AI(人工知能)と健康管理

病院の業務効率化に大きく貢献!電子カルテ×AIの成功事例まとめ

病院の業務効率化に大きく貢献!電子カルテ×AIの成功事例まとめ

最近、病院を受診すると医師が診察内容をパソコンに入力していますよね。デジタル技術が進化して、病院では診察内容を電子カルテに入力する病院が増え、AI(人工知能)を搭載したものも登場しています。

現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)で日本の企業や団体では、クラウドサービスやAI(人工知能)などのデジタル技術を取り入れて、それぞれの業界の競争で優位になるために変革が進行中です。そして病院ではDXの一環で、診察内容を従来の紙カルテから電子カルテへの移行が進んできました。

これらDXに共通している目的の一つが、業務の効率化。それは病院も同じです。

厚生労働省の調査によれば、平成29年度時点で一般病院の46.7%に電子カルテが普及し、DXが進んでいる現在はこの数字以上に普及しているのは間違いありません。さらに業務効率を上げるためにAI(人工知能)搭載の電子カルテを導入した病院も増えています。

そして、これからAI(人工知能)搭載の電子カルテの導入を考えている病院は、どんな業務の効率化が期待できるか知りたいですよね。そこで今回は、AI(人工知能)搭載の電子カルテでできる業務の効率化を、事例とともにお伝えします。

そもそも電子カルテとは

電子カルテのイメージ

カルテとは、医師が患者を診察した内容やその経過、病名や症状、治療法、個人情報などの記録です。従来は、この内容を紙に記録していました。

そして現在ではカルテをデジタルデータにして、コンピュータに保存し取り扱う電子カルテが普及しています。その動きの背景には、次のことがあります。

紙のカルテは、増えた分だけ保管場所が必要になる

長年にわたり診療を続けると必然的に紙カルテは増えていくので、その分の保管場所が必要でした。電子カルテはコンピュータにカルテのデータを保存するので、従来のように保管場所の確保が必要なくなりました。

紙のカルテは、必要な患者のカルテをすぐに取り出すことができない

従来は必要な患者の紙カルテをその都度、保管場所から取り出していました。そのため、すぐに必要なカルテの準備ができませんでしたが、電子カルテは診察室のパソコンからデータベースにアクセスするだけなので、緊急でもすぐに用意できるようになりました。

紙のカルテは無断の持ち出しができるので、情報漏洩に注意が必要である

紙のカルテは人の手で保管場所から移動させるので、管理が行き届いていなければ紛失し情報漏洩する恐れもありました。電子カルテはパソコンからデータベースにアクセスして取り出すので、セキュリティ面でも安全性が高く、紛失や情報漏洩の可能性を限りなく抑えられます。

これらの背景から、電子カルテへの変更が進んできました。このほか電子カルテでは、オンラインで情報共有がしやすくなり、患者への迅速な対応もでき、最大の目的になる業務の効率化を実現します。そして、現在の電子カルテには、AI(人工知能)を搭載したシステムが登場しています。

なぜ、電子カルテにAIが用いられるようになったのか

AIのイメージ
AI(人工知能)は、さまざまな分野で活用が進んでいます。それは医療分野でも同じで、電子カルテにもAI(人工知能)を搭載したシステムが登場しています。

医療に限らず、性能が進化したAI(人工知能)の活用が進む大きな理由の一つが、業務の効率化を進めるためです。 一般に業務の効率化とは、ムダな業務を省いて時間短縮し、コスト削減をするなどをさしています。

DXで進める業務の効率化の大きな目的は、ある問題の解決も含まれています。それは人材不足です。日本は少子高齢化が進んで、さまざまな産業で人材不足が問題になっています。これは医療も同じです。

そこで、さまざまな人材不足の解消策を模索する中、高い効果が期待できるのがAI(人工知能)の導入。AI(人工知能)は人間と違って、大量の計算処理を正確に高速で行うことができます。そして、大量のデータを分析して、予測やデータの分類が可能です。

このようなAI(人工知能)の特徴を活かして医療では、レントゲンやCT画像から病気の特定への活用も進めています。また、病院の日常業務で単純な事務処理をAI(人工知能)で自動化できるので、人材不足の医療現場で、医師、看護師の労働負担の軽減が実現できます。

