AI(人工知能)と健康管理

【ヘルステック】電子カルテ×AIで医療現場はどうかわるのか事例をご紹介

【ヘルステック】電子カルテ×AIで医療現場はどうかわるのか事例をご紹介

医療や創薬、介護などの分野でさまざまなヘルステックが登場していますよね。その一つに電子カルテがあり、とくに最近はAI(人工知能)との融合により医療現場のデジタル化の推進役をしています。

電子カルテとは、従来は紙に記入していた患者の病状や処置内容、投薬情報などをパソコンやタブレットにデジタル入力したものです。読み間違いや転記ミスがなくなるので、医療事故が防げるうえ、検査結果やCTなどの画像データも共有でき、レセコン(レセプトコンピュータ)との連携も可能なため、医療業務の効率化で大きな実績をあげています。

しかも電子カルテとAI(人工知能)を融合することで、カルテの自動記入や人の手を介さない問診など、医師と患者の負担を同時に軽減するサービスが続々と登場しています。

この記事を読めば、電子カルテとAI(人工知能)の詳しい情報がわかるので、医療現場のデジタル化とサービス向上に役立つに違いありません。

そこで今回は、電子カルテとAI(人工知能)の活用事例や将来の展望をお伝えします。

電子カルテとは

電子カルテのイメージ
病院に行くと、診療中に机上のパソコンに医師が入力する姿をよく見かけますよね。それがまさに電子カルテです。電子カルテは、医師が患者の症状や病歴、治療内容や経過、さらに処方した薬剤のリストなどをまとめたカルテをデジタル化したものです

電子カルテは、院内のシステムと連携できるので、患者が受付を済ますと自動的にその情報がカルテとオンライン共有されます。電子カルテは、処置内容や検査指示、投薬情報はもちろん、従来なら紙カルテとともに管理していたMRIやCTの検査画像も院内のサーバーやクラウド上で一元管理、診療報酬明細書(レセプト)作成や会計業務とも連携可能です。

保存データはいつでも引用できるので、紹介状や診断書などの文書作成もパソコン操作のみで完結し、書き間違いや文字が判読しにくいこともなく、投薬量に誤りがあればアラーム機能も働くため医療事故が防げます。

電子カルテはとても便利なシステムですが、厚生労働省の統計では、国内全体の普及率が46.7%にとどまっています。400床以上の大病院では85.4%が導入しているものの、それ以下の中小規模の医療機関では普及率があがりません。

その原因は、導入にはまとまった予算が必要なうえ、紙カルテをはじめとする従来の使い慣れした院内システムを変えたくないという考えをもつ医師が多いことにあります。今までのように手書きや電話、ファックス対応で何とかなると考え、わざわざ多額のお金をかけてIT機器を導入し、一からシステムをマスターする域までは手が届かないケースが多いです。

AI(人工知能)とは

AIのイメージ
AI(人工知能)は、人間の脳の仕組みを模してコンピュータ上に再現したニューラルネットワークによる機械学習の一種で、識別や検出、推測などに大きな力を発揮します。

人間の脳は、ニューロンという神経細胞がシナプスを介して無数につながり、互いに電気信号を送り合うことで認識や判断、問題解決を行います。AI(人工知能)もニューロンにあたるノード(入力情報を処理してある結果を出す)を集めて複数の層を作りますが、この層をシナプスに当たるエッジを介してつないだものがニューラルネットワークです。そして、この層を何層にも重ねて識別能力を高めるのがディープラーニング(深層学習)で、現在のAI(人工知能)技術の根幹をなします。

例えば、人は幼少期から多くの猫を見たり触れたりする経験を積んで、やがて猫を他の動物と区別できるようになりますよね。AI(人工知能)も同じように大量(100万枚~1億枚単位)の猫の画像を学習させると、ディープラーニング(深層学習)により、猫が認識できるようになります。AI(人工知能)は大変細やかでパターンの異なるさまざまな猫の特徴を学ぶため、人では気づかない些細な部分をとらえて、対象物が猫と判定します。しかも失敗例をフィードバックしたり新たなデータを繰り返し学習させていくと、精度が上がり続けていく点もAI(人工知能)の大きな特徴です。

このパターン認識を応用して、監視カメラ、音声スピーカー、自動運転、異常検知や検品、天気予想、予測発注、与信判断など、あらゆる技術にAI(人工知能)が活用されるようになりました。すでに電子カルテにもAI(人工知能)が活用されており、医師の治療や処方パターンを学習して、必要と思われる検査項目や薬剤情報を提示したり、記述内容を先読みしてカルテの入力補助も行っています。音声認識により医師と患者のやり取りを聞いて、カルテの代筆を行うAI(人工知能)も登場しています。

