現在、50~60年代の第1次ブーム、80年代の第2次ブームにつづき、第3次AI(人工知能)ブーム到来で、AI(人工知能)に詳しい人材の不足が問題となっていますよね。そこで日本ではAI(人工知能)に精通する人材を増やすために、大学への通過点として手つかずになっていた、高校でのIT教育を大幅に見直す計画が進んでいます。
そんな中、日本の大学でも「データサイエンス学部」など、情報を活用できるスキルを育てる学部が増えてきました。将来役に立ちそう!と人気が高まりそうな一方で、AI(人工知能)やITの基礎を高校で学んでいなくては、興味があってもチンプンカンプンでついていけない!と嘆く学生も増えるかもしれません。
そのため、国が進める大学入試改革によって、2024年度には「大学入学共通テスト」で「情報I」が導入される見込みです。「情報I」の内容の詳細はまだ未定ですが、プログラミングなどが含まれると、高校の授業内容もかなり影響を受けるでしょう。
そこで今回は、AI(人工知能)を高校で学ぶことができる、現在構想中の人材育成制度についてお伝えします。特にこれから高校生になる人や、高校受験を控えたお子さんがいるご家庭などは、ぜひ参考にしてください。
AI(人工知能)・ITの高校での人材育成制度について
いま日本ではAI(人工知能)に詳しい人材の不足が大きな問題となっていますよね。その原因の一つとして若い世代の学校教育が挙げられており、中でも特に大学へとつながる高校教育の内容が見直され始めています。
しかしいまや大学で経済など文系の学部を選択しても、統計学・データサイエンス・AI(人工知能)などに関わる数学的な知識が必要とされることも多くなりました。ところが数学を受験せずに進学した学生は授業についていけず、こんなはずではなかった!と後悔するかもしれません。
そこで学習指導要領の改訂により、2020年度より小学校からプログラミング教育を必修化しようという動きがあります。中学校においては、技術・家庭科でプログラミングに関する教育が拡充され、2022年度には、高校でプログラミングを含む「情報I」が必修になります。これにより全ての生徒がプログラミングやデータベースの基礎などを学習するようになるでしょう。そして、いよいよ2024年度には大学入試の「大学入学共通テスト」で「情報I」が導入されるようです。
では、高校では具体的にどんな授業が増えるのでしょう。数学Ⅰ・数学A・数学Bでは仮説検定(とある仮説に対して、それが正しいか否かを統計的に検証する)、期待値(起こりうる値の平均値)など統計に関する内容を新たに学んでいきます。何だか難しそうですが、多くの情報の中から必要なものを見つけ出し分析する力、新たな付加価値を生み出す力がついていくでしょう。このような授業が増えると、たとえ理系を選択しなかった高校生でも数学の基礎を学ぶことができますよね。
AI(人工知能)・IT人材を育成する制度は、大学入学前の高校から始まっているのです。大学卒業後ではもう遅い!という時代が、いよいよ来ているのかもしれません。
さらに大学以外でも、中高生を対象にAI(人工知能)について教える制度があります。続いては、そういった研修について紹介しましょう。
中学・高校生向けにAI(人工知能)の歴史と背景を勉強する研修制度もある!
AI(人工知能)という言葉は毎日のように耳にしますが、いつ頃から使われ始めたのでしょうか。1956年のダートマス会議で初めて使われたと言われていますが、それから半世紀以上経った今、AI(人工知能)の発展は目をみはるものがありますよね。どうしてこんなに発達してきたのか、興味のある方も多いでしょう。
実は、そういったAI(人工知能)の歴史と背景を勉強する場が、中高校生向けにもあるそうです。ここでご紹介するのは「AI Dojo for Youths」という中高校生対象に開かれている研修制度です。
では、「AI Dojo for Youths」では具体的にどのようなことを学ぶのでしょうか。例をあげてみました。
- AI(人工知能)の歴史的背景からAI(人工知能)の仕組みなどの基本的知識
- AI(人工知能)を構築する技術である機械学習の基本的な概念
- AI(人工知能)を活用するためのデータ活用やデータ収集方法
- AI(人工知能)を用いて課題を解決する技能を、実際にデータを用いてワークショップ形式で講義
最終的には、生徒自身がグループで解決法を考え、AI(人工知能)技術を用いて研究課題を解決していきます。その過程で、AI(人工知能)技術をどう活用するか考える力が育成されますよね。また一方的な座学とは異なり、自ら学ぶという姿勢で実践力も高まるでしょう。
このように中高校生が、まずAI(人工知能)の歴史と背景から勉強するという試みも行われています。現在の中高生にとって、生まれた時からゲームなどを通して当然のように身近にあったAI(人工知能)が進化した過程などを学ぶ機会は、なかなか希少でしょう。
また中高校生などの若い世代がAI(人工知能)を学ぶことで、これからの社会でどのようにAI(人工知能)技術を開発し、使用していくのか自主的に考える機会が増えるでしょう。若い世代が中心になってAI(人工知能)の悪用を防ぎ、人間とうまく共存できる新しい世界を生み出してくれるかもしれませんよね。
さて、AI(人工知能)について学んだ中高生たちは優秀な人材となれるのでしょうか。続いて、AI(人工知能)を活用する人材になるために必要なことについてお伝えします。
AI(人工知能)を活用できる人材になるために必要な才能とは?
