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人工知能によってベーシックインカムが広まる、その根拠と未来とは

人工知能によってベーシックインカムが広まる、その根拠と未来とは

人工知能(AI)の実用化が進むとヒトの労働力が不要になり失業者が増えてしまう、という心配をする方は多いですよね。実際に、人工知能(AI)について、本年に入り具体的な成果や戦略がどんどんリリースされてきました。メガバンクでの人工知能(AI)を活用した受付・バックオフィス業務の自動化による大幅人員削減や人事採用業務の自動化を目的としてスマートフォンやソフトバンクの人型ロボット「Pepper」を通じて面接を自動で行う、などのニュースは人工知能(AI)の実用化が本格的な実用化フェーズに入った分かり易い事例でしょう。

このような動きがどんどん広まると人工知能(AI)に労働が取って代わられて、仕事なくなるのでは・・・と心配する方が増えるでしょう。それに対して何らかの対策、つまり社会保障の考え方が必要だ! という考え方が出てきました。それをベーシックインカムと言います。そのため、人工知能(AI)が広まるとベーシックインカム(BI)が導入される!という説が出てきているのです。

この人工知能(AI)とベーシックインカム(BI)はまるで語呂合わせのような組み合わせの言葉ですが、この2つの言葉が今後の社会を大きく変える可能性のあるキーワードとして注目されています。

そこで、人工知能(AI)とベーシックインカム(BI)の定義を改めて確認すると共になぜベーシックインカム(BI)が必要と言われているのか、そしてベーシックインカム(BI)の未来についてご説明します。

人工知能(AI)の実現性

人工知能のイメージ
人工知能(AI)は「Artificial Intelligence」の略で人間の知能をコンピュータが模倣し、システム化することをいいます。あらゆる産業で人工知能(AI)技術をどのように活用できるのかを検討が進んでいます。

人工知能(AI)技術が何なのかを理解する入り口は“機械学習”。機械学習とは、現在のAI(人工知能)の中心をなす技術であり、プログラム自身が学習していく仕組みです。コンピュータにデータを学習させ、そこに潜むパターンや特性を発見し、予測させます。

人工知能(AI)はどんなことに使えるのかというと、大きく「識別」、「予測」、「実行」の3つの機能領域に分けられます。

  • 予測:統計手法がベースなので、一般的に、数値処理なら機械学習は比較的簡単に実用化ができ、その出力精度も高めることが可能な為、最も使われている領域です。為替株式予測や犯罪予測といった領域の実用化です。
  • 識別:近年のディープラーニングの登場により、一気にその精度が高まり、実用化が急速に始まったばかりの領域です。良く出てくる話題として、猫の写真を機械に対して何百万枚も見せて猫の特徴を機械に覚えさせた上で、新しい猫の写真を、その機械に見せると猫であると識別するような、画像認識技術が該当します。
  • 実行:車の自動運転技術が人工知能(AI)技術の応用として、最も分かりやすいため頻繁に取り上げられている領域です。Google、Amazonをはじめとして日本語での「AI会話」が急速に発達し、自然言語処理を可能ときた領域です。

上記で記載した銀行の受付業務なら、音声認識と自然言語処理を使った人工知能(AI)、バックオフィス業務なら、RPA(Robotic Process Automation)です。

RPAとは、これまでヒトが手作業で行ってきた仕事を、人工知能(AI)の認知技術を取り入れたロボットに代行してもらうことにより、業務の大部分における自動化や効率化を図る取り組みを指す言葉です。

人工知能(AI)はヒトの労働を代替できるのか

労働のイメージ

先程ご紹介したように、人工知能(AI)によって一部の仕事が取って代わられつつありますが、経産省は「2030年には700万人の失業者が生じる可能性がある」と発表しています。

日本政府が発表した「日本再興戦略2016」の中で第4次産業革命を打ち出し、特に今後の生産性革命を生み出す鍵は、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、人工知能、ロボットセンサーの4つだと定義しています。

この第4次産業革命に的確に対応していかなければ、中間層の崩壊を招き、この状態を放置すれば2030年には700万人もの失業者が生じると経産省は試算しています。すごい数字ですよね。

一方、2015年に野村総合研究所から発表された予想では10~20年後に、なんと、日本の労働人口の49%がAI(人工知能・ロボット等)に置き換えることが可能という内容で、具体的には100種の職業が明示されていました。

銀行の窓口、受付、スーパーのレジなど既に試行されている職種もありましたが、通関士、測量士やCADオペレータなど職種な資格が必要とされる職種までもが、人工知能(AI)により代替可能と予想されているのです。現在の国内では、人工知能(AI)は人材不足を補完する為の革新的テクノロジーとして前向きに捉えられていますが、良い点ばかりではないという側面です。

人工知能(AI)に取って代わられて失業した人に対しての保証として、「ベーシックインカム(BI)」の概念が近年話題となっているのです。

ベーシックインカム(BI)とは何なのか?

