小学校でのプログラミング必修化を受けて、子供向けのプログラミングが今、大人気ですよね。
なにかと雑誌や店舗でプログラミング商品を特集していたり、赤ちゃん向けのオモチャのコピーにまで「プログラミング思考が身につく」って書いてあったりして。
なんだか「とりあえず流行りの”プログラミング”入れとこ!」っていうノリや商魂たくましさを感じなくもないですが(笑)、それだけ親や社会全体の関心が高まっているということですよね。
私も小2の子供を持つ親として、もちろん学校でのプログラミング必修化も気になりますが、こうやって日々記事内でAI(人工知能)の進化のすごさを目にしていると、「実際、子供のときからITやプログラミングの考え方に慣れさせておいたほうがいいよなあ…」なんてマジメな気持ちになります、やっぱり。
ただ、気になっているわりには、親もいつまでたっても「プログラミングとはなんぞや~」レベルから抜け出せないんです…。
なんとなく調べてはみるものの、情報が断片的すぎて子供に教えるなんてレベルではありません。ここはもう「プログラミング初心者仲間」として、子供と一緒にプログラミングの知識を増やしてみるのもよさそうですよね。
そこで今回は、親と子供がプログラミングを一緒に学ぶときの入口になりそうな、楽しい書籍を5冊ご紹介しましょう。
おすすめ①「なるほどわかった コンピューターとプログラミング」(ひさかたチャイルド)
本書は、日本出版販売(日販)による2019年「こどもプログラミング本大賞」の大賞を受賞した、楽しいしかけ絵本です。原書は英国アズボーン社でベストセラー、翻訳は「おさるのジョージ」などで知られる福本友美子さん、っていうのも推しポイントです。
中を見ていきましょう。
絵本というよりは図鑑タイプで、全16ページ。最後まで目を通せそうな絶妙のページ数ですよね。ただしページ数は短くても、9つのテーマごとに119ものしかけがあるんです!
たとえばしかけの1つをパカっとあけるとコンピューターの内部をのぞけるようになっていて、パソコンの仕組みがよくわかるようになっています。ビジュアルやさわった感触などから、感覚的に学べるのがいいところ。
普段からオモチャでもなんでも分解してモノの中身が気になる息子、パタパタしかけを開いては「かあちゃん!パソコンの中には、レーザー光線が入っているらしいで!」と興味津々でした。
親も仕組みを知らずにパソコンを使っているので、「そうなんだ〜」と思うことばかりです。
全体的にイラストもかわいく、ルビもふってあるので低学年からOKですが、二進法や変数の説明まで触れてあり、テーマも難易度も幅広いのがポイント。
さらに「プログラミングの考え方」や「コンピューター言語」「インターネット」「コンピューターの歴史」にまでふれてあり、コンピューターとプログラミングの総論を押さえたいときにぴったり、といった印象があります。
昆虫や動物が好きで図鑑を眺めるように、コンピューターやテクノロジーものが好き、という子供なら自分で楽しんで調べたりするのにもってこい。親にとっては、子供に質問されて困ったときの「参考書」として家庭に置いておきたくなるような一冊です。
★ちなみに、監修の阿部和広さんのツイッターはこちら↓です!
来年2月の新刊「なるほどわかった コンピューターとプログラミング」今度は仕掛け絵本です。原書は英国アズボーン社のベストセラー。翻訳は「おさるのジョージ」などの福本友美子さん。私は監修です。ハードからソフトまで、平易な表現とかわいい絵で楽しく学べます。しかし内容は妥協していません。 pic.twitter.com/2IAh5j1mRG
— アベ先生 (CV: 阿部和広) (@abee2) November 17, 2016
おすすめ②「ルビィのぼうけん こんにちは!プログラミング」(翔泳社)
本書も、子供向けプログラミングの入門本としてよくおススメされている人気の一冊。ルビィという名の女の子が5つの宝石集めの冒険をするというお話の絵本です。
フィンランドの女性プログラマーが原作者で、主人公ルビィの「考え方」や「行動」を通してプログラミング的思考が養われるとして、世界15か国以上で翻訳されて人気があります。なんといっても北欧らしい色使いのオシャレなイラストが特徴的!
