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今注目を集めている「顔認証システム」。その活用事例をまとめてみた

今注目を集めている「顔認証システム」。その活用事例をまとめてみた

最近は、さまざまなデバイスや施設で顔認証システムが活用されていますよね。指紋や静脈など個人を特定する生体認証システムの中でも、顔認証は特に注目されています。

顔認証システムは、おもにAI(人工知能)のディープラーニング(深層学習)を使って大量の顔画像を学習させ、あらかじめ画像保存してある特定の個人の特徴を細やかに認識し、極めて高い精度でその本人を認証します。現在では、スマホのロック解除や施設への入室、空港や金融機関、ライブやスポーツ会場への入場、要注意人物の検出など、多くの場面で最先端のセキュリティ対策として引く手あまたです。また、他のデジタルテックとの融合により、キャッシュレスや非接触システムをはじめ、さらに高品質なサービス提供が模索されている状況です。

この記事を読めば、顔認証システムについて詳しくなるので、これからのセキュリティ対策に役立つに違いありません。

そこで今回は、顔認証システムの仕組みや活用事例についてお伝えします

顔認証システムとは

双子のイメージ

顔認証システムは、AI(人工知能)のディープラーニングを活用しています。AI(人工知能)に膨大な顔画像を学ばせると、顔や目、鼻、口などの大きさや形など、多くの特徴量をデータ化し、データ量が増えるごとにディープラーニングにより識別能力が向上します。

例えば、一卵性の双子だと、あまりにそっくりで他人には見分けがつかないことがありますよね。でも親は簡単に見抜きます。それは、生まれた時から膨大な時間を共に過ごし、そばで無数の表情を繰り返し見続けているからに他なりません。顔認証システムでも、理屈は同じです。

たとえ双子でも、目の大きさやホクロの位置、シワの形は異なりますよね。顔認証システムは、これら大量の特徴量をAI(人工知能)が学習して、あらかじめ保存してある個人のデータと照合し、カメラに映った人物が本人かどうかを識別します。その精度は年々上がり続けており、今は眼鏡やマスク、帽子などを装着していたり、顔が斜めを向いていても極めて高い確率で認識できるのだとか。また、非接触で使えるため感染症対策としても需要が高いです。

顔認証システムには、顔を平面でとらえる2Dタイプと立体でとらえる3Dタイプがあり、一般的には、奥行きや皮膚の隆起などより多くの特徴をとらえる3Dタイプの方が識別能力が高いといわれています。

また、スマホのように手元にAI(人工知能)が搭載されたエッジデバイス型とライブ会場や空港などの大規模施設のようにサーバーにデータを保存してAI(人工知能)を操作するオンプレミス型(ネット回線を使用しない)やクラウド型(ネット回線を使用する)があります。エッジデバイスは、いつでもどこでも使えて情報漏洩リスクが少ないのが利点。オンプレミス型は、大量のデータ保存が可能で、ネット回線を使わないためやはり情報漏洩の危険性が少ないのが特長です。クラウド型は、管理をベンダー任せにできるうえ、複数個所で使えて(例えば工場とオフィスなど)、大量にデータ保存できるのがメリットですが、ネット回線を使うため情報漏洩防止の対策が強く求められます。

ちなみに顔認証と混同されやすいのが「顔認識」です。顔認証がデータにある特定の個人を識別するのに対し、顔認識は、さまざまなモノや風景が映っている中から人の顔を検知したり、人の表情から、怒り、悲しみ、喜び、などの感情を読みとるのが特徴です。例えば、あるモノを見せたり、ある刺激を与えたときに、人がどんな表情を示すかをデータ化するのに役立つので、マーケッティングや研究材料として活用できます。

このように、顔認証システムと顔認識システムでは、使われる目的やシーンがまったく異なるので、混同しないようにしましょう。

顔認証システムが活用されるシーン

セキュリティのイメージ
続いて顔認証システムが、実際にどのような場面で活用されているのか見ていきしましょう。

顔認証システムが導入される最大の目的は、セキュリティ対策です。つまり、ある人物になりすまして、まったくの別人が不適切な行為におよぶのを阻止するために顔認証システムが開発されました。

例えば、スマホやパソコンのロック解除、オフィスや学校など特定の人たちが出入りする施設での入室許可、また、空港やホテル、スーパー、など不特定多数の人たちが出入りする施設で要注意人物を識別したり、テロ対策としても活用されています。

また、金融機関や研究施設では高度な機密情報を管理する必要がありますが、ICカードや暗証番号では紛失や漏洩リスクがあります。しかし、顔認証システムならその心配がなく、事前に顔情報を登録した特定の人物しか入室できません。しかも入室者の履歴データを残すこともできるため、さらなるセキュリティ強化が可能です。