これまでお話してきたように、日本においてはAI(人工知能)人材不足が大きな問題となっています。そのため高校では文理選択に関わらず、プログラミングを含む「情報Ⅰ」が必修化されるそうですが、それだけで高度なAI(人工知能)を使いこなせる人材が育つのか疑問ですよね。そもそもAI(人工知能)人材とは、どのような才能を持った人のことなのでしょうか。
まず、AI(人工知能)・IT分野で多くの情報から必要なものを見つけ出す力、また、高度なデータ分析と問題解決ができる力など理数に関する能力と、自分のアイデンティティをインターネット上で具現化して、新しいビジネスを切り開いていける人でしょう。
今までの高校教育は、記憶力など大学受験のために役立つ力を重視してきましたが、これからは問題解決力や論理的表現力を養う教育へと転換していく必要があるでしょう。
また2020年度からスタートする「大学入学共通テスト」では、現在のセンター試験にはなかった記述式問題が導入されます。これは「思考力・判断力・表現力」を重視するもので、イノベーションを生み出す基礎力となるでしょう。
これからは日本だけでなく、世界中でAI(人工知能)人材の争奪戦が続くようです。AI(人工知能)を活用できる人材は、一長一短には育ちません。「IT力」だけでなく、「課題設定力・解決力」を持つ人材は、常に探求心、好奇心を持つことで育っていくでしょう。小中高校生のころから、「これはどうやって動いているの?」と物事の仕組みに興味を持ち、常にワクワクした気持ちを持ち続けることが大切になりますよね。
さて、今回は「AI(人工知能)を高校で学ぶ! 現在構想中の人材育成制度」をお伝えしました。
- AI(人工知能)・ITの活用に向け、中学・高校生の教育が変化している
- AI(人工知能)の歴史と背景を勉強する中高生向けの研修がある
- AI(人工知能)を活用するためには、課題設定力や解決力が重要
日本ではAI(人工知能)を活用できる人材不足という、国の将来にもかかわる問題を受けて、高校からのIT教育が大きく変わろうとしています。高校でプログラミングが必修となったり、「AI Dojo for Youths」という中高校生対象に開かれている研修制度で、AI(人工知能)の歴史や背景などを勉強することもできるでしょう。
またAI(人工知能)を活用できる人材になるには、IT技術力だけでなく問題解決力も必要となりますよね。高校でも暗記にとらわれない、思考力を鍛える授業が増えていくことでしょう。
プログラミングやIT教育は大学や企業に入ってからでいいのでは?という考えはもう昔のこと。少子高齢化が進む日本において、AI(人工知能)を活用できる人材はますます貴重になりますよね。高校生でも学べるAI(人工知能)人材育成制度はどんどん進化し、学べる機会がますます増えてくるでしょう。このような制度を上手に利用していくことで、AI(人工知能)人材の新しい芽が育っていくのが楽しみですよね。
50高校で大学単位「先取り」=AI人材育成、新制度構想-文科省:時事ドットコム
AI・ITの人材育成について
AIの歴史と背景を研修する「AI Dojo for Youths」、中高生を対象に人材育成
AIを活用できる人材になるのに必要な才能
東洋経済新報社 『週刊 東洋経済 7/21』「発進!プログラミング教育」
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