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CRMって必要なの?医療業界での活用方法や導入事例をご紹介

CRMって必要なの?医療業界での活用方法や導入事例をご紹介

官民を問わず、あらゆる分野でデータ活用の重要性が高まっていますよね。その一つに顧客データがあります。そして、この顧客データをビジネスに有効活用する手法としてCRM(顧客関係管理)が注目されています。

CRM(顧客関係管理)の目的は、顧客の年齢や住所、趣味嗜好、購入履歴、さらに問い合わせ内容や打ち合わせの履歴などさまざまな情報をデータ化し、多くの顧客との関係を良好に保ちつつ、新商品開発や新規事業立ち上げ、顧客開拓などに活用することです。CRMは、すでにあらゆる業種で導入が進んでいますが、医療業界も例外ではありません。

医療はビジネスとは一線を画すと思われがちですが、決算を行って納税義務がある以上、れっきとしたビジネスです。よって顧客データの活用は、医療機関の業績向上に不可欠でしょう。

この記事でCRM(顧客関係管理)について詳しく学んで、積極的に病院の業務改革につなげましょう。

そこで今回は、医療業界でのCRMの必要性や導入事例についてお伝えします。

CRMとは何か

医療業界のイメージ

CRMとは、Customer Relationship Managementの略で、「顧客関係管理」を意味します。顧客の存在を中心にすえ、あらゆる角度から分析、深く理解して利益の最大化をはかる手法のことです。

個人の好みやニーズの多様化・複雑化が進むなか、企業には顧客ごとにパーソナライズした商品開発やサービス提供が強く求められます。ライバルの二番煎じや自分たちの価値観の押し付けは、やがて市場から見放される可能性がきわめて高いでしょう。

それよりも、個人なら顧客ごとの属性や趣味嗜好、購買履歴、企業なら営業からの情報やクライアントの業績、経営の方向性、投資先など、さまざまな情報をつぶさにリアルタイムで把握してこそ、適切なアプローチができるので良好な関係が築けます。また、それらの情報を適切に分析できれば、さらなる需要の取り込みや新規顧客開拓、市場が求める新商品やサービスの開発が可能となり、結果として確実な業績アップにつながるに違いありません。

この一助となるのがCRM(顧客関係管理)で、ITツールとしてベンダーが販売・提供する製品を自社にマッチしたかたちにカスタムして使用するのが主流です。

医療業界の問題点

医師が向きあうイメージ

現在、医療業界が直面している問題として、

  • 社会の高齢化による患者数の増加
  • 医師不足
  • 未熟な地域医療連携
  • 院内での横断的な情報共有不足

などがあげられます。それぞれについて詳しく解説しましょう。

社会の高齢化による患者数の増加

厚生労働省の調査では、国内の医療費は年々増加傾向にあり、すでに43兆円を突破しています。しかも2025年には団塊の世代が後期高齢者(75歳)に達し、本格的な超高齢化社会を迎えるため、この勢いはますます加速するでしょう。

患者数が増えれば、それにともない疾患や症状の多様化・複雑化が進みます。一人が複数の医療機関や診療科で受診するケースもあれば、介護がかかわってくることもあるでしょう。よって、ときには病歴や投薬歴にくわえて、仕事や家族関係など生活背景にまで踏み込んだきめ細やかな対応が望まれます。

しかし、地域によっては病院数や病床数に限りがあったり、病院スタッフの手が回らないという厳しい現実もあります。これらの要因で適切な医療が施せなければ、大切な命を守れないという深刻な問題に発展しかねません。

医師不足

少子化による個人病院の後継者不足や地方の医師不足も顕在化しています。医師の数は都市部に偏っているため、地域によって受けられる医療の質に差が生じています。

ただ、都市部でも大病院を中心に患者に対する医師の数が不足しているために、予約をしても診察まで長時間待たねばならないケースが多いです。くわえて働き方改革関連法により、2024年4月から医師にも時間外労働の上限規制が適用されます。すると医師不足はますます顕著となるため、医師にかかる負担を軽くするとか、医師ごとに効率よく患者を配分して待合室での待機時間を減らすといったシステムの構築が急がれます。

未成熟な地域医療連携

病院には、大きく分けて「かかりつけ医」「急性期病院」「回復期病院」「慢性期病院」があります。初診は、かかりつけ医が前提ですが、手に負えないとか、緊急性が高い場合は、急性期病院にかかります。また、回復すれば回復期病院、さらに症状が慢性化すれば慢性期病院で受診、入院をする、というのが一般的です。

この流れが現場でもスムーズに行えれば、地域医療連携が充実し、より質の高い医療提供が可能になります。ところが実際は、かかりつけ医を持たない人が相当数存在し、紹介する急性期病院との情報伝達がうまくいかないことがあります。さらに、回復期病院、慢性期病院、そしてリハビリや介護施設を含めたやり取りがいまだに電話やファックス、郵便によるアナログ的なタスクから脱せず、スタッフへの負担が軽減できないケースも多いのだとか。

