AIとは何か

ドラえもんはいつ生まれる?強いai(汎用人工知能)が無い理由とは

ドラえもんのイメージ

「ドラえもんがいてくれたらなぁ」って、誰しも一度は考えたことありますよね。子どもの頃、ドラえもんはテレビの中の夢物語でした。今ドラえもんは「強いAI(汎用人工知能)」を説明する際、そのイメージを伝える手段として大活躍しています。

ところでAI(人工知能)はその概念がわかりにくく、言葉ばかりが独り歩きしている感があります。商品のキャッチコピーにも「AI(人工知能)搭載」などとよく目にしますし、「AI(人工知能)=最先端技術」と価値があるように感じてしまう消費者心理をうまくついていると言えるでしょう。

そのAI(人工知能)は実は「強いAI(汎用人工知能)」と「弱いAI(特化型人工知能)」に大別されます。

もともとわかりにくいAI(人工知能)。その上「汎用?特化?」と混乱している私たちに、ドラえもんは優しく手を差し伸べてくれます。あの短い手を。

そこでここでは、「強いAI」と「弱いAI」の違いや、ドラえもんのようなロボットの開発事情についてご説明します。

強いAI(汎用人工知能)ってなんだろう

AIのイメージ

「強いAI」という言葉を初めて聞いた時、「AIに強い・弱いがあるの?」と違和感を覚えた方も多いでしょう。それはアメリカの哲学者ジョン・サール氏が作った用語「Strong AI(強いAI)」「Weak AI(弱いAI)」を直訳しているせいかもしれません。

強いAI(汎用人工知能)は、

  • 人間と同等、もしくは同等以上の知能を持つAI(人工知能)
  • 感情や意識を持つAI(人工知能)

と定義されています。

この強いAI(汎用人工知能)は今まだ実現されていません。

そのため、具体的にイメージしやすいようにドラえもんなどを例にあげることが多くなるのでしょう。(ちなみにジョン・サール氏は「強いAI(汎用人工知能)」の実現に否定的な考えを持っています。)

さて次は、そもそもドラえもんは本当に「強いAI(汎用人工知能)」なのかどうか解説します。

ドラえもんは強いAIなのか

ドラえもんのイメージ

未来からやってきたネコ型ロボットのドラえもん、彼は本当に「強いAI(汎用人工知能)」と言えるのでしょうか。

この問題を考えるにあたって、最初にひとつお断りしておきます。ドラえもんの「ひみつ道具」が飛び出す四次元ポケット。あれは考えに入れないでおきましょう。話がややこしくなりますので(笑)

ここでは、のび太に優しく厳しく寄り添うドラえもん。またどら焼きに目がなくネズミを怖がったりするあのドラえもんについて考えます。

結論から言いますと、ドラえもんは「強いAI(汎用人工知能)」だと考えられます。「人間と同等の知能」、また「感情や意識」を持っているのですから。

のび太に深い愛情を持って接するドラえもん。また時には怒ったり拗ねたりと、人間らしい複雑な感情を持ち合わせていますよね。

そしてのび太を助けるために自ら考えて行動を起こします。ジャイアンやスネ夫にひみつ道具を横取りされたら、見事なアイデアでのび太を救出。彼は極めて「強いAI(汎用人工知能)」を搭載したロボットだと言えます。

では「強いAI」と「弱いAI」の違いについてもう少し詳しく解説していきましょう。

弱いAI(特化型人工知能)との違い

AIのイメージ

もう一方の「弱いAI(特化型人工知能)」、こちらが今一般に「AI(人工知能)」と呼ばれているものにあたります。

ここで、ドラえもんに例えられる「強いAI」についておさらいしておきましょう。

強いAI(汎用人工知能):人間と同等、もしくは同等以上の知能を持つAI(人工知能)。また、感情や意識を持つAI(人工知能)

