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エンタメ業界でも人工知能が活躍!AIを使った映画制作の現状とは

エンタメ業界でも人工知能が活躍!AIを使った映画制作の現状とは

IBMのAI(人工知能)「ワトソン」がクイズチャンピオンに勝利したニュースが報じられた頃より、世界中でAI(人工知能)への注目度が急激に高まりましたよね。以来わずか数年の間にAIを活用したテクノロジーがさまざまな業界を席巻し始め、近い将来、人工知能が人間を超える時代が来るという予測がまことしやかに語られています。

ところが、そんなAI(人工知能)が超えられないと言われてきた業界があります。その一つが「芸術とエンタメ」です。とくに人が人らしく喜怒哀楽の感情を表現し、聴衆から笑いや涙、感動を誘うエンタメの世界で、機械のAI(人工知能)が人を超えるとは想像すらできませんでした。

しかし、最近は、このエンタメ業界でもAI(人工知能)を活用する動きが出始めています。その一つが映画制作。今まで人がするのが当たり前だった脚本をAI(人工知能)が書き、編集するまでに進歩しています。その出来ばえも気になりますよね。この記事を読んで、AIが映画制作にどのように関わっているかを詳しく知りましょう。

そこで今回は、AI(人工知能)の映画制作の現状についてお伝えします。

そもそも通常の映画制作の手順とは

映画制作のイメージ

映画制作の手順を大まかに説明すると、脚本、撮影、編集の3段階にわかれます。まず脚本を決めます。原作が存在する場合もあれば、その映画用に書き下ろされるオリジナル作品もあり、その内容をト書きとセリフの入った台本にします。

次にキャストや撮影現場、撮影スケジュールが決定し、セットや衣装、小道具、撮影機材などの調達が済めば、撮影開始です。つぎに映画の全シーンを撮り終えたら編集に入ります。各場面で候補となるシーンを取捨選択してつなぎ合わせ、BGMや効果音、キャプションや字幕などを加えるなどして映画作品に仕上げます。

以上は実写映画の場合ですが、アニメ―ションの場合も内容や細かい手順に違いはあるものの、脚本→撮影(声入れ)→編集という大きな流れに変わりはありません。

AIを映画制作に利用できるのか

脚本のイメージ
最近、AI(人工知能)を映画制作に活用する動きがありますが、その役割の多くは脚本作成です。つまり映画全体のストーリーをAI(人工知能)が書き上げます。

AI(人工知能)は、どんな用途の場合もそのままでは機能しません。人間がデータを用意し、学習させてはじめて独自のアルゴリズムによって何らかのテーマにそったデータの予測や分類、また創作活動が可能になります。

脚本の場合も、AI(人工知能)に多ければ数万本単位の物語や脚本を読み込ませて、さまざまな表現やストーリー展開のパターンを学ばせます。そのデータをもとに、AI(人工知能)が独自のストーリーを書き上げます。あくまで理論上ですが、もし、ラブストーリーを中心に学習させれば、恋愛がメインテーマの脚本が書きやすくなりますし、ホラーなら人が恐怖を感じるパターンを学んで、その方向へと追い込む筋書きが得意になります。

ただし、AI(人工知能)は機械なので、言葉の意味や文脈、人に与える感情的な影響を理解できるわけではありません。よって、AI(人工知能)が何らかの基準にしたがってストーリー化できるように、言葉や感情の種類を数値化して学習させます。すると、この言葉を使えばこの感情が引き出せるとか、この文脈の後でこのようなシーンを入れると演出効果がある、などといった流れやストーリー展開のパターンが修得できるようになります。

さらにAIカメラを使って風景や人物を撮影し、その動画を編集させることも可能です。ただこの場合も脚本と同じで、AI(人工知能)には、音声、画像、動画などの非構造化データを数値データに変換して学習させてからでないと、AIならではの作品は生みだせません。もともとAI(人工知能)には、音や風景、人物の意味や価値を理解する能力がないからです。

