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現場で役立つ!AMR(Autonomous Mobile Robot)について実例も含めて解説

現場で役立つ!AMR(Autonomous Mobile Robot)について実例も含めて解説

最近では、ネットショッピングや通販の拡大により輸送量が急激に増加していますよね。それにともなって物流や倉庫業務のオートメーション化が重要視されています。その具体的ツールとしてAMR(自動走行ロボット)への注目度は急速に高まっています。

AMR(自動走行ロボット)は、高速度センサーやジャイロスコープといった複数のセンサーの働きで、人や磁気誘導の力を借りずに自在に動き回ることができる自律型の搬送ロボットです。AMR(自動走行ロボット)は作業員がピッキングしたものを必要な場所へ搬送するだけでなく、人や障害物を避けながら進むため、工場や倉庫の自動化に大いに役立ちます。

ぜひ、この記事を読んでAMR(自動走行ロボット)について詳しく知って、物流・倉庫業務や工場のオートメーション化に役立てましょう。

そこで今回は、AMR(自動走行ロボット)とAGVの違いやAMR(自動走行ロボット)のメリット・デメリット、さらにAMR(自動走行ロボット)の導入事例についてお伝えします。

AMR(Autonomous Mobile Robot・自律走行搬送ロボット)とは

ロボットのイメージ
AMR(自動走行ロボット)は、Autonomous Mobile Robotの訳で、自律走行搬送ロボットや人協調自律移動ロボットといわれます。主に倉庫内で作業員のもとに行き、ピッキングされたものを梱包エリアに届ける、というタスクに活用されます。

AMR(自動走行ロボット)は、どのエリアのどの棚に何があるかを把握し、必要に応じ自動計算してその場所に行きます。商品名やコード、個数などをタブレット画面に表示され、作業員は指示されたものをピッキングしてAMR(自動走行ロボット)に載せるだけで済むので、負担が減るでしょう。また、人や障害物、他のAMR(自動走行ロボット)の位置もすべて把握して自動回避したり道を譲るため、安全に人と近い距離で協業できる特徴を持ちます。

これら一連のタスクを可能にしているのが、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)という技術。これは、自己位置推定と環境地図作成の同時実行を可能にしています。

レーザーセンサーやビジョンシステムなど複数の高度なセンサーを活用するSLAMによって、未知の環境下でも室内を一回りするだけで地図を作成できます。それをもとに障害物を回避しながら作業をこなせるでしょう。しかも遠隔で自動制御できるため、状況に応じて柔軟に作業変更もできます。最新のSLAMではこれにAI(人工知能)を搭載し、ディープラーニング(深層学習)により、使えば使うほど判断力や危機回避力が向上するものもあるのだとか。

IDC JAPANの調べでは、2018年から2023年かけて国内の自律移動ロボット市場は、年率23.7%で成長、2023年には561億円の市場規模になると予測されています。膨大な物流量を抱えながらも厳しい労働力不足に悩む物流・ロジスティクス業界にとって、AMR(自律走行ロボット)は、救世主となり、市場規模は今後どんどん伸びていくに違いありません。

AMR(自律走行ロボット)とAGVの違い

自動走行のイメージ

AMR(自動走行ロボット)は、AGVという自動搬送ロボットの次世代型の台車型ロボットです。AGVは、床に設置した磁気テープや磁気棒などの磁気誘導によって、決められたルートを頻繁に行き来しながら運搬業務をこなします。よって倉庫や工場内のレイアウトを変更するときは、磁気テープや磁気棒をすべて取り換える必要があるうえ、一台ずつどのルートを通るかをPCとソフトを使って記憶させる必要があります。また、障害物は検知しますが、ただ停止するにすぎません。

※AGVの詳しい説明はこちら

一方、AMR(自動走行ロボット)は、特別なインフラは必要ありません。台車や人がすれ違えるならどのような空間でも簡単に実装でき、自動算出したルートを走行、いつでもコース変更が可能です。障害物があれば、停止せずに回避しながら進めます。

また、AMR(自動走行ロボット)は、ただ運搬するだけでなく、トップモジュールを交換すれば、さらに多種多様なタスクがこなせるようになります。たとえばロボットアームを搭載すれば人に代わって商品や材料をピッキングし、使わないものは元の棚に返すことが可能です。コンベヤを搭載すれば、ピッキングした荷物をコンベヤラインにそのまま流し込め人への負担がまったく異なるので、この差は大きいですよね。

さらに、AMR(自動走行ロボット)には、Wi-FiやBluetoothによる通信機能を装備することもできるので、走行中にエレベーターを呼び出したり、扉を開けるように指示を出すことも可能です。複数台でこの機能を併用すれば、より次元の高いオートメーション化が追求できます。