問診でも、紙ではなくAI(人工知能)搭載のタブレットがその患者にあった質問をし、回答を医療専門用語に変換のうえ電子カルテに送信します。よって看護師が問診票を持っていくとか転記する手間が省け、医師も画面で問診内容を確認できるのでいちいち患者に詳しく聞き直す必要がなくなるのだとか。

以上のように、AI(人工知能)の活用で従来とは次元の異なるイノベーションが可能となるため、富士キメラ総研が発表した「2019 人工知能ビジネス総調査」によると、2030年度のAIビジネス市場規模は2017年度比で5.4倍にあたる2兆1,286億円と予測されています。もちろんAI(人工知能)は、ヘルステックの中軸として医療業界のデジタル化にも貢献し、これからも多大な変革をもたらすに違いありません。

電子カルテのメリット・デメリット

続いては、電子カルテのメリットとデメリットについて説明しましょう。電子カルテのメリットは全部で4つあります。

  • 業務を効率化できる
  • 確実なデータ保存と共有ができる
  • 診察に集中できる
  • 省スペース化できる

それでは一つずつ解説していきましょう。

業務を効率化できる

電子カルテの記入は、文字入力以外にもマウス操作で決まった文言(薬名と投薬量、治療内容など)をスタンプを押すようにして簡単に入力できます。このため、紙カルテより格段にスピード処理でき、患者を待たせる時間も短縮できます。紙カルテを持ち運ぶ必要もなく、レセコンとも連携できるため、医師や看護師、スタッフの作業負担が軽減して業務効率化がはかれるでしょう。

確実なデータ保存と共有ができる

電子カルテは、院内のサーバーかベンダーのクラウドサーバーでデータ保存するため、紙カルテのように破れたり紛失する心配はありません。書き間違いがなく、修正や加筆も簡単です。また、系列の病院や介護施設とのデータ共有や検査機関との連携によりレントゲンやCTの画像データ、検査結果の共有もできます。さらに他の医師や看護師も複数の端末でカルテの内容をいつでも閲覧でき、Wi-Fiがあれば外部でもデータにアクセスできるので、訪問診療にも使えるでしょう。

診察に集中できる

紙カルテの場合は、患者が懸命に症状や体調を崩した経緯について話しても、医師が下を向いて記入していることが多く、患者の不満の種になっていました。しかし、電子カルテは入力に時間がかからないため、医師が患者の話にしっかりと耳を傾けて診察に集中できます。

省スペース化できる

紙カルテは、院内に専用スペースをもうけて保管しなければなりません。患者が増えるにつれスペースも増やす必要があり大変です。その点、電子カルテはすべてサーバーにデータ保存できるため、収納スペースが必要なくなり省スペース化できます。

続いて、電子カルテのデメリットを見ていきましょう。具体的には、2つあります。

  • 初期費用やランニングコストがかかる
  • システムダウンや情報漏洩リスクがある

初期費用やランニングコストがかかる

電子カルテは、院内にサーバーを設置するオンプレミス型の場合、初期費用が数百万円単位で必要になります。ベンダーのサーバーで管理を委託するクラウド型なら初期費用は安価ですが、月々のランニングコストがかかるので、あらかじめ入念に見積りをとって予算を確保する必要があるでしょう。

システムダウンや情報漏洩リスクがある

電子カルテは、災害や通信障害、機器トラブルによりシステムダウンする恐れがあります。タブレットなどで充電に問題がなければ良いですが、停電時もデータが取得できなくなるので、自家発電装置を確保するなどの対策が必要です。クラウド型の場合はウィルス感染の危険性も否めないので、ベンダーと協議のうえセキュリティ対策にも注力しましょう。

電子カルテ×AIの活用事例

病院のイメージ
続いては、実際に電子カルテ×AI(人工知能)を導入した事例を紹介しましょう。

電子カルテの音声入力で業務効率化を促進!

医療法人社会福祉法人仁生社 江戸川病院(東京都江戸川区)では、かねてから電子カルテへの移行を検討していました。ところが、院内にはパソコン操作に不慣れな年配の医師がいるため、誰でも抵抗なく簡単に使えるシステムが必要でした。そこで、AI(人工知能)搭載の音声入力できる電子カルテ、株式会社アドバンスト・メディアの『Amivoice Ex7 Clinic/Hospita』を導入しました。

Amivoice Ex7 Clinic/Hospitaは、AI(人工知能)が医師の声を認識して電子カルテに自動書き込みします。医療専門用語に特化したソフトが内蔵されているため、入力と同時に適切な変換が行われるので、手入力する必要がほとんどありません。声を出して入力することを恥ずかしがることもありましたが、紙カルテよりも記入スピードが格段に速く、電子カルテへのスムーズな移行による業務効率化が達成できました。

AI問診導入で患者と向き合う時間を確保!

