DX(デジタルトランスフォーメーション)

医療の未来が変わる?電子カルテ×DX導入のサービス事例まとめ

電子カルテとDX(デジタルトランスフォーメーション)をかけあわせると、医療の未来は大きな可能性が広がります。しかし実際、どのようなことができるのか、イメージしにくいですよね。

現在紙カルテを使用中の医療機関は、保管場所の問題やIT化への時代の流れから、電子カルテへ切り替えをお考えのところが多いでしょう。

これから電子カルテに移行するなら、DXの導入も踏まえて検討されることをおすすめします。その理由は本記事で詳しく解説。

「電子カルテとは」に始まり「導入例」もご紹介していますので、ここを読めば「電子カルテ×DX」をイメージしやすくなるでしょう。

「電子カルテ×DX」を進めれば、医療機関側にも患者側にも大きなメリットがあります。ぜひ参考にしてください。

電子カルテとは

診察のイメージ

電子カルテとは、従来医師が紙に書いていた診療内容をパソコンやタブレットで記録し、データを保管・編集できるシステムです。

電子カルテのメリットデメリット

電子カルテには、残念ながらデメリットもあります。

  • 慣れるまで入力に時間がかかる
  • 停電時に使えなくなる
  • 導入時と運用にコストがかかる

新しいシステムは、操作に慣れるまで入力が大変ですよね。停電時の対応やコスト面も気になるところでしょう。しかし電子カルテのメリットは、これらのデメリットを軽く払拭できるくらい絶大なものがあります。

たなべ吹き出し
たなべ

電子カルテの導入で仕事量が減った事務員に、クラークとして活躍してもらうのも1つの方法です

それでは、電子カルテのメリットを「医療機関側」と「患者側」に分けてご説明します。

【医療機関側のメリット】

  • 手書きより読みやすいため、事故防止につながる
  • 同時に複数のスタッフが利用できる
  • さまざまな工程で業務効率化が可能
  • カルテの保管スペースが不要
  • 画像など検査結果の取り込みが可能
  • 薬の情報取得機能や投与のアラーム機能がある

【患者側のメリット】

  • 待ち時間の短縮
  • 別の医師でも引き継ぎが容易で安心
  • 介護施設にいても、カルテ情報が病院と共有されているので安心

このように医療機関側からみても患者側からみても、電子カルテは大きなメリットがあります。

では、電子カルテにはどのような種類があるのでしょうか?次でご説明しましょう。

電子カルテの種類

電子カルテは大きく分けて次の3種類あります。

  • オンプレミス型:システムを院内に保有
  • クラウド型:ネットのサーバ上でデータを管理
  • ハイブリッド型:クラウド型とオンプレミス型を組み合わせたもの

最近はセキュリティ面での心配が少なくなってきたため、オンプレミス型からクラウド型に切り替える病院が増えています。

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たなべ

インターネット切断時にも利用可能なのがハイブリッド型です。これは便利そう!

次に、どうして今、電子カルテにDXを導入すべきなのかをご説明しましょう。

なぜ、今電子カルテにDXを導入するのか

DXのイメージ

まず、DX(デジタルトランスフォーメーション)について解説します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用し、企業や組織を変革し続けて「新しい価値」を創造するとともに、競争で優位な立場を確立すること。

DXは単なる「デジタル化」を意味するものではありません。DXに取り組むプロセスのファーストステップが「デジタル化」です。

ですから電子カルテによって紙カルテをデジタル化し、それを活用して「新しい価値」を生み出してこそDXと呼べるのです。

電子カルテにDXを導入する理由は主に次の3つ。

  • 医療機関の人手不足
  • 医療データ共有時のセキュリティ問題
  • データ活用による新しいサービス

1つずつみていきましょう。

医療機関の人手不足

電子カルテにDXを導入する理由1つめは、医療機関の人手不足。日本は今、団塊の世代が70歳を超えて超高齢化社会に突入しています。

これからより多くの医療従事者を必要としているのに、少子化によりその数は年々減少しているのが現状です。

この人手不足を解消する仕組みづくりとして「DXによる業務効率化」が急がれています。

医療データ共有時のセキュリティ問題

電子カルテにDXを導入する理由2つめは、医療データ共有時のセキュリティ問題です。

日本は東日本大震災で、医療データ管理の重要性を突き付けられました。当時、紙カルテは津波で流されてしまい、電子カルテもネットワーク被害で使えず……結果、助かる命も助けることができませんでした。

その後、電子カルテ情報を遠隔地に保管する必要性が再認識され、実用化に向けて研究が進められてきましたが、ネックとなったのはセキュリティ問題。

医療データはサイバー犯罪者にとって、非常に価値の高い情報です。情報漏えいは何としても防がなくてはなりません。

災害大国と呼ばれる日本において、医療データのセキュリティ問題は喫緊の課題なのです。

データ活用による新しいサービス

電子カルテにDXを導入する理由3つめはデータ活用

DXは、データを活用することによって新しいサービスを生み出すのが目的です。電子カルテのデータが蓄積されれば、それをもとに、より便利なサービスを構築できるでしょう。

以上、電子カルテにDXを導入する理由3つをご説明しました。電子カルテが普及しだして20年を超えた今、ようやくそのデータを活用し、医療分野が抱えるさまざまな課題を解決する糸口が見えてきました。

その具体例を以下でご紹介しましょう。

電子カルテにDXを導入した例:オンライン問診票

病院のイメージ

電子カルテにDXを導入した事例として株式会社シーエスアイの「かかりんDX問診」をご紹介します。「かかりんDX問診」は、電子カルテと連携して使用するシステム。

「かかりんDX問診」は、従来紙に記入していた問診を、タブレットに入力していくことで効率化を可能にしています。タブレットに表示される質問は、入力内容によって変化していくのが大きな特徴。

