企業間の受発注業務で、発注書などの書類をメールやFAX、郵便で送るのは煩わしいですよね。でも、そんな悩みを解消するのが電子データを用いたEDIシステムです。
そんなEDIシステムとは一言でいうと、契約書や請求書などの帳票のやり取りを、専用回線などを用いて処理できるシステムのこと。なので、紙の書類を作成する必要がなく、データで管理できるので業務の効率化やコスト削減を図ることができます。実際に、デジタル化の推進が求められる中でこのEDIシステムを利用する企業は確実に増えているとのこと。
ですから、EDIシステムを導入すれば、労働時間も短くなり「働き方改革」の実現に一歩近づくこと間違いありません。
そこで今回は、EDIシステムとは何かをわかりやすくお伝えするとともに、おすすめのEDIシステムも含めてご紹介します。
EDIシステムとは
まず、EDIシステムとは何なのかを説明しましょう。
EDIとは「Electronic Data Interchange」の略で「電子データ交換」の意味。つまり企業間取引で発生する、受発注書や納品書、請求書などのやり取りを、専門回線や通信回線を用いて自動化したシステムのことです。
また、EDIでは注文書などが取引先のコンピューターに取り込まれてデータとして登録されます。なので、従来のように郵送やFAXで送るために書類をわざわざ作成する必要もなく、迅速な取り引きが可能になります。
特定の企業間だけで取引する「個別EDI」
個別EDIとは、通信を行う識別コードや形式を取引先ごとに設定するタイプのEDIです。なので、取引先が少ない場合は取引がスムーズになるメリットがありますが、逆に取引先が5社あれば5パターンのEDIを構築する必要があります。これでは時間やコストがかかりすぎるので、取引先の多い場合には向いていません。
異なる企業間でも取引できる「標準EDI」
標準EDIとは、異なる企業間での規格やデータ交換形式を標準化したEDIのことで、「個別EDI」の欠点を解消できるように工夫されています。ですから、同じ規格を利用する複数企業との連携が可能になり運用の幅も広がるでしょう。
同業界なら多くの企業と取引できる「業界VAN(標準EDI)」
「標準EDI」の中でも、さらに特定の業界に特化したネットワークサービスが「業界VAN」です。業界で共通の商品コードや取引先コードなどを標準化できるため、同じ業界であれば多くの企業と接続できます。
インターネットを通じて取引を行う「Web‐EDI」
「Web‐EDI」とはインターネット回線を使った仕組みで次世代型EDIとも呼ばれ、ほとんどがクラウドベースで提供されています。また、専用システムをインストールする必要がなく、インターネットの通信費用のみで利用できます。
EDIの導入・運用コストが低く抑えられて、最近では中小企業やスタートアップ企業にシェアが拡大しています。それに、インターネット通信の暗号技術により、最新のセキュリティーで通信できるのも魅力。
ではなぜ今、このようなEDIシステムが企業に浸透しつつあるのか、理由を見ていきましょう。
今、EDIを必要とする理由
現在、日本では「働き方改革」に向けて業務の効率化やペーパーレス化が求められていますよね。そんな中、EDIを導入すれば次のような理由から、今までの働き方を変える大きな原動力になります。
書類のやり取りがなくなり業務効率化につながるから
EDIを導入していない企業間取引では、まずA社が発注書を作成、送付。送付された内容をB社が社内システムに入力。今度はB社が請求書を作成、送付…など、企業間双方に大きな負担がかかっていましたよね。しかしEDIを導入すれば、専用回線やインターネットで処理できるので、正確でスピーディーな取引が可能。それに、人が介在する作業が減るので人的ミスも減り、ミスをチェックするための時間も不要になります。
ペーパーレス化でコスト削減につながるから
EDIを導入すれば、請求書や契約書などさまざまな書類が電子化され、ペーパーレスになるでしょう。また、書類をコピーして保管するという一連の作業もなくなるので、書類の保管場所も不要になります。それに伴って、コピー用紙代や郵送・FAX送信の通信費も削減できます。
企業間のシステム連携で在庫管理や生産計画が最適化できるから
