AI(人工知能)と健康管理

【2021年版】オンラインで利用できる電子カルテの現状について調べてみた

【2021年版】オンラインで利用できる電子カルテの現状について調べてみた

従来では、ドクターが紙のカルテに症状などを書いていましたよね。しかし最近では、大病院だけでなく小さい病院やクリニックでも電子カルテが普及しました。その中でも、オンラインで使えるクラウド型の電子カルテが増えつつあります。

電子カルテは、記入に時間がかからず修正も簡単で、症状や処方薬などの患者情報をデジタル管理できるので、いつでも院内のスタッフと情報共有できます。またレセプトコンピュータとの連携も容易にできるうえ、クラウド型なら急激に増えつつあるオンライン診療や予約受付にも対応しやすいため医療機関全体の業務効率化に貢献します。

この記事では、オンラインの電子カルテについて詳しく解説するので、病院やクリニックのデジタル化推進や業務改革に役立つに違いありません。

そこで今回は、電子カルテの基本から種類、また電子カルテの利用実例や問題点、さらに未来についてもお伝えしていきます。

電子カルテとは

電子カルテのイメージ

電子カルテとは、ドクターが患者や薬の情報を記録するカルテをデジタル化して保存・管理するシステムです。パソコンやタブレットによる入力により誰が記入しても判読しやすく、サーバー内でデータ管理するため大量保存できるうえ紙カルテのように保管場所が必要ありません。よって、複数の医師や看護師がいつでも同じ情報を閲覧できるだけでなく、カルテを探したり管理する手間も省けます。

紹介状や診断書などの文書作成も、いちいちカルテを引っ張りだして調べずとも電子カルテから情報を引用すれば短時間で済みます。また、レセコン(診療報酬明細書を作成するコンピュータシステム)や会計システムとの連携も可能なため、データを一元管理して作業効率を向上できるでしょう。

とくにインターネットを使用するクラウド型電子カルテなら、オンライン診療の際でもモニターで患者の様子を見ながら入力、同時に過去のデータの確認もできるので、診察にかかる時間の短縮化やドクターの負担軽減にもつながります。さらに専用フォームやメールを使った予約受付、検査機関とネットをつなげば検査画像や検診結果の共有にも活用でき、ソフト更新やデータのバックアップ、メンテナンスもベンダー任せにできるため病院全体の業務効率化にも役立つでしょう。

国内では、1999年より電子カルテが導入されましたが、当初はネット環境も現在ほど整備されていなかったため、院内でインフラを整備して活用するオンプレミス型が主流でした。ところが、この方法は初期費用が高額なうえサーバーの管理やトラブル対応を院内で行う必要があるため、導入のハードルが高く、予算と人材に余裕のある大病院以外にはなかなか普及に到りませんでした。

しかし、インターネットの急激な普及に伴い、特別なインフラが必要なく初期費用が比較的安いオンラインのクラウド型電子カルテを導入する医療機関が増え、厚労省の統計では平成20年に14.7%だった電子カルテの普及率が平成29年には41.6%にまで上昇。400床以上の大病院にいたっては、85.4%までになりました。(参照:厚労省平成29年「電子カルテ等の普及率推移」

電子カルテの種類

医療のイメージ

続いて、オンラインで利用できる電子カルテの種類を紹介しましょう。

パソコン型電子カルテ

もっともオーソドックスな電子カルテは、ドクターの机にパソコンのモニターとキーボードがセットしてあるタイプです。よく病院やクリニックで見かけますよね。多くの場合、電子カルテのソフトで提供されるフォーマットをもとに、使い勝手のよいかたちにカスタマイズします。

カルテの情報はクラウドによりベンダーのサーバーに保存され、必要に応じてパソコン上で呼び出します。オンラインのため、Wi-Fi環境さえ整えば、院内でなくとも、訪問診療先、移動中の電車や車内、自宅、学会などさまざまな場所でタブレットを使って閲覧、加筆、修正が可能です。これなら遠隔でもドクターと看護師が同じ画面を見ながらやり取りできるため、緊急時の対応にも便利ですよね。

