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企業の経営をまるっと変える! AIにも使える「データドリブン」とは

企業の経営をまるっと変える! AIにも使える「データドリブン」とは

AI(人工知能)やIoTの浸透でデジタル化が急速に進む昨今、ビジネス界ではデータドリブンという言葉が飛び交うようになりましたよね。

データドリブンは、データを元に判断・実行することで、従来の経験や勘に頼った経営のやり方を変える手法です。そして、データドリブンを行うことで、利益を上げたり生産性を高める企業もどんどん増えています。さらに、データドリブンの手法は、AI(人工知能)を使ってもできるので、今後の経営に役立てるためにも、データドリブンを知っておくだけでも有利なはず。

しかし、データドリブンがいくら企業経営に有効でも「どのように行えばよいのか」「はじめの一歩が踏み出せない」など、悩んでいる経営者も多いのが現状。

そこで今回は、データドリブンとは何なのか、そしてデータドリブンが実際に活用されている例を挙げながら、データドリブンで成果を出すためのステップやポイントをお伝えしましょう。

データドリブンとは

データのイメージ

まず、データドリブンの「ドリブン(Driven)」は「○○につき動かされた」という意味です。なので、データドリブンは「データに基づいて動く」こと。わかりやすく言うと「仕事上で得たデータを基にさまざまな意思決定を行う」ことです。

最近では、スマホの普及で人々の行動履歴などのデータが簡単に得られるようになりましたよね。しかも、IoTの進化でモノからの情報も大量に発生しています。これらのデータは、客観的事実として現在の経営状況を正確に伝えるので、さまざまな経営判断にとても役に立ちます。なので、これらのデータを有効に活用して、売上の増加や収益拡大を目指すという考え方が「データドリブン」です。

※詳しくはこちらの記事でも解説しています

では、なぜ今データドリブンが注目されるようになったのか、次にお伝えしましょう。

今、データドリブンが重要視されている理由

買い物のイメージ

そもそも、データドリブンという言葉は、 2013年に「データドリブンイノベーション」という考え方の中ですでに提唱されています。ですから、データを活用する経営は以前から行われていました。でも、最近になってあらためて「データドリブン」が重要視されるようになったのには、大きく2つの理由があります。

消費者行動が予測できないほど複雑になったため

たとえば商品を購入する際、以前なら「店舗に出向いて自分の目で確認して買う」など、購買行動が単純でした。しかし、現在ではインターネットが普及したことで、Webとリアルを行き来しながら、自分に合ったモノを自由に選べますよね。また、シェアリングやサブスクリプションなど買い物の仕方が多様化して、消費者行動も予測できないほど複雑になっています。これでは、今までの経験や勘に頼った経営は成り立ちません。

そこで、集めたデータから消費者の次の行動を予測し、企業の収益アップにつなげる手法としてデータドリブンが見直されています。

課題や問題を早期に発見・解決するため

消費者行動が多様化する現在は、商品やサービスのライフタイム(寿命)も短くなっています。そのため、商品やサービスの課題を早期に見つけて、消費者の求める新しいモノを開発し続ける必要があります

しかし、収集したデータを人の手で一つ一つ分析するのでは手間がかかりすぎて、企業間の競争に勝てないでしょう。そこで、膨大な情報を効率的に分析して、すぐに次の行動に移せるデータドリブンが不可欠となっています。

データドリブンが活用されている例

カップヌードルのイメージ

それでは実際に、データドリブンを取り入れている事例をご紹介しましょう。

「勘ピューター」から「データ経営」で売り上げを2倍にした「ワークマン」

作業着の専門店「ワークマン」は、職人の店というちょっとお堅いイメージで顧客層も限られていました。しかし、商品を変えず売り方を変えるだけで売り上げを2倍に伸ばしました。

そもそも「ワークマン」の商品は高品質で高機能が売りでした。そこで、品質はそのままでアウトドアに特化した店舗を増やし、売り場のイメージを変えたところ、顧客層が広がり女性客にも大人気となりました。

その陰で徹底したのは、今までの勘に頼った「勘ピュータ経営」から「データ経営」へ社内の体質を変えることです。具体的には「社員全員がエクセルを使えるようになる」こと。これはなぜなのかというと、たとえ「店長」になっても積極的に店に立って売り場を改善し、成果が出たかどうかをその都度データベースで判断するなど、実店舗で「データ経営」のトレーニングをするのにもつながるためです。これらを完全にカリキュラム化することで、「この商品はどうして売れないのか」と自分で仮説を立てたり、考える力をつける社員が増えていきました。

このような「データ経営」を行うことで、社員自らが自社の強みに気づき「競争しなくても売れる」しくみを作り上げました。

SNSを活用してシニアの潜在ニーズを掘り起こした「日清食品」

「日清食品」のカップヌードルは若者が食べるというイメージが定着していますよね。そのため、60歳以上のシニア世代のカップヌードル離れが経営課題でした。

そこで、意欲的な「アクティブシニア」のSNSを分析したところ、豪華な食事の写真が多く、実はシニアでもプレミアム感のある味を求めていることがわかりました。こうして、フカヒレスープやスッポンスープなど贅沢感が味わえる商品を開発したところ、高価格にもかかわらず発売7か月で1,400万食を売り上げました。

