テクノロジー

【2020 年版】AI(人工知能)が作業姿勢をチェックする活用事例まとめ

【2020 年版】AI(人工知能)が作業姿勢をチェックする活用事例まとめ

日々の生活の中で、同じ動作を繰り返すことは誰にでもありますよね。モノを取り出す、しまう、引く、持ち上げる、下げるなどその一つひとつは難しくない作業姿勢でも回数をこなすと腰が痛い・腕が痛いと身体に負担がかかってしまうこともあります。腰や腕を痛めるとその部分をかばってさらに肩、膝が痛くなり・・・と悪循環に陥ってしまいがちでしょう。

近年AI(人工知能)を活用し一連の作業姿勢をチェックして、業務の改善や安全性の確保ができる技術が注目を集めています。効率よく作業を行い、かつ身体への負担も軽減させるなどAI(人工知能)が一人ひとりの姿勢を確認してくれるものです。一体どんな仕組みなのか、どれくらい効果があるのか気になるはず。

そこで今回は、実際に現場でAI(人工知能)を導入し作業姿勢の改善を行った事例についてお伝えします。

なぜ作業姿勢をチェックするのか

作業のイメージ
まず、そもそもなぜ作業姿勢をチェックするのかを解説します。正しい作業姿勢や動作じゃなくても、その人に合った作業しやすいやり方で良いのでは?時間がかかったりするのはその人の向き不向きや、能力の問題に関係してくるのではないか?と考える人もいますよね。

しかし、同じ作業をする人たちがそれぞれ独自の方法でやってしまっていたとして、〇〇さんのやり方だと時間かかりそう、危なっかしい、マニュアル通りに進めているはずなんだけど、どうも作業工程に乱れやミスが出る可能性があります。

それを放っておくと大きなヒューマンエラーが発生する、労働災害につながる可能性も出てきてしまいます。ですので、AI(人工知能)で人物の作業姿勢・動作をチェックし見直すことで、作業動作のムダを減らして時間短縮を図ったり、またはミスを発見・防ぐことができるようになります。

AI(人工知能)が作業姿勢をチェックする仕組み

カメラのイメージ

ここでは、実際に日立産業制御ソリューションズのAI(人工知能)の画像認識技術を例にご説明します。AI(人工知能)が作業姿勢をチェックする流れは、以下のようになっています。

  1. カメラで一連の作業姿勢・動作を撮影する
  2. その録画映像から独自の作業姿勢を取り出してデータを集約する
  3. 解析した3パターンの雛型を複合設定し、自動で多様な作業動作を認識させる
  4. 対象者ごとにカメラの前で作業をしてもらうことで、その作業姿勢モデルと照合することができる

上記の4つの流れが、それぞれどういうことなのかもう少し詳しく解説します。

まず、一人の対象者に対し、身体全体が映り込むようにカメラを向け撮影します。次に、その撮った全体の映像の中から、対象者の身体の向きや使い方、作業している手の動きや位置関係などの特徴的な情報をデータ化します。

パターンの雛形を設定する、とはどういうことかというと、

  • 領域推定(対象者の動きの特徴となる部分が指定された領域に入るとその動作を検知する分析モデル)
  • 姿勢推定(対象者の動きの特徴となる部分をAI(人工知能)が学習、対象者の姿勢を検知する分析モデル)
  • 背景推定(カメラに写る背景の映像の特徴をAI(人工知能)が捉え、その背景を認識し分類するモデル)

という3つの分析モデルを組み合わせることで、対象者のさまざまな姿勢や動作をAI(人工知能)が自動認識できるようになります。これで作業を自動化したことにより、同じ物差しで他の対象者の作業を評価できるようになります。

AI(人工知能)にこの作業姿勢を認識させるにあたって、対象者にセンサーなどの大掛かりな装置を取り付けたりすることがないという利点があるとのこと。普段の作業スタイルで望むことができるので、より正確なデータを取ることができますよね。

また、それぞれの現場の作業状況に合わせて姿勢や動作の設定を変えることが可能。このため、追加したい作業姿勢・動作があれば臨機応変に対応することができるのもポイントになります。

AI(人工知能)×作業姿勢の活用事例その1:製造現場での生産性の向上

工場のイメージ
製造現場では、一定の数量で商品を出荷するには効率的に仕事をする必要がありますよね。1日に数百・数千単位の出荷計画があるならば数量のバラツキがあったり、ましてや商品の品質に問題があれば大変なことになります。

