「在庫が合わない」「商品が足らない」など在庫管理に頭を悩ます担当者は多いですよね。
そもそも「在庫管理」とは、製造業や小売業を支えるとても重要な要素。たとえば、企業では得意先からの注文を見越して、ある程度余分な仕入れをしてストックを抱えています。でもこれらの在庫は販売しなくては、会社の利益につながりません。もし、顧客のニーズに対して在庫が不足すると、せっかくの販売機会がなくなり売り上げが減ってしまいます。一方、在庫が過剰になると倉庫のスペースを圧迫したり、保管コストも発生します。
こうした重要な「在庫管理」を、より効率化するために注目されているのが「在庫管理システム」。実は、最近では「在庫管理システム」を導入する企業が増えています。このシステムを導入すれば、人的ミスによる時間やコストが削減でき、企業の生産性向上につながるに違いありません。
そんなわけで今回は、「在庫管理システム」を導入した企業の成功例をご紹介し、導入時に失敗しない3つのポイントもお伝えしましょう。導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
在庫管理システムとは
「在庫管理システム」とは簡単に言えば、在庫情報や入出庫情報などをシステムに取り込み、リアルタイムで正確な情報を把握・管理するためのシステムです。
従来では、人が在庫を管理していましたが、取り扱う商品の量や種類が増えて、在庫の数や場所を正確に把握するのが困難になりました。そんな複雑な在庫管理をデータ化して、作業の効率化をはかるのが「在庫管理システム」です。
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中でも基本的な機能としては「入出庫管理」があります。この機能では、製品の入庫や出庫、倉庫移動などの情報を一括管理して「在庫が今どこにどのくらいあるのか」を正確に把握できます。これで、社内に存在する在庫の数量が明確になりますよね。
他にも便利なのは「返品管理機能」。一度、出荷された製品でも返品されることがありますよね。この時に、返品された製品への対応が担当者ごとに異なると在庫状況が混乱します。しかし、破棄するのか再出荷するのかシステムで一元管理すれば、情報の複雑化が避けられます。
さらに、ハンディターミナルとシステムが連携することで、実在庫とシステム上の在庫がすぐに確認できる「棚卸機能」や、在庫データから将来の需要予測もできる「在庫分析機能」を備えたものもあります。
では次に、「在庫管理システム」を導入すると、どんなメリット・デメリットがあるのかを見ていきましょう。
在庫管理システムのメリット・デメリット
在庫管理システムを導入すると以下のようなメリットがあります。
メリット1:時間や手間、人件費の削減ができる
「在庫管理システム」で「なにが・どこに・どのくらいあるのか」など、在庫数や在庫状況が明確になれば、過剰な発注をすることもなく、保管のための無駄なコストも発生しません。さらに、棚卸しなどの手間が省けて、労働時間の短縮から人件費削減につながります。
メリット2:キャッシュフローがよくなる
「在庫=お金」なので在庫として置いておく時間が長くなると、現金が底をついて会社の資金繰りを圧迫します。しかし、「在庫管理システム」で在庫管理をしっかりと行えば、無駄な現金の支出が減るので現金が手元に残り、会社の経営も安定します。
メリット3:安定した品質を維持できる
在庫の劣化は仕入れた瞬間から始まります。たとえ倉庫内でも、長期保管をしていると湿気やほこりなどで製品の劣化は避けられません。しかし、在庫管理を的確に行えば、製品の検品や状態をチェックする機会が増え、劣化を防ぐことができます。また、在庫回転率も上がり常に安定した品質を維持できます。
このように、「在庫管理システム」にはメリットが多いですが、デメリットもあります。
デメリット1:システムを使いこなすまでに時間がかかる
「在庫管理システム」を導入しても、すぐに使いこなせるわけではありません。作業に慣れるまで時間も労力もかかります。ですから、操作方法の教育や、導入後に現場からの問い合わせを集約する窓口も必要になります。とはいえ、システム管理に明るいスタッフがいない場合は、サポート体制がしっかり整っているシステムを導入するのも一つの方法です。
デメリット2:コストがかかる
新しいシステムを導入すると、どうしても運営コストがかかりますよね。在庫管理システムを導入する際にも、初期費用や月額利用料が発生します。クラウド型の場合は初期費用がかからないものもありますが、その他の場合、安いもので3000円程度、高ければ100万円近くかかることもあります。なので、一定期間お試しサービスを利用するなど、自社にとって使いやすいシステムかどうか事前に確認しましょう。
在庫管理システム導入の成功例
それでは、実際に「在庫管理システム」を導入して作業を効率化させた企業をご紹介しましょう。