それに対して「弱いAI」は

弱いAI(特化型人工知能):特定のタスクに特化したAI(人工知能)。

強いAI(汎用人工知能)は今まだ実現していないため、現在AI(人工知能)と呼ばれているのは全て「弱いAI(特化型人工知能)」だといえます。

弱いAI(特化型人工知能)の代表例としては

  • 将棋ソフト

AI(人工知能)の将棋ソフトが人間に勝った、というニュースがありましたよね。将棋ソフトはAI(人工知能)の「推論」分野にあたる技術です。

  • 画像認識技術

画像認識技術は、コンピュータが画像を「何がどんな状況で写っているか分析判別」する技術。顔認証システムなどがその代表例でしょう。

その他、

  • 言語分野:Google翻訳など
  • 音声分野:Siriなど
  • 機械制御:自動運転など
この他にも「弱いAI(特化型人工知能)」はさまざまな分野で活躍していますが、どれも「特定の分野(領域)に特化」しています。
強いAI(汎用人工知能)の代表例とされるドラえもんが「いろいろな場面に対応できる=汎用性が高い」のに対し、現在AI(人工知能)と呼ばれているのは「特定の分野で能力を発揮する=特化型」であるのが大きな特徴でしょう。

このように「強いAI」と比べると「弱いAI」は随分劣っているように感じてしまいますよね。でも、AI(人工知能)の歴史は1950年頃に始まり、約70年後の今はディープラーニングという画期的な技術によって、上記の事例ように格段に進化しています。

次に、現在のAI(人工知能)の開発事情についてご説明しましょう。

最新の強いAIの開発事情とは

aiのイメージ

強いAI(汎用人工知能)が実用化するまでにはまだ多くの課題が残されています。ドラえもんを例にあげると、今活躍しているロボットとの大きな違いのひとつは「感情」があるかどうかですよね。

そこで現在活躍している「感情を認識するAI(人工知能)」の事例をご紹介しましょう。

Affectiva社の感情を認識するAI(人工知能)

感情を認識するAI(人工知能)は、マサチューセッツ工科大学発のAffectiva社が開発し、実用化が進んでいます。

顔のわずかな筋肉の動きと声の様子から感情や認知状態を識別し、

  • 車の運転者の監視システム
  • テレビ番組視聴者の反応を分析

といった方面で活躍。

このシステムの特徴は画像と音声という2種類のデータが元になっている点です。これはAI(人工知能)の機械学習の一種でマルチモーダル学習と呼ばれています。
マルチモーダル学習:複数のモーダル情報(画像と、音声や言語など)を使って機械学習すること

これは将来ロボット自身が人間の感情を理解するための準備段階だといえるでしょう。でも、あくまでこれは「感情の認識」であって「感情を表現する」ドラえもんまでの距離はかなり遠いですよね。

その大きな原因のひとつとして「フレーム問題」があります。

フレーム問題

フレーム問題は「弱いAI(特化型人工知能)」が「強いAI(汎用人工知能)」に進化するにあたって、最も難しいといわれている問題のひとつです。与えられた知識の中で判断しようとする「弱いAI」は、現実に起こりうる可能性全てに対応することができません。

人間は感覚(勘)で実際起こりうる可能性の「枠(フレーム)」を判断しています。

例えば私たちは出かける時に「地震が起こったらどうしよう」などと毎回考えたりしませんよね。AI(人工知能)にはその判断がとても難しく、これをフレーム問題と言います。

「感情の認識」に話を戻しましょう。

私たち人間は顔で笑っていても心で泣いていること、ありますよね。叱られて神妙な顔をしていてもメチャクチャ腹が立っていることだってあります。身近な人間なら状況を見て「実際心の中では違うんだろうな」と想像がつくでしょう。

AI(人工知能)がそんな人間の「心のひだ」の部分まで理解するのは難しいですよね。そんな見た目とは矛盾した感情をAI(人工知能)が認識するには、やはりフレーム問題が壁となります。

 

ドラえもんぽいイメージ

今回は、強いAI(汎用人工知能)と弱いAI(特化型人工知能)についての解説と、ドラえもんが強いAI(汎用人工知能)であること、また、強いAI(汎用人工知能)が今まだ無い理由は「フレーム問題」が大きな理由であることをご説明しました。

ドラえもん(強いAI)がいつ生まれるか、その可能性として考えられるのは、AI(人工知能)が人間の知能を超えるシンギュラリティの時でしょう。現時点では2045年頃と予想されています。

強いAI(汎用人工知能)が実現する時が本当にくるのかどうか、それは研究者によって意見がわかれています。シンギュラリティはなんだか怖いけれど、ドラえもんの登場は待ち遠しい。そんな矛盾した感情を持つ私たちの脳は、想像以上に複雑な作りになっているようです。

こんな複雑な「人間の脳と同等」の強いAI(汎用人工知能)が実現するのか、今はまだわかりませんが「ドラえもーん、待ってるよ!!」

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