これは、SNSなどの情報を分析することで、シニアでも「美味しければカップヌードルを食べたい」という潜在ニーズを掘り起こし、うまく商品開発に至った事例でしょう。

では、このようにデータドリブンで成果をあげるには、どのように進める必要があるのでしょうか。次でその方法について解説しましょう。

データドリブンを行うための5つのステップ

階段のイメージ
データドリブンを進めるには、以下のような基本ステップが必須です。

ステップ1:データを収集する

まず、データドリブンを始めるにはデータの収集が必要です。そのためには、効率よくデータを収集できる環境を整えましょう。

例えば、最近ではコンビニなどでポイントカードを使って買い物をする人が増えていますよね。ポイントカード作成時には、性別・年齢など個人情報を登録するので、個人の購買履歴などがすぐにわかります。それにレジではPOSシステムを導入すれば、「いつ、どの商品が、どれくらい売れたか」など売れ行き動向などが明確になります。

ただ、企業内には多くのシステムがあり、データが各端末に散在していることも多いでしょう。なので、それらのデータを一元管理する仕組みが必要です。

ステップ2:データを可視化する

データドリブンでは、収集したデータを分析する前に「データの可視化(見える化)」が必須です。ただの数値データを、画像・グラフ・図・表など一目でわかる形に整理すれば、そこから多くの情報が見えてきます。そのため、ただデータを集めるだけでなくデータをわかる形にまとめましょう。

しかし、データの可視化をすべて人の手で行うと膨大な時間がかかりますよね。そこで、BIツールやDMP(データマネジメントプラットフォーム)、Web解析ツールなどを上手に利用すれば効率アップを図れまする。

ステップ3:データを分析する

データの可視化ができれば、いよいよ次は分析。ここで大切なのは、手当たり次第にデータを分析するのではなく、「新しい顧客層の開拓」「売り上げアップ」など目的に合わせた分析を行うことです。そのためには、分析するデータにある程度“アタリ”をつけて細分化しながら比較し、丁寧に読み込むと原因究明や課題解決につながるでしょう。

ステップ4:アクションプランの策定をする

データ分析の結果から、経営効率を上げるためのアクションプランを考えます。ここで大事なのは、コストや人員など企業規模に合った現実的なプランを策定することです。

ただ、いくらアクションプランを策定しても、上層部から承認が得られないことも少なくありません。ですから、常に上層部や管理職を巻き込みながらデータドリブンを進めましょう。

ステップ5:アクションプランを実行する

アクションプランの策定が終われば、すみやかに実行に移します。そして、実行されたプランは結果を出しているかすぐに検証し、改善点があれば修正してまた実行を繰り返します。常にPDCAを回しながら、アクションプランの効果を検証することで、成功に近づくでしょう。

このように、5つのステップを踏めばデータドリブンはスムーズに進む可能性が高いです。しかしデータ収集や分析などは、すべて人力では限界がありますよね。そんなときは、作業効率を上げるためにデータドリブン支援ツールを利用するのも一つの手です。

データドリブンを行うためにおすすめのツール

グラフのイメージ

それでは、多くの企業がデータ活用に利用しているツールを見ていきましょう。

BI(ビジネスインテリジェンス)

BIツールは、データドリブンツールの中核とも言われ、膨大なデータから必要な情報を取り出して、経営管理や売り上げ拡大などに活用できる便利なツールです。

BIツールの主な機能としては、データをグラフ化して見やすいように加工するレポート機能、膨大なデータを様々な角度から分析するOLAP機能、法則や規則性を見出すデータマイニング機能、過去のデータから将来の予測値を計算するシュミレーション機能などがありますが、誰でも使いやすいのが特徴です。

※BIとはどんなツールなのか、はこの記事で解説しています

また、BIツールの中でも、データを見やすく加工する「Google Data Studio」、ドラッグ&ドロップ操作であらゆるデータを分析できる「Qlick Sense」は、無償版なので手軽にお試しできます。しかし、全社規模で利用するなら「Tableau」がおすすめです。有償版になりますが、多彩な表現力でデータやプロセスの見える化に優れています。

DMP(データマネジメントプラットフォーム)

DMPは、散在するデータを収集・分析してマーケティング施策につなげるためのツールです。たとえば、オンライン上の「ログデータ」や店舗で使われる「POSデータ」などを「DMP」によって一カ所に集め、様々な切り口で顧客分析したデータは、Web広告ツールと連携しやすくなります。

MA(マーケティングオートメーション)

MAは、獲得した見込み客の情報を一元管理して、メールやSNAなどによるマーケティング活動を自動化するツールです。これにより、顧客が求めるコンテンツを顧客が求めるタイミングで、そして好きなチャネルで届けることが可能になります。

