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すでに超人間は存在する!身体をトランスヒューマニズムする人たち

すでに超人間は存在する!身体をトランスヒューマニズムする人たち

科学技術は日々進歩していますよね。そんな中、最先端の科学技術を使って自分の身体能力を増強したいと考えたことがある人も出てきました。そんな夢物語のようなことを叶える活動にトランスヒューマニズムというのがあり、実際に今まさに自分の限界を突破しよう!と取り組んでいたり、さらには実現していたりする人も。

そんなトランスヒューマニズムに興味津々だ!とか、あるいはなんか怖い、倫理的に問題がありそう・・・と人によってさまざまな感情を持っているでしょう。でも、そんなトランスヒューマニズムとはそもそもどんな考えで、実際どんな行動をしているのでしょうか。

この記事を読むと、最新の科学技術と人間の飽くなき探求心を知ることができたり、日々新たなことに挑戦する人がいて、社会は着々と変化を続けているということがわかるかもしれません。そこで今回は、トランスヒューマニズムについて知識を深めてもらうことを目標に紹介します。まずは、そもそもトランスヒューマニズムとはどんなものであるのか解説しましょう。

トランスヒューマニズムって何?!

トランスヒューマニズムのイメージ
トランスヒューマニズムを初めて聞いたり、あまりよく知らない人もいますよね。トランスヒューマニズムとは日本語で超人間主義とも訳され、その定義は

「科学技術を積極的に活用することで生物学的限界を超越しようとする思想および運動、そして哲学」(引用元:日本トランスヒューマニスト協会・トランスヒューマニズムとは

と説明しています。生物学的限界を超越する、という言葉の響きは「何それ、面白そう」と感じる人もいればもあれば、「えっ、怖い」と感じる人もいるでしょう。

どういうことなのかというと、トランスヒューマニズムはさまざまな科学技術と結びつき、延命技術や身体改造、遺伝子工学、VR(仮想現実)、AI(人工知能)を用いて生物学的限界の突破をしようという動きがあるのだとか。これらの科学技術を活用することで、トランスヒューマニズムは人間の寿命を500歳に延ばしたり、サイボーグになったり、特定の病気に強い個体を生み出したり、現実から離れた世界を動き回ったり、知能の限界を超えたりすることを目指しています。

こんなの夢物語じゃないの?といぶかしく思う人もいるかもしれませんが、実はすでにトランスヒューマニズムは現実のものとなりつつあります。例えば生まれつき色覚障害を持っていたニール・ハービソン氏は「色」を求めた結果、頭頂部にアンテナとマイクロチップを埋め込むことで音階で色を受け取る、「色を聴く」という能力を得ました。すなわちニール・ハービソン氏は人体改造によって五感を拡張したサイボーグであり、本人もそれを自称しています。

これを医療と取るか、トランスヒューマニズムと取るか、判断は難しいところかもしれません。もしかしたら医療とトランスヒューマニズムは、その技術自体は入り混じるものであり、分かちがたく、表裏一体でしょう。ただし、医療は異常な状態にある人間を治すためにあり、トランスヒューマニズムは身体などを拡張し、人間の可能性を広げることを目的としているので、両者の思想は根本的に異なります。

ここまでトランスヒューマニズムの概要について解説しました。続いてその歴史を解説します。

トランスヒューマニズムの歴史とは

SFのイメージトランスヒューマニズムの起源には諸説あり、SF作品などを含めるとどこが起源だとはっきりといえませんが、少なくとも1980年代にリベラル(自由主義。個人を重んじる主義)な哲学者が、アメリカのカリフォルニアから始めたといわれています。テクノロジーの発展していないこの時代に身体改造などはまだまだ遠い世界で、トランスヒューマニズムの動きはSFの世界をはみ出すものではありませんでした。

しかし遺伝子工学やAI(人工知能)といった科学技術が大きく躍進を見せている現代では、トランスヒューマニズムは現実のものと成りつつあり、一部実際に実現されたのもあるのだとか。この動きは社会に大きく影響を与え、生物学的死を止めるということを目的としているトランスヒューマニズム運動は世界中で急速に拡大しています。

他にも人間には不可能がないという世界観をもたらすトランスヒューマニズム運動はピーター・ティールやマーク・ザッカーバーグ、ラリー・エリソンといったシリコンバレーの名だたる実業家から一部資金提供を受けるほどです。

このように、トランスヒューマニズムは最新の科学技術の成長と共に運動を拡大させてきたという歴史があります。さて、これまで述べてきたのは主に海外の話になりますが日本の現状も気になりますですよね。次に日本でトランスヒューマニズムはどのようになっているのか紹介します。