リアルタイムの在庫データで本部から的確な指示を出せるようになった「株式会社 マーキーズ」
多店舗経営では、各店舗の在庫や売り上げをリアルタイムに集計したいですよね。衣料品を取り扱う「株式会社 マーキーズ」も複数の店舗を展開していますが、これまでは、営業時間終了後にしか在庫や売上データを見ることができず、日中は各店舗に電話で問い合わせていました。これでは、せっかくニーズがあっても販売の機会を逃しかねません。
そこで、在庫管理システムの「アラジンオフィス」を導入。すると、各店舗の在庫状況がリアルタイムに反映され、パソコンやスマホでいつでも確認できるようになりました。さらに、各店舗で行っていた発注業務などをすべて本部に移すことで、店舗では販売に専念できるようになりました。
こうした「アラジンオフィス」の活用で、本部から商品コントロールが可能になり、各店舗に的確な指示を出せる新しい体制に変わりました。今後は、各店舗の正確なデータを蓄積・分析して、計画的に店舗を増やしていくとのこと。このような正確な在庫の把握が店舗の拡大につながっているに違いありません。
700種類、1000本を超える試薬・溶媒を1本ごとに管理し在庫の適正化を図った「JITSUBO株式会社」
次にご紹介する「JITSUBO株式会社」は、新薬の製造・開発のために様々な種類の試薬や溶媒を使用するバイオベンチャーです。
種類や数量が多い製品を、1つ1つ効率的に管理するのは難しいですよね。これまでは棚卸結果を1つ1つExcelに記録していましたが、すべてをExcelに反映させるのは困難で、研究員の記憶や目視に頼る部分もありました。とはいえ、700種、1000本以上の在庫管理は大変で、「気づかないうちに使われて、いざ必要な時にあるはずの在庫が無かった」ということも。ですから、正確な在庫の把握と情報の共有化が課題でした。
そんな課題解消のために導入した在庫管理システムは「在庫スイートクラウド」。これにより発行された、シリアルバーコードラベルを瓶や箱に張り付け、ハンディターミナルで読み取ることで、1つ1つの製品の保管場所が把握できるようになりました。しかも、使用状況は「未開封」「開封済」「残量1/4」の3段階で管理されるので、無くなってから慌てることもありません。
今ではパソコン画面を見るだけで、試薬や溶媒がどこに、どのくらいあるのか誰でも把握でき無駄な発注も無くなりました。さらに、研究で使用した試薬をいつ購入し、いつ開封したのかまで負えるようになり、研究員の安心感につながっています。
このように、数量や工数が多くて管理が複雑でも、「在庫管理システム」を導入すれば、誰もが負担感なく運用できますよね。
属人化とExcelからの脱却で業務改善を図った「株式会社ヘッズ」
在庫管理にExcelや紙を使ったり、確認や発注作業のタイミングはいつもの担当者にお任せ…という企業も少なくないはず。最後にご紹介する「株式会社ヘッズ」もそんな企業の一つでした。
約5,500アイテムものラッピング資材を取り扱う「株式会社ヘッズ」では、欠品を防ぐために日々在庫確認に追われ、さらに、発注作業は統一されたルールがなく属人化していました。これでは、担当者がいないと仕事が回りませんよね。また、Excelによる商品管理では、パソコンフリーズなど多くの問題を抱えていました。
これらの問題を解決するため、当メディア(AIZINE)の運営会社お多福ラボのエンジニアは、「株式会社ヘッズ」の在庫管理担当者と議論を重ね、在庫管理のルールを整理しました。その上で、会社にとって「あったらいいな」をシステムに落とし込みながら、実用性のある「在庫管理システム」を開発しました。
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この事例のように、自社に合わせてカスタマイズされた「在庫管理システム」を活用すれば、業務の効率化もスムーズに進みますよね。
では、これらの成功例を踏まえて、「在庫管理システム」はどんな時に導入するべきなのかを次にまとめました。
在庫管理システムを導入するべきケース
企業には様々な課題がありますが、以下のような悩みがあれば「在庫管理システム」の活用は有効でしょう。
在庫データと実際の在庫が合わない
人力での管理は様々なミスがつきものですが、システムを使って在庫や入出庫情報をデータ化すれば、常に正確な数字を把握できます。さらに、製品が今どこにあるのかも明確になり誤発注などを防げます。
複数拠点の在庫がリアルタイムで把握できない
「在庫管理システム」を活用すれば、すべての在庫を一括管理できリアルタイムで在庫状況がわかります。これで、本部から各拠点に適切な指示が出せて、在庫を拠点間で効率よく回せるでしょう。
製品の種類や量が多くて在庫を正確に管理しきれない
