近年は「ビックデータ時代」とも呼ばれていますが、それと共に「BI(ビジネスインテリジェンス)」という言葉もよく耳にしますよね。でも実際、BI(ビジネスインテリジェンス)とは何だろう、詳しくはよくわからない方もいるかもしれません。
ざっくりお伝えすると、BIとは企業内にある膨大なデータを分析して、ビジネスプランの考案や意思決定に活用する手法や技術のことです。
そこで、手元に残る大量のデータを分析してそこから価値を引き出すというBIの手法が、企業にとっては不可欠となりました。そんなBIとは、今後の会社の経営にも必須になっています。
そこで今回は、企業経営にとって大切なBIとは何なのか、そしてBIでできる分析や企業での使用シーン、加えてBIのメリット、デメリットについても解説しましょう。
BI(ビジネスインテリジェンス)とは
そもそもBIとは、「Business Inteligence(ビジネスインテリジェンス)」の略で、IT用語辞典では以下のように定義されています。
「企業の情報システムなどに蓄積される膨大な業務データを収集して分析し、その結果を可視化し、業務や経営の意思決定に活用する仕組み。そのソフトウェアや情報システムを「BIツール」や「BIシステム」と呼ぶ」(引用:IT用語辞典 大塚商会)
BIの歴史は思いのほか古く、1958年にIBM研究員によって「ビジネスインテリジェンス」という言葉が使われたのが発端です。その後、DSS(情報システムに蓄積された情報を活用して意思決定に役立てようとするもの)として発展しましたが、1989年にガードナー社のアナリストによって、現在のBI(ビジネスインテリジェンス)が提唱されるようになりました。
また、BIの大きな特徴は「BIツール」を導入すれば「データサイエンティスト」などの専門スキルを持たなくても、誰もが自分でデータを分析し活用できるということです。これなら、現場に近いスタッフが自分の眼でデータを分析でき、直接経営戦略にも関わることができますよね。
それに、データ分析といえばExcelが有名ですが、BIを活用すればExcelではできないことが可能になるでしょう。たとえば、膨大な量のデータ分析や、さまざまなデータを組み合わせた分析や集計。その上、最新情報も自動的に更新されます。また、BIはExcelのように手作業で集計する必要がないので、スピーディーな分析が可能です。
BIとはどういうことか少しわかったところで、BIを使えばどんな分析ができるのか次に詳しく解説します。
BI(ビジネスインテリジェンス)でできる分析とは
では、BIの機能でできる主な分析を見ていきましょう。
ダッシュボード機能で表やグラフが比較分析できる
「ダッシュボード機能」は、企業に散らばるあらゆるデータから素早く問題の兆候を見つけ出すのに最適です。たとえば、分析したデータはグラフや表に可視化され、一画面に表示されるので、関連性のあるグラフを並べて比較すると問題点が見つけやすくなります。
OLAP分析機能で必要な情報をリアルタイムで取り出せる
「OLAP」とは「Online Analytical Processing」の略で「オンライン分析処理」のこと。ここで言うオンラインとは「リアルタイム」と言う意味ですが、企業内に蓄積された多次元のデータベースから、用途に合わせて必要な情報を素早く取り出し、集計・分析する技術です。
また、OLAPには具体的な分析方法として次の3つがあります。
- ドリルダウン(たとえば年間売上推移から特定の月別推移に階層レベルを一段下げるなど、より詳細な集計を行う)
- ダイシング(サイコロの面を変えるイメージで、グラフや表の軸を回転させて異なる様々な表を表示する)
- スライシング(全体の売上推移から商品別の売上推移に移るなど多次元のデータを、ある断面で切り取り2次元の表にする)
このような分析を行うことで、企業内の欲しい情報がすぐに確認でき迅速な意思決定ができるようになるでしょう。
データマイニング機能で埋もれていた関連性を見つける
「データマイニング」は、蓄積された膨大なデータから未知のパターンや法則性を掘り起こす機能。とはいえ、その実態は、まるで「広大な海から小さなヨットとみつける」ように大変ですよね。
でも、BIなら関連性を見つけるために回帰分析、クロス分析、相関分析などの統計分析を自動で行うので、そこから人が気づかなかったような相関が見い出され、新たなマーケティングにもつながります。
プランニング機能により計画の根拠が得られる
