今後、数年の間に世の中を大きく変えると期待される三つのコア・テクノロジーが、IoT、AI(人工知能)、そしてロボット。どれもすでに、実用化されて社会や産業のさまざま場面に導入されていますよね。この三つが全て同時に活用できるようになるのも、そう遠い未来のことではありません。
IoTでつながったAI(人工知能)によって、物を考え、お互いに情報をやり取りするロボット。三つのテクノロジーの統合が可能になれば、夢に見た「人と一緒に生活するロボット」が実現できるのでしょうか。既に市販されている「お掃除ロボット」などは、このようなロボットが登場する日が遠くないことを感じさせてくれます。
「お掃除ロボット」の登場からわかるように、未来のための技術の要素はすでに揃っているようです。それでは今回は三つのコア・テクノロジーの統合に向けた取り組みと、実現までの道のりについてお話ししましょう。
三つのコア・テクノロジー
今後の暮らしと社会、環境に最も大きな影響を与える三つのコア・テクノロジーとしてIoT、AI(人工知能)、ロボットが期待されています。企業活動のあり方や消費生活にも重大な変化をもたらすものとして、これらの技術それぞれの進歩とその統合が期待されている分野です。
最もインパクトの大きい技術がIoT (internet Of Things)。モノのインターネットと呼ばれるこのテクノロジーは身の回りにある全てのものに情報端末としての役割を与えます。ラップトップコンピューターやスマートフォン、スマートウォッチに加え、今後はインテリジェントカーをはじめとしてマイクロチップやセンサーを内蔵したさまざまなデバイスが登場するでしょう。
そして、AI(人工知能)はデータを処理し、その中から傾向を読み取って判断することのできるアルゴリズム。IoTから得られるさまざまな情報を元に最適の選択を導いてくれるだけでなく、不要な情報を除いたり、人とコミュニケートすることを可能にします。
これらのIoTというデータ環境とAI(人工知能)というソフトウェアが結びつき、これをロボットという「身体」が活用することによって人が行っている分析、判断、実行という機能がそろうことになるでしょう。
IoT + AI(人工知能) を活用したシステム
ところで、日本国内のスマートフォン普及率は現在80%に近くなっており、一人一台のIoT環境は既に達成されているといってよいですよね。スマホから操作できる家電やデバイスも数多くリリースされています。今後、このようなアプリケーションは急速に増えてゆくでしょう。
そのアプリケーションとして、シャープが発売するテレビ「AQUOS 4K」がサポートする「COCORO VISION」というAI(人工知能)クラウドサービスがあります。
アメリカではAmazonが発売するAmazon EchoのAI(人工知能)クラウドサービス Alexaをプラットフォームにした家庭用サービスが始められています。
このように、キッチンがGenevaシステムでつながっていれば、冷蔵庫、オーブン、食洗機、電子レンジ、換気扇などのIoTユニットがAlexaのAI(人工知能)を中心に連結され、台所全体で生活をサポートしてくれる、いわゆる「キッチンロボット」になってくれますよね。
家の中のIoTユニットをもっと増やしてAlexaのAI(人工知能)クラウドプラットフォームで統合すれば、家中を一つのロボットとして操作することができるでしょう。このような「スマートホーム」の実現は、もう目の前です。
IoT、AI(人工知能)による犯罪捜査とロボット警官の登場
IoTとAIを使ったシステムは家庭生活での便利だけでなく、犯罪捜査の上でもいろいろな用途が開発されています。さまざまな電子デバイスが持つ情報を併せて調べることで、捜査に役立てることができます。
また、
UAE(アラブ首長国連邦)ではドバイの犯罪対策として、IoTとAI(人工知能)を搭載したロボット警官を配置。
ドバイでは2030年までに全警官の1/4をこのロボット警官にする計画です。これ以外にも世界の警察で、爆発物処理や危険な地域での証拠収集作業などにIoTとAI(人工知能)を活用したロボットの導入が進められています。
IoT、AI(人工知能)、ロボットの融合とその実用化へ
IoTはデータをやりとりするための環境、AI(人工知能)はデータを処理するためのアルゴリズムです。この二つはデータの処理に関する技術ですが、ロボットはこれを使って実際に作業する物理的な技術。IoTとAI(人工知能)が到達したアウトプット情報が形になるには、複雑な機能をこなすロボットがいなければなりません。
残念ながら、現在の時点では人と同じようないくつもの機能を一台でこなせる、万能型ロボットというものは存在しません。
役割ごとに個別の機能に特化したロボットが、それぞれに活躍しています。輸送用ロボット、清掃ロボット、撮影ロボット、会話ロボット、等々。こういったロボットたちは何か一つのことだけをすることができるようになっているので、家庭での役割のような不特定の作業を自由にこなす汎用的なロボットとしては、まだ不十分と言わざるを得ません。
特に人の「手」はあまりに多機能で、これを作業の数に分けていくと無数のツールが必要になります。
さて、この先のブレークスルーはあるでしょうか。
実は、イタリアのロボットハンドメーカー、Qbロボティクスはこのほど、5本の指を供えるソフトロボット、「Qb ソフトハンド」を開発。動物の筋肉系の動きを研究して作られたこの「手」は、人の手と同じ構造で、手のひらと指で包み込む動きと指先でつまむ動作の両方が可能です。扱うものの形や材質に応じて19の関節が動きをシンクロナイズさせて傷つけないようにハンドリングします。
このQbソフトハンドは既に海外のロボットメーカーの腕型ロボットに装着されて、新しいロボットの用途開発が進められています。ロボットが人と同じ手を持つとき、そのロボットは人が使う全ての道具を使うことができるようになるでしょう。
IoT, AI(人工知能)そしてロボットという三つの技術は、今後の社会のあり方に大きなインパクトを与えるコアテクノロジーですよね。中でもIoTとAI(人工知能)は情報処理技術として統合が進められていおり、国内でも家電を中心にさまざまな IoT+AI(人工知能)化が進められています。家の中のさまざまな器具を結びつける情報ネットワークにより、「スマートホーム」が実現されるのは遠いことではありません。
そして、IoTとAI(人工知能)の融合は犯罪捜査や警察活動でも活用され始めています。ドバイで導入されたロボット警官は三つのコアテクノロジーが融合されたモデルケースといえるでしょう。今後は、AI(人工知能)の情報を実行することのできるユニットとして、より多くの役割を果たすことのできる汎用型ロボットの技術開発がカギとなります。
IoTとAI(人工知能)に繋がったロボットが、人と同じ作業をこなす。そんな時代が待ち遠しいですね。