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⾝近なところで使われている姿勢を評価するAI(⼈⼯知能)を調査してみた

⾝近なところで使われている姿勢を評価するAI(⼈⼯知能)を調査してみた

多くの人が抱えている、肩こり、腰痛などの関節痛は、姿勢の崩れが要因の1つですよね。そして最近は、それらの改善に人間の姿勢を評価するAI(人工知能)が実用化しています。

人間にとって良い姿勢でいることは、健康でいられる条件の1つです。もし姿勢が悪ければ、関節や内蔵機能、神経などへ悪影響を及ぼし健康を害します。ただし自分の姿勢が、良いのか悪いのかを鏡を見ても判断できません。

そんな中最近では、カメラで自分の姿勢を撮影した画像から、状態の評価をAI(人工知能)で行う技術が開発されています。利用すれば、すぐに自分の姿勢の状態がわかるのが、この技術の特徴です。そして現在、さまざまな分野で人間の姿勢を評価できるAI(人工知能)は、実用が拡大しているので、一般の私たちでも利用できる機会が増えています。

では、実際に姿勢を評価するAI(人工知能)技術が、どこで実用されていて利用できるのか知りたいですよね。そこで今回は、人間の姿勢を評価するAI(人工知能)の概要と、活用されている分野の事例などをお伝えします。

姿勢を評価するAI(⼈⼯知能)とは

姿勢のイメージ
姿勢を評価するAI(⼈⼯知能)とは、人間の姿勢の状態を検出する技術です。この技術ではAI(⼈⼯知能)にカメラで姿勢を撮影した画像や動画から、首・肩・肘などの関節を認識させて、数値データで取り込み分析します。

一般にこの技術を姿勢推定と呼びますが、実施方法には次の2つがあります。

  • ボトムアップ型:最初にAI(⼈⼯知能)が人物の関節をすべて抽出し、そのあとで人物と関節をつなぎ合わせて姿勢を推定する方法
  • トップダウン型:まずAI(⼈⼯知能)が画像や動画に移るすべての人物を検出します。次に個々の関節を抽出しつなぎ合わせて姿勢を推定していく方法

2つのうちトップダウン型の方が高精度なので、現時点では高性能な姿勢推定に多く採用されています。

そして、少し前までの姿勢推定には、奥行きが推定できる高価なカメラが必要でした。しかし現在はAI(⼈⼯知能)の進化によって、安価なカメラやスマートフォンで撮影した画像でも行えます。そのため姿勢推定は、さまざまな分野での実用が進もうとしています。

では、姿勢を評価するAI(⼈⼯知能)の姿勢推定が実用されている、代表的な分野を紹介していきましょう。

姿勢を評価するAI(⼈⼯知能)その1:ゲーム・映画

ゲームのイメージ
ゲーム・映画では、CG(コンピュータグラフィックス)などで、姿勢推定が実用化される動きがあります。

CGとは、コンピュータで作る画像や動画で、ゲーム・映画などでもよく使用されている技術です。そのCGで作成したキャラクターの動きを、リアルに描くために定番で使用されているのが、モーションキャプチャー。

モーションキャプチャーとは、物体の動きをデジタルデータとして取り込む技術です。みなさんはテレビ番組で、人間の関節にピンポン球のような印をつけて、複数台のカメラで撮影している風景を見たことありますよね。それがモーションキャプチャーです。

ただし従来のモーションキャプチャーでは、撮影のために場所と複数台カメラなど大がかりな準備が必要です。そのため簡単に行える技術ではありません。

しかし姿勢推定の場合は、場所を問わずデジタルカメラ1台と、姿勢を評価するAI(⼈⼯知能)だけ。カメラで撮影した動画から、AI(⼈⼯知能)が人間の関節を洗い出して、動作をデータで抽出しCGキャラクターに反映させます。

そのため従来よりも簡単なので、ゲームや映画での実用が進もうとしています。すでにゲームでは、Microsoft社のゲーム機Xbox360のゲームコントローラー「Kinect」に姿勢推定が搭載されており、今後は、ますますゲームや映画で姿勢推定が使用されていくでしょう。

姿勢を評価するAI(⼈⼯知能)その2:医療

リハビリのイメージ
現在の医療分野で姿勢推定を実用している代表例が、リハビリテーションです。リハビリテーションとは、体にケガや病気で起きた動作機能の障害から回復させる機能回復訓練です。

姿勢推定を用いたリハビリテーションでは、訓練のスタートからの姿勢や動作の変化を画像と数値で可視化でき、その評価をAI(人工知能)で行えます。 その一つとしてトヨタ自動車では、姿勢推定を搭載したリハビリテーション支援ロボット「ウェルウォークWW-2000」の提供を開始。このロボットは、歩行状態を分析して改善策をサポートします。

このような姿勢推定を搭載したロボットの活用は、経過の状態や治療の提案などを画像や数値で見せられるので、患者も理解できる説明が可能です。そして患者にとっては、目に見えてリハビリテーションによる治療の経過状態がわかるので、回復に向けたモチベーションの向上になります。

