世界では企業によるAI(人工知能)の導入が進んでおり、すでに国内では5割弱の企業が業務の一部にAI(人工知能)を導入しています。これからますますAI(人工知能)が仕事を代替するようになり、便利な世の中に変わっていくのかもしれませんが、人間の仕事が無くなっていくのではないかという不安もありますよね…。
様々なところにAI(人工知能)が導入されるにあたって、そこにはどのような人のどのような考えや気持ちがあるのでしょうか?そして、私たちの将来はどうなるのでしょうか?
そこで今回は、企業に対してのAI(人工知能)導入コンサルティングに取り組まれており、顔の男前度を計測し点数を付けて勝敗を決めるというスリル満点の遊びができる「男前判定」システムの開発もされている、株式会社シビルオ(新社名 atma株式会社)の代表取締役 上浦伸也様とデータサイエンティスト 山口貴大様にお話を聞いてきました!
AI(人工知能)導入のご提案するにあたって
本日は取材を引き受けてくださりありがとうございます!
今回、御社がAI(人工知能)導入のコンサルティングだけでなく自社開発も行われているということで、どのようなことに取り組まれているのか興味を持ちました。また、イベントでのご活動についてもお伺いしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
まず、クライアントさんへAI(人工知能)の導入をご提案されるときは、どのようなことを大事にされているのでしょうか?
ただやるだけではなくて、「クライアントさんにとって本当に価値があるのか」ということを考えます。「これ一緒にやりましょうか」という風に提案をして、ビジネス的なインパクトを一緒に算出しています。
クライアントさんにはどれくらいAI(人工知能)の知識があるのでしょうか?
IT業界だとITリテラシーの高い方が多いのですが、オフラインの業界だと「Excelすらいじれない」「基本やり取りは紙ベース」という方もいるので、やり方はまちまちです。
クライアントさんによってどこから提案していくのかが変わってくるんですね。
そうですね。流れとしては基本的に同じなんですけど。
AI(人工知能)を導入するにあたって、クライアントさんにどういったメリットがあればいいとお考えになりますか?
作って、「本当にそれに価値があるのか」というところと、「持続可能か」というところは意識しています。どう思いますか山口先生?
やっぱり「使う」のが大事だと思うんですね。例えば、最新の技術を投入したから良いというわけではなくて、ちゃんと使えるものなのか、価値のあるものなのか、ということを大事にしています。
クライアントさんにAI(人工知能)の技術をご説明される際は、「こういう言語を使って」みたいなご説明の仕方をするのでしょうか?
そういった説明をすることはめったにないですね。
そうなんですね。分かりやすく伝えられるようにと。
まず機械学習とか人工知能にできることに、予測であったり判別であったり特徴獲得みたいなものがあって、クライアントさんが抱えている課題に対して「これを適用したら解決できそうです」みたいな、ソリューションベースの説明をします。なので技術の詳細について説明する機会はないですね。
なるほど。技術については御社の会議などで話し合って決められるんですね。
そうですね。「その技術を用いることによってリスクはこれぐらいで、それが運用に耐えうるものですか?」みたいなことはお話しします。
今、実際に導入されているのはどういったものなのでしょうか?
アミューズメント施設だと、1台1台の機器が40万とかでまぁまぁお金がかかるんです。でも、その機器を実際に店舗の中に導入して遊んでくれるかどうか、ちゃんとその40万のコストを回収できるかどうかは全然分からないんですね。元々遊ばれている機器だったらある程度予測はできるんですけど、新しい媒体だと店舗の情報であったり発売前に分かるメーカーの情報を元に、どれだけ遊んでくれるのかというのを予測しています。
新規のものを作るときはリサーチが必要で、既存のものとは考え方が違うんですね。
はい、違いますね。既存のものに関しては、いろんな店舗があってそれを遊んだ人のデータがありますが、新しいものはまだ世の中で遊ばれたことのない状況なので、予測するために使えるデータが異なります。
顔の男前度で対決!?「男前判定」システム
御社HPのお知らせに、イベントで「男前判定」というシステムを使ったという記事がありましたよね。あれ、一体どういうものなんだ!?と気になったのですが…。
男前診断アプリケーションについて、開発したのがまさに今横にいる山口なんです。
そうなんですか!開発するきっかけは何だったのですか?