このように病院業務を効率化できるAI (人工知能)システムの一つが電子カルテ。では実際に、AI(人工知能)を搭載した電子カルテがどんなシステムなのか、導入事例で紹介していきましょう。

電子カルテ×AIの導入事例:福岡県・田主丸中央病院

問診のイメージ

福岡県久留米市にある田主丸中央病院では、来院した患者の問診結果を簡単に電子カルテに転記できる、AI搭載のWeb問診システムを導入しています。以前の田主丸中央病院では、診察前に看護師が患者に問診していました。そのころは、問診にだいたい1人当たり15分かかっていて、看護師の人員数が不足している中で新規の患者が7~8人来院すると、診察までかなりの時間待ってもらう状態でした。

これは、患者の満足度低下になる要因であり、解決のためにUbie(ユビー)株式会社がサービス提供している「AI問診ユビー」を導入。AI問診ユビーは、患者自身にタブレット端末に表示される問診に入力して答えてもらうシステムで、その結果は、ワンクリックで電子カルテに転記されます。当初、高齢の患者さんはタブレット端末で入力できるかが不安でしたが、実施すると9割の患者は問題なく入力してくれます。

そして、以前は問診に平均15分もかかっていましたが、AI問診ユビーの導入後は1/10以下に短縮できました。また、問診結果はワンクリックで電子カルテにコピーできるので、その分の時間短縮で業務効率が向上し、現場で働く看護師の負担軽減も実現しています。

今後は、DXの推進で業務の効率化をできるところにはAI(人工知能)技術を導入したいとのことです。

電子カルテ×AIの導入事例:長崎県・高原内科循環器科医院

音声記録のイメージ

長崎県諫早市にある高原内科循環器科医院では、電子カルテの入力にAIを搭載した音声入力を導入しました。これまではキーボード入力の電子カルテを使用していました。

しかし、スタッフはキーボード入力が苦手です。そのため、診察しながらの入力ができず、診察後にカルテ入力をしていました。

そこで業務効率を向上させるために、株式会社アドバンス・メディアがサービス提供しているAI搭載のAmiVoiceを導入。AmiVoiceは電子カルテに音声入力ができ、医学用語や漢方の薬剤名の入力や必要な単語登録もできます。

このような機能を搭載したAmiVoiceを利用するようになって、診察中にカルテ入力ができるようになりました。そして、診察後にしていたカルテ入力がなくなり業務効率が向上。現在は、一般内科で午前中に40~50人の診察が可能になっています。

電子カルテ×AIの導入事例:福岡県・夜間診療所

病院のイメージ
福岡県福岡市の夜間診療所では、AI(人工知能)搭載のクラウド型電子カルテを導入しました。その電子カルテは、エムスリーデジカル株式会社のクラウド型電子カルテ「M3DigiKar」です。同診療所がM3DigiKarを導入したきっかけは、コストや運用のしやすさなどの利便性からクラウド型の電子カルテを選択しました。

M3DigiKarはAI(人工知能)を搭載し、すべての患者のカルテを学習して、処置のパターンを分析。その分析結果から、診察する患者に合わせて適切な入力項目を電子カルテに表示して、入力の大幅な効率化を実現します。そして、M3DigiKarを導入した夜間診療所では、新規の患者の電子カルテへの入力が、わずか2、3分で作成できるようになりました。

その他電子カルテ×AIの導入事例

診断のイメージ

紹介した他にも、電子カルテにAI(人工知能)を搭載するか、もしくはAI(人工知能)と連携させたシステムが開発されています。大塚製薬工場・富士通・国立がん研究センター・国立長寿医療研究センターは、患者の低栄養リスクを予測するAI(人工知能)を開発するために共同研究をはじめました。

病気からの回復を目指す患者は、病気の進み具合や治療内容で低栄養状態に陥ることがあります。そして、身体の低栄養化は治療効果を妨げる大きな要因です。今回の研究では国立がん研究センター東病院に蓄積している、匿名化したがん患者1万人分の電子カルテの診療データをAI(人工知能)が分析し、患者の低栄養リスクを予測するAI(人工知能)開発を目指しています。

そして大塚製薬工場では、電子カルテの診療データを分析した結果をもとに、それぞれの患者が低栄養を起こしてしまう要因を絞り込み、予測できるAI(人工知能)開発を行い、富士通は最先端技術を用いて診療データの分析支援をします。