AI(人工知能)の基本的な仕組みは、大量のデータを学習してパターンを認識し、さらにデータを反復して学習しながら判断力や予測能力、創造力を育てていくディープラーニング(深層学習)です。よって、映画制作でも、有効なデータをいかに大量に集めてAI(人工知能)に学習させられるかが、優秀作品を生みだす大事なポイントとなります。

実際にAIが映画を作った事例

映画のイメージ
実際にAI(人工知能)が映画作成に携わった事例を紹介しましょう。

世界初のAI制作映画『SunSpring』

アメリカを拠点に活動している映画監督兼脚本家のオスカー・シャープ氏が、世界初のAIによる制作短編映画『SunSpring』をロンドンの映画祭に出品しました。AIに『2001年宇宙の旅』や『ゴーズとバスターズ』といったSF作品を学習させると、自ら「ベンジャミン」と名乗る脚本家のAIが誕生しました。

ベンジャミンが書いた9分間の短編映画『SunSpring』の内容は、宇宙空間を舞台に男女2人と人に扮したロボットのような存在がひたすらセリフを掛けあうも内容はつじつまが合わず意味不明。唐突な場面転換が複数回繰り返され、何を主張したいのかさっぱり理解できない作品となりました。制作時間はわずか48時間だったのですが、シャープ監督は、ストーリーやセリフにかなりの違和感を感じながらもあえて手を加えずそのまま作品化したのだとか。

ただ、完成品についてのシャープ監督の所感は、AIによる映画作品というより、過去の脚本をデータベース化したコーパス(言語資料)にすぎない、と述べています。誰も手掛けたことのない世界初のAI映画だけに安易に評価できませんが、今後のAI映画の試金石になることは間違いないでしょう。

Sunspring | A Sci-Fi Short Film Starring Thomas Middleditch

『SunSpring』からのステップアップを目指した『Zone Out』

オスカー・シャープ監督は、『SunSpring』の2年後にAI制作の『Zone Out』を発表しました。同じくAIのベンジャミンが制作を担当しましたが、古い映画と新たに撮影したシーンとの融合で、俳優に顔だけすげ替えるフェイス・スワッピング技術や音声合成を利用し、脚本だけでなく、各シーンをつなぎ合わす編集もすべて(ベンジャミンに)一任しました。

完成作品は、いかにも作りモノという違和感に満ちた風貌のキャストが演技をし、首から上だけの状態で会話をしながらおどろおどろしい変化をとげるなど、もっぱら奇妙でナンセンスな仕上がりになりました。また、SFロンドン映画祭に出品しています。

Zone Out | A Sci-Fi Short Film Starring Thomas Middleditch

AIを使った映画制作での問題点

権利のイメージ
AI(人工知能)を使った映画制作は、まだ黎明期です。よって、解決しなければならない問題点がいくつかあります。

具体的には、

  • ストーリー性に乏しい
  • 人の補助が必要
  • 肖像権侵害リスクがある

以上の3点です。順を追って一つずつ見ていきましょう。

ストーリー性に乏しい

AI(人工知能)の文章力は、定型文が主となる場合に高い能力を発揮します。つまり、商品に関する問い合わせや言葉やルールの説明など、キーワードや言葉どうしのつながりが決まったパターンを多く持つ場合は、完成度が高くなります。

ところが、脚本や小説となると正解がなく、統一された評価基準もないため、人の心に響く表現や心踊るストーリー展開などをAI(人工知能)だけで作りだすのは至難の技です。どうしても場面展開に不自然さが残ったり、意外性に乏しかったり、奇妙奇天烈で読む(観る)側がついていけない、という問題を簡単にはなくせません。もちろん観賞する人の価値観によって評価は分かれますが、現段階では、人の作品と比べると見ごたえがあるとはいえないでしょう。

人の補助が必要

脚本に限ったことではなく、AI(人工知能)が行う編集にも展開が意味不明で不自然なものが多いです。理由は、学習用のデータ数が足りていないうえに、データの質や学習精度も未熟だからです。よって、最低限観るに耐える作品にするならば、人がある程度手を加える必要があります。