戸建てやマンションで顔認証システムを使えば、顔情報登録者は鍵がなくてもロック解除されて荷物を持ったままでも出入り可能です。また、家主が特別に設定すれば、ある人物だけを時間を限定して出入り可能にできるシステムもあります。他に、ライブやスポーツ観戦チケットとその購入者の顔画像を紐づけして、チケットを盗んだり転売で入手した別人の入場を阻止するために会場入口に顔認証システムを設置する例もあります。

さらに、顔認証システムは、セキュリティ対策だけではなく、利便性を求めて導入されるケースも増えています。例えば、あらかじめ顔画像を登録しておいて、特定のレストランやスーパーなどで顔パス、クレジットカードと紐づけすれば、レジで端末に顔を向けるだけでキャッシュレスで支払いが完結する、という具合です。これなら、客の待ち時間が減らせるだけでなく、店側も接客時間が削れて業務効率化がはかれるでしょう。

続いては、顔認証システムが活用されている事例を紹介しましょう。

実際に顔認証が活用されている例:全国の自治体で初!富山市が顔認証の決済システム導入で便利で安全な街づくり

クレジットカードのイメージ
全国の自治体に先駆けて、富山市が顔認証を利用した決済システムを試験的に導入しました。導入地域は、富山市内の中心市街地と岩瀬地区の飲食店や観光施設など約30ヶ所。

商店街やレストラン、人気観光スポットでは、買い物や食事のために多くの人たちがいっときに集中することがありますよね。すると会計が混雑して、無駄な待ち時間を費やすことになりかねません。従業員のストレスの相当なものになるでしょう。

しかし、顔認証と決済システムを融合すると、あらかじめスマホから専用サイトに顔写真とクレジット情報を登録するだけで、店舗ではわざわざ財布を出す必要がありません。タブレット端末に顔をかざすだけで決済が完了するので、時短だけでなく、非接触のため衛生面でもメリットがあります。

デジタル化の遅れが厳しく指摘されがちな自治体が率先して活用したことで、官民関係なく全国的に顔認証システム導入のさらなる波が起こるかもしれません。

実際に顔認証が活用されている例:東京ドームが顔認証で入場と商品購入を実現!

スタジアムのイメージ
未曽有の大規模な感染症の流行で、スタジアムでの楽しみ方が「熱狂声援型」から「快適体感型」へと変容している流れを受けて、読売新聞東京本社・読売巨人軍・東京ドームの3社は「世界一清潔、安全、快適なスタジアムを実現する」と宣言のもと、東京ドームへの入場とドーム内の2店舗での商品購入に顔認証システムを導入しました。

スタジアム観戦というと、いっときに大勢のファンが詰めかけるため、入場口はごった返すのが昔ながらのよくある光景ですよね。ところが入場ゲートに顔認証システムを設置すると、事前に顔情報を登録した人の顔を識別します。しかもマスクやメガネを装着したままでも、目の周辺の見えている場所だけでわずか1秒以内で照合可能なのだとか。

ドーム内の2店舗では、あらかじめ専用サイトで顔情報やクレジットカード情報を登録し、レジでタブレットのカメラに顔をかざすとキャッシュレスで買い物ができます。現在は実験中のため、安全面を考慮して顔認証に加えて暗証番号の入力も併用していますが、さらなる利便性も追求していく方針です。

実際に顔認証が活用されている例:食品工場で顔認証システムを導入してフードディフェンスに成功!

工場のイメージ
三重県四日市市のヤマダイ食品株式会社では、部外者による異物混入を防ぐシステムとして、紛失リスクのあるICカードではない生体認証の導入を検討していました。また、部外者の来客履歴も紙で残していましたが、実際にどの様な人物が入室したかは現場の人間しか把握できず、紙作業の煩雑さに加え管理体制にも危うさがありました。そこで工場新設の際に、顔認証システムを導入。

現在の食品業界は、部外者が簡単に出入りできない環境整備をすることがスタンダードで、セキュリティ対策が甘いと取引してもらえず、死活問題になりかねないのだとか。しかし、新たに導入した顔認証システムは、現在100名ほどが顔情報を登録してスムーズに稼働しているため、部外者が入りこむ余地はありません。来客者履歴もデジタルで一元管理できるため、大切な食品を守るフードディフェンス対策が、理想のかたちで成功しています。

その他顔認証システムの活用例

勤怠のイメージ
引き続き、その他の顔認証システムの活用例を見ていきましょう。

顔認証システム導入で万引き被害額が半分に

国道沿いのあるコンビニでは、立地条件の良さからエリア内で2位の売上額を誇っていました。ところが客数の多さに比例して万引き件数も多く、その対応に多大な時間を割かねばなりませんでした。そこで防犯カメラや店舗レイアウトは死角がないように工夫し、スタッフにも客への声掛けを強化するように促すも、一向に万引きが減らずに大きな憤りを覚えていたのだとか。