EDIは単なる受発注システムではなく、企業間で正確なデータを交換することで、需要予測、生産計画、販売計画、在庫計画の最適化を行うことができます。たとえば、ある自動車部品メーカーでは、EDIのデータから3か月先の需要を予測して部品を生産し、無駄のない経営を行っています。このように、EDIで受発注のデータを一本化すれば、最適な生産計画が立てられるので、欠品や過剰在庫も抑えられますよね。これは、流通の最適化にもつながるに違いありません。
以上のようなことから、EDIは今後ますます企業に導入されるでしょう。では、次に導入時に役立つおすすめのEDIシステムをご紹介します。特徴ごとに分けていますので、ぜひ参考にしてください。
費用面でおすすめのEDIシステム一覧
とにかくコストをかけずに、シンプルに始めたい方におすすめのEDIシステムです。
Tradeshift(トレードシフトジャパン株式会社)
Tradeshiftは世界150万社が利用するシステムで、「B2B(企業間取引)のFacebook」と呼ばれる企業向け商取引プラットフォームです。
嬉しいのは、システムの基本サービス(アカウント作成・電子文書送受信・メッセージの送受信・APIシステム連携など)が無料で使用できること。しかも、Tradeshiftと自社システムとのデータ連携が簡単にできるので、海外の取引先でも短時間で電子取引を始めることができます。
それに、Tradeshiftの画面操作は直観的でとてもシンプル。マニュアルなしで誰でも利用できます。そのため、米国のアパレルメーカーでは5000人のユーザーをトレーニングなしで導入した実績もあります。
このように、使いやすくコスト負担をかけないTradeshiftは、中小企業からグローバル企業まで幅広く採用されています。
EXtelligence EDIFAS(株式会社エクス)
EXtelligence EDIFASは、知的プラットフォーム「EXtelligence(エクステリジェンス)」で提供するサービスの一つで、低コストで利用できるクラウド型EDIです。
EXtelligence EDIFASの大きな特徴は、バイヤー(買い手)・サプライヤー(売り手)機能が月額2,000円から利用できること。それに、サプライヤー(売り手)の場合は、受注・受注納期回答機能のみを無料で利用できる「EXtelligence EDIFAS FREE」もおすすめです。合わせて、サプライヤー(売り手)向けに、導入から運用までの操作をサポートするツールもあるので安心ですよね。
らくうけーる(JFEエンジニアリング株式会社)
らくうけーるは、生鮮流通会社向けの受発注クラウドサービスです。初期費用や導入費用は0円で、最大2か月まで無料お試し期間もあるので、まずトライアルとして導入するのも良いでしょう。特にリーズナブルに「Web-EDI」を使いたい企業におすすめです。
また、クラウドサービスなので専用システムのインストールは不要。PCからだけでなくスマホやタブレットからも利用できます。しかも取引先が「Web-EDI」に対応していなくても、FAXによるやり取りが可能で、今使っている自社システムとも連携できます。これなら、EDI導入へのハードルも低くなりますよね。
セキュリティがしっかりしているEDIシステム一覧
EDIシステムのようにデータを扱う上で気になるのはセキュリティでしょう。次にセキュリティ対策が万全なEDIシステムをご紹介します。
FNX e‐帳票FAXサービス(ネクスウェイ社)
FNX e‐帳票FAXサービスは、ITトレンドの「年間ランキングFAX配信部門」でトップの成績を獲得したサービスです。
まずすごいのは、高速で大量のFAXを短時間で送信できるということ。なんと200カ所まで一斉配信できます。また、クラウド型サービスなので、いつでもどこでもFAXの送信や確認作業ができシステムで一括管理が可能です。
こんな大量のデータを扱うFNX e-帳票FAXサービスは、セキュリティーも万全です。たとえば、プライバシーマークやASP・SaaSに関する認定取得。また、システムダウン時に機能を維持する冗長化や、天災に備えたバックアップなどの対策もしっかりなされています。さらに、専用サポートチームが24時間365日体制で対応しているのでトラブル時にも安心です。