「在庫管理システム」ではバーコード管理ができるので、1つ1つの製品がどこにどのくらいあるかを把握できます。さらに、製品の履歴も管理でき、消費期限切れ製品の使用を防ぐこともできます。
Excelでの在庫管理には限界がある
Excelだとデータの二重入力などの入力ミスや、ファイルが重くて開けられないなどのトラブルがつきものです。しかし、「在庫管理システム」を利用すれば、動作も軽くなり、何より人的ミスがなくなるので仕事も効率よく進みます。
在庫管理が属人化されて担当者がいないと仕事が進まない
在庫管理が属人化するのは人力で業務を行っているからです。システムを利用すれば、ルールが統一され誰でも同じように作業ができます。
このように、「在庫管理システム」を利用して在庫管理を自動化すれば、企業が抱える悩みも解消しますよね。しかし、システムを導入すれば全てが解決するわけではありません。ここからは、導入時に注意すべき点をお話します。
在庫管理システムの導入における注意点
「在庫管理システム」は便利なツールですが、実は導入した企業の約75%が結果を出せずに不満を持っているのだとか。これでは、せっかくコストをかけて導入しても意味がありませんよね。
そこで、「在庫管理システム」導入で失敗しないために、知っておくべき3つのポイントをお伝えしましょう。
在庫管理の課題を洗い出し導入目的を明確にする
「在庫管理システム」を導入の際、大切なのは自社に適した製品を選ぶこと。そのためには、まず何のために導入するのか、目的や解消したい課題を明確にする必要があります。
たとえば、「棚卸作業を簡単にしたい」などの他、食品関連では「賞味期限を管理したい」、アパレルでは「色違いの商品を見つけやすくしたい」など、具体的な課題を洗い出しましょう。そうすれば、特定の業務に特化したシステムなど、より目的に合った製品を選定でき、企業の収益アップや業務の効率化につながりやすくなります。
柔軟性のあるシステムを選ぶ
企業は常に変化しているので、「在庫管理システム」を導入してからも、店舗が増えた、管理項目を増やしたい…など変更が生じることもあります。そんな時、機能がガチガチに決まっているパッケージ製品では変更や追加が難しくなります。
ですから、あらかじめニーズに合わせてカスタマイズできる「在庫管理システム」を選定するとよいでしょう。それに、企業の成長に合わせて機能を変更できれば、新たなシステムを購入する必要がなくコストも削減できます。
実業務とシステムに理解のある担当者を決める
「在庫管理システム」で成果を上げるには、システムの調達だけではなく、初期データの設定、現場の整理整頓、運用方法の検討、マニュアル作成、現場へのトレーニングなどやるべきことが満載です。
これらの業務をこなすには、システムだけでなく現場状況にも詳しい適任者を社内に配置することが大切です。とはいえ、担当者のITスキルに対して、操作が複雑すぎるシステムではスムーズな運用の妨げになります。ですから、システム利用に必要なITスキルが、自社に見合っているかを見極めることも必要です。そして、最終的には担当者のリードによって、従業員全体で「在庫管理システム」の知識や情報を共有できるとよいですよね。
AIZINEの運営会社であるお多福ラボでも、実績にある通り、この様な在庫管理システムの導入支援を行っています。興味がある方は、まずお問い合わせください。
さて今回は、「在庫管理システム」を導入した企業の成功例と、導入に失敗しないための3つのポイントをお伝えしました。
もう一度内容を振り返ってみましょう。
- 「在庫管理システム」とは、在庫情報や入出庫情報などをシステムに取り込み、リアルタイムで正確な情報を把握・管理するためのシステム
- 「在庫管理システム」導入の成功例として、リアルタイムの在庫データで本部から的確な指示を出せるようになった「株式会社 マーキーズ」、700種類、1000本を超える試薬・溶媒を1本ごとに管理し在庫の適正化を図った「JITSUBO株式会社」、属人化とExcelからの脱却で業務改善を図った「株式会社ヘッズ」がある
- 「在庫管理システム」を導入するべきケースとして、在庫データと実際の在庫が合わない、複数拠点の在庫がリアルタイムで把握できない、製品の種類や量が多くて在庫を正確に管理しきれない、Excelでの在庫管理には限界がある、在庫管理が属人化されて担当者がいないと仕事が進まないがある
- 「在庫管理システム」導入で失敗しないためのポイントとして、在庫管理の課題を洗い出し導入目的を明確にする、柔軟性のあるシステムを選ぶ、実業務とシステムに理解のある担当者を決めるがある
今後も、顧客ニーズの多様化で取り扱う商品が増え「在庫管理」はますます重要な位置づけになるでしょう。それに伴い、「在庫管理システム」を導入する企業も増えると予想されますが、今回お伝えした「失敗しない3つのポイント」を押さえて取り組めば、最適な在庫管理環境を実現できるに違いありません。