「プランニング」は、蓄積された過去のデータから、売上予測や需要予測などさまざまなシュミレーションを行う機能で、経営層が予算を策定する際などに役立ちます。そして、プランニング機能にある「What-if分析」を行えば、条件の変化によって売上や利益の変化なども見ることができます。
ABC分析機能で商品を重要度別にランク付けできる
「ABC分析」は重要度に応じたメリハリのある管理を行うために実施される手法で、売上を構成している商品をA→B→C→の順に分類し、売れ筋や売れない商品をランク付けします。こうした分析結果から、売上改善やコスト改善が可能になり利益につながります。
顧客分析機能で優良顧客を見つけることができる
顧客分析では「RFM分析」を利用すれば、「R=最新購買日」「F=平均購買頻度」「M=累計購買金額」という3つの指標で顧客をランク付けできます。また、それぞれの数値が高い顧客が優良だと判断でき、今後のマーケティングに役立つでしょう。
ここにご紹介した分析方法はほんの一部ですが、BIとはビジネスをする上で役立つ、複雑なデータ分析ができるすごい技術に違いありません。
BI(ビジネスインテリジェンス)を導入するメリット・デメリット
これらをふまえて、BIのメリット、デメリットについても解説しましょう。
BI(ビジネスインテリジェンス)のメリット
まず、BIを導入するメリットをお伝えします。
大量のデータを分析できる
手作業では無理だった蓄積された大量のデータを一カ所に集め、分析、集計できれば業務の負担が少なくなります。
分析したデータをグラフや表に可視化できる
複数のグラフや表を一画面に表示して比較できるので、視覚的に分かりやすく直観的な判断に役立ちます。
分析したいときにすぐ分析できる
情報がリアルタイムで更新されるので、見たい時に最新のデータから状況確認ができます。また、突然「別の切り口」から分析したくなったり、2つの数値の相関関係が見たくなったときも、即、分析ができ結果が得られます。
高度な専門スキルがなくても活用できる
「BIツール」を導入することで、専門の知識がなくても誰でも高度な分析が可能です。それにより、多くの視点から経営やビジネスの課題が発見できます。
BI(ビジネスインテリジェンス)のデメリット
一方、BIを導入するデメリットは以下のような点があります。
コストがかかる
BIを導入するには「BIツール」が必要ですが、導入するためにはコストがかかります。提供の仕方によって費用は異なりますが、独自にカスタマイズできるものでは、初期導入時に数十万から数千万かかることがあります。
もちろん無料のものや、数万から数十万という低価格の製品もありますが、利用人数の増加により費用も高くなります。導入時には、ある程度予算を決めておく必要があるでしょう。
導入の仕方が難しい
「BIツール」にはたくさんの種類がありますが、どんな目的で使用し、運用体制はしっかりできているのかを確認することが大事です。せっかく「BIツール」を導入しても、目的に合っていなければ定着しませんし、使いづらいと逆に負担が増えストレスになることもありますよね。
このように、BIとは便利な手法ですがデメリットもあるので、導入の際にはどうすれば効果的に使えるのか慎重に考えることが大切です。
次にBIが企業でどのように役立っているのか具体的にご紹介します。
BI(ビジネスインテリジェンス)が活躍するのはどんな場面か
BIのすぐれた機能は、企業でも幅広い分野で活用されています。
30万人もの人材データベースを見える化
株式会社日立製作所のグループ会社は国内外で約900社、所属社員は30万人とも言われていますが、そのグローバルな人材データベースの機能をBIによって充実させました。
以前は集計や資料作成時に、人材データベースからの大量のデータをExcelで開いてグラフ化していましたが、BIを利用するとワンクリックで分析やグラフ化が可能になりました。これで、集計や分析で1日かかっていた作業が1時間に短縮されたとのこと。
また、売上データや会計データなど人事以外のデータも組み合わせて分析可能になり、「売れる営業マンの理想像」を作成することで採用時の評価に生かしています。
予算管理と業績予測を同時に実現
不動産情報サービスの「LIFULL株式会社」は、ExcelとAccessを組み合わせて予算管理を行っていましたが、複雑化する課題に対応が難しくBIを導入しました。すると予算と実績を集計するだけでなく、業績予想のシュミレーションシステムによって、早期の業績予測が可能になり迅速な経営判断につながっています。