EdiGate/POST(大興電子通信株式会社)
EdiGate/POSTは、発注企業向けの「Web-EDI」サービスで、帳票データをPDF化してインターネットで自動配信します。さらに、ExcelやWordで作った書類やサイズ容量の大きい図面など、種類の異なる形式のデータも送受信することができます。
なので、EdiGate/POSTはセキュリティ対策も重視していて、取引先とのデータ交換の際には、SSL通信の暗号化やID、パスワードによる保護、ウイルスチェックによる保護を実施しています。これで情報漏洩の不安もなくなるでしょう。
データ相互性に優れているEDIシステム一覧
せっかくEDIシステムを導入しても、規格が合わず取引先のEDIに接続できなければ意味がありませんよね。ここからは、取引先のEDIに対応しやすいEDIシステムをお伝えします。
MCS(株式会社東計電算)
MCSは、ハードウェアやソフトウエア・通信手順・ファイル形式などの制約を受けることなくデータ交換ができる次世代型EDIシステムです。
つまり、異なるシステム間のデータ交換をMCSに統合することで、取引相手ごとにシステムを構築をする必要がなくなるということ。これは、設備投資のコスト削減につながりますよね。まさに、業界問わずさまざまな業種で利用できるEDIシステムとも言えます。
また、MCSは「Web-EDI」の代行オペレーションにも対応しており、自社のデータセンタースタッフがデータ連携業務を代行するので、送受信作業の自動化が実現します。さらに、データセンターの専任スタッフにより、トラブル時でもスピーディーな対応が可能なので信頼して利用できます。
Internet EDI Agent Service(デジタルトランスコミュニケーションズ株式会社)
Internet EDI Agent Service(デジタルトランスコミュニケーションズ株式会社)は、多彩なフォーマット変換や7種類の通信プロトコルに対応しているので、取引先のあらゆる種類のEDIに接続できます。
例を挙げると、ファイルフォーマット変換機能として、固有ファイル・CSV・EDIFACT・XML・流通BMS・百貨店BMSなどに対応していて、これらのファイルは相互変換が可能です。ですから、ファイル形式が取引先と異なっていても安心してデータの送受信ができるに違いありません。
さらに、「Web-EDI」としても、送受信機能・代行クライアント機能・トランスレーション機能・通信プログラム対応・バックアップ・メッセージ通知機能など、多くの機能を搭載。同時に、ネットワークやストレージの二重化、システムの冗長化などセキュリティ対策も充実しています。
JFT/SaaS(株式会社TOKAIコミュニケーションズ)
JFT/SaaSは、通信・通信管理・データ管理の各機能や画面表示・接続APIなどのUI(ユーザーインターフェース)を搭載し、さまざまな対外データと連携できます。
そして、JFT/SaaSの特徴は、全銀・JCA・FTP・Web-EDI・メール・SFTP・HULFT・AS2など豊富な通信プロトコルに対応していること。なので、企業内のオンプレミスシステム(自社運用システム)や取引先のシステムとのデータ連携もスムーズに進みます。さらに、クライアントの要望に合わせてカスタマイズも可能です。
このように取引先が増えても、JFT/SaaSを利用すれば、新たな設備投資をすることなく契約変更のみで対応でき、簡単にデータ交換できるのは強みですよね。
その他のおすすめEDIシステム
ここまでいくつかご紹介しましたが、他にも特徴のあるEDIシステムがあります。
グローバル対応ができる「B2B Managed Services」(オープンテキスト株式会社)
B2B Managed Servicesは、グローバルレベルで使用する通信プロトコルやファイルフォーマットに対応しているので、海外の取引先とのEDI連携が可能です。また、60万社以上とのグローバルな接続実績、200か国以上との多言語対応プロジェクト実績もあり、多くの経験や豊富な知識が強みになっています。
製造業の購買業務に特化した「Hi‐PerBT ウェブ購買」(株式会社日立ソリューションズ西日本)