きっかけはイベントで使える面白いものを作りたいというのがスタートです。こちらが持ってる技術としては「顔認識」で顔の特徴をつくるというところなので、それを使って男前度合いを点数化したら面白いんじゃないかと。
イベントがきっかけだったんですね。それってまず膨大な数の顔のデータがいるということですよね?
はい、そうです。
そのデータはどうやって集めたんですか?
公開されているデータセットというのがあってですね。有名人のセレブデータセットっていうんですけど。
セレブデータセット!?そんなものがあるんですか!
はい。「セレブ」っていうデータセットがあります。
それは誰でも見られるんですか?
はい。誰でもダウンロードできます。
へぇ~!有名人の顔のデータにカッコよさの数値が組み込まれているんですか?
いえ、そのデータセットが持っているのは「その顔が誰なのか」という情報だけで、点数はこちらで付けていますね。
ではそのデータの数だけ顔の点数を付けるという作業があるんですか?
そうしてもいいんですけど、まず最初に膨大な数の顔のデータから特徴を作るんです。目の位置がどうかとか、形がどうかとか、顔の大事なところをとってきてモデルを作ります。
目が離れすぎてないかとか、鼻の高さとか?
そうですね。データセットはその顔が来た時にその顔が誰なのか当てられるというものなので、その途中でその顔の特徴や大事なところを見ているであろうという仮説に基づいて、システムを作っています。
顔のデータの数は何件くらいあるんですか?
えっと、100万件くらいです。
100万件!?それを全部自分で見るというのは中々できないですもんね。
そうですね。でもデータセットが汚いとちゃんと学習ができないので、事前の処理というのがあります。
実際にイベントで使用されたときは、写真を事前に登録しておいて結果を出したんですか?
その場で写真を撮ってリアルタイムでやりました。
そうなんですか!データを取り込んだらすぐに結果がバンと出て勝敗が決まるんですね。
はい、そういうシステムなんです。
これは盛り上がりますね…!
はい、写真を撮ったら点数になるという。「お前はかっこよくない」「おじさん」みたいな(笑)
おじさん(笑)
おじさんにも配慮はしてあって「渋い」という項目もちゃんとあるんです。「渋い」パラメーターが伸びて点数がなんとかなるという…。
確かに「渋い」は大切ですね。年齢で決まらないという。
はい、優しい世界にしてあります。
今後ほかの場所で「男前判定」のシステムを使われる予定はあるんですか?
現状、このプロダクトをマネタイズするというところではまだ動いてないんです。なんか動けたらいいなぁとは思うんですけど。
アプリとかあったら面白そうですよね!友達と対決したりとか。
ただ、ディープラーニングを使ってるので計算コストが結構かかるんです。いっぱいアクセスが流入した時にその計算に耐えうるサーバーを用意しないといけないわけですよね。
あ~…。
そうなるとサーバーのコストがむちゃくちゃかかって、それを回収できるくらいのマネタイズを見ておかないとキツイです。広告塔としてはアリだと思いますけど。
おもしろいシステムですし、ぜひアプリとして実現してほしいです…!
そうですね。なんか、「忘年会で使いたい」とか言われたりとかしましたし。当時はマネタイズというところで費用対効果を見てたんですけど、今だと広報的な効果というのをバリエーションができたら全然使えるんじゃないかと思ってます。多分、使えますね、今も。
えっ、そうなんですか!
遊んでみますか?
いいんですか!?
一般公開はしてないんですけど、パソコン上では動くので。
ということで、「男前判定」を実際に使わせていただきました!
