AIとは何か

Deep learningのプログラムを使うと何が実現できるのか事例で解説

Deep learningのプログラムを使うと何が実現できるのか事例で解説

最近注目されているAI(人工知能)と従来のコンピューターとの違いを理解するためのキーワードといえばDeep learning(ディープラーニング)ですよね。深層学習と訳されるこのDeep Learningは、AI(人工知能)が自分でものを「考える」ことを可能にするための技術的ブレイクスルーと言えます。

囲碁で人間のチャンピオンを破ったAlphaGoでは、このDeep learningによりプログラムされたAI(人工知能)に実際の対局を学ばせることで、AI(人工知能)が囲碁というゲームを学習し、勝つための手順を選び出しました。

このDeep learningは、与えられた問題に対するいろいろな解法を何度も試すことで、その中から最適な方法を選び出す、というプロセスをプログラム上で可能にするのです。

このDeep learningはAI(人工知能)の学習機能そのものと言えます。では、そのプログラムはAI(人工知能)が実際にどのような用途で使われることを可能にするのでしょうか。今回はDeep learningによるAI(人工知能)の学習能力の中身とその用途について、実例を交えて紹介します。

AI(人工知能)のプログラムとDeep learning

プログラムのイメージ

Deep learningはより大きな意味で機械学習(machine learning)と呼ばれるソフトウェアの学習能力の一つです。これまでも、コンピュータに過去のデータを分析させてそのデータの関係を数式化することは行われていました。このような分析の結果を用いて将来を予測する手法においては、次々に新たなデータを追加することで分析の精度を上げることができます。

これに対して

Deep learningでは、そのデータ間に関係があるかないか、あるとすればどのくらい重要な関係なのか、ということをプログラムの中で決定できることが特長です。
このためにはデータを一つひとつ処理するのではなく、いくつものデータを並べて同時に処理する必要があります。

Deep learningはそのために

生物の神経系に見られる情報処理システムを基にしたニューラル・ネットワークという仕組みをベースとしてします。
生物の神経細胞は一つひとつの神経細胞が直線的に繋がっているのではありません。一つの神経細胞には周りの複数の神経細胞が接触して、全体では網の目のような細胞ネットワークを作っています。

一つの神経細胞が受け取った刺激は次の神経細胞に伝えられます。
しかし、
これを受け取った細胞は周りの他の神経細胞からの刺激が伝えられるまで、その次の細胞に刺激を伝えません。
いくつもの細胞が刺激を受けたことで、その刺激を次に伝える価値がある、と判断するのです。

Deep learningはこの神経細胞の挙動をデータ処理に活用したもの。Deep learningの一つの演算処理のユニットには複数のデータが入力されます。このいくつかのデータの強さの合計がある値を超えたときに、その演算ユニットはそのデータを次のユニットに向けて出力します。

この出力データを受け取った次のユニットは、別の演算ユニットの出力データと組み合わせて、重要性を見極め、さらに次のレベルの演算ユニットに。それぞれの作業レベルで、合計されるデータの強さが足りない組み合わせは出力されません。
この作業を繰り返すことで、
目的とする結果となるための入力データの強さの組み合わせになっているユニットの経路が残ることになります。

ニューラルネットワークのイメージ

このようにして、Deep learningでは条件に合致するデータ処理の方法を手に入れることができるのです。このニューラル・ネットワークの層を4層以上重ねた仕組みをDNN(Deep Neural Network)と呼びます
DNNにはデータの処理の手順や組み合わせ方のルールによっていくつかの種類があります。
DNNを用いた機械学習の手法をDeep learningと呼びます。

Deep learningとAI(人工知能)の能力

AIのイメージ

Deep learningは入力されるデータの間での重要さを決めてくれるふるいのようなものです。
例えるなら、重要なデータには大きなパイプを用意し、重要でないデータの通り道は閉めてしまうことで、一番上手にデータが流れる水路を探してくれる仕組みなのです。このデータの流し方を見つけ、パターンとして認識することがDeep learningの機能といえます。

このパターンを何に対して見つけるかということで、Deep learningのプログラムが達成できるAI(人工知能)の能力が類別できます。

すでに数値化されているデータであれば、先ほどの将来予測ツールやエキスパートシステムを強化。
人の話す言葉のパターンを認識できれば自然言語処理ツールとなります。
ビジュアルを対象とする画像認識。
情報セット同士の関係を対象とすればナレッジデータベースに。