絵を見ただけでは、まさかコンピューターについての本だなんてわかりません。これならロボットや機械そのものに興味のない子供やお母さんでも手が伸ばしやすいプログラミング本ですよね。
本の中には、プログラミングの「コード」などは一切出てきません。前半の物語に対応する形で、後半にアクティビティ(練習問題)があり、物語→練習→物語 の繰り返しでプログラミング的思考の理解が深まるという構成になっています。
「練習問題パート」で身につく例をみてみましょう。
- 物事を順序立てて組み立てること
- 大きな問題を小さな問題にわけること
- ちらばった情報から、まとまりとパターンを分けること
これって、問題解決のために必要な段取りがわかるので、プログラミングだけでなく日常の問題解決にも役立ちますよね。
ただしこの本は、いわゆる普通の絵本のようにストーリーそのものを楽しむタイプでも、逆にパソコンの具体的な操作法が書いてある解説本タイプでもありません。なので子供が一人で漫然と読むとポイントがわかりにくい場合もあるかもしれない、という印象を受けました。
ですから小さいお子さんなどには、大人が解説文を先に読んで、個々のアクティビティがプログラミングのどんな特徴に対応しているのか理解してから読み方をアドバイスしてあげるとスムーズです。
他にシリーズも出ているので、興味を持った人はこちらもチェックしてみましょう!
- 「ルビィのぼうけん コンピューターの国のルビィ」
- 「ルビィのぼうけん インターネットたんけん隊」
おすすめ③「テラと7人の賢者: 小学1~3年生 (“ナゾとき”コンピュータのおはなし) 」(学研)
この本は、上記のルビィのぼうけんとタイプが少し似ていますが、カードやパズル、手品などの「ナゾ」を解きながら物語を読み進めることで、コンピューター科学にふれられる本です。
ストーリーは、パソコンの中の「デジタルランド」に迷い込んだ主人公テラが、7つの賢者が持っている「まほうのコイン」を集めて、元の世界に戻る冒険もの。
こちらは異次元ゲームみたいな設定のとっつきやすさがありますよね。
この本はニュージーランドの研究者が考案した、電子機器を使わずコンピューター科学を理解する「コンピュータ・サイエンス・アンプラグド」という学習法がベースになっています。
ですから本の中には切り取って使えるカードなどが用意されていて、実際に手を動かしながらプログラミングやアルゴリズムの基本、二進法の考え方などを体験できるんです。また、自分でルールを発見して問題を解決できる力がつくように、解き方についてもルールは細かく書いてありません。
もちろん難しい場合は、別冊の「冒険の書」の解説を読んだら分かるようになっています。「二進法と十進法のちがい」や「実際のコンピュータでの活用方法」についてより深い説明があるほか、セクションごとに学習のねらいも書いてあるので、大人も理解しやすい構成になっているのがありがたいところ。
あと、この本のおすすめポイントは日本で企画された本だということ。現時点では子供向けプログラミング本は海外発が多いのですが、翻訳の違和感があるほか文化の違いでキャラ設定がしっくりこない場合も…。
でもこちらは絵も子供たちが見慣れた日本のマンガっぽい雰囲気ですし、登場する賢者の名前もこんな感じです!
ソート→「ならべカエル」・・・。
子供にしっかり受けそうなネーミングで印象に残りやすいんですよね。うちの小2男子も一発で「二進法」という単語を覚えました(ダジャレ、最強)。
パズル好き、クイズ好きはもちろん、マンガ学習本が好きな子供などにも向いていそうです!
おすすめ④「月とアポロとマーガレット 月着陸をささえたプログラマー」(評論社)
コンピューターの考え方や方法論そのものを知るのも大事ですが、プログラマーという仕事への憧れや尊敬のまなざしを持たせるのも、子供にプログラミングを好きになってもらうためのアプローチの一つですよね。
このお話の舞台は、1960年代のアメリカ。宇宙や算数や不思議が大好きだった実在の女の子・マーガレットが大人になって、発明されたばかりのコンピューターの技師となり、さらにNASAアポロ計画のソフトウェアプログラミングの責任者となって宇宙飛行士を支える姿を描いた伝記ものです。
人類初めての月面着陸が彼女のプログラムによって成功したこと、そして60年代に女性がそんな最前線で活躍していたこと。読んでみたらこれまで知らないことばかりでした。
短い物語ですが、最後のページに載っているご本人のお顔写真がイラストそっくり。その傍に積まれたコードの紙の山を見ると、ちょっとジーンときます。
そしてこの本の訳者の鳥飼玖美子さんですが、なんとアポロ11号の月面着陸の様子を日本語に同時通訳された方。そんなところもあわせて、胸熱なんです!