タブレット型電子カルテ

タブレットをメインで操作するオンラインの電子カルテもあります。パソコンと異なる特徴は、タッチペンで記入できることと画像撮影可能という点です。

例えば皮膚科や整形外科など患部の対象が全身の場合、白紙のカルテに一から十まですべて文章で書き込むのは大変ですよね。もし湿疹が、顔と首、背中、右脚太ももの裏、左足のふくらはぎ…と複数個所に多発した場合、全部説明ができないかもしれません。

そこで、シェーマといってあらかじめ人の姿の前後がカルテに描かれているものがります。タブレットタイプの電子カルテでも(一部パソコンでも)あらかじめシェーマが用意されていて、タッチペンでまるで紙のような書き心地でマーキングを入れたり、コメントを記入できます。

また必要ならその場でタブレットのカメラを使って、患者の様子や患部を撮影してカルテと共に保存できます。タブレットなら簡単に持ち運びできるので撮影も融通が利き、レントゲンやMRIのように患者さんに負担をかけずにすみますよね。しかも時系列で画像比較できるため、経過観察も一目瞭然。ドクターも記憶とカルテの文面だけに頼らず、視覚を使ってより確かな治療が行えるでしょう。

AI(人工知能)型電子カルテ

AI(人工知能)が患者とドクターのやり取りを聞き取り、自動的にカルテに記入したり、同じくAI(人工知能)が日頃の診察や治療パターンを学習して、ドクターが少し書き込もうとするだけでその先を自動記入するタイプもあります。ものによっては、全体の8割をAI(人工知能)が書いてくれるのだとか。これなら事務作業が他の電子カルテよりも飛躍的に楽になるでしょう。

電子カルテの利用実例

病院のイメージ

続いては、オンラインで利用できる電子カルテの利用実例を紹介しましょう。

オンライン診療でも患者への安心感提供に成功!

一時的に認められていたオンライン診療が、恒久的に行えるように本格的な法整備が進められています。そんな中、東京都品川区の目黒未来内科クリニックでは、クラウド診療支援システムのCLINICSのオンライン電子カルテを導入しました。

同病院ではオンラインで患者の顔を見る端末と電子カルテの端末が異なることで、患者さんから見てドクターの視線がそれることが懸念材料でした。確かに痛みや苦しみを訴えている最中に、ドクターの顔が他を向いて自分を見てくれてないと不安になりますよね。

しかしCLINICSのオンライン電子カルテは、診察とカルテ操作が同じ画面上で可能なため、その心配はありません。よって、直接病院を訪れたくてもそれが叶わない、でも症状が重いため的確な診療と投薬が欠かせない、という患者さんには大きな安心感につながっています。

電子カルテで“家庭医療”が充実!

北海道室蘭市の医療法人 北海道家庭医療学センター本輪西ファミリークリニックでは、家庭医療に特化した診察を行っています。家庭医療とは、単に患者さんの病気を診るだけでなく、家庭や職場環境など生活背景にまで踏み込んで理解を深め総合的に患者さんの状態をよくすることを目指すのが特徴です。

治療プロセスでは「サマリーシート」というカルテにあたるものを作成しますが、ここには病状や既往歴だけでなく、家族関係図や抱えている問題をすべて書き込みます。ときにその量は膨大になり、手書きのためどんどん新たな情報を書き加えると見た目も煩雑で治療時に不便を感じることがありました。

そこで、セコム医療システム株式会社のユビキタス電子カルテを導入。サマリーシートのバージョンアップに成功し、情報共有がとてもスムーズになりました。くわえて家庭医療の広がりと定着のため、ドクターの養成も行っていますが、その研修にも電子カルテが役立っています。研修医が書いたカルテをいつでも閲覧でき、問題があれば本人のヒヤリング、フィードバッグもタイムリーに行えるので、育成に大変効果的だとか。