さらにこのDeep learningの能力同士をプログラムで結びつければ、認識したパターンを変換したり、表現したりすることができます。

ナレッジデータベースをエキスパートシステムと結合して言語処理したのがインテリジェント・エージェント。
医療診断ツールなどの専門分野でプロフェッショナルをサポートするの知識表現ツール
というAI(人工知能)の用途を作り出しています。

音声データとデジタル情報を組み合わせることで両者の複合的なインターフェースの処理を行うことがができるでしょう。
画像として入力された写真の上の文字を「読み」、画像に写った状況を言葉で説明したりしてくれます。
無声映画のように音声が録音されていない映像の会話を、口の動きからリストアすることも可能です。

Deep learningにより実現するAI(人工知能)の用途

ビジネスや経済の世界のイメージ

ビジネスや経済の世界では、ほとんどの情報がすでに数値としてデジタル化されています。このため、AI(人工知能)にとっては従来のプログラム形式を使用してDeep learningの処理を容易に適用できる用途が見られます。このため、この分野ではすでに実用化されているアプリケーションも多いでしょう。

金融関連の分野では多くの投資関連AI(人工知能)ツールが開発されていますよね。
それ以外にも例えば、
株式投資での先物投資での売買の際に評価基準として用いるCAPMモデルの計算には、再帰的な演算処理が必要です。常に最新の時系列データを用いて更新できるDeep learningのプログラムにより、この数値は著しく高い精度で計算できるようになっています。
製造業ではIoTによる生産管理システムなどの分野において、次々と具体的な用途でDeep learningを用いたプログラムが導入されています。生産ショップの現場からの情報をリアルタイムで入手し、ライン全体の生産性を向上させていく動きが第四次産業革命の大きな流れを作り出しているのです。

医療のイメージ

一方で、Deep learningはデジタル化されていない情報を取り込んで処理できるため、これまでにデジタル化が進んでいない社会や科学の世界でも、新しい用途を実現するためのプログラム開発が盛んです。

特に医療の分野ではガンの検知と治療、新生児の出生前診断と治療などの用途で従来の医療では達成できなかった疾患への対処が期待されています。
そして、自動車や船舶の自動運転技術は実際の運用に向けて実証実験が進められ、AI(人工知能)のセンサーが取り込んだ周辺の状況に関するデータをもとに、目的地への移動を人の助けなしに実行するこのAI(人工知能)は、自動車産業というものの意味を変えてしまうことでしょう。ドローンによる無人デリバリーシステムや、小型ヘリコプターによる空飛ぶタクシーなどの導入が提唱されています。
無数の化学物質の組み合わせから、望ましい特性を持ったものを選び出す。Deep learningによる化学物質創出プログラムによる、新しい素材や化合物の発見のための手法が研究されています。このプログラムは新薬の開発にも有効で、効果が高く副作用の少ないAI(人工知能)のデザインした創薬が登場するのは間近でしょう。
自然環境の観察、測定による複合的なデータでは、Deep learningのプログラムがパターン化することで、近い将来の自然災害を予測することができると考えられています。海上での台風の発生を事前に予知したり、水源地の水位の変動を予測することで、それにより引き起こされる災害や渇水への対策を有効に準備することができますよね。

 

大都市の交通のイメージ

より複雑な仕組みに対しても、Deep learningによるAI(人工知能)のパターン認識能力が強化されていくことで、そこに内在する構造が明らかになると期待されています。

ハーバード大学で進められている地震予知のための研究は、多量のデータと煩雑な計算に時間がかかりすぎてコンピュータの処理が地震に追いつかないことが課題でした。Deep learningを使ったプログラムではこの計算処理を500倍に改善できるとされています。
大都市における交通事情を緩和することにAI(人工知能)を役立てる研究が進められています。渋滞を解消し、目的地までの走行速度・時間を予測するDeep learning プログラムは、個々の車の動きと道路状況の関係を認識し、事故が発生するパターンを解き明かしてくれるかもしれません。
大気圏内の高層圏での不安定な気象環境をセンサーで測定し、飛行中の機体をDeep learning プログラムを使ってリアルタイムで制御する。この低軌道宇宙船計画が実現すれば、現在人類が利用できていない「空の上」の領域を飛ぶことができるようになるでしょう。

Deep learningによる処理は、時に人には見えていないパターンを見つけ出してくれます。これまでは分からないとされていた問題を理解する方法を、AI(人工知能)は描き出してくれる事でこれからの未来が楽しみになりますよね。

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