AI(人工知能)の技術は凄まじいスピードで進化していますよね。スマホを広げればAI(人工知能)を使ったゲームやアプリがたくさんありますから、すでにAI(人工知能)を活用しているという人も多いでしょう。
ビジネスの世界でも、すでに多くの会社がAI(人工知能)導入を推し進めていますよね。しかしその一方で、AI(人工知能)をうまく活用できなかったり、AI(人工知能)に携わる人材の不足によってAI(人工知能)の導入がうまく進んでいない会社が多いという問題も浮き彫りとなりました。
そんな中でIBMは、AI(人工知能)を導入する企業をサポートし、AI(人工知能)に精通した人材育成のため、AI(人工知能)ワトソンに関わるさまざまな支援プロジェクトを開始。まだAI(人工知能)を使いこなせていない企業に対して、サポートをしていくと発表しました。では、その支援の内容はどんなものなのでしょうか。
そこで今回は、IBMが行っているAI(人工知能)導入支援にための取り組みと、支援を行うきっかけとなったAI(人工知能)と企業を取り巻く背景について、お伝えしていきます。
IBMが「IBM DATA & AI事業部」を設立
IBMは、日本語に対応したAI(人工知能)ワトソンの提供を開始して以降、国内の企業におけるAI(人工知能)がどれだけ活用されているのかを見てきました。その結果が以下のような状態です。
- 82%の企業が、AI(人工知能)のビジネス活用を検討している
- しかし、実際にはAI(人工知能)の活用を全社展開する企業と、AI(人工知能)の本格活用を断念する企業とに二分されている
つまり、多くの企業がIBMのAI(人工知能)導入に意欲があったものの、結局はそれを使いこなせずにいるのが現状。「AI(人工知能)を導入する過程で大きな壁にぶつかり、展開を拡大していくことができなかった」「その結果、AI(人工知能)を使わず、これまでの技術で進めたほうがよいと判断された」という企業が多かったのです。
このような問題に対して、IBMはAI(人工知能)の活用をサポートすべく、ワトソン事業部とアナリティクス事業部を統合し、「IBM Data & AI事業部」を立ち上げました。「IBM Data & AI事業部」は、多くの企業でAI(人工知能)の展開が進まない背景に大きく4つの問題があることをあげ、それぞれの問題に対処するためのサービスを提供することを決めたのです。
それでは、AI(人工知能)の導入がなぜ進んでいかないのか、その原因をあげていきましょう。
データの管理が不十分
「IBM Data & AI事業部」はまず、データが十分に蓄積されていないという問題をあげています。たとえAI(人工知能)によるシステムがあっても、判断材料となるデータがなければ、AI(人工知能)は何もすることができません。ちなみにこの判断材料となるデータには、以下のような種類があります。
- ローデータの整備
- データ検索や探索
- 学習データ
- ラベルづけ
ただ調査結果を読み込ませただけでは、データとして活用することは困難です。これが売上データだと言われても、見せられたほうは売上データを使って何をすればいいのかわかりませんよね。
さらにAI(人工知能)のデータは、さまざまな特徴から類似した点を見つける「教師なし学習」と、与えられたデータとデータがあらわすもの(ラベル)をペアで入れる「教師あり学習」があり、目的によって使い分ける必要があります。
ただしデータそのもののチェックも必要です。データがそもそも信頼できない、読み込ませたはいいもののアクセスできないというのでは、AI(人工知能)がそのデータを活用することができません。
AI(人工知能)に関わる人材が不足している
「IBM Data & AI事業部」は次に、AI(人工知能)に携わる人材の不足をあげています。特に規模の小さい企業では、AI(人工知能)に精通した人材の確保が困難というところも多いかもしれません。
AI(人工知能)に関するセミナーはたくさんありますが、AI(人工知能)を活用するためには以下のような知識やスキルが必要です。
- 高度な数学の知識
- データベースを運用するスキル
- ビッグデータを解析するスキル
最近はAI(人工知能)を活用する手順も簡略化されてきており、数学の知識はある程度のものがあれば大丈夫でしょう。しかしデータをうまく扱うための知識は、今でもなくてはならないものです。
AI(人工知能)に蓄積させるデータはデータベースに保存されますから、データベースから必要な情報を検索して取り出したり、別のデータを参照したりするなど、データベースを運用するスキルが求められます。
これらのスキルがそろっている人、また今後これらのスキルを身につけようとする人がまだまだ少ない、というのが現状です。
AI(人工知能)のライフサイクルができていない