このように地域医療連携が未成熟だと、多くの患者が満足する医療提供がかなわず、顧客満足度は低下せざるを得ません。

院内での横断的な情報共有不足

医療は一種のサービス業といわれます。つまり、患者やその家族は顧客であり、院全体のシステムや受付・看護師の心遣い、医師の見立てや診療時の態度の良し悪しによって、顧客満足度や市場価値が上下するといえるでしょう。

評判が悪ければ、治療途中でも患者は来なくなり、総患者数や新患数も減少します。ところが、医師はあくまで医療や臨床の専門家であって、経営のプロではありません。よって踏み込んだデータや経営指標を理解・分析のうえ的確な戦略を立てて実践するのは、容易ではありません。

かたや事務方も、来院数や収益、レセコン(レセプトコンピュータ)などの数値や情報は把握していても、医師の態度の良し悪しとの関連性を指摘したり、患者への接し方の改善を促したり、経営方針にまで口出しできないケースがあります。

つまり、経営改善のための情報収集が足りないとか、有効な情報を蓄積しながらも、立場や部署によりそれらを独占して、横断的に共有し、活用するまでにはいたらないという問題が出ます。これでは患者のニーズや不満をキャッチできないばかりか、それらを経営に活かせないため、選ばれる医療機関として生き残れる可能性は狭まるに違いありません。

CRMの活用方法

データのイメージ
CRM(顧客関係管理)の導入すれば、医療業界が抱える問題を解決するさまざまな糸口が見えてきます。続いては医療機関でのCRM活用法について解説しましょう。

連携先との関係強化と新規連携先の開拓

CRM(顧客関係管理)を使うと、連携先ごとの紹介数や転院数、医師の情報、疾患名や治療経過、入退院情報などをストック・管理し、数値については増減を時系列でグラフ化できます。紹介や逆紹介の際に必要な、空き病床数や診療科別に医師のスケジュールなどのデータを連携先と外部連携のうえ共有も可能です。また、エリアごとの病院やクリニックのマッピングもできます。これらにより、紹介件数が減っている連携先に絞って営業活動を促進したり、紹介しやすい関係作りや新規連携先を開拓するのにも役立ちます

内部連携の強化

CRM(顧客関係管理)は、電子カルテやレセコン(レセプトコンピューター)と連携できるうえ、ネット環境があれば、場所を選ばず複数の端末でいつでも情報にアクセスできます。よって医師が取得する患者情報を必要に応じて他の医師(訪問診療先でも)や看護師、事務スタッフも閲覧可能なうえ、メンバーを厳選してメールによる情報共有もできます。これにより内部連携が強化され、横断的に情報がシェアできれば、患者に合ったより質の高い治療プランの構築と実行など、さらなるサービス向上が実現するでしょう。同時にカルテ記入や事務作業の省力化、デバイス活用によるペーパレス化が大幅に進むに違いありません。

経営上の弱点強化

CRM(顧客関係管理)を使うと、診療科や医師別の患者数や新規患者数の増減、入退院数や入院期間、病床回転率などを時系列で確認できます。すると、院内の弱点や改良点が浮き彫りになるため、診療時のコミュニケーションの仕方を変えたり、接客サービスの向上をはかるなど、運営手法の改善・強化に役立ちます。

コンサル機能の活用

多くのCRM(顧客関係管理)ツールには、ベンダーによるコンサルサービスがセットになっています。システムを導入しても、多くの医師やスタッフは、最初からその機能を十分に活かしきれません。そこでCRMで取得したデータをプロ目線で分析し、経営戦略として落とし込むことで、目に見えて業績が良くなります。

医療業界のCRM導入事例

データ分析のイメージ
では、実際に医療業界にCRMを導入した例をみていきましょう。

CRMでペーパレス化と職員の意識改革に成功!

医療法人敬愛会 中江病院では、かねてより紙を中心とした院内業務の改善と職員の病床稼働率への意識を高めるのが課題でした。そこで株式会社プレアデスセブン(熊本市中央区)の病院経営プラットフォーム『ここりんく』を導入しました。

以前は、地域連携室に連携先から患者情報がファックスされると、Excelにまとめて各部署にコピーを配るというのが常でした。しかし、『ここりんく』により、患者情報を登録すると各部署の専用端末で情報共有できるため、大幅なペーパレス化に成功しました。

また、このシステムの基盤となる業務システムkintoneの『フェイスシート』というアプリを並行して使って、来院や入院の事前相談内容や日時を管理し、電子カルテ入力未満の情報をストックして患者さんの受け入れ態勢向上に役立てています。

さらに、電子カルテやレセコンと自動連携すると病床稼働率がポータル上にわかりやすく可視化できます。病床稼働率は収益に直結しますが、現場のスタッフがこれを自分ごととしてとらえるのは難しい面があります。しかし、見える化すると、稼働率を認識しているスタッフの割合が9.3%から84%にまで向上しました。今までにない経営意識の高まりが、現場のサービス向上に寄与しているのだとか。

CRM活用で売上2倍増を達成!