宇宙開発のロマンとそれを支えるプログラマーのつながりを、親しみやすいタッチの絵と文でまとめてあるのも好感がもてます。なにより「勉強やプログラミングができると、きっと楽しいだろうなあ」というワクワクする雰囲気が、子供たちに伝わるはず。個人的にも好きな一冊です。
番外編⑤「Girls Who Code 女の子の未来をひらくプログラミング」(日経BP)
この本は小さな子供向けのプログラミング本というよりはティーンが対象ですが、いま小さな女の子がいる保護者の方や、むかし女の子だったお母さんが読んでも新鮮な内容なので、ご紹介しましょう。
もともと、この本のタイトルとなった「Girls Who Code」とは、著者のレシュマ・サウジャニさんがプログラミングができる女の子をもっと増やそうとアメリカで設立したNPO法人で、本書はその活動理念をわかりやすく書いたプログラミングの入門書です。
内容は、いろんなタイプの女の子たちがプログラミングを学びながら、それぞれが興味のある音楽、ゲーム、ファッション、ロボットなどの創作に生かしていくというもの。アニメ制作会社のピクサーやNASAなど、憧れるような職場で働く女性たちの話なども載っています。
なぜ女の子限定のプログラミング本が出ているのでしょう。 実は、ソニー生命保険株式会社による「中高生が思い描く将来についての意識調査2019」には、こんなデータがあります。
男子中学生がなりたい職業
1位「YouTuberなどの動画投稿者」(30.0%)
2位「プロスポーツプレイヤー」(23.0%)
3位「ゲームクリエイター」(19.0%)
4位「ITエンジニア・プログラマー」(16.0%)
女子中学生がなりたい職業
1位「歌手・俳優・声優などの芸能人」(18.0%)
2位「絵を描く職業(漫画家・イラストレーター・アニメーター)」(16.0%)
3位「医師」(14.0%)
4位「公務員」「看護師」(いずれも12.0%)
上記を見ると、男子中学生のなりたい職業4位に「ITエンジニア・プログラマー」がランクインしており、これが男子高校生になると「ITエンジニア・プログラマー」(20.8%)が1位になります。対して女子の場合は「ITエンジニア・プログラマー」は中学生・高校生ともトップ10にも入っていません。現時点でも、エンジニア系の職種についている人は、女性よりも男性の方が圧倒的に多いですよね。
もちろん、だれもがコンピューターに詳しくなって将来専門家としてIT業界で働かないといけない訳ではありません。
でも、どうしても女の子は算数に自信がなかったり、周囲にも「女の子は特に機械が得意でなくてもいい」という雰囲気があるため、プログラミングに対して苦手意識を持ったり、縁遠くなりがちですよね。
そんな女の子たちに対して「難しくないよ」「おもしろいよ」「あなたにもできるよ」と語りかけ、「自分の好きなことをするために、コンピュータやプログラミングを使ってみよう!」と勇気づけてくれるところが、この本の素敵なところなんです。
小さなお子さんには大人が1度読んでから、お話してあげてもいいですよね。
さて今回は、親と子供がプログラミングを一緒に学ぶときの入口になりそうな楽しい書籍を5冊ご紹介しました。
一口に子供向けのプログラミング本と言っても、「コード」の使い方を解説するような実践本ばかりではなく、次のようにいろんなタイプの書籍があります。
- プログラミングやパソコンの総論がわかる図鑑
- 機械が苦手でも、柔らかいタッチのイラストでプログラミング的思考を学べる絵本
- カードを使ったりクイズを解いていくことでプログラミングの基礎が学べる本
- プログラマーという仕事に対し、憧れがもてるような伝記絵本
- 女の子がプログラミングに興味を持てるようなアプローチをしている本
このように、子供向けプログラミング本を読んでみると、大人にとってもわかりやすく解説してくれているので、むやみに怖がらなくて済みますよね。
ほかにも子供向けプログラミング本はたくさんありますので、次は子供と一緒に選んでみると楽しいはず。
今後、AI(人工知能)の急激な発達により、人間の仕事の多くがコンピューターに取って代わられるといわれています。そして将来、子供たちは文系・理系、そして男性・女性問わず、コンピューターを使いこなす技術が、親世代よりも必ず多く求められるようになります。それならば、まずはプログラミングデビュー時に、苦手意識をもたせないようにしなければいけませんよね。
余談ですが、日本には「世界最高齢のプログラマー」と呼ばれる80代の若宮正子さんという方がおられます。
60代になってからパソコンを始め、プログラミングを学んでアプリを開発し、米アップルの世界開発者会議にも特別招待されたりしています。かっこいいですよね!
普段の会話の中でも、こんなニュースを教えてあげたりしながら、子供たちが楽しくプログラミングに親しんでいけるよう工夫していきましょう。
【参考】