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新しいリハビリテーションの形が誕生!支援するロボットまとめ

新しいリハビリテーションの形が誕生!支援するロボットまとめ

病気やケガ、加齢などで今までできていたことができなくなると、意欲が低下してますますできなくなりますよね。そうならないためにも、早いうちに適切なリハビリを行うことは大切です。

とはいえ、スタッフが常に患者さんに付きそうようなリハビリでは、体力的にも時間的にも限界があります。そこで、救世主となるのがリハビリを支援するロボット。

ロボットと言えば、人や動物のカタチをしたものを想像しがちですが、リハビリを支援するロボットは、麻痺した部分に巻き付けたり、装着したり、体を上から吊り上げたりしながら、リハビリする本人をアシストするツールのようなものもあります。ロボットが正しい動きや体の使い方をサポートしてくれるので、一人で行うよりも正しい動作が身に付きやすく、大きな効果が期待できます。

この記事では、リハビリ分野で活躍するロボットについて解説するので、今までのリハビリに対するイメージや意識が変わるに違いありません。

そこで今回は、リハビリにロボットが導入され始めた理由や、代表的なリハビリ支援ロボットの紹介、さらには、ロボットと共存するリハビリの未来についてもお伝えしましょう。

リハビリテーションとは

リハビリのイメージ

最初にリハビリテーションの意味を説明します。

リハビリテーション(Rehabilitation)の語源はラテン語をもとにした英語で、re(戻す、再び)とhabilis(ふさわしい、適した)から成り立っています。すなわち、リハビリテーションは単に機能回復のための訓練ではなく、病気やケガ、高齢化などによって、身体機能が低下してしまった人々が、再び自分らしい生活を取り戻し、豊かな人生が送れることを目標とした活動を指します。

たとえば、脳卒中などで手足が不自由になった時、「もう完全には回復しないから」とリハビリをやめてしまっては、筋肉が収縮してさらに状態が悪化するかもしれません。しかし、少しずつ手足を動かし、自分に合ったペースでリハビリを続ければ、残された能力を最大限に回復させて一つずつできることが増えるでしょう。身の回りのことで、できる動作が増えると生きがいにもつながりますよね。

他にも、リハビリテーションは「障害を予防する」という重要な役割があります。私たちの体は動かさない状態が続くと、筋肉が衰えたり関節が硬くなって転倒や骨折のリスクが高まります。高齢者は、それがきっかけで寝たきりになるかもしれません。なので、早い時期から適切なリハビリを行えば、運動機能の低下を防ぐことができるでしょう。

でも、こうしたリハビリを行うには本人の意欲や力だけでは限界があり、多くの人々の支えが必要になります。

例を挙げると、歩行訓練などを行う理学療法士、着替えや食事など生活活動を支援する作業療法士、話す、聞くなど言葉の訓練をする言語聴覚士などの専門職があります。他にも医師や看護師、介護福祉士、それにボランティアや家族の人々のサポートも欠かせません。

さらに、最近ではリハビリを支援するロボットも次々と登場しています。そこで、ロボットがリハビリ分野で活躍するようになった理由を、次で見ていきましょう。

なぜ、リハビリにロボットが使われるようになったのか

ロボットのイメージ

リハビリといえば、介助スタッフが患者さんの手足をほぐしたり、体を支えながら歩行訓練を行ったり、何かと大変そうなイメージがありますよね。でも、ロボットを導入すれば、以下のようなメリットが得られるため、多くのリハビリ現場で求められるようになりました。

療法士などの負担が軽くなる

近年では、病気やケガで障害を負った人だけでなく、運動機能の維持・回復を目指す高齢者も増え、リハビリ需要がより高まっています。それにより、療法士や医師、看護師などリハビリをサポートするスタッフの負担が増え、多い日には1人で1日20人以上のリハビリを行う日もあるのだとか。これでは体が悲鳴を上げるでしょう。

でも、リハビリを支援するロボットなら、疲れることなく常に同じ力で患者さんの運動をサポートしてくれるので、介助スタッフの肉体的負担も軽減されます。さらに、ロボットを活用すれば、患者さん一人でも自主練習できるのでリハビリ効果の向上が期待できます。

患者の安全が確保される

リハビリを行う時には、患者さんが転倒したり症状が悪化することがないよう、細心の注意を払う必要があります。しかし、ロボットであれば、利用者の体格に合わせて装着する機器のサイズや力加減を調整できるので、人が行うよりも安全にサポートできます。それに、利用者の異常な動きを検知してスタッフに通知できるので、常に監視する必要がなく、介助者の精神的な負担も軽くなるに違いありません。