日野皮フ科医院(福岡県福津市)では、スムーズなオンライン診療システムの構築と患者さんの抱える悩みや診療に対する要望を詳しく知ることで顧客満足度を高めることや患者さんとの絆を深める手段を模索していました。そこでクラウド型CRMの『Zoho One』を導入しました。

『Zoho One』を使うと通常の診察によるあらゆるデータをストック、分析できるだけではありません。診療日が決まれば、システムにスケジュール登録され、患者さんにメールで日時やアクセス先のURLが自動送信するかたちで、スマホやPCでのオンライン診療も可能になります。治療費はPayPalで決済、処方箋は薬局にファックス送信し、患者さんに取りに行ってもらうという流れで、利用者は着実に増えています。

また「ワークフロー機能」を使って、患者さんごとのスケジュールを管理し、診療日前日のリマインドメール、治療の数日後に状態確認と心配事をケアするフォローメール、さらに継続治療が必要な患者さんへの1カ月後の再診を促すメールと、手厚いアプローチを実践。これによりリピート率が大幅に上昇、売上も2倍に増えました。

Twitter、FaceBook、Instagramと連携し、院からのお知らせを自動投稿したり、SNSからの問い合わせを新規見込み客として自動登録しています。また、院内でも社内コミュニケーション機能を使って連絡事項のやり取りしながら内部連携も強化中です。

これからの医療業界

医療のイメージ
帝国データバンクの「医療機関の倒産動向調査」によると、負債1000万円以上の医療機関だけでも年間の倒産件数が45件、負債総額は223億7100万円と膨大な額にのぼります。高齢化が進み、医療への需要は増加している反面、患者による医療機関への評価は厳しく、選ばれる病院とそうでない病院の二極化が見られます。よって、これからの医療業界では、地域で受け入れられ確実に生き残るためにも、患者やその家族、ならびに連携先の医療機関や介護施設といった顧客への細やかなアプローチが、ますます重要になるでしょう。そのためにも、CRM(顧客関係管理)をフル活用し、患者一人一人に寄り添い、連携先病院や介護施設とその関係者から信頼されるビジネスモデルの構築が必須です。

多様化・複雑化する大勢の患者に適切な治療を行うためには、医師やスタッフが心身ともに健康であることも欠かせません。外部への働きかけによる顧客満足度向上とともに、業務効率化や働き方改革の推進、連携強化によって、内部人材の負担を軽減しつつ効率的に成果があがるシステム作りが重要課題です。

そして、医療機関を中心に医薬品メーカー、医療機器メーカーが連携し、トータルで質の高い医療提供体制を整えることで、顧客ロイヤリティ(価値を認めて他の人に勧めたいという考え)と関係者のクオリティ・オブ・ライフを高めることが可能になります。そのためにも、CRM(顧客関係管理)を使った強力なネットワーク作りが強く求められます。

まとめ

さて今回は、医療業界でのCRMの必要性や導入事例についてお伝えしました。

CRM(顧客関係管理)とは、顧客の属性、趣味嗜好、購入履歴、さらに問い合わせ内容や打ち合わせの履歴などさまざまな情報をデータ化し、多くの顧客との関係を良好に保ちつつ、新商品開発や新規事業立ち上げ、顧客開拓などに活用する手法です。

現在、医療業界は、「社会の高齢化による患者数の増加」「医師不足」「未熟な地域医療連携」「院内での横断的な情報共有不足」といった問題を抱えています。
これらの問題を解消するため、医療業界でもCRM(顧客関係管理)を活かして「連携先との関係強化と新規連携先の開拓」「内部連携の強化」「弱点の強化」「コンサル機能の活用」に積極的に取り組むことが有効です。

すると、医療法人敬愛会 中江病院のように、ペーパレス化と職員の意識改革に成功したり、日野皮フ科医院のように、オンライン診療とキャッシュレス決済による顧客満足度の向上や売上倍増といった結果を得ることも可能になります。

今後、団塊の世代が後期高齢者(75歳)に達し、本格的な超高齢化社会に突入する2025年問題に向けて、病院もより質の高いサービス提供と生き残りをかけた経営戦略の実行が求められます。そのためにも、CRM(顧客関係管理)を積極活用して、顧客ロイヤリティと関係者のクオリティ・オブ・ライフを高めることに全力をあげましょう。

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