今や「シンギュラリティ」という言葉は、いろんなところで耳にしますよね。AI(人工知能)が爆発的に成長して、人間を超えてしまうんじゃないかと心配されていますが、実は「シンギュラリティ大学」という教育機関もあることを知っている方は少ないでしょう。
この「シンギュラリティ大学」は、アメリカ合衆国シリコンバレーを拠点として活動していますが、「いったい何を勉強しているの?」「誰が通っているの?」と気になりますよね。
ざっくりと説明すると、飛躍的に進化するテクノロジーを活用して、温暖化やエネルギー、教育、貧困問題といった地球規模の課題を解決していくために、世界中から優秀な人材が集まって学び合うところなんです。
何だかすごそうな「シンギュラリティ大学」ですが、どこか遠い国の話だと思っていませんか。実は、もうすでに日本にも進出しているんです!でも今一つ、何をしている大学なのか、何のために日本にやってきたのかわからない!という方も多いでしょう。
そこで今回は、「シンギュラリティ大学」とはどんな教育機関なのか、そして何のために日本に進出してきたのかを、わかりやすくお伝えしていきます。
「シンギュラリティ大学」は、未来の起業家育成機関だった!
「シンギュラリティ大学」とは、脳科学者でAI(人工知能)研究の世界的権威として知られているレイ・カーツワイル氏と起業家ピーター・ディアマンディス氏が発起人となって2008年に設立された教育機関です。拠点は、あの突き抜けた才能が集まることで有名なシリコンバレーですが、特に大きな校舎があるわけでもなく、ちょっと謎めいています。
先ほども少し触れましたが、今、世界は教育格差やエネルギー、環境、食糧、貧困、水資源など多くの問題を抱えていますが、自国だけではなく地球全体で解決していく必要が出てきましたよね。
この「シンギュラリティ大学」では、加速度的に進化するAI(人工知能)や科学技術を使ってビジネスを創り出し、地球全体の大きな課題を解決しようとしているんです。
そんな、とてつもなく壮大な目標に近づくために、若手研究科・起業家はもちろん、大企業幹部や投資家向けのさまざまなプログラムが用意されています。
このプログラム(GSP)に参加できるのはたったの80人。このうち20人は「グローバル・インパクト・チャレンジ(GIC)」の優勝者枠で、残りの60人が一般枠なのです。こんなわずかな枠をねらって、毎年3000~5000人の応募があるというのですから非常に人気があることがわかりますよね。
では、どんなビジネスアイディアが生まれているのでしょう。ちょっと気になりますよね。そこで、日本人として初めて「グローバル・インパクト・チャレンジ(GIC)」で優勝した2人のビジネスアイデアをご紹介していきましょう。
日本発のビジネスアイデアは、人工培養肉と遠隔ロボット!
2017年2月25日、東京で開催されたビジネスコンテスト「グローバル・インパクト・チャレンジ(GIC)」で優勝したのは羽生雄毅氏(インテグリカルチャー代表取締役)と、中ノ瀬翔氏(MacroSpace CEO)の2人。
そもそも「SFの定番だから」という意外性のあるきっかけで、羽生氏は人工培養肉を始めたのですが、この技術は今後、再生医療や宇宙開発の分野でも活用できると語っています。さらに月面での生産も目指しているとのことで、まさにSFの世界の実現!わくわくしてきますよね。
一方、中ノ瀬氏はインターネットを介してリアルタイムで人間とつながるテレプレゼンス・ヒューマノイドロボット(実質的な瞬間移動ができる人型ロボット)を開発中です。
開発のきっかけは、親を亡くした時、駆けつけるのが間に合わずに後悔した経験があったからだと言っていますが、手軽に高齢の親の様子を見に行けるようになると、ほんとに安心でありがたいですよね。今後「実質的に瞬間移動ができる、この価値を世の中に提供していきたい」と話しています。
このような人工培養肉と遠隔ロボットの実現は、将来的に地球全体のさまざまな課題を解決していくでしょう。
ここまで「シンギュラリティ大学」では、どのようなことをしているのかお伝えしてきましたが、「世界規模の起業家育成機関か…何だかすごいところだ!」というイメージがわいてきた方も多いでしょう。
では、こんな「シンギュラリティ大学」が日本に進出してきたのはどうしてなんでしょうか、次にその理由についてお話していきます。
「目覚めよ、ニッポン!」日本は世界から遅れている!?