社会保障のイメージ

一方で、ベーシックインカムという言葉ですが、1797年に社会思想家のトマス・ペインによって提唱された社会保障システムで、資産や労働の有無に関わらず「すべての個人に対して無条件に」支給されるもので、基礎所得保障、基本所得保障、国民配当などと呼ばれています。年金や雇用保険、生活保護などの個別対策的な社会保障政策は、大幅縮小または全廃することが前提としていますが、これら個別対策的な保証を一元化して包括的な国民生活の最低限度の収入(ベーシック・インカム)を補償することを目的としています。

つまり、ベーシックインカムとは国民の最低限度の生活を保障するため、国民一人一人に現金を給付するという政府の社会保障政策です。わかりやすく言うと、「国から一人ひとりの生活費を与えますよ」という制度のことです。

では、なぜ古くから唱えられているベーシックインカム(BI)の概念が現在また話題になっているのでしょうか。先にご紹介した経済産業省の予測の通り、人工知能(AI)により労働力との代替が進み、失業者が増えてくると、どうしても生活保障が必要であるという考え方からベーシックインカム(BI)の思想が再度、討議されるようになったのです。

ベーシックインカム(BI)は日本の生活保護と同じでは?

生活保護のイメージ

日本でも皆さん良くご存知の生活保護制度がありますね。ベーシックインカム(BI)は生活保護と同じでしょう?という疑問は誰もが持ちますが、労働意欲の差が、ベーシックインカム(BI)と生活保護では異なるようです。生活保護の場合は実は働いてしまうと、その分、受給額が減ってしまいますよね。生活保護は働いても結局手に入る分は同じなんです。

それなら働かずに、貰える分もらっといたほうが得?ということで、ニュースで話題になる程、生活保護の泥沼にはまってしまう方が多くなってしまう実情があります。つまり働けば働くほど収入が増える、という「インセンティブ」がなくなっているのです。一方で、ベーシックインカムの考え方では、均一に配分する考え方で、低所得者であっても当然、働けば働くだけ収入が増える考え方で、「インセンティブ」がちゃんと残る仕組みです。

つまりは、「ベーシックインカム(BI)とは、インセンティブをつけた生活保護」といえます。日本でのベーシックインカム(BI)導入については、昨年の選挙の際、希望の党の小池代表から選挙公約「ユリノミクス」の一つとしてベーシックインカムの導入を示唆されていました。本当に実施する場合、72兆から100兆の財源が必要となるらしく、直ぐに実現とはいきません。相当に無駄な税金を減らし、同時に増税も検討の対象になるかもしれません。

ベーシックインカム(BI)のメリットデメリット(海外事例から)

政治のイメージ

ベーシックインカム(BI)のメリットについては、貧困対策、少子化対策、社会保障制度にかかる行政コストの削減、働き方の多様化(ワークライフバランスの充実)、地方活性化、ブラック企業の減少などが挙げられています。一方で、デメリットについては、労働意欲の減少、財源、インフレなど環境変化への非対応、犯罪の増加などが懸念事項になっています。

海外の先行事例としては、2016年6月には、スイスで成人に対して毎月約27万円を支給するベーシックインカム(BI)の導入の是非についての国民投票が行われ、結果的には否決されましたが、その後フィンランドやオランダでも検討が始まっています。

リベラル派は、人工知能(AI)が人間の仕事を奪うのでその貧困対策としてベーシックインカム(BI)が有効であるとの主張、保守派はそれとは関係なく、現状多くの執行コストがかかる社会保障制度をスリム化しようとする観点からベーシックインカム(BI)が有効であると討議が進んでいるようです。

実は、アメリカのアラスカ州には30年以上前から似た制度が存在しています。石油事業を元手にした「永久基金」と呼ばれるもので、基金は運用成績によって上下するものの、社会への貢献や富など関係なく一律に支払われてきたものです。

日本で人工知能(AI)が広まった際に、ベーシックインカム(BI)の導入が検討された場合、メリットをどうしたら最大化できるのか、デメリットの発生リスクをどうしたら最小化できるのか、対策の具体化が導入に向けたキーになりそうです。

以上、人工知能(AI)とベーシックインカム(BI)の定義とその未来像についてお伝えいたしました。

  • 人工知能(AI)の仕組みについて
  • 人工知能(AI)は人間の労働の代替ができる
  • ベーシックインカムの意義
  • ベーシックインカムは生活保護とは異なる
  • ベーシックインカムのメリット・デメリット

など、人工知能(AI)が広まることによってベーシックインカム(BI)の導入も検討されつつある、ということがわかりましたよね。

人工知能(AI)の普及に伴い、社会全体での変革が進んでいきます。日本では人材不足を補うため、人工知能(AI)の導入は現時点では積極的に採用すべきと考えられています。少子高齢化に伴い、日本における雇用者人口が減少する中、GDPを維持・成長させるために、人工知能(AI)の活用は重要な鍵になるでしょう。

それが加速度を付けて進み、先に掲載した様な失業者数、職種にまで人工知能(AI)により自動化できてしまったとき、確かにそれを救済する社会保障の仕組みが整っていなければなりません。社会保障は政治の世界の話なので、検討・対応に長時間を要します。日本でも海外同様に、ベーシックインカム(BI)導入を前提として社会保障のシナリオを策定し、その是非について国民全体で考える必要がありますよね。

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