また、脚本でも完成度の高いものが登場しつつはありますが、その場合も人の手が必要です。具体的には、脚本家がキーワードやトピックを入力したり、登場人物のキャラクターの特徴や物語の長さを指定すると、空白を埋めるようにAI(人工知能)が作品を書き上げていく、という具合です。

このように人の考えや作品作りのセンス、そして編集技術などの補助があって、何とか形になるというのがAI(人工知能)を使った映画制作の現状です。よって、AIだけで映画を作るのは、まだまだ難しいでしょう。

肖像権侵害リスク

AI(人工知能)の動画編集には、ディープフェイクの問題がつきまといます。ディープフェイクとは、ディープラーニングによってある動画に映った人物の顔だけ別人にすり替えて、限りなくその別人に似せたマスクで自然な動きに見せる巧妙なフェイス・スワッピング技術です。つまり、顔だけ映った人物がしたこともない演技をあたかもしたかのように演出できます。悪質な場合は肖像権に抵触しますが、作品のできによっては犯罪性を問えない場合もあり、物議をかもしています。

よって、AI(人工知能)による映画制作が一定の市民権を得るためには、この辺りの法整備や業界内での厳正なルール化が求められるでしょう。

AIを使った映画制作の未来

映画のイメージ

AI(人工知能)を使った映画制作は、今後ますます盛んになるでしょう。ただし、それはAIの技術が今よりも確実に向上するという条件付きです。

どの業界においても、AI(人工知能)の可能性はいまだに未知数です。AIは何においても万能という神話がある一方で、AI(人工知能)開発は決して成功ばかりではありません。現に失敗している例は数多く存在します。

その理由は、AI(人工知能)開発が、「こんなことをさせたい」「こうなったら便利」といった開発者である人間の夢や都合から発信されるものだからです。

映画制作も、「AIが脚本を書いたらすごい」「編集をさせたら面白い」など、話題作りや新たな世界観の構築を夢見て開発や実験が先行するので、技術がうまく追い付いていかない、という現象が起きています。とはいえ、AIが、場所、時間、キャストやスタッフ陣のスケジュールを総合的に決めて管理する技術はすでに実装されていますし、画像認識や言語処理、自動翻訳など、AIテクノロジーの進歩は目をみはるものがあります。よって、今後、AIの学習能力がさらに向上すれば、優れた脚本の制作や人間を超える編集技術が実現する日も来るに違いありません。

AI(人工知能)が作成した映画という触れ込みが話題となり、映画界に新たな旋風が巻き起きる可能性は十分にあるでしょう。

まとめ

さて今回は、AI(人工知能)の映画制作の現状についてお伝えしました。

最近の映画業界の動向として、映画制作にAI(人工知能)を活用する動きが出始めています。具体的には、脚本と編集に携わるパターンが多いです。

脚本でも編集でも、AI(人工知能)に過去の映画作品を大量に学習させると、そのデータからさまざまな演出パターンを認識し、独自のアルゴリズムでストーリーを書いたり、各シーンをつなぎ合わせたりができるようになります。その事例としてアメリカの脚本家兼映画監督のオスカー・シャープ氏が手掛けた『SunSpring』や『Zone Out』があります。

しかし、両者とも映画作品としてはあまりに奇妙でストーリー性に欠け、単に複数の動画を不自然につなげただけ、という印象がぬぐえません。このように、AIを使った映画作成はまだ黎明期のため「ストーリー性に乏しい」「人の補助が必要」「肖像権侵害リスクがある」といった問題をはらんでいます。

ただし、今後、ディープフェイクの問題が解決され、さらにAI(人工知能)の学習能力が向上すれば、優れた脚本の制作や人間を超える編集技術が実現する日も来るに違いありません。人間が制作した映画を鑑賞するようにAI(人工知能)が制作した映画を楽しめる日を期待して待ちましょう。

【お知らせ】

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