駅近や商店街、街中でもよく見かける治療院。自分では治せない肩こりや腰痛の施術、捻挫や打撲などのリハビリにも便利ですよね。最近、その治療院でDXが進んでいます。
今までの治療院といえば、施術者の感覚と手技による施術が中心で、電話予約や紙ベースのカルテ・予約台帳・顧客管理が当たり前でした。ところが最近では、施術にAI(人工知能)を使った姿勢分析や、電子カルテやレセコン(レセプトコンピューター)と連動した診療予約システム、さらに患者さんの情報を多角的に収集・蓄積のうえ分析するCRM(顧客関係管理)などを導入する動きが活発になっています。
アナログな運営が主流だった治療院で、なぜ急速なデジタルシフトが起こっているのか、その理由や中身を知って、治療院の業務改革を推進しましょう。
そこで今回は、治療院でDXが進んでいる背景やDXを進めるうえでのポイントについて詳しくお伝えします。
治療院とは
治療院とは、整骨院(=接骨院)と鍼灸院の総称です。整骨院では柔道整復師、鍼灸院では鍼灸師と、それぞれの国家資格者が施術を行います。
「治療院」は、医療行為を行う医師とは異なるため、厳密には治療行為はできません。よって、治療院での施術には、打撲や捻挫、神経症やリウマチなど、一部の傷病や医師がそれ以外に施術方法がないと判断して正式に許可した場合を除いては、いっさい健康保険が使えません。つまり患者さんが診察費用の100%を負担する自費診療となります。ただし、仕事中や通勤途中でのやむを得ない傷病などについては、治療院でも労災保険が適用されることがあります。
今、治療院がDXを進めるべき理由
続いて、今、治療院がDXを進めるべき理由にはどのようなものがあるのかについて解説しましょう。
具体的には、
- デジタルニーズの高まりに応えるため
- 患者さんへの説得力を増すため
- 施術の平準化をはかるため
- リピート率向上のため
以上の4点になります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
デジタルニーズの高まりに応えるため
総務省の通信利用動向調査によると、スマホや携帯電話などモバイル機器の保有率は8割を超えています。また、世界的な感染症拡大がそのニーズをさらに後押しし、ショッピング、ネットバンキング、行政手続きをはじめ、あらゆる情報取得もデジタルに頼る風潮が高まりました。病院予約もその一つです。
電話予約の場合、診察日や診察時間内しか予約できず、電話をしても話し中というケースがよくありますよね。しかし、美容院や習い事など、ネット経由の予約が広く普及する中、治療院のオンライン予約への需要も確実に高まっています。このニーズに応えなければ、オンラインの診療予約システムをはじめ、SNSや動画を使った呼びかけやトレーニング法の配信など、デジタル対応している治療院に患者さんが転院してしまうリスクがあります。これを回避するためにも治療院でのDXが求められます。
患者さんへの説得力を増すため
治療院では、施術者の感覚でとらえた身体の不具合を患者さんに伝えてもレントゲンのように目に見えるわけではないので、どうしても伝わりにくいことが多いですよね。すると、施術やリハビリへのモチベーションが上がらず、途中離脱したり転院する例が後を絶ちません。しかも患者さんが自ら納得しなければ、治療院の大きな収入源となる自費診療へのシフトも難しくなります。よって、患者さんへの説得力のある客観的データの可視化、数値化が必要です。
施術を平準化するため
治療院では、院長クラスのベテランと経験の浅い施術師ではどうしても施術レベルに差が出てしまいます。すると、同じ費用でありながら回復度合いや満足度が違うために、患者さんの不満を買う可能性があります。よって、AI(人工知能)の画像認識技術により、だれが担当しても同じ見立てができるなどの方法で、施術を平準化することが望ましいでしょう。また、電子カルテで患者情報を院内で共有し、だれでも端末で患者さんごとの施術ポイントが正確に把握できるようにすることも重要です。
リピート率向上のため
売上の伸びている治療院に共通していえるのは、リピート率が高いこと。自分の身体のことはあの先生が一番分かってくれている、ここでなければ楽にならない、といった理由で何度も来院する患者さんが多い治療院は、間違いなく業績が上がります。しかし、伸び悩んでいる治療院はリピート率が低く、新患がきても続かないことが良くありますよね。そこで、どのタイミングで通院がストップするか、また施術スタッフごとの稼働率や患者さんの定着率などがデータ分析できれば、リピート率向上にむけた対策が立てられるでしょう。
治療院のDXで、必要となるもの
次に治療院でDXを推進するために、何が必要かについて見ていきましょう。
AI(人工知能)による姿勢分析ツール
