AI(人工知能)の普及によって生活が便利になる半面、その能力がすご過ぎて「将来にはなくなる仕事が大半だ」というネガティブな話もよく耳にしますよね。
実際、メディアで「10年後、20年後に今ある職業は半分になる!!」なんて不安をあおられると、就活生は将来どんな仕事につけばいいか悩むのは当然ですし、現在働いている人たちだって、失業する可能性が大ってこと??(10年とか20年なんてすぐソコですよ、ソコ。怖っ!!)
でも…待って待って。そんなにざっくり話を進めちゃって大丈夫なんでしょうか。この「AI(人工知能)の普及によってなくなる仕事は半分」説、どこまでが事実なのか、何を根拠に騒がれているのか、よく分からないという人もいますよね。それに、最新の研究では「ちょっと誇張し過ぎなんじゃないの」という反論も多く見られるのです。
もちろん未来予測なので不確定な話ではありますが、ここらでちょっと落ち着いて、現時点での議論を整理したほうが、スッキリ落ち着いて未来に立ち向かえるはず!
というわけで、今回は「AI(人工知能)によって、将来なくなる仕事」の議論の流れを整理してご紹介します。そして私たちはこの問題にどのように対応すればいいか、考えてみましょう!
悲観論は、オックスフォード大の論文や著名人による警鐘から
AI(人工知能)のせいで10年後には仕事の半分がなくなるって話、ネットニュースとかで時々見るけどこれってホントなん?
減るのは確かなんやろうけど、何を根拠に半分もなくなるっていわれてるのか気になるよねえ。
「AIによって人間の仕事がほとんど奪われる」という論調がこれほど騒がれるようになったのは、2013年、イギリス・オックスフォード大のカール・B・フレイ博士とマイケル・A・オズボーン准教授らが発表した論文がきっかけなんです。
この論文では、「 米国で10~20年以内に、AIを搭載したロボットやコンピュータなどによって現在の職種の47%が奪われる。そしてその確率は70%以上」という衝撃の説が発表され、騒然となりました。
そこでは「消える職業」として電話オペレーター、レジ係オフィス事務員などが、また「消えない職業」として外科医、ソーシャルワーカー、小学校教員などの名が挙げられたんです。
さらに2015年、野村総合研究所がオズボーン氏と共同で日本における予測を調査した結果、「日本では労働人口の49%が機械に代替可能に」との検証結果を発表しました。そのときに挙げられた職業はつぎのとおりです。
結構ショック…。俺ら、なんの仕事したらええのかな…
また、ちょうどこの時期にIT業界の大物たちが次のような発言をしているのです。
「20年後、あなたが望もうが、望むまいが現在の仕事のほとんどが機械によって代行される」/Google CEOラリー・ペイジ(FINANCIAL TIMESインタビュー)2014年
「特に大したスキルを必要としない仕事は次の20年でどんどん少なくなる。しかしまだ誰も心の準備ができていないように感じる」/Microsoft創業者ビル・ゲイツ(BUSINESS INSIDERインタビュー)2014年
こんなビッグな人たちに断言されると、人類詰んだ-…って感じがするー(涙)
より現実的な職業の機械化の予測は47%→9%だが、確実ではない
ですがフレイ&オズボーン説が出て数年、専門家の間ではその問題点を指摘する声もかなりあがっているのです。
対抗する説の代表格は、独ZEW研究所のメラニー・アーンツ研究員たちによるもので、「フレイ&オズボーン説の予測値は、”タスクベース”が考慮されていない」と指摘しています。
ちょっと待って、意味わからん。
たしかに(笑)。でも職業っていろんな業務(タスク)がいくつも組み合わさってできてるのは分かるやん? だから本来ならタスクごとに機械化していくはずが、フレイ&オズボーンがとった予測手法だと、職業をまるっと全部機械に代替させちゃってるのが問題ってことなんだって。
そこでアーンツ氏たちは、職業をタスクごとに分解して、それが自動化されるかどうかを検討してから、職業に反映させて結果を出そうとしたのです。実際、精度が高く現実的だとして専門家からの評価も高いのはこちらです。
そして2016年、OECD(経済協力開発機構)がこのアーンツ氏らの研究結果をベースに論文(「The Risk of Automation for Jobs in OECD Countries」)を発表。その結果、「自動化の可能性が7割を超える職業はOECD21カ国平均で9%だ」と見積もる予測値が出されました。
47%→9%って!!これなら、かなりマシやん!?
