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人間がAIから学習することで開かれる新しい未来とは

人間がAIから学習することで開かれる新しい未来とは

今やメディアでAI(人工知能)の話題を目にしない日はありませんよね。既にAI(人工知能)は医療(例:医療画像診断)、マーケティング(例:お勧め商品提案)、コールセンター(例:自動QA応答)、製造(例:不良品検出)などにおいて大きな効果を生み出しています。

今後、AI(人工知能)はどのような進化を遂げてゆくのでしょうか。ヒントは、AI(人工知能)の得意分野を知ることにあるかもしれません。それ故、私たちもAI(人工知能)から学習するポイントが出てくるでしょう。

そこで今回は、AI(人工知能)の得意分野である以下の4点についての適用事例と、それぞれの事例において私たちがAI(人工知能)から学習することができる点について、一緒に考えてみましょう。

  • ビッグデータの処理:膨大なデータから新たな価値を導き出します
  • 予測:学習データに基づき未来を予測します
  • 画像認識:画像や動画から特徴を把握し対象物を識別します
  • 無数の試行錯誤より最適解を抽出します(例:囲碁などのゲームソフトなど)

AI(人工知能)の得意分野:ビッグデータの処理

面接のイメージ

まず最初に、AI(人工知能)の得意分野の1つ目、ビッグデータとの組み合わせを人事へ適用する事例について見てましょう。

従来より人事の採用における書類選考や面談は、担当者の勘や経験に頼る部分が多く客観性に問題がありましたが、AI(人工知能)とビッグデータとの組み合わせにより客観性と正確さを持つ採用が可能となっています。

例えば、過去の採用実績データをもとに、入社後に活躍が期待できる特性(例:気質/コンピテンシー/価値観など)について採用基準を設定したうえでマッチングを行うことにより、客観性と正確さを持つ採用を効率的に行うことが可能となります。

また、ユニークな例としては、面接時の指の微妙な動きを測定し判断に活用しているシステムもあります。質問への回答を取り繕うことができても、私たちが無意識に行ってしまう指の動きには私たちの潜在意識が表れるようです。この微妙な指の動きの測定/蓄積/解析が、AI(人工知能)とビッグデータとの組み合わせにより初めて可能となったのです。

今回の例のような、従来の常識では測定対象ではなかった指の微妙な動きなどの情報も活用できる点は、今後私たちがAI(人工知能)から学習することができる点でしょう。ビッグデータの対象をもっと広い視野でとらえることにより、ユニークなサービスが生まれるかもしれません。

AI(人工知能)の得意分野:予測

心拍数のイメージ

次に、ヘルスケアに関する予測機能事例について見てみましょう。

カリフォルニア大学と新興企業Cardiogramは、Apple Watchで取得した心拍などのデータをAI(人工知能)で処理することにより、高血圧や睡眠時無呼吸症候群を約80~90%の精度で予測できる可能性がある、という研究成果を発表しました。

Apple Watchには血圧や呼吸の測定機能はありませんが、高血圧や睡眠時無呼吸症候群になると心拍のパターンが変化する、という過去の研究結果を利用したものです。

専門家からは研究で相関が見られているものの医学的に証明されたものではないこと、また、Apple Watchの心拍データは装着者によって精度にばらつきがある点についての指摘もあり、正確な診断のためには血圧計による測定、また睡眠専門のクリニックによる検査が必要と指摘しています。

とはいうものの、身につけているだけのApple Watchが定期的に測定し結果を通知してくれる機能は、血圧計による測定や専門クリニック受診などに比べると極めて敷居が低く、試してみたい人も多いのではないかと想像できますよね。

近年の健康意識の高さや、個人で気軽に健康チェックがそれこそ毎日行うことができるという点で、ヘルスケアアプリには大きなビジネスチャンスがあることも、AI(人工知能)から学習することができるのではないでしょうか。

AI(人工知能)の得意分野:画像認識

顔認識のイメージ

3つ目の得意分野である画像認識能力は、既にAI(人工知能)が私たち人間の能力をはるかに上回っている状況です。画像認識の技術をAI(人工知能)から学習することは難しいかもしれませんが、仕組みを正しく知ることで最適な活用方法を知ることができます。ここでは、ついに、あの中国が世界一の技術を持つことになった顔認証機能について見てみましょう。

現在、顔認証機能を世界で最も推進しているのが中国で、国内に設置されている2000万台の監視カメラの映像をAI(人工知能)で解析するプロジェクト「Sharp Eyes」の開発を進めています。「Sharp Eyes」のシステムを支えている中国のAI(人工知能)ベンチャー企業「SenseTime」の顔認識技術は、ついに米国を抜き世界最高レベルと評価されています。