AMR(自律走行ロボット)を導入するメリット・デメリット

人のリソースのイメージ
AMR(自律走行ロボット)を導入する場合に、メリットとデメリットがあります。まずメリットについて見ていきましょう。

メリット1:短期間で導入可能

AMR(自律走行ロボット)は、SLAMにより室内を一回りすれば地図作成できるうえ、ルートの自動計算も可能です。よって特別なインフラを整備する必要がなく、きわめて短期間で導入できます。

メリット2:人の移動距離の短縮化

商品や資材が保管されている棚の前まで行き、そのエリアを担当する作業員がピッキングしたものを積んで次の商品棚や梱包エリアに向かう、というのがAMR(自律走行ロボット)の典型的な活用シーンです。つまり、人がロボットに近づくのではなく、人が待機している場所にAMR(自律走行ロボット)がそっと優しく近づいて行くイメージです。

よって、人の移動距離は極端に短く、体力的な負担が軽減します。ともすればその場からほとんど動かずにピッキングだけ行えば良いケースもあるので、非常に楽になるでしょう。

メリット3:人件費の削減

AMR(自律走行ロボット)を使うと、人が複数の棚をめぐってピッキングするのと比べて大幅に作業員を減らすことができます。実際にある物流企業では、人件費を50%カットできました。この差は大きいですよね。

メリット4:生産性の向上

AMR(自律走行ロボット)を導入すると移動ルートの自動算出により無駄な動きが大幅に削減されます。ある物流倉庫では、同じ作業員の数で処理できる荷物数が倍に増えたため、生産性が100%アップしました。このような生産性の向上が見込めるのは間違いありません。

メリット5:労災件数の削減

AMR(自律走行ロボット)は、障害物や人を高い精度で感知すると回避するため非常に安全です。また、ものによっては高所にある資材などをAMR(自律走行ロボット)がピッキングするため、人が落ちて怪我をするリスクが軽減します。よって労災件数の削減が期待でき、従業員が安心して働けるだけでなく、会社の社会的信用を向上させることも可能です。

続いて、AMR(自律走行ロボット)を導入する際のデメリットについて見ていきましょう。

デメリット1:導入コストが高い

AMR(自律走行ロボット)は、1台あたり数百万円にのぼることもあるため、複数台導入してシステムを大幅に変更するとなると数千万円規模の予算が必要になります。最近ではサブスクリプション制により月額払いで導入できるケースも増えていますが、それでも月額10万円(/台)以上が相場のため、決して安いとは言えません。

デメリット2:不具合による全システムストップのリスク

AMR(自律走行ロボット)は、既存のシステムと同期させたり、複数のAMR(自律走行ロボット)と連携して稼働させることが多いです。よって、もし1台でも不具合が生じると、連携している他のロボットにも影響し、すべてのシステムがストップしてしまうリスクがあります。

デメリット3:修理時間の長期化

AMR(自律走行ロボット)は、高機能ロボットでメーカーの独自性も高いため、故障した場合は簡単に修理できない場合があります。代替品があれば良いですが、フル稼働させている場合は、替えが利かないため、修理が長期化すると業務全体にも支障が出るかもしれません。

代表的なAMR(自律走行ロボット)

動くロボットのイメージ
どのようなAMR(自律走行ロボット)が実際に稼働しているのか、代表的な機種を紹介しましょう。

MIR社の「MiR500」

MIR(モバイル インダストリアル ロボット)社の「MiR500」は、最大積載量500kgにもかかわらず、横幅90.9cmというコンパクトさと秒速2ⅿ(時速7.2km)のスピードが特長です。トップモジュールの交換が可能なため、さまざまなタスクに対応できます。他にも100・200・250・1000kg対応と細やかなラインナップが揃っており、多業種で採用されています。

rapyuta roborics社の「協働型ピッキングアシストロボット」

rapyuta roborics社の協働型ピッキングアシストロボットは、独自開発のロボティクスプラットフォーム「rapyuta.io」と群制御AIによりフォークリフトやAGV、アームなど他の倉庫ロボットとの連携が可能なAMRです。オーダーが入るとAI(人工知能)が最短時間でピッキングできる機体に割り当て、混雑状況を確認しながら自動変速し、障害物や人を避けながら対象商品の真横に到着します。

作業の進捗状況や生産性を可視化したり、人やAMRの数を指定して期待される生産性のシミュレーションができるなど、倉庫のオートメーション化を後押しする機能が満載です。

MEMO テクノス社の「LuxPro」

MEMO テクノス社の「LuxPro」は、協働ロボットと無人搬送車を組み合わせたAMR(自律走行ロボット)。AI(人工知能)による安全な自律走行を実現し、双椀型のモジュールにより、人さながらの動きでピッキングや検査など様々な用途に対応できます。最大48台を同時連携できるので、大量の入出荷を行う大規模な倉庫にうってつけでしょう。自身の判断で充電装置を使って(非接触型)自動充電するので、省人化にも貢献します。