データ集積によりリハビリ内容の最適化を図れる

ロボットを活用すれば、どんな練習をどのくらい行ったのかなど、リハビリの内容をデータ化して集積できます。なので、治療しながら客観的な評価が可能になり、訓練内容や項目、実施時間や実施順序の最適化を図れます。また、ディスプレイ画面のあるロボットなら、装着者も自身の状態を視覚的に確認できるので、効果が目に見えればモチベーションも上がるでしょう。

高度で複合的な治療を行える

理学療法では、超音波や低周波などの振動で治療を行うこともありますが、リハビリ支援ロボットなら、人が出す微弱な信号を利用して歩行をアシストしたり、ハーネスで体を吊り上げて自立歩行を促すこともできます。それに、様々なフィードバック機能やゲーム機能を搭載したロボットもあるので、目標を達成するまでの期間が短縮されるでしょう。

こうしてみると、リハビリを支援するロボットを導入すれば、患者さんにより質の高いリハビリを提供できるので、モチベーションを維持しながら、厳しい練習にも取り組めるに違いありません。

続いて、実際に活躍する主なリハビリ支援ロボットをご紹介します。

代表的なリハビリ支援ロボット:装着型サイボーグHAL

装着のイメージ

装着型サイボーグHAL(CYBERDYNE株式会社)は、体に装着することで装着者の運動機能を支援するロボットです。

HALは種類も豊富で、HAL自立支援用単関節タイプ(腕や脚の関節に装着)、HAL自立支援用下肢タイプPro(腰から下肢に装着)、HAL自立支援用腰タイプ(腰に装着)などがあります。

中でも、HAL自立支援用下肢タイプProは、腰幅や足のサイズなど体格に合わせて装着できる機器で、歩行動作が不自由になった人の下肢運動をアシストしますが、大きな特徴は「脳が動きを学習する」ということ。

例えば、人が「歩きたい」と考えると、脳からの信号が歩くために必要な筋肉に伝わります。その際、微弱な生体電位信号が皮膚表面から漏れ出てきますが、皮膚に貼り付けたセンサーがその信号を読み取ると、装着者の意思に従った動作をサポートします。

さらに、この動作を繰り返すことで、脳が歩くときの信号の出し方を学習します。これこそが、HALなしでも自分の足で歩く「最初の1歩」につながります。それに自分で動かせたという喜びは、「次の1歩」への後押しになりますよね。

また、HAL付属の専用モニターを利用すれば、装着者も画面を通して自分の状態を一目で確認できるので、フィードバックしながら効果的な自主練習ができます。HALを装着したからと言って、すぐに回復するわけではありませんが、こうした積極的なリハビリを続ければ自立度も高まるでしょう。

ちなみに、HAL自立支援用単関節タイプは、小型で軽量なのでベットに寝たままでも膝や肘、足関節のトレーニングが可能。時間と場所を選ばないので効率も良いですよね。さらに、HAL自立支援用腰タイプは、腰に装着して立ち座りなどをアシストしますが、リハビリを行う本人だけでなく、介助する人の腰部の負荷も軽減します。コンパクトで軽量なので、病院だけでなく施設など様々な場所で活用されています。

代表的なリハビリ支援ロボット:ウェルウォークWW-2000

歩く訓練のイメージ

ウェルウォークWW-2000(トヨタ自動車株式会社)は、脳卒中などによる下肢麻痺のリハビリを支援するロボットですが、歩行練習だけでなく楽しく訓練できるゲーム機能も備えています。

まず歩行練習では、ハーネスで患者さんの体を吊り上げて支え、ランニングマシーンのような動く床の上を歩きます。また、膝には曲げ伸ばしをサポートするロボット脚を装着し、ロボット脚のハーネスが麻痺のある下脚の振り出しをアシストします。もちろん患者さんに合わせて速さ調整も可能なのでこれなら転倒の心配もなく、安全を確保しながら訓練できますよね。

それに、ランニングマシーン前方に設置されたモニター画面には、自分の歩行状態が映し出されますが、これには人工知能エンジン「VisionPose」(株式会社ネクストシステム)が採用されています。

