DX(デジタルトランスフォーメーション)

今知っておくべきEC企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)とは

今知っておくべきEC企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)とは

今やインターネット通販で商品を購入するのは当たり前となり、EC業界は私たちの生活にすっかり浸透していますよね。それとともに消費者ニーズも多様化し、ネットショッピングでは、欲しい物を買うだけではなく、心地よい買い物体験も求められるようになりました。

そんな消費者行動の変化に素早く対応して売上げを伸ばすには、EC企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化は避けられません。

そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、AI(人工知能)や5Gなどのデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革すること。ですから、DXには「デジタル化」が前提となりますが、ECは商品やサービス情報をデジタル化して顧客に提供するので、DXを進めやすい分野とも言えます。

ただ近年では、ECを新たに開始したり本腰を入れ始める企業が増えて競争が激化しています。そんな中、「とりあえず何かをやってみる」という場当たり的な施策では、DXの実現は難しいでしょう。

この記事では、EC企業でDXを成功させるためのポイントを解説するので、DXでビジネス変革を起こし、売上げ拡大に役立つに違いありません。

そこで今回は、EC企業ではどのようにDXを進めればよいのか、具体的な施策や施策への取り組み方も含めてお伝えします。

EC企業の現状と問題点

ECのイメージ

そもそもECとは、Electronic Commerce(電子商取引)の略で、インターネットで様々な商品やサービスの売買をすることを意味します。

そんなECの市場規模は毎年右肩上がりで成長していますが、ここではその背景とEC企業が抱える課題について解説しましょう。

日本でのECの誕生は1993年頃と言われていますが、当時はそれほど成長しませんでした。転機となったのは1997年のエム・ディー・エム(現楽天)の誕生です。その後、インターネットの普及でEC市場は徐々に拡大し、1999年にはYahoo!ショッピングサービス、2000年にはAmazon.co.jpサービスが相次いで開始。さらに、2000年代に入ると中小様々な企業がECに参入し、スマホが普及する現在では、その利便性の良さからEC利用者も急増しています。

また、ECに取り組む業界にも変化が表れています。従来はEC化率が高い業界と言えば、事務用品や家電、書籍、アパレルなどでしたが、今では飲食、宿泊、教育など実店舗が有利とされていた業界もEC化に踏み出しています。これは、今まで実店舗での購入を好んでいた比較的年齢層の高い人たちが、ECを利用するようになったことも一つの要因です。

こうしたEC企業の増加やEC利用者数の拡大で生じるのは、競争の激化です。たとえば、消費者がECで商品を購入する際は、Amazonや楽天市場などのモールや検索サイトなどで欲しい商品を探しますよね。すると、その商品を扱う複数のお店がヒットしますが、その中から選択するのは自分のニーズに合う商品でしょう。ある人は送料無料だったり、またある人は当日配送や返品が簡単な商品かもしれません。

そうした消費者の様々なニーズに対して、複数の接点からサービスを提供できなければサイトへの集客やリピーターが増えず、企業の競争力は失われるでしょう。

ですから、EC企業が競合他社に勝ち抜くには、製品やサービスの質はもちろん、顧客対応の向上や顧客が求める商品の提案など、新たな価値の提供が必要となります。

そこで求められるのがEC企業のDX化です。DXは、効率化や品質向上といった従来の業務改善とは異なり企業変革そのものです。

そんなDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何なのかを、次で詳しくお伝えしましょう。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

デジタルのイメージ

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した概念で、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」(引用:平成30年 情報白書)と発表しています。大ざっぱに言えば、「デジタル技術自体ではなく、デジタル技術によってもたらされる人間の生活の変化に注目しよう」と提言しています。

その後2018年、経済産業省が公表した定義には「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(引用:経済産業省 DX推進ガイドライン)と具体的に提唱されています。

ここからもわかるように、DXは単にデジタル化を進めるだけでなく、そこから得たデータとAI(人工知能)やIoT、5Gなどのデジタル技術を使って、売上げや利益を伸ばす仕組みやビジネスモデルを新しく創ることです。

身近な例として、Amazonがあります。Amazonはもともとインターネットで書籍のみを販売していましたが、当時はネットでの買い物がまだ浸透していませんでした。そこで、独自システムによりカスタマーレビュー機能やレコメンデーション機能などを充実させることで、ユーザーが買い求めやすい環境を作り上げました。

これをきっかけに、取り扱う商品を徐々に拡大し、多様化する消費者ニーズも細かく分析。そして、1クリックで商品を素早く買える仕組みや、送料無料、当日配送など便利なサービスを取り入れました。この便利さゆえにリピーターも増え、現在の売上げ拡大につながっています。まさにAmazonによって、インターネットを利用して買い物する、という新しい生活スタイルが生み出されましたと言ってもよいでしょう。

では、AmazonのようにEC企業が変革を起こすにはどんなDX施策が効果的なのか、次で具体的に解説します。

EC企業で取り組まれる主なDX施策

データのイメージ

EC市場で求められるのは、いかに競合他社との差別化を図り自社サイトに「集客」できるかということです。そのためにも、以下のようなDX施策を行って、顧客満足度を高め、購買行動につなげましょう。

ユーザーの行動データを分析する

実店舗での買い物なら通りすがりに「何となく気になるなあ」と思ってお店に入ることもありますよね。ですが、ECでは顧客にまず自社サイトを選んでもらわなくては始まりません。そんな時、顧客が欲しい、あるいは顧客がまだ気づいていない商品を先回りして見つけ出し、買いそうなタイミングで提示できると購入意欲も高まるでしょう。