このほか医療で姿勢推定を用いようとしているのが、見守りです。病院や介護施設で患者、高齢者の転倒など、危険な状態を検知する見守りに姿勢推定が実用されようとしています。

ただし病院や介護施設内での動画や画像の撮影は、プライバシーや暗い場所での検知が難しいという課題があります。豊橋技術科学大学の三浦純教授らの研究グループは、これらの課題を解決するために画像からの検知ではなく、CG技術と姿勢推定を組み合わせた検知システムを開発。この技術のように医療で安心して姿勢推定が実用できるように、日々、技術開発は進められています。

現在のところ医療での姿勢推定の実用化は、リハビリテーションと見守りのみです。しかし、医療は人間の体を対象にした分野なので、今後はそれら以外でも姿勢推定の応用が進むでしょう。

姿勢を評価するAI(⼈⼯知能)その3:フィットネス

フィットネスのイメージ
フィットネス分野で姿勢推定が実用化しているのは、ジムやクラブの利用者向けの運動プログラムです。体を鍛えるためや健康維持に多くの人がフィットネスのジムやクラブを利用していますが、中には途中で退会する人もいます。そして、退会する人の理由に一定数あるのが、「効果がなかった」「1人で続かなかった」です。

しかし、これらの不満については改善の余地があります。そこで最近、その改善に導入をはじめているのが、姿勢推定を搭載した運動プログラムです。

姿勢推定を用いた運動プログラムでは、利用者の姿勢や動きなどの評価をAI(人工知能)が行い、体の状態を把握します。そして、正しい姿勢でのトレーニングや現状のフィットネス効果、アドバイスをAI(人工知能)がしてくれます。

例えば、女性専用フィットネスジムのファディーで導入しているのは、200種類のトレーニングとカメラで利用者の動きを分析しリアルタイムでアドバイスするAIマシンです。この姿勢推定を搭載したAIマシンは、それぞれの利用者の運動データを蓄積します。

そして蓄積したデータなどから、ダイエットやストレス発散などの目的別と、本人の年齢、体力を分析し常に最適な運動プログラムを提供。また、エクササイズ中の動きをカメラでとらえて、角度や速度、タイミングなどをAIマシンが分析して、効果的な動作をアドバイスします。

このほかのフィットネスジムやクラブでも、姿勢推定を搭載した運動プログラムの導入が増えています。今後、フィットネス分野で姿勢推定は定番になっていくでしょう。

姿勢を評価するAI(⼈⼯知能)その4:スポーツ

スポーツのイメージ
姿勢推定は、スポーツ分野で選手の体の動き、状態を分析・把握するために実用が進もうとしています。スポーツ選手が競技で結果を出すために重要なのは、体の動きや状態がベストであることですよね。その実現のために、選手の姿勢や動きの評価をAI(人工知能)でできる姿勢推定が役立ちます。

株式会社ユーザーローカルが開発した姿勢推定AIは、株式会社セゾン情報システムズのHULFT陸上部で、実際に選手のトレーニング支援に実用されています。これまでこの陸上部では、ランニングフォームのチェックを目視で測定し手動で分析していたので、時間がかかる上に平均値しか求められませんでした。

そこで姿勢推定AIを導入。ランニングの動画からピッチ(着地の時間間隔)とスライド(着地の距離間隔)の1歩ごとの実測値を自動で得られるようになり、データ分析が効率化しました。

そして、選手がベストな状態でレースにのぞむための調整が格段に向上。このほか、姿勢推定AIをさまざまなトレーニングに活用し、それぞれで効果を発揮しています。

この事例のように、スポーツでフォームはとても重要であり、姿勢推定を使用すれば、良いときと悪いときのフォームを比較できます。それをもとに修正すれば、競技でのパフォーマンス向上も可能です。

そして現在、スポーツ向けの姿勢推定は、プロ野球でも試験導入されています。それは、株式会社ACESとほか3社が共同で開発し提供をはじめている、姿勢推定AIアプリケーション「Deep Nine」。Deep Nineは、個々の選手から取得した身体情報をもとに、特徴を把握して、能力強化やケガの予防の効果が期待されています。

スポーツ向けの姿勢推定は、主にフォームチェックをするものが多いですが、今後は、Deep Nineのように選手をトータルサポートできるAI(人工知能)も増えてくるでしょう。

その他の分野で使われる姿勢を評価するAI(⼈⼯知能)とは

セキュリティのイメージ
ここまでに紹介した以外でも、次の分野で姿勢を評価するAI(人工知能)技術の姿勢推定が実用されはじめています。

製造業

製造業では、作業中の従業員の姿勢を評価して、身体的負担や作業ロスの改善に姿勢推定を用いています。製造現場では、手作業での製品の組み立てやモノの持ち運びがあります。

それらの作業で生まれる無理な動作は、作業ロスを生み、従業員にとっては身体に大きな負担です。製造への姿勢推定の導入は、これらの課題の改善と業務効率の向上が望めます。そのため、改善策として最近では、製造現場へ姿勢推定の導入が進みはじめています。