ところが、顔認証システムを導入して要注意人物の画像を登録しておくと、本人が来店した時は検知アラートが鳴るため、監視体制や声掛けを強化できました。すると何も買わずに店内を一周して出て行ったとのこと。約半年で万引き額が半分に減り、顔認証システムの効果を強く実感しました。

顔認証システムは勤怠管理にも活用できる

国をあげての働き方改革推進が叫ばれて久しく、とくに企業に対する残業管理には厳しい目が向けられていますよね。そこで顔認証システムを活用すると、入退室の際の人物の識別のみならず、勤怠管理と連携させることもできます。

顔認証システムは、入退室の日付と時間のデータを保存するだけでなく、登録者のオフィスでの滞在時間を計算して不正残業の有無を自動検知します。これなら極めて客観的な証拠を提示できるので、労務管理者は証拠隠ぺいや残業の言い訳に頭を悩ませる必要もなくなるでしょう。

顔認証システムの今後

避難のイメージ
顔認証システムは、今後ますます多くの現場で導入されるに違いありません。その理由は、大きく3つあります。

1つ目は、不審者へのセキュリティ対策強化の必要性です。テロや無差別に危害を与える危険人物、その他の不審者から、住民や生徒、従業員、客を守るために、すでに街や商店街などの特定エリアや駅、学校、オフィス、商業施設などいたる所に監視カメラが設置されています。しかし、ただ映像を写すだけでは、完璧な犯罪防止策とはいえません。そこで顔認証システムで、間違いなく対象者を特定してこそ、犯人確保や犯罪の未然防止する可能性があります。

2つ目は、大規模災害の際の避難者の把握の必要性です。近年、気候変動に起因する台風やゲリラ豪雨、また地震などの大規模な自然災害が明らかに増加しています。それにともない、自治体や自治会による避難対策が急速に強化されていますよね。ただ、被害が甚大な場合は、いざ避難した際に、人物の特定や確認に膨大な時間と労力がかかります。家族でも避難所が別だったり、子どもだけが避難しているケースもあるでしょう。そのような場合でも、あらかじめ情報登録をして顔認証ができれば、いちいち細かくヒアリングせずとも対象者の名前や住所が瞬時に特定でき、家庭ごとの避難状況も把握しやすくなります。

3つ目は、非接触型セキュリティとキャッシュレス化へのニーズの高まりです。コロナ禍により広く普及した感染症対策がニューノーマル(新常態)では常識化すると考えられています。その一つが、非接触です。

また、世界的に見て周回遅れのキャッシュレス化に向けても、その推進と普及が強く叫ばれていますよね。よって非接触でキャッシュレス決済ができる顔認証システムは、今後、飲食店や小売店、宿泊施設はもちろん、駅や空港、さらに病院や薬局も含め、あらゆる施設やシーンでの活用が勢いを増して広がっていくでしょう。

現在、パナソニックの顔認証だけでも、1日に10万件の顔認証が行われているのだとか。これからさらに顔認証システムによる個人のID 化が進み、多くのサービスと連携ができれば、安全、安心で快適なインフラとして世の中のDX(デジタルトランスフォーメーション)を強く後押しするに違いありません。

まとめ
さて今回は、顔認証システムの仕組みや活用事例についてお伝えしました。

顔認証は、AI(人工知能)に膨大な顔画像を学ばせて、多くの特徴量をデータ化し、データ量が増えるごとにディープラーニングにより、事前に顔情報を登録した特定の個人の識別能力が向上するシステムです。顔認証システムには、平面で認識する2Dと立体でとらえる3Dがあり、手元で使えるエッジデバイス型、オフラインでサーバー管理できるオンプレミス型、オンラインでサーバー管理するクラウド型の3種類があります。

顔認証システムは、おもに事前に顔情報を登録した特定の人物を認識し、部外者を出入りさせないというセキュリティ目的と非接触のキャッシュレス決済といった利便性目的で活用されます。

顔認証システムの導入例としては、全国の自治体で初めて地域ぐるみでのキャッシュレス決済システムを導入した富山市や顔パスでの入場やキャッシュレスでの商品購入を実現した東京ドーム、さらに部外者を工場内に出入りさせないフードディフェンス目的で導入したヤマダイ食品のケースがあります。他にも顔認証システムで万引き犯の監視強化が進み、半年で万引きが半減したコンビニの例や勤怠管理との連携で不正残業を阻止する活用法もあります。

顔認証システムは「不審者へのセキュリティ対策強化の必要性」「大規模災害の際の避難者の把握の必要性」「非接触型セキュリティとキャッシュレス化へのニーズの高まり」といった社会的背景により、今後ますます需要が高まるでしょう。安全で安心、そして快適な社会を実現する顔認証システムからますます目が離せませんよね。

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