数年前にはマンガの影響もあって、囲碁ブームが巻き起こりましたが、最近では加藤一二三さんのタレント性や、藤井聡太七段の最年少ながら空前の連勝記録という話題性もあって、将棋がブームとなっていますよね。
いろいろと話題がつきない将棋の世界ですが、もうひとつ話題となったのは「AI(人工知能)将棋」です。AI(人工知能)が将棋で人間の棋士を打ち負かしたというニュースなどもう昔の話ですが、すでに人間よりも、AI(人工知能)のほうが強いとまでいわれています。
そして人間の棋士の側でも、AI(人工知能)を積極的に活用しようという動きが多くみられており、これまでの棋士のスタンスも変化を見せているようです。そこで今回は、AI(人工知能)が将棋界にどのような影響を与えたのか、そしてプロ棋士たちがどのようにAI(人工知能)を活用しているのかについてお伝えしていきましょう。
AI(人工知能)は、すでにプロ棋士よりも強い
AI(人工知能)将棋の歴史は、1980年代にまでさかのぼります。最初はプロ棋士どころか、アマチュアレベルの棋力だったAI(人工知能)将棋ですが、AI(人工知能)の発達とともに、加速度的に強さを増していきました。
しだいにプロ棋士との対局で勝利をあげる事例も増えてきましたが、それでも「持ち時間が短い対局では、AI(人工知能)のほうが有利」「まだプロ棋士側がコンピュータ将棋対策をしていない」という状況でもあり、本当にAI(人工知能)の将棋がプロ棋士よりも強いのかは疑問視されていました。
AI(人工知能)将棋は、すでにプロ棋士の力を超えていると認められています。電王戦もAI(人工知能)と人間が対決するという歴史的役割を終えたとして、2017年をもって終了となりました。
プロ棋士も、すでにAI(人工知能)を利用している
プロ棋士とAI(人工知能)との対局が進んでいくなか、プロ棋士たちのAI(人工知能)に対する見方も変わっていきました。もっとも大きいのは、プロ棋士自身が棋力を高める手段としてAI(人工知能)を活用し始めたことです。
AI(人工知能)将棋ソフトは何手先まで読むかなど、強さを調整することができます。人間同士ではお互いのスケジュール調整が必要ですが、AI(人工知能)なら24時間いつでも対局が可能です。また人間だと考える時間が必要ですが、AI(人工知能)は数秒もかかりません。
一見、考えられないような手をAI(人工知能)が指してきたとき、なぜそのような手を指してきたのかを分析する。その手を指してきたことで、その後どのような戦局になっていくのかを見極めることが大事だといいます。
現在ではほとんどのプロ棋士が、自分を高めるためにAI(人工知能)を積極的に活用しており、AI(人工知能)の打ち筋だけでなく、自分が対局で使った一手を振り返り、戦術として有効かどうかを検証する手段としても活用されています。
AI(人工知能)が浸透することで、プロ棋士のあり方も変わっていく
プロ棋士たちはAI(人工知能)の打ち筋を研究し、電王戦FINALではかろうじてAI(人工知能)に勝ち越すことができました。そうしなければ勝てないと、プロ棋士が判断したということですよね。
その一方でAI(人工知能)はこれまでの棋譜だけでなく、電王戦などの対局データも学習して、さらに強さを増していきました。かつてAI(人工知能)自身が打った手であっても、次の対局では評価が低いと判断することもあるのです。
藤井聡太七段をはじめとして、多くの若いプロ棋士たちが台頭している将棋界。彼らの強さの秘密は、AI(人工知能)に対する抵抗感がなく、若い頃からAI(人工知能)を活用して膨大なデータから将棋を研究しているからともいわれています。
つまり、これまでは人間の定石から学び、格上の先輩たちとの対局から学んできたものが、AI(人工知能)によって学ぶ機会も内容も充実しています。さらにAI(人工知能)の指し手を分析することで、安定感のあるミスの少ない将棋にもつながっています。
プロ棋士たちにとってAI(人工知能)とは、これまで考えもしなかった一手を提示してくれる、魅力的なツールでもあるのです。
AI(人工知能)の利用は対局以外にもある
AI(人工知能)将棋の台頭は、プロ棋士の存在意義さえも揺るがしかねないという危機感を与えたこともありました。しかし、AI(人工知能)がどれだけ強くなっても、将棋人気は決して衰えていません。
なぜなら、スポーツの世界でも、ただ強いというだけではすぐに飽きられてしまいますよね。ひとつひとつの試合のなかで、ドラマティックな展開を見せてくれることにファンは期待しているのです。
将棋も同じことで、対局の中に人間性が感じられるからこそ、おもしろいと感じます。じっくりと考えていく中で、その棋士が何を読んでいるのか、相手の打った手に、一瞬だけ見せる表情は何を意味するのか考えるのも将棋ファンが対局を見るうえでの醍醐味ともいえます。
また、AI(人工知能)は強さという一面だけでなく、別の使い方も見出されています。たとえば、最近不足しているという「記録係」の仕事を、AI(人工知能)がやってくれるという試みもあるのです。
対局中に天井からカメラ撮影した映像をもとにAI(人工知能)による解析が行なわれ、リアルタイムで棋譜を作成するというのです。年間3千局にもおよぶといわれるプロの対局ですが、多大な記録係の負担も軽減されるでしょう。
なぜなら、AI(人工知能)将棋は強さを調節することは出来るのですが、自然な負け方が出来ず対戦相手にすぐにバレてしまうからです。対戦相手の強さに合わせ手加減して負けるようなことは今のところ人間の方が得意かもしれません。
ですが、AI(人工知能)将棋もここまで進化したのですから、これからさらに進化して、将棋をさらにおもしろくしてくれるようるでしょう。
さて、AI(人工知能)が将棋界にどのような影響を与えたのか、そしてプロ棋士たちがどのようにAI(人工知能)を活用しているのかについてお伝えしてきました。
- AI(人工知能)将棋は、すでにプロ棋士の強さを超える段階にきている
- プロ棋士の間では、AI(人工知能)を棋力を高める手段として活用されている
- AI(人工知能)を日頃から活用している若いプロ棋士は、安定性が高くミスの少ない将棋ができる人が多い
- 人間性が垣間見える将棋を見たいファンがいる限り、プロ棋士が消滅することはなく、むしろAI(人工知能)の発達によってさらにおもしろくなる可能性もある
一時はプロ棋士が消滅か、なんていわれていたのもどこ吹く風。むしろプロ棋士はAI(人工知能)が打つ将棋を研究し、それを自分の力にしていこうとしています。
AI(人工知能)の側も、ただ強さだけを追求する段階はすでに終わりを告げており、対局における負担を軽減したり、あるいは将棋そのものをより楽しいものにするための研究へとシフトしようとしているのです。
プロの世界のみならず、将棋をより楽しめるAI(人工知能)が次々と生み出されたら、将棋ファンはもっと増えていくかもしれないですよね。
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× 手を打ってくる
○ 手を指してくる
× 打ち手
○ 指し手
将棋は打つものではなく指すものです。