日立建機株式会社では、株式会社日立産業制御ソリューションズが開発した「AIによる人物姿勢・動作認識ソリューション」を導入しました。同社の製造でも、部品などの持ち運びで膝曲げや腰を低くしての作業があります。そのため無理な姿勢での作業は、従業員にとって負担になるので解決策を模索していました。

そこで、「AIによる人物姿勢・動作認識ソリューション」を導入。同社では、導入して間もないので、まだ目に見える結果として表れていませんが、これから人にやさしいモノづくりをめざし、安全性と生産性の向上に取り組むとのことです。

セキュリティ

姿勢推定は、セキュリティ分野で監視カメラに実用されています。姿勢推定を搭載した監視カメラは、人の不審な挙動や犯罪行為を検知できるので、事故や犯罪を未然に防ぐことができます。

大手セキュリティサービス企業のALSOK(アルソック)は、常駐警備をしている東京スカイツリー展望台と隣接する大型商業施設「東京ソラマチ」で、日本初のドローンによる巡回警備の実証実験を実施中です。

その警備に使用しているドローンには、4Kカメラと、「Visual SLAM」と呼ばれる姿勢推定を使用した画像処理システムを搭載しています。このドローンにより、広範囲にわたっての異常検知が可能になります。そして将来は、複数の施設を警備室から1人で監視して、異常を検知すれば警備員が駆けつける体制を目指すとのこと。

自動車

近年、自動車の安全運行に、自動ブレーキシステムなどの安全装備が拡充しています。そして、さらなる安全のために姿勢推定の実用化が目前まで迫ってきました。

大手電機メーカーのNECは、自動車などの車両が安全運行するために、姿勢推定を用いたシステムを開発しています。このシステムでは車内にカメラを搭載して、ドライバーやそのほかの乗員の姿勢をAI(人工知能)が評価。そこからドライバーの、ながら運転、脇見運転などの危険な運転行為や、バスの場合は乗客の動きから転倒などの危険性を検知します。

すでに、このシステムは群馬県前橋市で、自動運転バスの実証実験で実施されました。今後は同社が開発した、新しいデータ送信技術と合わせて提供を開始するとのことで、これからの普及は間違いありません。

姿勢推定は、まだまだこれからの技術です。そのため、技術の進化と実用する分野の拡大があるでしょう。では次に、これから姿勢推定は、どのようなことに実用される可能性があるのかを紹介します。

姿勢を評価するAI(⼈⼯知能)の可能性

生体認証のイメージ
これから姿勢推定が実用される可能性があるのは、本人確認です。日本で本人確認には、免許証やマイナンバー、暗証番号などが一般的です。また、銀行ATMの取引やスマートフォンの本人確認には、指紋や顔の生体認証も使用されています。このうち生体認証は、間違いなく本人確認できる方法です。

そして、姿勢推定を用いた生体認証として実用される可能性が考えられるのが、歩容認証です。歩容認証とは、人の歩き方を分析して個人を識別する技術で、日本では姿勢推定を用いた歩容認証の研究を進めています。現在のところ、この研究は犯罪捜査など防犯が主な目的ですが、それを将来は、本人確認に実用化し、自分の全身が身分証になる可能性が十分にあります。

このほかにも、これまで思いつかなかったことに実用化されるかもしれません。

まとめ
さて、今回は人間の姿勢を評価するAI(⼈⼯知能)についてお伝えしてきました。

姿勢を評価するAI(⼈⼯知能)とは、カメラで人間の姿勢を撮影してその画像や動画から、首・肩・肘などの関節をAI(⼈⼯知能)に認識させて、数値データで取り込み分析する技術です。この技術は一般に姿勢推定と呼びます。姿勢推定にはボトムアップ型とトップダウン型の実施方法があり、高精度なのはトップダウン型です。

これまで姿勢推定の実施には、高価なカメラが必要でした。しかし、技術の進化で安価なカメラでもできるようになりました。

そして、現在は、次の分野で実用されはじめています。

  • ゲーム・映画・・・CGキャラクターなどに、姿勢推定が実用されはじめている
  • 医療 ・・・リハビリテーションと見守りに実用化が進む
  • フィットネス・・・姿勢推定を搭載した運動プログラムが普及している
  • スポーツ・・・選手の身体情報の把握や強化のための実用化が進もうとしている

このほか製造業やセキュリティ、自動車などでも、姿勢推定の普及がはじまっています。

そして、これから姿勢推定が進化し普及していけば、生体認証の1つとして確立され、本人確認に実用化する可能性も十分にあります。この可能性のように、現在は思いつかないことへの活用が考えられるのが姿勢推定です。

この先、姿勢推定の進化と実用化が、どうなっていくのかはわかりません。しかし、今回紹介した事例を見ると、私たちの生活を便利で安全にしてくれる可能性が高く、姿勢推定は今後も期待できる技術に間違いありません。

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