現在中国では顔認証機能が治安維持(容疑者を追跡や挙動不審者の検出など)、鉄道の改札システム、銀行のATMシステム、公衆トイレおよびスーパーマーケットで試行されており、この流れは今後世界中に展開されていくものと思われます。

中国政府は「Sharp Eyes」を治安維持だけでなく一般市民の行動監視にも使用していますが、国民のプライバシー侵害に対する意識が低いこともあり大きな反対運動は起きていません。その結果膨大な数の顔写真データが蓄積され「Sharp Eyes」の精度向上に大きく貢献しているようです。中国政府は国策として2030年までにAI(人工知能)で米国を抜いて世界トップになることを目ざしています。

最近、東大松尾准教授による「日本はAI(人工知能)で世界に勝てない」という記事が話題になりましたね。この中で松尾准教授は過去にインターネットで日本が世界に負けた理由と同じで、日本の新しい技術への拒否感の強さを指摘されています。この日本の状況と比較すると、様々な点で問題指摘されている中国ではありますが、国策として強力にAI(人工知能)開発を推進する手法には学ぶべき点が大きいでしょう。

AI(人工知能)の得意分野:無数の試行錯誤より最適解を抽出

囲碁のイメージ

最後はAI(人工知能)の得意技である、無数の試行錯誤より最適解を抽出する能力について考えてみましょう。

2016年、ディープマインド社のAI(人工知能)「AlphaGo」が韓国のプロ囲碁棋士イ・セドルを破ったニュースは非常に話題になりましたね。「AlphaGo」は自己対局などにより約3,000万種類の碁の手を学習のうえ、イ・セドルとの対局に臨みました。

この約3,000万種類の碁の手の学習という、無数の試行錯誤により習得した新手により「AlphaGo」はイ・セドルに圧勝することができました。イ・セドルおよび解説者の全員が「AlphaGo」の新手を悪手(ミス)と誤解してしまったこと、また、(新手と分かっていても)新手に全く対応できなかったことにより完敗の結果となってしまいます。

この無数の試行錯誤を行う手法ついて、今後私たちはAI(人工知能)から学習する必要があると言われています。私たちは日頃のビジネス活動における戦略や組織構造などを、例えば選択と集中という言い方にもあるように、私たち人間のデータ処理能力に合わせた考え方で検討してしまう傾向があります。今後はAI(人工知能)の無数の試行錯誤の手法を活用することにより、ビジネス戦略や組織構造において、今まで誰も考えつかなかった新手を生み出すことができるのではないか、と期待されています。

今回はAI(人工知能)の得意分野である上記4点の適用事例と、それぞれの事例において私たちがAI(人工知能)から学習するべき点について、一緒に考えてきました。

    • ビッグデータの処理

人事の採用への適用により、客観性と正確さを持つ採用が可能となります。従来の常識では測定対象ではなかった、面接時の指の微妙な動きなどの情報も活用できる点は、私たちが今後AI(人工知能)から学習するべき点でしょう。ビッグデータの対象をもっと広い視野でとらえることにより、ユニークなサービスが生まれるかもしれません。

    • 予測

Apple Watchで取得した心拍などのデータをAI(人工知能)で処理することにより、高血圧や睡眠時無呼吸症候群を予測できます。近年の健康意識の高さや、個人で気軽に健康チェックが毎日行うことができるという点で、この事例からはヘルスケアアプリには大きなビジネスチャンスがあることをAI(人工知能)から学習することができます。

    • 画像認識

現在、顔認証機能を世界で最も推進しているのが中国で、技術的には米国を抜いて世界一にあります。国策として強力にAI(人工知能)開発を推進する手法には学ぶべき点が大きいでしょう。

    • 無数の試行錯誤より最適解を抽出

「AlphaGo」は無数の試行錯誤により習得した新手によりイ・セドルに圧勝することができました。この無数の試行錯誤を行う手法を今後私たちはAI(人工知能)から学習する必要があり、ビジネス戦略や組織構造において今まで誰も考えつかなかった新手を生み出すことができるのではないか、と期待されています。

AI(人工知能)の得意分野4点について見てきましたが、4つ目の「無数の試行錯誤」は今まで誰も考えつかなかった新手を生み出す、つまり創造性につながる可能性があると考えられます。これは、クリエイターによる意見「本当に新しいものを創るためにはランダムに総当たり戦が必要」と、人工知能学者の意見「乱数を使えばいいのではないか」とも近い考えにあると思われ、本手法は新しい戦略を生み出す有力なヒントになるでしょう。

参照元 人工知能(AI)とビッグデータが、人事を『科学』にする。勘と経験に頼らず人を選ベる仕組みとは
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