内科、外科、消化器外科、循環器内科など20科、138床を有する医療法人社団けいせい会 東京北部病院(東京都足立区)の1日の平均患者数は300人にのぼります。新患も多い日で20件あるため、紙の問診票では人手と時間が取られて、患者に十分向き合えないため、医療の質の向上が課題でした。そこでUbie株式会社のAI(人工知能)問診『AI問診ユビー(以下ユビー)』を導入。

ユビーは、タブレットでAI(人工知能)が患者の主訴などをもとに最適化された質問を自動生成して聴取、すぐに医療専門用語に翻訳して医師の電子カルテに送ります。5万の医学論文をもとに常に新しいエビデンス情報を追加しているので、質問や翻訳の能力はアップデートを繰り返しているとのこと。

東京北部病院では、ユビーを搭載したタブレットを5台用意して対応。紙の問診票を整理し、持ち運んで転記する必要がない分、作業効率が上がり、初診問診時間も従来の3分の1で済むので、空いた時間でしっかりと患者に向き合えるようになりました。電子カルテに送られてくるAI(人工知能)の文言も、最初は少し違和感がありましたが、フィードバックすることで翻訳能力も向上、カスタマイズされ使い勝手が良くなってきました。

紙の問診票の時は情報が伝えられなかった放射線技師からも、ユビーの問診情報をオンライン共有できるようになり、患者さんの様子がより詳しくわかることで、仕事がしやすくなったと評判になりました。

電子カルテ×AIの未来

薬のイメージ
今後、電子カルテとAI(人工知能)の融合はますます進んでいくでしょう。AI(人工知能)を使えば、患者がタブレットの問診表に症状などの情報を入力した時点で、想定される病名をリストアップ、必要な検査項目や薬まで提示可能です。

電子カルテ大手のエムスリーデジカルの調べでは、同一症状の患者の80%が同じ処方パターンで、全患者の80%以上が減薬や追加薬で類似性があるうえ、全体の80%以上が上位10%の薬剤を処方されるというデータがあります。この現実を考えると、パターン認識が得意なAI(人工知能)にとって患者の問診情報から検査項目や薬候補を割りだすのは決して難しいことではありません。

むしろ今後、AI(人工知能)搭載のスピーカーを使って自宅で問診を済ませ、体温も事前に測って電子カルテにデータ送信できるようになれば、さらに上質な連携が生まれ、病院での待機時間が減らせるうえ、ペーパレス化や非接触対策もでき、患者や病院スタッフの負担も軽減できるでしょう。薬局ともオンラインでつながれば、薬剤情報を常に共有できるので、薬局での待ち時間も短縮できます。

以上のように、電子カルテ×AI(人工知能)は、これから医療機関がデジタル化を推進し、大幅な業務効率化をはかるうえでなくてはならない存在です。社会の高齢化が急速に進むなか、ヘルステックの中軸としてますます需要が伸びるに違いありません。

まとめ
さて今回は、電子カルテ×AI(人工知能)の活用事例や将来の展望をお伝えしました。

電子カルテは、処置内容や検査指示、投薬情報にくわえ、今まで紙カルテとともに管理していたMRIやCTの検査画像も院内のサーバーやクラウド上で一元管理、診療報酬明細書(レセプト)作成や会計業務とも連携可能です。ただ、電子カルテは、導入に多額の予算がかかることや医療スタッフが旧来のシステムから抜け出せない習慣のが原因で、いまだ国内の普及率は46.7%にとどまっています。

しかし、電子カルテとAI(人工知能)のディープラーニングを融合させると、カルテへの自動記入や問診票の翻訳などにより、医療機関の業務効率化や医師、看護師の負担軽減に貢献しています。

ただし、電子カルテには、「業務を効率化できる」「確実なデータ保存と共有ができる」「診察に集中できる」「省スペース化できる」というメリットがる反面「初期費用やランニングコストがかかる」「システムダウンや情報漏洩リスクがある」というデメリットもあるので、導入時には注意しましょう。

電子カルテ×AIは、江戸川病院の電子カルテへの音声入力や東京北部病院のAI問診など、医師や看護師の負担を軽減したり、患者の待ち時間を短くするサービスとして次々と導入されています。

団塊の世代や団塊ジュニアが高齢化していくなか、待ち時間の短縮やスムーズな診療・検査は重要な課題です。くわえて医師や看護師など医療機関のスタッフの負担軽減も後回しにはできません。よって、電子カルテとAI(人工知能)の融合は今後ますます弾みがつくとともに、重要視されるに違いありません。

【お知らせ】

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