たとえ大量のデータをAI(人工知能)に蓄積させても、それだけでは長期間AI(人工知能)を活用することはできません。データは常に新しいものが生み出されますし、AI(人工知能)が思ったほど有効に働かないこともあります。
「IBM Data & AI事業部」は、このようなAI(人工知能)を改善していくライフサイクルの構築が重要であると述べています。
- AI(人工知能)導入効果の測定
- 学習データの追加、継続的な学習
- AI(人工知能)モデルの監視
AI(人工知能)を導入した結果、どれだけの効果が出ているのかを知ることはとても重要ですよね。またAI(人工知能)は新しいデータを与え続けることで、精度が日々増していきます。
そしてAI(人工知能)がきちんと動いているかどうか、把握しておくことも大事です。もしうまく働いていなければ、それは故障が原因なのか、単に使いこなせていないのかなどを調べて、対処しなければなりません。
AI(人工知能)に対する信頼性が低い
これまではAI(人工知能)が判断したことを顧客に納得いくよう説明しきれるのかという不安から、AI(人工知能)の導入を見送った企業も多くありました。
そもそも学習させたデータに偏りがあるかもしれない、またAI(人工知能)が判断した内容をきちんとした判断理由を提示して説明する自信がないなど、AI(人工知能)に対する信頼性の低さも、「IBM Data & AI事業部」は問題視しています。
つまりAI(人工知能)への信頼性を高めるには、AI(人工知能)が参照したデータに偏りが存在していないか、またAI(人工知能)が判断した根拠となるデータの出どころを洗い出せるようにする必要があります。
ワトソン活用支援サービスの5つの柱
「IBM Data & AI事業部」は、企業によるAI(人工知能)導入をさらに推し進めるため、さまざまなサービスの提供を発表しました。IBMにおけるデータ統合やデータカタログ、AI開発やAI管理といったさまざまな製品を統合したインターフェース「ICP for Data」、IBMのプラットフォームだけでなく他社のクラウドからもAI(人工知能)ワトソンのサービスを実行できるようになる「Watson Anywhere」。そしてAI(人工知能)の活用を担う人材を育成するためのプログラムの提供です。プログラムの内容は以下のような内容になっています。
- コグニティブ・テクノロジー・アカデミー:IBMが講師となり、AI(人工知能)の基礎から応用までのスキルを提供する教育支援プログラム
- AI認定プログラム:業種別のAI(人工知能)プロジェクト経験や世界最大のオープンソースを活用した、世界共通のAI(人工知能)認定プログラム
- DATA and AIガレージ:国内外のAI専門家などとのディスカッションを通じ、AI(人工知能)活用のイメージや方向性を共有するプログラム
- データ・サイエンス・エリート協業:海外のAI(人工知能)専門家チームのスキルやノウハウを活用し、AI(人工知能)活用を全社展開するためのスキルを育成
- AI Acceleratorプログラム:IBM自身が行ってきたAI(人工知能)活用ノウハウや経験を提供
AI(人工知能)についての基礎的な内容から、これまで世界中で行われてきたAI(人工知能)活用のノウハウまで、あらゆる知識や経験を提供することで、AI(人工知能)に携わる人材を増やしていこうという試みです。
さて、IBMが行っているAI(人工知能)導入支援にための取り組みと、支援を行うきっかけとなったAI(人工知能)と企業を取り巻く背景について、お伝えしてきました。ここで今回の内容をさらってみましょう。
- 日本のIBMは、AI(人工知能)の導入に意欲はあるものの、使いこなせずに導入を見送った企業が多数あったことから「IBM Data & AI事業部」を立ち上げた
- 「IBM Data & AI事業部」は、企業がAI(人工知能)を使いこなせていない背景として「データの管理が不十分」「人材不足」「AI(人工知能)のライフスタイルができていない」「AI(人工知能)に対する信頼性が低い」点をあげている
- 「IBM Data & AI事業部」はワトソンの活用を支援するため、プラットフォームの統合や他社のクラウドからでもワトソンを使える製品、そしてAI(人工知能)に携わる人材育成のためのプログラムを提供している
IBMでは以前からAI(人工知能)の本格活用ためには「データをためる」「ためたデータをつなぐ」という下準備が必要と訴えています。しかしIBMの調査では、今のところすぐに活用可能なデータは30%以下しかなく、下準備の段階に9割の時間と労力を費やしているのが現状。
今後も大きく成長を続けると予想されるAI(人工知能)システムの市場ですから、各企業においてAI(人工知能)に対する十分な知識と環境、AI(人工知能)に携わる人材の確保はIBMにとっても急務に違いありません。
コメントをどうぞ