両社は将来的に、この研究で開発されたAI(人工知能)を全国の医療機関への普及を目指すとのこと。実現すれば、このAI(人工知能)を導入した病院では、病気の治療効果の向上や電子カルテの診療データの有意義な活用が期待できます。

この事例と同じように、これからAI(人工知能)が電子カルテから学習して、業務効率や患者へのサービス向上につながるシステムが開発されて普及していくでしょう。では今後、AI(人工知能)で電子カルテが、どう変貌していくのかを解説します。

電子カルテとAIの今後

デジタルのイメージ

これからAI(人工知能)が進化して電子カルテに搭載されたなら、それが医師の仕事の一部を担う役割をするでしょう。その根拠になる一つは、AI(人工知能)を用いた画像診断です。医療のAI(人工知能)画像診断は、患者のレントゲンやCT画像から病気を特定できます。

Googleの医学研究機関「Google Health」が、世界的に有名な総合科学ジャーナル「Nature」に発表した論文によると、乳がん画像診断にGoogle HealthのAI(人工知能)を使用した診断は、医師よりも高い精度を出したとのこと。すでにAI(人工知能)は、医療現場で働く医師よりも、画像から高い精度の診断が出せるようになっています。

そのため将来は、さまざまな医学の論文や知識を学習したAI(人工知能)が、電子カルテに搭載され、医師に代わって正確に病気を特定するようになるでしょう。ひょっとしたら、事例でも紹介した問診システムで患者がアプリを使って自宅から回答し、診察前に病気を特定して、緊急性があるかどうかも判断できるようになるかもしれません。

まとめ

さて今回は、電子カルテにAI(人工知能)を搭載したシステムについて、導入事例とともにお伝えしました。カルテとは、患者の診察内容や個人情報などの記録です。従来は、医師が紙のカルテに記入していましたが、現在はデジタルデータにしてコンピュータに保存する、電子カルテが普及しています。

電子カルテのメリットは、紙のカルテのように保管場所はいらず、必要なカルテをすぐに取り出せて、固いセキュリティで管理できること。そして一番のメリットは業務の効率化です。

日本は少子高齢化で、どの産業でも人材不足が問題です。そのため、打開策に業務の中で自動化できることにAI(人工知能)を用いて、効率化を図っています。

これは医療も同じで、その一環としてAI(人工知能)搭載の電子カルテの導入が進められています。そして今回は、その導入事例を4つ紹介しました。

  • Web問診システム「AI問診ユビー」/福岡県・田主丸中央病院で導入:タブレット端末を使って患者に問診に回答してもらい、ワンクリックで電子カルテに転記するシステム。以前は問診に平均15分もかかっていましたが、導入で1/10以下に短縮。
  • AI(人工知能)搭載音声入力「AmiVoice」/長崎県・高原内科循環器科医院:AI(人工知能)搭載の音声入力で、電子カルテに入力するシステム。入力時間の短縮により一般内科で午前中に40~50人の診察が可能になる
  • AI(人工知能)搭載クラウド型電子カルテ「M3DigiKar」/福岡県・夜間診療所:すべての患者のカルテを学習し、診察する患者に合わせ適切な項目を電子カルテに表示して、入力の大幅な効率化を実現。新規患者の電子カルテ入力が、わずか2、3分で作成できるようになった
  • 患者の低栄養リスクを予測するAI(人工知能):電子カルテの診療データをAI(人工知能)が分析して患者の低栄養リスクを予測。まだ開発段階だが、実現により病気の治療効果の向上が期待できる

現在もAI(人工知能)は、Google HealthのようにCTなどの画像から医師よりも高い精度の診断結果を出せるようになっています。このままAI(人工知能)が進化していくと将来は、医師に代わって正確に病気を特定するようになり、また患者が自宅からアプリで問診に回答して、診察前に病気を特定することも可能になるでしょう。

医療での本格的なAI(人工知能)の利用はこれからです。AI(人工知能)は着実に進化しています。

カルテは、診察内容や治療方法、個人情報が記されている大切なデータ。それは、病院業務を動かす要のデータです。そのため将来は、医師の仕事だけでなく病院全体の業務を、AI(人工知能)搭載の電子カルテを中心に自動化して、病院業務を効率化する時代になるに違いありません。

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