「Hi-PerBT ウェブ購買」は、製造業における購買業務の見積や注文・納期に関する管理をWeb上で行うことができるWeb-EDIサービスで、製造業で購買業務の効率化を図りたい会社におすすめです。
たとえば「Hi‐PerBT ウェブ購買」は、発注企業関連(見積・注文・検収・支払・図面配信・アンケートなど)、取引先関連、帳票発行の各機能をサポートするとともに、購買業務の改善に必要な機能も搭載されているので、短期間に効率化の効果を実感できるに違いありません。
さらに、「Hi‐PerBT ウェブ購買」は、専用ソフトウエアをインストールする必要がなく導入後すぐに取引を始められます。また、システムも使いやすく「数回のクリックで納品まで完了」など取引先との処理も簡単。誰でも使いやすい上に、英語、中国語など多言語にも対応しているので、ビジネスの幅も広がりますよね。
EDIシステムを導入する前にやるべき準備
では、実際にEDIシステムを導入するにあたり、どんな準備が必要なのかをお伝えしましょう。
EDIとは、ここまでお伝えしてきたように企業間の取引を自動化するシステムです。ですから企業単体でEDIを導入しても意味がなく、取引を行う企業が互いにEDIを導入する必要があります。また、取引先の企業がすでにEDIを導入している場合は、回線や通信機器など取引先の環境を調べて、それに合うEDIシステムを選ぶことが大切です。
そして、企業間で確実にデータのやり取りをするためには、通信方法や形式などを決めて、データを送受信するための環境を整えておく必要があります。特に、取引先とデータの識別コードはしっかり決めましょう。また、「Web‐EDI」を導入する際には、「Web‐EDI」の通信プロトコルが、取引先企業に対応しているかの確認も重要です。
いずれにせよ、今後さまざまな企業と取引をスムーズに行うには、互換性のあるEDIシステムを準備するのがベストです。当メディア(AIZINE)の運営会社のお多福ラボでも、このようなEDIシステムの導入サポートを行っています。不安な点がある方は、まずこちらからご相談ください。
さて今回は、EDIシステムとは何なのかを説明し、おすすめのEDIシステムを含めてご紹介しました。
まず、EDIとは「電子データ交換」の意味で、EDIシステムとは企業間取引で発生する、受発注書や納品書、請求書などのやり取りを、専門回線や通信回線を用いて自動化したシステムのことです。
また、EDIシステムを導入することで、書類のやり取りがなくなりペーパーレス化につながるため、コスト削減が実現します。それに、EDIにより企業間のシステム連携が可能になるので、最適な生産計画が立てられ業務の効率化につながります。
では、おすすめのEDIシステムをもう一度振り返ってみましょう。
費用面でおすすめのEDIシステム
- Tradeshift(トレードシフトジャパン株式会社)
- EXtelligence EDIFAS(株式会社エクス)
- らくうけーる(JFEエンジニアリング株式会社)
セキュリティがしっかりしているEDIシステム
- FNX e‐帳票FAXサービス(ネクスウェイ社)
- EdiGate/POST(大興電子通信株式会社)
データ相互性に優れているEDIシステム
- MCS(株式会社東計電算)
- Internet EDI Agent Service(デジタルトランスコミュニケーションズ株式会社)
- JFT/SaaS(株式会社TOKAIコミュニケーションズ)
その他のおすすめEDIシステム
- グローバル対応ができる「B2B Managed Services」(オープンテキスト株式会社)
- 製造業の購買業務に特化した「Hi‐PerBT ウェブ購買」(株式会社日立ソリューションズ西日本)
このように、EDIシステムには多くの種類がありますが、取引先のEDIシステムに合う製品を導入することで、企業間のデータ連携がスムーズに進み、業務の効率化を図れるでしょう。
今後は、コスト削減だけでなく同業他社に遅れを取らないためにも、EDIシステムを導入する企業は増えると考えられます。そんなEDIシステムは、小さなデジタル化とも呼ばれますが、企業の大きなデジタル化を実現する第一歩になるに違いありません。