また、予算管理などは組織構成や期が変わると修正が大変でしたが、BIを利用すればそのまま継続して自動集計や表示ができ作業効率も上がっています。
タイムリーな市場分析で営業活動に直結
鳥居薬品株式会社では、Excelにデータを取り込んで市場分析を行っていましたが、情報量やスピード感に追いつけずBIを導入しました。すると、より高度な日々のデータが表やグラフに可視化され、直観的にいろんな角度からデータを深掘りできるようになりました。
また、使い勝手の良さから、現在は情報システム部からMR(医薬情報担当者)まで約800人が利用し、毎朝BIデータを確認するのがルーティンになるなど、タイムリーな市場分析が営業活動に役立っています。
新たな店舗候補地を地図上に表示
英語教室運営のセイハネットワーク株式会社は、新しく教室を出店する際には、実際に商業施設などの現地に赴いて調査をし、今までの経験値から判断していました。しかし、徐々に予測が外れることが多くなりBIを導入しました。
BIの利用で、エリアごとの人口や世帯が集計され細かく地図上に表示されることで、入会見込みの高い子どもが居住するエリアが一目でわかるようになりました。この情報を新しい教室出店に生かしています。また、在籍状況、入退会情報も合わせて分析でき、現場の実態を把握することで、教室の出店計画もスムーズに進んでいます。
では、最後にBIを効果的に使いこなすためのポイントをお伝えしましょう。
BI(ビジネスインテリジェンス)を活用するときに気をつけたいこと
現場の情報をスピーディーに分析して、経営に生かすBIの手法を取り入れる企業は増えていますが、うまく活用するにはいくつかのポイントがあります。
「誰が何のために、どんな分析をしたいのか」目的をしっかり持つ
「とりあえずBIを導入すれば何とかなるだろう」と消極的だと、役立つデータ分析ができずに飽きられてしまいます。なので、購買層を広げたいなど「やりたいこと」が明確になれば「このデータを使ってみよう!」と積極的な経営戦略につながります。
目的に合った「BIツール」を選ぶ
多くの「BIツール」が販売されていますが、導入事例などを参考にして、自社の目的にあった使いやすい製品を選ぶことが大切です。ちなみに
- Tableau(ドラッグ&ドロップ操作が簡単)
- QlikQ (クラウド型で全社員がデータ確認できる)
- Dr.Sum (初期費用が抑えられ初心者でも使いやすい)
- Lakeel BI (テンプレートを利用した簡単分析ができる)
などの「BIツール」が人気です。また、「製造業」や「金融業」など特定の業種に特化した製品もありますので、自社に最適なツールを探してみましょう。
「BIツール」の使い方をトレーニングする
「BIツール」は専門スキルがなくても運用できますが、基本的な使い方などの勉強会は必要でしょう。また、少数の担当者だけでなく多くの従業員が活用できるよう事前に準備をしておけば、担当者が異動になってもあわてることもないですよね。
このように、BIを使いこなすには気をつけることもありますが、慣れると仕事の良きパートナーになるに違いありません。
さて、今回はBIとは何なのか、BIでできる分析や実際の企業での使用シーン、そしてメリット、デメリットについても解説しました。
BIとは、社内に散らばる膨大なデータを一カ所に集め分析することで、経営の意思決定に役立てる手法です。それに、Excelより高スピードで大量のデータを処理し、情報はそのままグラフや表に可視化されるので、課題も発見しやすく迅速な判断につながります。
また、BIは以下のようなさまざまな機能を備えており、意思決定のスピードが求められる企業経営を支えています。
- ダッシュボード機能
- OLAP分析機能
- データマイニング機能
- プランニング機能
- ABC分析機能
- 顧客分析機能
ただ、BIツール導入時にはコストもかかるので、「利益率を共有したい!」などしっかりとした「目的」を持って、それに合ったツールを選び効率よく活用したいですよね。
そして、BIを活用した企業事例も4つご紹介しましたが、今後もBIは課題を迅速に解決するための強力な武器としてますます成長するに違いありません。でも、最後に意思決定を行うのはあくまでも人間です。なので、私たちも多様なデータの中に埋もれている「新たな価値」をどんどん見い出し、経営戦略に役立てましょう。
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