業務効率化を図ってITツールの利用を検討するときに、ネックとなるのが導入費用ですよね。課題やニーズに合ったツールを見つけても予算が足りず導入を断念、という事態は避けたいもの。そういった場合に頼りになるのが、IT補助金です。
独立行政法人中小企業基盤整備機構の調査によると、回答者972社のうちIT活用に「取り組んでいる」との回答が全体の46.2%を占めています。半数よりやや少ない数字ですが、ITを活用している企業は増えつつあるといえるのではないでしょうか。
IT補助金は企業のIT投資を後押しする制度なので、うまく活用することで経営状況を改善させることができます。そこで今回はIT補助金とは何か、活用例、メリット・デメリットなどについて詳しくお伝えします。
IT補助金て何
ツール導入が困難な中小企業や小規模事業者などを資金面でサポートし、業務効率化、生産性向上、事業体制改善などを支援するための取り組みです。企業だけでなく個人事業主も補助金の対象に含まれ、さまざまな業種・業界に幅広く対応しています。
ただし補助金の交付には審査があります。必ず支給されるものではないことを覚えておきましょう。
どうやって活用するのか
IT補助金の利用したツール導入は、企業の業務プロセスをどのように変化させるのでしょうか。考えられる効果は以下の3つです。
社内の情報共有がスムーズに
スケジュール、書類、ワークフローなどの管理方法が定まっていないと、必要なときに必要な情報が行き届きません。また近年増えつつあるリモートワークなどで担当者が不在だと、確認がとれず業務が滞ってしまいます。
煩雑になりがちな経理業務の負担が軽減される
IT補助金の対象となる中小企業では、多くが伝票の処理や仕分けなどを手作業で行っています。入力作業は正確性が求められるものの、人的ミスが発生してしまうことがあります。また人材の確保が難しいため一人の社員が経理、人事、総務などを兼任し負担が大きくなってしまうというケースも。
顧客からの問い合わせに素早く対応できる
カスタマーサポートの対応品質は企業の信頼性につながっています。顧客からの問い合わせに素早く対応できないと、信用を失ってしまうかもしれません。
IT補助金を利用するメリットやデメリット
ここではIT補助金を利用するメリットとデメリットを説明していきます。まずメリットは以下の2点。
自社の課題に適したITツールを導入できる
IT補助金の最大のメリットは通常であれば手が届かない高額なシステムの導入も可能になる、という点です。IT補助金はあくまで業務に役立つツールを導入するためのものですから、ただ金額の高いものを選べばいいというものではありません。
返済する必要がない
返済について考える必要がなく、資金を存分に活用できるところも嬉しいポイントですよね。
続いてデメリットは以下の2点です。
補助金交付から3年間は補助金活用による効果を報告しなければならない
報告内容は売上、原価、労働時間など経営に関する具体的な数値です。報告自体はデータを入力するだけで完了するので、書類の作成業務などは発生しません。
しかし導入が完了してから3年に渡り継続して報告しなければならないので、やや面倒に感じられるかもしれません。
申請期限を過ぎると補助金を受け取れない
例えば2020年度の申請期間に関する情報は以下のとおりです。
IT導入支援事業者の登録申請:2020年5月11日(月)受付開始~2020年8月21日(金)15:00まで
ITツール(ソフトウエア、サービス等)の登録申請:2020年5月11日(月)受付開始~2020年12月4日(金)17:00受付締切
一次公募交付申請期間:2020年3月13日(金)~2020年3月31日(火)17:00まで
(IT導入補助金2020より)
上記のように申請期限は日付だけでなく時間まで細かく決められているので、申請を優先しなければならずかなり忙しくなってしまうかもしれません。ITツール導入担当者が他の仕事を抱えている場合は、何らかの支障が出る可能性も。
※2021年の申請期間はIT導入補助金のサイトをご確認ください。
IT補助金を活用した事例3つ
ここからは実際の現場でどのように補助金が活用されているのかを3つご紹介します。ITツール導入時の参考にしてみてください。
介護業界における活用事例
介護サービスの業務拡大により、本来の仕事から離れた事務作業をこなさなければならず負担が増加。サービスの品質低下も顕著に現れていました。
今までも業務をサポートするようなツールは使用していたのですがヘルパーのシフト管理などで限界を感じたため、新たなITツール導入に踏み切りました。
卸・小売業界における活用事例
事務作業が属人化されていたため担当者交代による処理の遅延、社内ルールが曖昧で引き継ぎがうまくいかない、などの課題を多く抱えていました。
医療業界における活用事例
患者数の増加によってカルテを探す手間と時間が倍近くかかるようになってしまいました。保管スペースや紛失の心配もあり、これでは本来の業務に支障をきたすと判断したためカルテの電子化を決意。
対応のシステムを申請する方法
ここからはIT補助金を申請する手順について説明します。手続きは以下のとおりです。
①IT導入支援事業者及びITツールを選ぶ
選定の際には公式サイトの「IT導入支援事業者・ITツール検索」を利用しましょう。
②gBizIDプライムアカウントを取得する
③交付申請する
入力した情報に不備があると不採択となるので、支援事業者とよく話し合って不備がないようにしましょう。
④ITツールを導入する
⑤事業実績を報告する
⑥補助金が支給される
⑦事業実施効果を報告する
IT補助金申請で気をつけておくべきこと
大変便利なIT補助金ですが、申請時に気をつけておくべきことがあります。注意点は以下の3つです。
IT補助金の交付決定前に契約、支払いを行ったものは補助の対象外となる
補助金を申請してから交付決定されるまでに「契約」「発注」「納品」「支払い」を行うことは認められておらず、補助金を受けられなくなってしまいます。
スケジュールをよく確認し、交付決定前にツールの契約や支払いを行わないようにしてください。
一度の交付申請期間内における申請回数は1事業者あたり1回のみ
2020年度では10次締切分まで募集されていたので、今後IT導入補助金の利用を検討する場合は必要書類を精査して複数回申し込んでみてはいかがでしょうか。
導入費用を一時的に全額負担しなければならない
IT補助金は国の施策であるため、支払われた補助金が正しく使われたのか把握する必要があります。
導入にかかる費用を事業者自身が一時的に支払う必要があることを覚えておきましょう。
今回はIT補助金についてお伝えしました。ITツール導入は業務の効率化、生産性向上を促し、企業の経営状況をより良くするものです。しかしツール導入が必ずよい効果をもたらすとは限りません。
独立行政法人中小企業基盤整備機構の調査では「IT活用する中で課題がある」との回答が70.6%、具体的な課題の内容は「コストの負担が大きい」(66.6%)、「導入したITを使いこなせない」(35.3%)という結果が出ています。つまりIT導入企業の約7割が導入後に課題を抱えているのです。
ITツールは導入して終わりではなく、運用していく中でその効果を見極めなければなりません。補助金を得ることをゴールとするのではなく、日々の業務を改善する方法の一つとして検討してみてください。
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