SFA(セールスフォースオートメーション)

SFAは、企業の営業部が持つ顧客情報や、営業活動に関連した情報など営業活動全体を見える化して、ボトルネックの発見や効率化を図るツールです。また、日報や商談リスト作成もSFAにお任せできるので、営業マンは営業に集中できるでしょう。

CRM(カスタマーリレーションシップマネージメント)

CRMは、顧客管理のためのITシステムで、顧客の基本情報や購買履歴などあらゆる情報を管理できるツールです。そして、特定の顧客との関係を維持し続けることで、リピーターや優良顧客が育ち企業価値につながります。

Web解析ツール

Web解析ツールとは、Webサイトを訪問したユーザー数や流入経路、サイト内でのユーザー動線などを把握するツールです。これを活用すれば、ユーザーの隠れたニーズも把握でき、より良質なコンテンツを作成・配信できます。特に、Googleが提供する無料のWeb解析ツール「Google アナリティクス」が知名度もありおすすめです。

データドリブンを行う時に、知っておくべきポイント

話し合うイメージ

ここまで、データドリブンを行うためのステップや支援ツールをお伝えしましたが、この他にも、データドリブンを成功させるにはいくつかのポイントがあります。

組織全体からデータドリブンへの理解を得る

データ収集や分析という膨大な作業を行うには、システムの開発やITツールの導入など、組織全体で取り組む必要があります。特に経営層などデータ活用に関心が薄い場合は、アクションプランを実行できない場合も。このため、日頃から積極的に勉強会を開いて、データドリブンの経済的効果を理解してもらいましょう。

データを活用できる人材を確保する

データドリブンを行うためにITツールを導入しても、データの扱いに熟知した人材とアクションプランを計画できる人材がいないと前に進みません。例えば、データ分析や処理の知識・統計学の知識・マーケティングの知識、それにロジカルシンキング力のある人材が不可欠です。そのためにも、日頃から組織全体で人材教育に力を入れる必要があるでしょう。

データドリブン支援ツールをうまく活用する

データドリブンの支援ツールをいくつかご紹介しましたが、やみくもに導入すればよいわけではありません。何をしたいのか、目的や事業規模に合ったツールを選ぶことが大切です。なお、初心者ばかりでも支援ツールをうまく利用すれば、それなりの効果は期待できるかもしれません。

このようなポイントをつかんでおけば、データドリブンはスムーズに進むでしょう。

さらに、「様々なデータに基づき判断しアクションする」というデータドリブンの手法は、実はAI(人工知能)を使うとより高度な分析ができます。

というのも、AI(人工知能)は、データ収集・蓄積→教師データを使った学習→推論→実行という流れになり、このようなプロセスはデータドリブンと似ているからです。それに、すべての過程をAI(人工知能)に任せっきりにするのではなく、人間による意思決定も成功への大きなカギになります。

たとえば、AI(人工知能)を導入して「何をしたいのか」「そのために、どんなデータを集めなければいけないのか」「どんなツールが必要なのか」、そしてAI(人工知能)が出した仮説から「どのようにアクションプランを立てて実行するのか」などスムーズに進めるには、データドリブンと同様に、ITに詳しく正確な判断力や実行力のある人材が必要になります。

そこにAI(人工知能)を使うと、データから共通項を見つけ出すことが得意なので人間では見つけられなかったマーケティングのヒントを見つけられる可能性があります。ですから、データドリブンの考え方をしっかり身に付けておけば、企業の経営をまるっと変える近道になるに違いありません。

まとめ
さて、今回はデータドリブンの基本知識と実際に活用した事例、そしてデータドブリンで成果をあげるためのステップやポイントもお伝えしました。

データドリブンとは「仕事上で得たデータを基に、さまざまな意思決定を行う」ことです。特に、最近では消費者行動が複雑になり、企業課題の発見や改善が急がれるためにデータドリブンが重要視されるようになりました。

そして、実際にデータドリブンを取り入れて成果を挙げている事例として「ワークマン」と「日清食品」をご紹介しました。いずれも、データをうまく活用して顧客のニーズを掘り起こし収益拡大につながっています。

また、データドリブンは以下のような基本ステップを踏むことで、スムーズに進むでしょう。

ステップ1:データを収集する
ステップ2:データを可視化する
ステップ3:データを分析する
ステップ4:アクションプランの策定をする
ステップ5:アクションプランを実行する

さらに、データドリブンを支援するツールとして、BIツールやDMP、MA、SFA、CRM、Web解析ツールをお伝えしましたが、「企業の何を改善したいのか」など目的に合ったツールを選ぶことがゴールへの近道でしょう。加えて、組織全体からデータドリブンへの理解を得ること、ITに詳しい人材や意思決定できる実行力のある人材を確保することも大切です。

それに、「データに基づく意思決定」というデータドリブンの手法は、AI(人工知能)を使うとより活用できます。ですから、今後もデータドリブンは、あらゆるビジネスシーンで経営を変える大きな力になるに違いありません。

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