日本でのトランスヒューマニズムの現状

マイクロチップのイメージトランスヒューマニズムは世界的に広まりをみせていますが、日本において支持者は少ないのが現状です。しかしながら、トランスヒューマニズム的思想を背景に持つSF作品が話題になるなどしてトランスヒューマニズムについて知名度が上がり、関心を持つ人は増えています。

実際に日本でも、トランスヒューマニズムを広げようとする動きがあります。例えば日本でトランスヒューマニズムの啓蒙と実践を目的に設立された日本トランスヒューマニスト協会では身体に埋め込むマイクロチップの普及活動をおこなっています。またソフトウェア開発もおこなっており、決済、インフォメーション、セキュリティなど埋め込みに関連する技術開発です。そして、なんと日本トランスヒューマニスト協会の会員になると実際にマイクロチップを埋め込むことができます。

※トランスヒューマニスト協会に取材に行った記事がこちら

他にも一般社団法人日本トランスライフ協会ではクライオニクス(人体冷凍保存)のサービスをロシア連邦のKriorus社と連携して提供しています。これは遺体を超低温(Kriorus社では-196℃)で保存することで、脳の微細構造を保持して神経配線という情報そのものを保ち、意識の再構成をコンピュータ上で実現する、というものです。まだまだ意識の最高性をする技術は開発されていない(2025年頃に実現の見込み)ので、それまで冷凍保存するという具合になります。

これから新たなトランスヒューマニズムの動きが出たり、すでにおこなわれている科学技術がより広く発信されたりすることが待ち望まれます。

日本のトランスヒューマニズムの現状について紹介しましたが、ではこれからの未来はどのように変わっていくのか気になるところです。最後にトランスヒューマニズムがもたらす未来への影響を解説します。

トランスヒューマニズムで変わる未来の形

スポーツのイメージ日本トランスヒューマニスト協会によれば、トランスヒューマニズムが目指す理想郷とは高度な科学技術による不老不死や不労社会です。そしてその先にある、真なる目標とは人間とAI(人工知能)・機械との融合だとか。オックスフォード大学のニック・ボストロム氏は光速の移動が可能になったり、精神をロボットに転送することで実世界を歩きまわることが可能となったりする、まさに限界突破の可能性を予言しています。

また障害を持つ人が障害を乗り越えるためにトランスヒューマニズムの活動が役に立つ可能性もあります。実際に現在、色覚障害の人が色を感知することができるようになったり、義足の選手がパラリンピックではなくオリンピックのリレーに出場したり、更には義足での走り幅跳びの記録が健常者の記録を上回ったりすることも。トランスヒューマニズムやエンハンスメント(能力増強)の思想や技術が健常者と障害者の垣根を壊す日も近いかもしれません。

しかしながらトランスヒューマニズムは全面的に受け入れられるわけではなく、社会的・倫理的懸念も持たれています。とくに格差社会が問題視されており、例えば不老不死が実現したとして、それは富裕層しか受けられず一般の人と大きな格差が生じてしまうかもしれません。また、人体改造をするという思想が自然でない、身体への侵襲性を考慮せずトランスヒューマニズムやエンハンスメントでは楽観的な意見しかみられない、といった批判も出ています。

このように楽観的な意見と慎重な意見が入り混じるトランスヒューマニズムですが、程よい妥協点が見つかるでしょう。

まとめさて、今回はトランスヒューマニズムについて知識を深めてもらうことを目標に紹介しました。トランスヒューマニズムの定義は「科学技術を積極的に活用することで生物学的限界を超越しようとする思想および運動、そして哲学」でしたよね。さまざまな科学技術と結びついて、生物学的限界を超えていく姿勢は、ある人には喜んで受け入れたり、別の人には怖くて受け入れがたいでしょう。

初期のトランスヒューマニズムはSF的要素が多く、絵空事になりがちでしたが、目覚ましい科学技術の発展で現在は少しずつ実現を見せています。日本国内でもマイクロチップ埋め込みや人体の凍結保存などがおこなわれていますが、どちらかというと海外の方が進んでいるでしょう。

光速移動やロボットへの精神の移し替えなどが将来に待ち受けているという予言もありましたが、そんな世界は想像もできませんよね。また障害者が障害を乗り越えるためにトランスヒューマニズムの思想や技術が使われる未来もあり、よりよい社会になること間違いありません。

一方で、社会的格差や身体への侵襲性への配慮など社会的・倫理的問題も抱えており、トランスヒューマニズムが進むにあたって、いくつか乗り越えるべき壁を乗り越えたり妥協点を見つけたりする必要があるでしょう。

手放しで受け入れられるかというと、そうではないトランスヒューマニズムですが、より良い方向に進めば私達の生活が豊かになるでしょう。トランスヒューマニズムが広く一般的に見られる社会もそう遠くないのかもしれません。

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