VisionPoseとは、カメラ画像から人間の骨格情報を検出して姿勢を推定するAI(人工知能)技術。これにより、重心が右に傾いているなど、一目で自分の歩行姿勢が把握できるので、理想の歩行スタイルに向けてフォームを修正できます。さらに、VisionPose搭載により、詳細なデータも収集できるので、今後のリハビリ方針も立てやすくなるでしょう。

他にも、注目したいのがリハビリを楽しくする機能。たとえば、姿勢の維持に応じてポイントを獲得するゲーム、リハビリ中の歩数をカウントして東海道五十三次の宿場を旅するゲームなども備えているので、訓練しながら気分転換を図れます。

リハビリは効果が目に見えるまで時間がかかり、苦しくて途中で辞めたい時もあるでしょう。ですが、ウェルウォークWW-2000のようなリハビリ支援ロボットを利用すれば、遊び感覚で訓練できたり回復状態が数値で確認できるので、もう少し頑張ろう!という気持ちも沸いてきますよね。

ここまで、主なリハビリ支援ロボットをご紹介しましたが、ここからは、さらなる活躍が期待されるリハビリ支援ロボットの今後についてお話します。

リハビリ支援ロボットは今後、どんどん広まる

医療のイメージ

今後日本では、少子高齢化により医療・介護人材の不足が進む一方で、脳卒中後の機能回復など、リハビリを必要とする高齢者人口は急増するでしょう。そうなると、効率的なリハビリを提供するリハビリ支援ロボットの需要は、ますます高まると予想されます。

しかし、リハビリ支援ロボットは1台、数千万円程と高額なものもあり、すべての医療機関や介護施設に導入するのは困難です。また、ロボットを活用してリハビリを行う場合も、医療保険で賄えない部分が多く、高額な治療費を自費でカバーするケースもあります。これでは、いくらリハビリを続けたくても難しいですよね。

そんな状態に風穴を開けるように、2020年の診療報酬改定では、多くのリハビリ支援ロボットが医療機器として保険適用されました。これは、ロボットを用いたリハビリが、自立度の改善に役立つことが認められた結果でしょう。

さらに、大同生命保険は、装着型サイボーグHALによる治療保障付き保険商品の取り扱いを始めました。筋ジストロフィーなどの難病にかかりHALによる治療を受ければ、一時金として100万円が支給されます。こうした流れは、ロボット技術を活用した治療の普及につながりますよね。

加えて、リハビリテーション分野のロボット開発も着実に進んでいます。とりわけ注目したいのが、自宅でも個人病院でも使えるような、コンパクトで軽く安価なリハビリ支援ロボット。たとえば、脳卒中によって麻痺した腕のリハビリを行う卓上型上肢リハビリロボット(ロボット研究者 巌見武裕氏開発)は、患者がロボットの取っ手をつかみ、力加減を調整しながら、テーブルの上で腕の動きの練習ができます。これなら、サイズが小さく使い方も簡単なので、一人でも楽に訓練できますよね。

これから先、リハビリ支援ロボットは最先端の技術を導入しつつも、さらに安価で使いやすいロボットに進化して、病院や介護施設、自宅などに広く普及するでしょう。そして、リハビリ現場でのロボットが日常的になれば、リハビリを必要とするすべての人に十分なケアができ、自分らしい生き方を取り戻せるに違いありません。

まとめ
さて今回は、リハビリ支援ロボットをご紹介し、リハビリ現場で活躍するロボットの未来についてもお伝えしました。今回の内容を振り返りましょう。

  • リハビリテーションとは単に機能回復のための訓練ではなく、身体機能が低下した人々に対して、再び自分らしい生活を取り戻すことを目標とした活動で、「障害を予防する」という役割もある
  • リハビリにロボットが使われるようになったわけとして、療法士などの負担が軽くなるから、患者の安全が確保されるから、データ集積によりリハビリ内容の最適化を図れるから、高度で複合的な治療を行えるから
  • 代表的なリハビリ支援ロボットとして、装着型サイボーグHAL、ウェルウォークWW-2000がある
  • リハビリ支援ロボットは、今後さらに進化して、コンパクトで使いやすく安価になれば、リハビリ現場に広く普及するに違いない

リハビリ支援ロボットは、患者さんだけでなく介助スタッフの負担軽減にも大きく貢献します。なのでこれから先、リハビリ現場にロボットは必需品になるでしょう。さらに、医療や介護現場の声を取り入れたロボットが次々と開発されて、誰でもどこでも訓練できるようになれば、リハビリの形は大きく変わり、すべての患者さんの生活の質が向上するに違いありません。

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