表示画面はとても見やすく、回答は選択式になっているため、迷うことなく入力できます。

「かかりんDX問診」の医療機関側のメリットは以下のとおり。

  • 紙の問診を電子カルテに転記する手間がなくなる
  • 医師が患者と向き合う時間が増える
  • 感染症対策になる

医師は、問診内容が医療用語に変換された電子カルテがあるので、スムーズに診断に入れます

「かかりんDX問診」の患者側のメリットは以下のとおり。

  • スタッフに知られたくない内容でも、電子カルテなら入力しやすい
  • スマホに慣れている人なら、紙に書くより簡単
  • 診察時、医師の入力時間が減るため、向き合って話を聞いてもらえる

「かかりんDX問診」は電子カルテと連携させることで「新しい価値」を生み出しました。

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たなべ

これこそ、DXですよね

電子カルテにDXを導入した例:電子カルテに薬剤情報の提供

薬のイメージ

電子カルテにDXを導入した例の2つめは、富士通が開発した薬剤情報提供サービス。医薬品の情報を、電子カルテや地域医療ネットワークに提供するサービスです。

医療機関はもともと、製薬会社のMR(医薬情報担当者)や勉強会によって薬の情報を入手してきました。しかし最近は、病院のコンプライアンス強化や感染症対策によって、製薬会社の医療機関への立ち入りが難しくなっています。

このような状況を踏まえて富士通は、電子カルテなどを使って医療機関や患者に薬剤情報を提供できるサービスを開発。医師は診断時に電子カルテから薬剤情報を閲覧できるため、安全で正確な情報を入手できるようになりました。

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今までバラバラだった薬剤情報が、各社共通のプラットフォームに一括管理されてわかりやすくなりました。

電子カルテにDXを導入した例:災害時に備えた医療データ管理

デジタルのイメージ

電子カルテにDXを導入する例の3つめは、医療データを遠隔地に保管するシステム。NECらが量子暗号を用いて、サンプルデータを安全に送受信する実験に成功しました。

医療データを送受信する際、ネックとなるのがセキュリティ問題。今後量子コンピュータが実用化されると、既存の暗号化技術では簡単に解読されてしまいます。

量子コンピュータとは、量子力学を用いた次世代のコンピュータ。スパコンが1万年かかる計算をわずか数分で計算できる能力がありますが、まだ実用化には至っていません。

今回NECらが実験に成功したシステムは、量子コンピュータでも解読不可能な「量子暗号」を用いています。

量子暗号は、「光子」と呼ばれる光の粒に「暗号のカギ情報」をバラバラに分割してのせます。その光子の情報は、一部でも不正な解読があると情報が変化してしまい、復元できなくなるしくみ。
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量子暗号は「盗まれていないことが保証された暗号カギ」しか使うことができません。

電子カルテ情報を伝送する際に「量子暗号」を使うと、情報漏えいを強固に防いだうえで、複数の医療機関間でリアルタイムにデータを参照することが可能になります。

この技術が実用化されて一般に広まったら「旅先で事故に遭った」などという場合も安心ですよね。

電子カルテとDXの未来

デジタルのイメージ

電子カルテを活用したDXは今始まったばかり。これからますます進化していくでしょう。

【診察時】
診察時には医師と患者の会話が音声認識システムで電子カルテに記録され、入力の手間が少なくなるでしょう。多言語に対応しており、外国の方でも安心。電子カルテの情報からAI(人工知能)が診断の補助をし、病名の候補や、おすすめの治療薬を提示します。

【入院病棟の看護師】
患者の血圧や体温は自動で電子カルテに反映。看護師と患者の会話は、看護師が付けているピンマイクが拾った音声をAI(人工知能)が文字データに変換し、電子カルテに記録します。

【全国の医療機関が電子カルテを共有】
電子カルテの情報は個人データと紐づけられて、全国どこの病院に行っても自分のデータがあり、最適な治療を受けられるようになるでしょう。

【ウェアラブル端末の情報も電子カルテに】
ウェアラブル端末の健康情報も電子カルテに紐づけられる日がくるでしょう。何時に起きて、どのくらい運動したか、血圧や心拍数まで、データはどんどん蓄積していきます

【医療関連のビッグデータをもとに予防中心に】
医療関連のビッグデータはAI(人工知能)による診断の助けとなり、今までわからなかった生活習慣と病気の関連性が明らかになるでしょう。すると「〇〇の習慣のある人は△△の病気になる確率が60%」などがわかるように。医療機関の役目は予防が主体になっていきます。

 

まとめ

本記事では「電子カルテとは」に始まり「電子カルテにDXを導入する理由」を解説。導入例3つと、「電子カルテ×DX」の未来についてもご説明しました。

医療業界のIT化は「規制が多い」「利益を生み出しにくい」などの理由から、他の業界に比べて大きく後れをとっています。まだ紙カルテを使っている医療機関も多く、デジタル化は「待ったなし」の状況です。

電子カルテを検討する際は、1歩進めてDXの導入まで視野に入れることをおすすめしました。でも実際に「DXを導入するには?」と考え始めると、何から手を付ければいいのかわからなくなりますよね。

まずは現状の課題を洗い出してみてください。そのうえで「電子カルテのデータをどう活用するか」に焦点を絞って検討しましょう。

DXのめざす「新しい価値」を創造するヒントは「データ」にあります。電子カルテに蓄積されていくデータを、医療業界の未来のために活かしましょう。

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