治療院のDXには、AIの姿勢分析ツールがおすすめです。タブレットで身体の画像を撮るだけで、AIのディープラーニング(深層学習)によって姿勢のゆがみやズレを分析、部位ごとに可視化、数値化します。くわえて、リハビリやトレーニングメニューもAIが推奨し、内容はメールでも送れるため、自宅でも取り組むことが可能です。
電子カルテ
電子カルテは、患者さんの症状や施術歴、回復状況などをキーボードで入力します。紙カルテのように書き損じがないうえ、保管場所も必要なく、記入も早く済みます。クラウド型にすると、ネット環境さえあれば時間も場所も選ばずに閲覧、修正が可能です。よって、訪問診療にも携帯でき、わざわざ紙カルテを持ち運ばなくて良いので荷物がかさばりません。
診療予約システム
診療予約システムは、いつでも時間を問わずオンライン予約やキャンセルができます。診察の順番のみを指定する方法や時間、または時間帯(11時~11時30分など)を指定する方法もあります。オンラインでの事前問診ができるほか、診察券の発行や待合での呼び出し機能もあり、当日の診察スケジュールの一覧表示も可能です。電子カルテやレセコン(レセプトコンピューター)、POSレジ(販売時点情報管理タイプのレジ)と連携させると、予約が入った時点で、患者情報を共有でき、会計業務もスピーディーかつ正確になります。リマインド機能で当日や前日の指定時間に確認メールもできるため、当日の無断キャンセルも減らせるでしょう。
CRM(顧客関係管理)
CRMシステムを使えば、来院数、来院頻度、リピート率、施術師ごとの稼働率などがつぶさに把握できます。ただ感覚的に来院数を把握したり、Excelに数字だけ入力しても、具体的な戦略につなげることは難しいです。しかし、CRMなら、データを収集・蓄積するだけでなく、さまざまな指標ごとに分析ができるので、より具体的な対策が打てるでしょう。例えば、施術離脱の兆候もわかるので、そのタイミングで施術法を変えるとか、来院をうながすメールを送る、などが可能です。
DXは、単にデジタル機器をそろえれば済むものではなく、データを分析・活用することにその本質があるため、CRMの活用は欠かせません。
治療院がDXを行うことの効果
実際にDXを進めると、次のような効果が期待できます。
- 施術への意欲と売上が向上する
- 施術が平準化できる
- 新規患者が増える
- 業務効率化が進む
一つずつ詳しく解説しましょう。
施術への意欲と売上が向上する
AI(人工知能)による姿勢分析を行うと、身体の不具合がはっきりと可視化・数値化されるため、どこが悪いのか、どんな施術が必要か、を理解しやすくなります。また、AIがリハビリやトレーニングメニューを推奨すると、さらに説得力がますため、施術への意欲が大きく向上する例が多いです。その結果、リピート率の増加や自費診療への移行が顕著になるため、明らかに売り上げが向上します。
施術が平準化できる
AI(人工知能)による姿勢分析は、だれが使っても同じ結果が出るため、施術ポイントの見たてについては、ベテランと新人の差がなくなります。よって、施術の平準化が進み、患者さんの不公平感を解消できるでしょう。
新規患者が増える
診療予約システムを導入するとスマホユーザーを中心にアクセスが増えて、新規患者が取りこめる可能性が広がります。
業務効率化が進む
診療予約システムや電子カルテの導入により、カルテ記入やレセコンへの入力、受付業務の負担が格段に軽減されます。紙カルテの場合、準備するのに手間がかかり、保管場所の確保も必要ですが、電子カルテはその必要がありません。浮いた時間で患者さんのフォローなど、より重要な業務に集中できるため、業務改革が大幅に進みます。
治療院がDXを進める上での課題
続いて治療院がDXを進める上での課題について解説します。
具体的には
- デジタル操作に慣れる
- 院内のコンセンサスをとる
- 予算を確保する
です。一つずつ順を追って見ていきましょう。
デジタル操作に慣れる
治療院でのDXには、デジタル機器を導入が不可欠になります。電子カルテは、慣れるまではかえって入力に時間がかかります。しかし、そちらにばかり気を取られて患者さんの話を聞き逃しては本末転倒です。
診療予約システムは、電子カルテやレセコン、待合での呼び出し機能などと連携して使うケースが多いです。連携に不備がないか、あればどのように修正するのか、呼び出し時間の設定変更も含めて、研修を重ねるなどして臨機応変に対応できるようにする必要があるでしょう。
CRM(顧客関係管理)も、多岐に渡った詳細なデータ分析が可能です。しかし、導入に満足してそれを使いこなすだけのスキルと知識が磨かなければ、絵に描いた餅です。導入後もベンダーのサポートを受けながら、自院にとっての最適なシステム作りに注力しましょう。
院内のコンセンサスをとる