山口さんとAIZINE編集長の松島が対決することに。
まずは顔の写真を撮っていただきます。なるべく笑った顔のほうが若く判定されると聞いてこの笑顔。
写真のデータを取り込み解析中です。さぁどちらが勝つのでしょうか…。
ほんの数十秒で結果が出ました!
松島212点、山口さん338点で、WINNER山口さん!!(実年齢42歳の松島は測定年齢が26歳だったので大喜びでした)
真ん中のグラフに表示されている「かっこよさ」「可愛さ」「清潔さ」「賢さ」「幼さ」「たくましさ」「渋さ」を合算した点数で勝敗が決められます。下にはタレント名鑑に登録されている「類似芸能人」がメガネや髪の色で判断され表示されています。(著作権上、記事ではモザイク処理をしています)
ちなみに女性も使えるということで私の写真も撮っていただきました。
結果がこちら。
360点(うれしい)
女性の場合は「幼さ」の数値が上がり、類似タレントには子役の出現率が高いのだそうです。自分の顔を点数化されるのなんて初めてだったのでドキドキしました。
今後のビジョン
実は社名が変わるんです。6月末リリース予定でHPも作り直しているんですけど。
そうなんですか!新しくするのは何か理由があるんですか?
元々このシビルオという会社は3人の代表取締役でやっていたんですが、今後は僕が1人でやっていくことになったので経営理念やビジョンに基づいて社名を変更して一気に行こうかなと。
心機一転ということですね。これからの「強み」や、押していきたい技術はありますか?
社内にメタな視座を持った方を色々採用していて、「問題をそのまま解決する」「解決方法としてどれが正しいのか」というだけではなく、「問題そのものがそもそも解くべき問題なのか」「これは人工知能を導入することでクライアントさんにとって価値があるのか」「そもそもシステム開発でいいんじゃないか」さらに言うと、「システム開発すらしなくてオペレーションや織構図を改善するだけで良いのではないか」みたいなところをちゃんと考えて提案するのが、ただAI(人工知能)だけを提供しているだけのところとは違うかなとは思います。
改善点を見極めてご提案をするという。
「クライアントさんにとって本当に価値のあることとは何かというのを考えてご提案をさせていただこう」という強い意志です。
AI(人工知能)ばかりでなく、思いやりも大切なんですね。
そうですね。「あらゆる場所であらゆる瞬間にあらゆる人が尊厳を持って生きられるような世界」を作っていきたいです。尊厳を持てるために、その人がありのままで生きて自分を表現してそれが折られてしまうことの無い状態を保つための「寛容」と、相手のことをちゃんと見るために必要な「メタな視座」の2つを大事にしています。
人にフォーカスしたものを作っていくということですね。
これから出すプロダクトに関しても、そういった問題を解決していけるものを打ち出していきたいと思っています。尊厳は基本2つの対象があって初めて生まれるもので、「人対人で尊厳が侵されるか侵されないか」「企業対人で尊厳が侵されるか侵されないか」「企業対企業」「企業対市場」「社会対人」みたいな。これからはそれぞれに向けてサービスを提供していきたいです。
誰もが尊厳を持って生きれる世界、素敵です。こうして御社が企業として心機一転やっていこうというタイミングでお話をお伺いできて良かったです!
まとめ
「人間の仕事がAI(人工知能)にとられる」なんて言葉をよく聞きますが、上浦さんと山口さんからお話しをお伺いし、ただAI(人工知能)を導入したら良いというだけではなく、その人、その企業のことを想い、本当に良いやり方が何なのかを第一に考える「人にフォーカスしたサービス」がこれからの未来には必要だと感じました。
仕事や生活をするためのツールは機械であっても、それを使うのは人で、作るのも人です。思いやりを持ったサービスが今後さらに増えていけば、ますます私たちの暮らしやすい社会に進化していくのではないでしょうか。今後どのようにAI(人工知能)が私たちの生活に登場していくのか、期待せずにはいられません…!