「目覚めよ、ニッポン!」これはパトリック・ニュウエル氏(教育活動家)の思いですが、これこそが「シンギュラリティ大学」が日本に進出してきた一番の理由なんです。
これに気づいたパトリック・ニュウエル氏は、日本のリーダーたちに目を覚ましてもらいたい!という思いで2017年9月に、日本国内初となる「シンギュラリティ大学ジャパンサミット」を開きました。
具体的には、AI(人工知能)やロボット工学、情報セキュリティー、環境・エネルギー問題、VR(仮想現実)などの分野で活躍する専門家たちがスピーチし、その後「未来」をテーマとした、レクチャーやデスカッションが行われ、大いに盛り上がりました。
このまま何もしないで、のんびりあぐらをかいていては、世界から置いて行かれてしまう…と気づいてしまったんでしょう。
さあ、これで日本の研究者やリーダーたちは、意識を変えて新しいテクノロジーを生み出してくれる!と喜びたいのですが、まだまだ日本的体質に問題が残っているのが事実です。そのあたりを具体的にお伝えしていきましょう。
スピード感をもって、日本の強みを生かしたテクノロジーを発信しよう!
実は、日本にも伝統工芸などを作る精巧な技術やユニークなアイデアを持つ人はたくさんいるんです。にもかかわらず、このような縦割り体質のせいで、いつの間にか言動が慎重になり、新しいプロジェクトの実行にも時間がかかり過ぎるようになった…とパトリック・ニュウエル氏は指摘しています。
なので、ロボット開発でも産業用ロボットだけでなく、もっと日本にしかできない友好的な日本独自のロボットを開発できる国だと言われています。
どうやら日本人は、自分たちが持っている素晴らしい感性に気づいていなかったようです。パトリック・ニュウエル氏は、日本独自の「ロボット観」や「自然観」をもっと前面に出して、世界に向けて新しいテクノロジーを発信すべきだと述べています。
つまり、「シンギュラリティ大学ジャパンサミット」に参加することで、テクノロジーの進化におそれることなく、日本人ならではの目線で、世界の課題を解決するビジネスアイデアをどんどん生み出してもらいたい…これが「シンギュラリティ大学」が日本にやってきた大きな理由なんです。
今回は「シンギュラリティ大学」とは何なのか、どうして日本にやってきたのかについてお伝えしてきました。
もう一度、簡単に振り返ってみましょう。
なので、お互いがビジネスアイデアを出し合い、刺激し合うことで、未来の起業家を育成していく機関であるともいえます。
でも新しいアイデアは、ただ机に向かっているだけでは生み出されません。今は、日本企業のオフィスも「瞑想ルーム」や「お昼寝ルーム」があったり、部屋全体がジャングルのようなコンセプトにされていたり、リラックスできる遊びの空間が増えてきました。
世界のスピード感にのっていくためにも、自分の頭を開放して、新しいアイデアが生まれやすい環境を作ることも大切になるでしょう!
また「シンギュラリティ大学」は、「貧困や環境問題といった、全世界10億人レベルに影響を与える大きな社会的課題に挑戦する」という目標を掲げて、2019年5月に東京・虎ノ門でスタートアップ向けコンテストも開催しました。
今後、このようなプログラムは増えていくに違いありません、そして「こんなことやりたい!」とアイデアがひらめいた方は、一歩踏み出して参加してみるのがいいでしょう。そうすれば、世界の最先端テクノロジーを体験できるにちがいありません。
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