日立産業制御ソリューションズの画像認識技術では、製造現場で作業開始から作業終了までの一連の作業を作業者別に撮影しています。どういうことなのかというと、カメラに録画された作業動作をは分解、定量化し検証します。その後、作業者別に各作業工程動作の所要時間をグラフ化。評価結果を可視化することで、作業者それぞれの評価や手順工程の苦手作業分野などを見い出しサポートします。統括責任者はAI(人工知能)によって作業姿勢・動作を統一することで合理的に管理することが可能となります。

そして日立建機株式会社は、その日立産業制御ソリューションズのAI(人工知能)画像認識技術を活用して自動判別することができるシステムを製造現場に導入しました。現場では作業者一人ひとりの作業行動を把握し、かつ姿勢や動作について細かな教育を徹底させるには時間も労力もかかります。その点、AI(人工知能)画像認識技術では、カメラに写るさまざまな情報から作業者の骨格情報を引き出し自動で検知させるのです。

例えば、製造ラインに初めて入る新人さんと何年もその現場にいるベテランさんの動きは違いますよね。その製造現場でAI(人工知能)を活用し製造ラインの作業者に無駄のない同じ作業姿勢を覚えてもらえることでグッと生産性が向上するはず。

1日でも早く仕事を覚えたい、このスピード感についていきたいと思う新人さんにとって、AI(人工知能)はベテランさんの動きを短期間で習得できる画期的なモノになるに違いありません。一方、ベテランさんもやりがいにつながるでしょう。

AI(人工知能)×作業姿勢の活用事例その2:作業現場の安全性の確保

荷物のイメージ
仕事をするにあたって、最も気をつけなければならないのは仕事中の事故ですよね。残念なことに命を奪うような大きな事故から、作業中に体の一部を痛めてしまうといった労働災害まで少なからず現実に起こっています。そんな仕事中の事故をAI(人工知能)で減らすことができます。

上記の事例にもある日立建機株式会社では、AI(人工知能)画像認識技術の導入により、生産性が上がるだけでなく作業現場での安全性の向上も併せて解決。作業現場での荷物の上げ下ろしなどは足腰・腕などに負担がかかる作業姿勢です。その一連の動作を撮影しAI(人工知能)で検証することで、この姿勢は腰に負担がかかる動作なので安全ではないですよと知らせてくれます。

このような姿勢の良し悪しの判断が、作業現場での安全を確保できることにつながっていきます。

AI(人工知能)×作業姿勢の活用事例その3:工場での手指衛生の管理

手洗いのイメージ
日本の衛生管理は世界的に見ても法律で非常に厳しく定められています。私たちの普段購入している食品も、厳格な衛生管理のもと工場からスーパーに届けられて食卓に並んでいるのです。

手指衛生は重要であると理解して手洗いしていますが、本当に手順通りにできているのか、その手洗い方法でしっかり清潔になっているか心配になることもありますよね。AI(人工知能)を用いて管理してもらえると、普段から意識していることでもさらに安心できるに違いありません

大日本印刷株式会社はAI(人工知能)を活用した「手洗いAIサービス」を開発。一人ひとり手洗いの様子をカメラで撮影しながら、各手洗い作業工程の手順やかかった時間を分析してグラフで表示。しっかりと手順通りの手洗いが守られているか確認できます。

現にライオンハイジーン株式会社の協力のもと、清潔な状態を保持できていることを数字で表すことができるATP基準値の達成率が、AI(人工知能)を活用せずに手洗いした場合30%の達成だったことに対し、「手洗いAIサービス」を活用した一連の手洗いは90%と大きく上回る効果がありました。

AI(人工知能)×作業姿勢の活用事例その4:医療・リハビリ施設での姿勢測定

病院のイメージ
AI(人工知能)を活用した作業姿勢の技術は、製造現場や工場以外でも、医療機関やリハビリ施設でも利用可能です。

ディープラーニングを使用したカメラの映像から人間の骨格情報を検知することができる姿勢推定AI(人工知能)エンジン「VISION POSE」は、3D座標で人間の骨格情報をリアルタイムで骨格検知できるだけでなく複数の人でも可能なのだとか。さらに高精度なVISION POSEは、測定できる部分は30箇所におよび画像や動画からの分析もできてしまいます。

