列データが変化する要因を見つけ出すための分析です。その時系列分析はAI(人工知能)に使用して、次のようなサービスに応用されています。

  • 不動産価値の将来予測・・・大和ハウスグループの株式会社コスモスイニシア:現在と将来に予測できる課題を発見し、不動産経営に役立てるサービス
  • 農作物の生産予測・・・富士通:生産管理の効率化と3週間先までの生産量予測が可能、農作物の単価上昇も期待できる
  • 株式取引・・・NEC:金融取引でのリスクや不正への対策業務の効率化を実現

以上のようなAI(人工知能)サービスを機械学習で開発する際に使用できる、次のような無料の時系列データがあります。

  • 日本銀行:時系列統計データ検索サイト・・・為替相場・企業物価指数・国内銀行の預金・現金・貸出金などの時系列データ
  • 気象庁:過去の気象データ・・・気象庁が蓄積してきた過去の気象の時系列データ
  • 政府統計の窓口・・・政府機関が実施してきた統計調査の時系列データ(日本の総人口・就業率・食料自給率など)

そして時系列分析に使用されている主な方法は、次の5つです。

  • ARモデル(自己回帰)・・・過去の時系列データを使って現在の値を回帰分析(予測)する
  • MAモデル(移動平均)・・・細かく変化しているデータの傾向をわかりやすくする場合に用いる
  • ARMAモデル(自己回帰移動平均)・・・ARモデルとMAモデルを組み合わせた方法
  • ARIMAモデル(自己回帰和分移動平均)・・・トレンド(傾向)がある時系列データの分析に用いる
  • SARIMAモデル(季節自己回帰和分移動平均)・・・ARIMAモデルに長期的な季節による周期変動を考慮した方法

これら5つの方法で時系列データを分析するときの注意すべきポイントが、次の2つ。

  • トレンド、周期性を分析する場合は、長期間の時系列データが必要
  • イベントなどの一時的な影響による大きな変化

時系列データは無料のオープンデータが多くあります。それらの時系列データを使えば、紹介したサービスのように、機械学習でさまざまなAI(人工知能)が作れます。なので、みなさんもお伝えしたポイントを考慮し、時系列データを使ってAI(人工知能)開発に挑戦しましょう。

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