患者さんの生活に踏み込んで治療を施す家庭医療は、診察をして薬を出したら終わり、といった単純なものではありません。表面的にはわからないデリケートな面にかかわるため、複雑で大変な作業の連続です。よって、作業時間短縮が大きな課題ですが、電子カルテの導入でその点がクリアできるのは、大きなメリットがあるでしょう。

電子カルテの問題点

セキュリティのイメージ

次は、電子カルテの問題点について説明しましょう。具体的には、

  • ネット接続できないと使えない
  • 停電に弱い
  • ランニングコストがかかる
  • 高度なセキュリティ対策が必要である

以上の4点です。一つずつ具体的に見ていきましょう。

ネット接続できないと使えない

オンラインで利用できる電子カルテは、ネット環境がなければまったく使用できません。よって、災害や機器トラブルでWi-Fiが使えなくなると患者の情報が呼び出せなくなり、治療や事務作業も中断せざるをえなくなります。

停電に弱い

停電した場合、とくにパソコンオンリーの電子カルテシステムは、機能不全に陥ります。よって、自家発電システムの構築などの危機管理対策が必要でしょう。なお、タブレットの場合は、充電さえ問題なければ停電時でも対応可能です。

ランニングコストがかかる

オンラインで利用できる電子カルテは、月額制が一般的です。よって、月数万円程度ですが、ランニングコストがかかります。年間で換算すると結構な金額になるため予算確保が必要です。

高度なセキュリティ対策が必要である

電子カルテは個人情報の宝庫です。とくに既往歴や投薬歴はもっとも守られるべき重要な情報といえるでしょう。

しかし、オンラインを活用する以上、情報漏洩リスクはつきまといます。オンラインでなくとも、過去には病院スタッフが電子カルテ情報の入ったUSBを紛失した事件も発生しました。よってサイバー攻撃も含め、病院全体でのセキュリティ対策はより高度なものにしておく必要があるでしょう。

電子カルテの未来

デジタルのイメージ

電子カルテは今後、ますます普及率が伸びるでしょう。現状としては、400床以上の大病院で、電子カルテの導入が85.4%にまで進んでいますが、反面200~399床規模では64.9%、200床未満にいたってはわずか37.0%にとどまります。

ただし現在、国を挙げて電子カルテの推奨やオンライン化による地域医療の充実など大規模な医療ICT(情報通信技術)化に向けた取り組みが急ピッチで行われています。くわえて新規開業の病院やクリニックでは、電子カルテ導入率はほぼ100%。よって今後、オンライン診療が定着し、さらに高品質で低価格な電子カルテが開発・実装されれば、電子カルテの普及率は確実に伸びるに違いありません。

まとめ

さて今回は、電子カルテの基本から種類、また電子カルテの利用実例や問題点、さらに未来についてもお伝えしました。

電子カルテは、カルテ情報を電子化したもので、入力、判読、修正がしやすく、紙カルテのように保存場所が必要ありません。とくにオンラインで利用できる電子カルテならレセコンとの連携はもちろん、検査機関と連携して画像や検査結果の共有ができ、初期費用が安価で、ソフトアップデートやメンテナンスもベンダーに一任できるので、大変便利です。

オンラインで利用できる電子カルテには、「パソコン型」「タブレット型」「AI(人工知能)型」などがあります。すでにオンライン診療で患者さんの安心感を得た目黒未来内科クリニックや家庭医療の充実とドクター養成に役立てている本輪西ファミリークリニックなどの導入事例があります。

ただし、オンラインで利用できる電子カルテには「ネット接続できないと使えない」「停電に弱い」「ランニングコストがかかる」「高度なセキュリティ対策が必要である」などの問題点があります。

いまだに電子カルテの普及率は全医療機関の半分以下ですが、今後高品質で低価格な電子カルテが開発・実装されれば、その数値は確実に増えるに違いありません。超高齢化社会に向かうなか、高度な医療技術とシステムの提供は、医療機関に託された大きな責務です。その一翼を担う電子カルテの広がりに期待しましょう。

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