※詳しくはこちらの記事にも記載しています

例として医療現場やリハビリ施設では、そのVISION POSEで姿勢測定が可能なため高齢者の健康管理を身体に負担なく測定できるメリットがあります。また、運動機能向上を目的に機能訓練の成果をデータとして記録していくこともできるので、結果を見比べることによって自然とモチベーションにもつながっていきます。

トヨタ自動車株式会社未来創生センターでは、脳卒中などで下肢麻痺となった患者さんが下肢に装着するリハビリ支援ロボット「ウェルウォークWW-2000」にVISION POSEを搭載。以前より歩行訓練の際に患者さんの骨格情報を得ることができて、誰にでも使える計測可能な画像認識技術を求めていました。

導入後は装着時でも患者さんの骨格情報を検知しロボットに搭載されている機能と組み合わせて、幅広く活用できるようになっています。

AI(人工知能)×作業姿勢の活用事例その5:スポーツ分野での姿勢評価

スポーツのイメージ
高精度のVISION POSEは医療分野だけにとどまらず、スポーツ分野でも活用できます。特長である最大30箇所の細やかな測定が可能なため運動分析にも役立つといいます。

姿勢や動作を認識させて記録することができるため、例えば野球ではピッチングやバッティングフォームを、陸上では腕の振り方や脚の踏み込み方などフォームのチェック目的で利用することが可能です。加えて、スコア形式のフィギアスケートや体操競技の評価は人が採点するわけですが、どうしても映像のみだと微妙な部分は判定が難しい場合も出てきますよね。そういった場合にもAI(人工知能)を導入することで、正確な判定ができるようになりました。こうした技術がスポーツ分野で活用されると、選手や観ている人たちとっても納得できる採点結果になるに違いありません。

実際にVISION POSEを導入したエイベックス株式会社では、ダンス技術のスコア評価アプリにVISION POSEを活用。今までの動画解析技術では得ることができなかった検知したい骨格部分の情報追加であったり、アノテーション作業の追加を可能にしたことでフレキシブルな対応ができるようになりました。ダンス独特な動きを正確に捉えることができるためスキルチェックなどに役立っています。

まとめ
さて今回は、AI(人工知能)の作業姿勢についてお伝えしました。それでは、今回の内容を振り返りましょう。

  • なぜ作業姿勢をチェックするのかというと、人物の作業姿勢動作を確認し見直すことで作業動作のムダを減らして時間短縮を図り、ヒューマンエラーや労働災害を未然に防ぐこともできる
  • 作業姿勢をチェックする仕組みとは、撮った映像の中から特徴的な情報をデータ化し、3つの分析モデルを組み合わせる
  • 製造現場での生産性の向上として、日立建機株式会社はAI(人工知能)画像認識技術で自動判別することができるシステムを製造現場に導入
  • 作業現場の安全性の確保として、日立建機株式会社はAI(人工知能)画像認識技術を活用することで、作業現場での負担がかかる作業姿勢をチェックしアラームで警告
  • 工場での手指衛生の管理として、AI(人工知能)を活用した「手洗いAIサービス」技術を開発
  • 医療・リハビリ施設での姿勢測定として、トヨタ自動車株式会社未来創生センターが、下肢麻痺の患者さんが使用するリハビリ支援ロボットに姿勢推定AI(人工知能)エンジン「VISION POSE」を搭載
  • スポーツ分野での姿勢評価として、エイベックス株式会社が活用するダンス技術の評価アプリに、姿勢推定AI(人工知能)エンジン「VISION POSE」を導入

お伝えした事例は企業や施設などですが、私たちの普段の生活にもAI(人工知能)を取り入れることができる日もそう遠くないかもしれません。

【お知らせ】

当メディア(AIZINE)を運営しているAI(人工知能)/DX(デジタルトランスフォーメーション)開発会社お多福ラボでは「福をふりまく」をミッションに、スピード、提案内容、価格、全てにおいて期待を上回り、徹底的な顧客志向で小規模から大規模ソリューションまで幅広く対応しています。

御社の悩みを強みに変える仕組みづくりのお手伝いを致しますので、ぜひご相談ください。

お多福ラボコーポレートサイトへのバナー

トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました