工場や倉庫では、少子化や若者によるハードな労働作業への敬遠から労働者不足が深刻化していますよね。そして、その課題解決のために、人に頼らない作業スタイルへのシフトが求められています。そこで注目されているのが、工場や物流倉庫の自動化を後押しする台車ロボットです。
台車ロボットは、人が運べない重い製品や大きな箱詰めの荷物を指定されたポイントまで運搬する自動走行型の台車です。台車ロボットがあれば、一度に多くの荷物を運べるだけでなく、指定ルートを何往復もできるため、作業効率の向上や省人化に寄与します。
この記事を読めば、台車ロボットの役割や導入のメリットがわかるため、工場や倉庫の自動化に大いに役立つに違いありません。
そこで今回は、台車ロボットが人気の理由や代表的な台車ロボット、導入事例についてお伝えします。
台車ロボットとは
台車といえば、荷物を一時的に乗せて運んだり、小回りが利くので狭い通路での運搬作業にもよく使われますよね。台車ロボットとは、ハンドルを押すとモーターが駆動して動くので力が要らないうえ、左右・前後走行や旋回が自在にできる台車です。
また、台車ロボットは、自動追随システムで人が進む後をカルガモのように付いて回る機能や複数の台車やカートをけん引する機能などをもっています。走行通路上に貼られた二次元コードを画像認識して走行指示情報を受信しながら指定ポイントに到着するタイプもあります。しかもタブレット端末で走行ルートが簡単に変更可能です。よって、急な計画変更にも柔軟に対応できるうえ、いちいち台車ロボットに触れて面倒な切り替え操作をしなくて済みます。
つまり台車ロボットは、用途に合わせて普通の台車と同じ使い方や自律走行させて人と離れた場所での運搬業務も可能です。
台車ロボットが人気な理由
台車ロボットは用途が広いため、工場や倉庫はもちろん、ホテルや旅館、空港でも導入されています。台車ロボットが人気なのは、主に「作業効率をアップできる」「走行ルートを簡単に変更できる」「導入コストが安い」「人件コストを削減できる」という理由からです。一つずつ見ていきましょう。
作業効率がアップできる
台車ロボットは、充電すれば時間に関係なくいつでも稼働できます。この点が、人が押す普通の台車とはまったく違いますよね。しかも、けん引により台車やカートを連結させれば一度に多くの荷物を運搬でき、人が運ぶより作業効率が格段にアップするため大変人気があります。
走行ルートが簡単に変更できる
台車ロボットを動かすための二次元バーコードはシールに印刷されているため、設置に時間がかかりません。しかもタブレット端末を使って手軽にルート変更ができ、急な予定変更に柔軟に対応できる点も人気の理由です。
導入コストが安い
台車ロボットは、安価なものなら月額数万円のリースで導入できます。また、初期費用がいらない場合も多いので安心ですよね。しかも導入時のインフラコストやレイアウト変更時の工事費などが低価格な点も人気の理由です。このため、台車ロボットは費用の問題で導入できなかった中小企業にもおすすめです。
人件コストを削減できる
台車ロボットは、決められたルートを何度も往復して自動で多くの荷物を運ぶため、作業員の数を大幅に減らせます。と同時に人件費もカットできるので、財務改善に役立つでしょう。
代表的な台車ロボット
実際に活躍している台車ロボットにはどのようなものがあるのか、具体的に見ていきましょう。
株式会社Doog(ドーグ)の「サウザー(THOUZER)」は、自動追従機能により人や機械の後ろをカルガモ走行で付いていきます。しかも複数台を同時に動かせるので、一度に多くの荷物を運搬できます。
さらに、簡単に敷設、撤去可能な反射テープを使ったライン上を走行するライントレース機能で、支持した場所へ無人搬送が可能です。けん引もできるため、台車やカートをつなげば、大量の荷物搬送にも対応できます。障害物を自動検知して停止したり、倉庫管理システム(WMS)と連動できるので、倉庫作業のオートメーション化にも役立つでしょう。
サウザーは1台からでも導入できるため、コストをかけずにスモールスタートできる利点も見逃せません。
台車ロボットを導入した事例
台車ロボットを現場で導入した事例をいくつか紹介しましょう。
ヤマト運輸株式会社-安全な作業導線の整備
物流大手のヤマト運輸は、広大なターミナルで膨大な荷物を決められた時間内に仕分け・移動・積み込みする作業に多くの人員と時間を要していました。とくに一度に多くの荷物を運ぶロールボックスパレットの長距離移動は、作業員に多大な負荷をかけるだけでなく、パレット同士の衝突リスクもありました。よって作業員の負担軽減とターミナル内の安全な環境整備が課題でした。
そこで台車ロボットを導入。すると人の無駄な動きが激減、台車ロボットメインの作業スタイルへの変更により、効率の良い運搬ルートの確立とロールボックスパレットの自動搬送が可能となりました。これにより作業員の負担が軽減しただけでなく、安全な作業導線の整備も実現しました。
株式会社LIXILビバ-省人化に成功
ホームセンターのビバホームでは、約1万㎡におよぶ店舗内での大量の物流作業に必要な作業員の確保と作業費の高騰が大きな課題でした。とくに作業委託していた先の採用難により、作業員を派遣に頼らざるを得ず、結果として人件費の上昇が続いていました。
そこで台車ロボットを導入。現場の作業員が容易にレイアウト変更できるため、効率の良い搬送ルートの開発、労働意欲の向上が見られ、結果として倉庫内の自動化が大幅に進みました。その効果で20~30%の人員削減が実現できました。
株式会社サンゲツ-作業員への負担軽減
インテリアの専門商社サンゲツは、全国9か所のロジスティクスセンターで1日につき約60,000点もの出荷を行っています。あるセンターには、お客様が直接商品を受け取りに来ることもありますが、目的の商品を3F倉庫から1Fまで台車で搬送したり、重量物はフォークリフトで移動させていました。その間、作業員は持ち場を離れることになり、その時間短縮と作業員の負担軽減が課題でした。
そこで台車ロボットを複数台導入。3Fから1Fまで約100m、8分程要していた搬送作業が、台車がエレベーターの開閉も自動で行うため、平均約30回/日の往復が自動化、240分/日の作業時間が省けました。一度に600kgまで運搬できるため、重量物にも幅広く対応。作業員への負担軽減と持ち場を離れる時間の大幅短縮が実現しました。
台車ロボットを導入する際に気をつけるべき点
台車ロボットを導入するにあたって留意すべき点についてお伝えしましょう。
台車ロボットは、基本的にあまり大きくありません。見た目は一般的な大きめの台車と同じくらいのものがほとんどです。よって、台車ロボット自体に多くの荷物を乗せるのはいけません。使用環境にもよりますが、導入する際は併用できる連結用の台車やカートなどもセットで検討しましょう。
さて、今回は台車ロボットが人気の理由や代表的な台車ロボット、導入事例についてお伝えしました。
台車ロボットは、人が運べない重い製品や大きな箱詰めの荷物を指定されたポイントまで運搬する自動走行型の台車です。追従タイプや台車などをけん引できるタイプ、二次元コードの情報を読み取って進む自律走行タイプもあります。
台車ロボットは、「作業効率をアップできる」「走行ルートを簡単に変更できる」「導入コストが安い」「人件コストを削減できる」などの理由で人気です。代表的なロボット台車は、ビーコンを使った追従型、画像認識で位置情報や走行指示情報を同時受信して進む自律走行型、パレット積載型などがあります。
実際の台車ロボットの導入事例を見ると、工場や倉庫内の自動化が進み、作業員への負担が軽減され、省人化や安全な労働環境の整備にまで役立っていました。
ただし、台車ロボットを導入する際は、他の台車やパレットなどと併用してより使い勝手が良い方法を検討する方が良いでしょう。また、後に大幅なレイアウト変更が必要な場合は、自律型より、追従型やハンドリング可能な半自動タイプの方が、柔軟に対応できて便利かもしれません。
今後、少子化や若者の労働集約型業務への敬遠にともなって、工場や倉庫での労働力不足は、ますます進んでいくでしょう。よって、台車ロボットによる作業の自動化は、重要度を増す一方に違いありません。先を読みながら、どのような台車ロボットが、作業効率化や省人化に役立つのか、よく見極めて導入しましょう。
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