AMR(自律走行ロボット)を導入した事例

出荷のイメージ
AMR(自律走行ロボット)を導入して成功した具体的な事例をご紹介しましょう。

ピッキング作業員を2/3に削減

台湾初の物流不動産業者・ALPは、商品数の増加にともない、作業員増加による人件コストの上昇や広い倉庫スペースの無駄遣いが問題でした。

そこでAMR(自律走行ロボット)を70台導入すると、約10,000個の商品が保管されている5,776㎡の倉庫でのピッキング作業が大幅に進み、作業員を2/3に削減。レイアウト変更により保管スペースの利用率は、20%アップしました。

出荷効率が200%向上

物流企業・株式会社関通では、マンパワーに頼る非効率な出荷作業や広大な倉庫スペースの無駄遣いが問題でした。

そこで1,200㎡の2つの倉庫にAMR(自律走行ロボット)を30台導入。作業員のすぐそばまでロボットが近づくことでハンズフリーでのピッキングを可能にし、レイアウトを変更して商品棚を作り直しました。すると、3カ月後に出荷効率が200%、ピッキング効率が300%向上し、倉庫スペースは50%も節約できました。

病院内で薬・食事・ゴミの搬送

AMR(自律走行ロボット)は、医療機関でも活躍の幅を広げています。ある海外の大病院では、毎日の薬や入院患者の食事、ゴミの回収など院内での運搬業務に多くの人手と時間を費やしていました。

そこで、AMR(自律走行ロボット)を導入すると、エレベーターを使って各階を回り、薬をナースステーションに届けたり、トレイにのった食事を入院病棟に運んだり、ゴミ回収に巡回したり、といった業務を一任できるようになりました。トップモジュールを変えれば、さまざまな大きさの荷物を用途別に運搬できるので、とても便利ですよね。

AMR(自律走行ロボット)を導入する際に気をつけるポイント

スペースのイメージ

最後にAMR(自律走行ロボット)を導入する際に注意すべき点について解説しましょう。

適切な移動スペースの確保

AMR(自動走行ロボット)は、エリア内を思いの外自在に動き回ります。AMR(自動走行ロボット)だけでも横幅が0.5~1m前後あるため、すれ違うことを考えると少なくとも1.5~2m以上の通路幅は確保する必要があるでしょう。労働安全衛生規則(第10章第543条)でも、「機械間やその他設備との間に設ける通路は、幅80㎝以上にしなければならない」、と規定されているので、注意しましょう。

社内の課題を整理

作業現場における困りごとや作業プロセスの問題点について、現場の声をしっかり吸い上げておきましょう。時間がかかる面倒な作業や身体に負荷がかかる重労働など、不満の種となる要素をすべて洗い出す姿勢が大切です。そして解決すべき課題を具体的に浮き彫りにしておけば、ベンダーとの話し合いがよりスムーズに進み、AMR(自動走行ロボット)の導入も上手く行くでしょう。

予算の確保

AMR(自動走行ロボット)の導入はイニシャルコスト(初期費用)がかかります。システムの大幅変更をともなうなら数千万円規模の予算が必要です。解決すべき課題と予算を天秤にかけ、システム改革の落としどころをどのあたりまでにするか、絞り込みましょう。資金面に余裕がないなら、まず1台だけ導入して成果の出方を見ながらずい時買い足していく方法もあります。

まとめ
さて今回は、AMR(自動走行ロボット)とAGVの違いやAMR(自動走行ロボット)のメリット・デメリット、さらにAMR(自動走行ロボット)の導入事例についてお伝えしました。

AMR(自動走行ロボット)は、主に倉庫内で作業員のもとに行き、ピッキングされたものを梱包エリアに届ける、というタスクに活用されます。AMR(自動走行ロボット)は、周囲の状況を判断し、走行ルートを自動算出できる点で、磁気誘導によって決められたルートのみを走行するAGVとは一線を画します。

AMR(自動走行ロボット)は、「短期間で導入可能」「人の移動距離の短縮化」「人件費の削減」「生産性の向上」「労災件数の削減」というメリットがある反面、「導入コストが高い」「不具合による全システムストップのリスク」「修正時間の長期化」というデメリットがあります。

倉庫現場では、500~1000kgといった重量の荷物を静かにスピーディーに可能なMIR製や独自のAI(人工知能)とロボティクスプラットフォームにより他のロボットと連携できるrapyuta roborics社の製など、ニーズに応じて多彩なAMR(自動走行ロボット)が導入されています。

また、AMR(自動走行ロボット)は、物流倉庫のみならず、病院での導入例も見られ、ピッキング効率向上やスペースの有効活用、省人化などに幅広く貢献しています。

AMR(自動走行ロボット)を導入する際には、「適切な移動スペースの確保」「社内の課題の整理」「予算の確保」などに気をつける必要があるでしょう。

社会全体で少子化や人口減、高齢化による労働人口の不足が深刻になるなか、今後、AMR(自動走行ロボット)のニーズは飛躍的に増加していくでしょう。AMR(自動走行ロボット)の特徴である人と協働できる強みを活かした、さらなる倉庫作業の利便性が追求できるに違いありません。

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