新システムは便利ですが、導入にあたっては院内スタッフ全員が納得のうえ、新しいやり方に協力する体制が整っていることがポイントです。しかし、電子カルテやAI(人工知能)の姿勢分析など、ベテランほど従来の自分のやり方に固執して抵抗を覚えるケースがよくあります。その場合、せっかく良いシステムを導入しても、スタッフの足並みがそろわなければ、DXの真の効果は期待できません。よって、導入前に、なぜ必要か、どんなメリットがあるのか、など十分に話し合いを重ねる必要があるでしょう。
予算を確保する
治療院のDXにあたっては、予算の確保も重要です。まったくデジタル機器を使っていない場合は、パソコンやタブレット、Wi-Fiの準備から始める必要があります。くわえて診療予約システムやCRM(顧客関係管理)は導入後にランニングコストがかかるケースもあります。よって、目先だけでなく、先々のコストも綿密に計算のうえ、導入前に必要な予算を確保しましょう。
治療院がDXを進める上でのポイント
つぎに、治療院が実際にDXを推進するうえでのポイントを解説しましょう。
具体的には、
- 自院に見合った機能かを見極める
- コンサルサービスを活用する
- 患者さんへの丁寧な説明を行う
の3点です。一つずつ見ていきましょう。
自院に見合った機能かを見極める
例えば、治療院の場合、電子カルテは、画面上に身体の各部位や全身図が表示され、診察内容やポイントを自由に手書きできるシャーマがあると非常に便利です。AI(人工知能)の姿勢分析は、そもそも院内に撮影できるスペースがなければ使えません。過度の負担がなく、これから目指す業務改革の方向性に合致したDX手法を的確に選択しましょう。
コンサルサービスを活用する
とくにCRM(顧客関係管理)をつかった分析手法は、かなり専門性が高くなります。よって、最初からすべて独学・自己流というわけにはいきません。治療院専門の優秀なコンサルタントがいるので、分析したデータをどのように活用するのが良いか、ポイントをおさえてアドバイスしてもらいましょう。
治療院経営は、長く続けているほど自分のやり方が正しいと思い込んで狭い世界で満足してしまうケースがよくあります。しかし、プロ目線で見ると改革の余地はたくさん。やり方を変えた結果どうだったかを報告、さらにアドバイスをもらって実践、というPDCAサイクルが構築できると、速いペースで確実に結果が現れます。聞いてくれる人、見守ってくれる人、そして業績アップをともに喜んでくれる人がいる、というのは何より心強いでしょう。
患者さんへの丁寧な説明を行う
DXによって院内のシステムを変える際は、患者さんへの周知が大事です。とくに高齢者はデジタルが苦手なケースが多いので、従来のアナログ対応を継続するなど、柔軟な姿勢も必要でしょう。
逆にAI(人工知能)の姿勢分析は、馴染みがないケースがほとんどです。よって、AIがどのような診断・分析をおこなうのか、実際に画面をみせて懇切丁寧に説明すると、かえって感動するケースもあるのだとか。すると施術やトレーニングに前向きになるきっかけにもなり、一石二鳥です。
理想ばかりを追求し、肝心の患者さんがついてこられなければ、DXの意味がありません。いきなり「0か100か」で切り替えるのではなく、一人一人の意向や好みに合わせて徐々に浸透させましょう。
さて今回は、治療院でDXが進んでいる背景やDXを進めるうえでのポイントについて詳しくお伝えしました。
治療院とは、整骨院(=接骨院)と鍼灸院の総称で、柔道整復師や鍼灸師といった国家資格者が施術を行います。
治療院では、「デジタルニーズの高まりに応えるため」「患者さんへの説得力を増すため」「施術の平準化をはかるため」「リピート率向上のため」といった理由から、DXを推進する必要があります。
治療院がDXを行うには「AI(人工知能)による姿勢分析」「電子カルテ」「診療予約システム」「CRM(顧客関係管理)」などが必要です。また、治療院がDXを進めると「施術への意欲と売上が向上する」「施術が平準化できる」「新規患者が増える」「業務効率化が進む」といった効果があります。
また、治療院がDXを進める際には「デジタル操作に慣れる」「院内のコンセンサスをとる」「予算を確保する」といった課題があるので、それぞれについて適切に対処しましょう。
さらに治療院がDXを進める際には「自院に見合った機能かを見極める」「コンサルサービスを活用する」「患者さんへの丁寧な説明を行う」といった点がポイントです。
治療院でDXを進めると、同じ院内の風景ががらりと変化するでしょう。しかし、もっとも大切なことは患者さん一人一人に向き合い、痛みや苦しみに寄り添いながら、適切に対応する態度と心構えです。治療院飽和時代だからこそ、選ばれる存在になれるように、DXを進めながら、なお一層の努力を重ねていきましょう。
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