でもだからといって安心できるかというとそうではなく、別のレポートでは「職業そのものはなくならなくても、タスクの半分以上が機械化される職業はOECD21カ国平均で30%以上ある」という予想が出ていることは見逃せません。
ですから、私たちは「なくなる仕事ばっかり…」とやたら悲観して騒ぎすぎたり、反対に「大丈夫」と楽観視するのではなく、まずは「職業が全部すぐになくなるわけではない」しかし「タスクごとに自動化が進むことで、なくなる仕事は増えてくる」という現実を受け止めるのがよさそうです。
新たに生まれる仕事や「残る」仕事につくため、情報収集と専門力をつけよう
AI(人工知能)によって生まれる仕事もある
ところで、AI(人工知能)によってなくなる仕事ばかりではありません。AI(人工知能)によって新たな仕事が増えるという側面もあるのです。
新しく生まれる仕事については、
- AI(人工知能)に近いもの
- 人間にしかできないもの
の2つに分けられると考えられています。
前者ではたとえばAI(人工知能)が活躍する時代になっても、やはりそれを管理したりメンテナンスする仕事は絶対に必要です。そしてAI(人工知能)をうまく使いこなすアドバイザーなど「AI(人工知能)を活用する仕事」は必ず生まれるはずですよね。
その昔、パソコンが本格的に広がったときだってパソコンのメンテナンスやコーディングする人、インストラクター、いろんな仕事が生まれたもんな~。
2番目の「人間にしかできないもの」については、説得・交渉といったコミュニケーション力や心のこもったサービス、そしてマニュアルではなく自分で判断する仕事などがあてはまります。
たとえば、大手会計事務所のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)が2018年に予測したデータによると、新たに生まれる仕事の多くは、ヘルスケアやソーシャルワーク領域の仕事だとしています。これも人にしかできない、コミュニケーションが重視される仕事ですよね。
なるほどな~。状況はなんとなくわかったけど、結局、俺らが今仕事を選ぶなら、何をポイントに考えたらいいのか知りたいわー。
情報収集しつつ、経験を積むことで「AIを使いこなす新しい仕事」につながる
これからの仕事を選ぶとき、当然のことですが情報収集は欠かせません。なにしろ上記で見てきたように、未来予測の仮説も短いスパンで刻々と変わっている、といってもいいですよね。
常に新しい情報をいろんな角度からチェックしないと、判断を間違ったまま動いてしまうこともあるのか~。怖っ!!
↓AIZINEでも、なくなる仕事についてまとめたこんなページがあります。
そしてネットだけの情報ではなく、書籍やセミナー、座談会に積極的に参加するなどして、積極的に未来のニーズを見極める力をつけることが大切です。
ですが、今の時点でAI(人工知能)によって「なくなる仕事・なくならない仕事」にこだわりすぎても不安になるばかりで、生産的ではないですよね。
確かに…。現時点ではそれが本当に正しいかどうかは誰にもわからないし、たとえばIT関連の仕事が残りそうだからといって、すべての人がそれを選ぶわけにはいかないしなあ。
ですから、まずは自分が興味のある分野の仕事を選んで、そこでしっかり経験を積むことも大切だという意見も出てきているのです。
たとえば流通の知識、金融の知識、教育の知識、農業の知識…今ある職業を通じて得た知識と、その現場で鍛えた人間力があれば、AI(人工知能)を導入したときにきっと応用ができるはずです。
つまり、AI(人工知能)を使われるのではなく使いこなし、新たなビジネスを生むぐらいのつもりでいるのが大事ということになりますよね!
さて、今回は「将来なくなる仕事」にまつわる議論について、流れを整理してご紹介しました。
よく「AI(人工知能)の普及によってなくなる仕事は多い」と騒がれがちですが、その悲観論は、オックスフォード大研究者の「労働人口の47%が機械に代替される」という論文がきっかけでした。ですが、新たな手法によってより現実的な予測も行われており、今は、職業そのものが半分になることはないという考えが主流です。
ただしタスクごとに機械化が進むことは必至で、これからのAI時代に仕事を選ぶとき、あるいは長い間働きたいと考えている場合にはその影響を考える必要があります。短いスパンで未来予測が変わっていきますから、なくなる仕事や残る仕事がなにか、いろんな角度から最新情報をチェックすることは欠かせません。
しかし、誰にも確実なことはいえないので、「なくなる仕事」にとらわれすぎるのではなく、目の前にある仕事で得意分野を磨いて、AI(人工知能)を導入したときに応用できるように選択肢を広げることも大切です。
未来のニーズや情報には敏感になりつつ、目の前のことにも集中して、専門知識や人間的な経験を磨いていけってことか~。うん、不安ばっかりでいるよりは生産的で、ちょっとは前向きになれそうかな!
すでに働いている私たちも、もちろん同じ立場だから一緒に頑張らなあかんね!