ですが、顧客に合った情報を提供するには顧客の行動分析が必要です。たとえば、顧客の年齢、性別、居住地、購買履歴、検索履歴といったデータをAI(人工知能)によって分析すれば、顧客の行動特性がつかめ、必要な時に必要とする商品やサービスの提供が可能になります。

ちなみに、サイト内検索やレコメンドの精度を高める手段として、サイト内検索エンジン「goo Search Solution」(NTTレゾナント株式会社)などのサービスを利用する方法もあります。goo Search Solutionは、ECサイト全体の顧客行動データを蓄積して、顧客が本当に求めているのは何かを洗い出し、それを検索上位に表示したりレコメンドに反映させます。こうしたツールを活用すれば、せっかく検索しても商品を見つけられないという購入の機会損失も防げて、顧客に心地よい買い物体験を提供できるでしょう。

デジタルツールで顧客との接点を増やす

顔が見えないEC利用者にアプローチするには、様々なデジタルツールが役立ちます。たとえば、手軽に扱えるSNSを活用すれば、商品情報やレビューの拡散が期待できます。さらにSNS広告やSNSキャンペーンなどの施策も実施でき、幅広い年代の人たちとのコンタクトが可能です。

加えてチャットボットを導入すれば、さらに顧客とのコミュニケーションを増やせます。チャットボットなら、電話やメールの代わりにいつでも問い合わせに答えてくれますが、ボットに使われているAI(人工知能)は、一度伝えた内容を全て記憶して、人より早く回答するので待ち時間も削減されます。なので、顧客が興味を持ったタイミングですぐに繋がり、残念な取りこぼしもなくなるに違いありません。

他にもMA(マーケティングオートメーション)ツールを利用すれば、顧客の属性や購入意欲に合わせてメールを自動送信できるので、顧客と継続的な関係を維持できるでしょう。

決済方法の選択肢を広げる

ECサイトで買い物をすると、必ず決済方法を選択しますよね。でも、顧客が望む決済方法がない場合、商品を購入せずにそのサイトから離脱してしまう「かご落ち」の割合が63%(SBペイメントサービス(株)調査 2020年)にも及ぶのだとか。そうならないためにも、顧客の年齢やニーズ、今の時代に合った決済方法を用意する必要があります。

たとえば、従来はクレジットカード決済を選択するユーザーが圧倒的に多く、その次がコンビニ決済や銀行振込、代金引換が人気でした。しかし、近年はクレジットカードを持たない10代、20代のEC利用者が増えたことと、セキュリティー意識の高まりもあり「外部ID決済」のニーズが高まっています。

そんな外部ID決済とは、Amazon Pay や楽天ペイなどでおなじみのキャッシュレス決済です。Amazonや楽天市場などに登録してある会員情報と連携でき、利用者はIDとパスワードのみで決算できるため、クレジットカード情報や住所を入力する必要がありません。よって、スムーズな購入体験を提供できサイト訪問者の購入率アップにもつながるでしょう。

他にも、キャッシュレス化の影響でモバイル決済や電子マネー決済、キャリア決済の利用率も上昇中です。こうした決済方法の選択肢を増やせば、幅広い年齢層の顧客を獲得できるに違いありません。

物流インフラを強化する

ECの拡大により取り扱う商品の数が増えると、商品の入庫や保管、在庫管理、ピッキング、発送業務など物流現場の負担も大きくなります。加えて、少子高齢化で労働人口が不足する中、今までの物流のやり方では多様化する消費者の欲求を満たせないでしょう。

というのも、消費者にとって当日配送はもう当たり前。最近では数時間から数十分以内で商品を届けるというECサービスも表れています。こうした消費者ニーズに対応するには、AI(人工知能)やロボット、テクノロジーによる省人化、自動化は必須です。

例を挙げると、AI(人工知能)が人に代わって商品を仕分けて運搬するAI棚搬送ロボットを導入したり、倉庫管理システムを活用して入出荷、在庫管理をデジタル化すれば、仕分けや出荷ミスが減り業務効率化につながります。

また、宅配の効率化を進めるために再配達の手間をなくすアプリも登場しています。たとえば、207株式会社開発の「TODOCUサポーター」アプリなどを活用すれば、受取り人にSNSで荷物情報を伝えられ、在宅、不在、置き配などを事前に確認できて再配達のムダを防げます。

このように、今やECと物流は密接にかかわっており、その物流にDXを行えば、配送がスムーズに進んで顧客満足度にも反映されるに違いありません。

DX(デジタルトランスフォーメーション)施策を行った時に起こる問題点

計画のイメージ

ここまで、EC企業が取り組むべきDX施策についてお話しましたが、今だ多くの企業ではDXが浸透しているとは言い切れません。そこで、DXを阻む問題点は何なのかを次で見ていきましょう。

経営戦略が曖昧でビジネス変革につながらない

さあ、DXを進めよう!と各現場にデジタル技術を導入しても、単なるコスト削減や業務効率化で終わることもありますよね。それは、企業が何を目指しているのか具体的な戦略を曖昧なまま進めてしまった結果です。まず、自社がどんな企業に変わりたいのか、何を強みにするのか、経営者自らが明確にして、そのビジョンに向かい全社を挙げてDXを推し進めることが大切です。

DXを進める人材が足りらない

AI(人工知能)やIoTなど最新技術を取り入れて企業変革を起こすには、今まで社内にいなかったような人材の確保が必須です。

たとえば、デジタルに詳しいだけではなく、自社がどのように儲けているのかなどビジネスに関する豊富な知識、デジタルのトレンドを見極めて自社の製品やサービスに結びつけるデジタル活用能力、組織全体を巻き込んで改革に取り組めるような社内調整力を持つ人材が必要になります。

こうしたスキルを持ちあわせたリーダー不在でDXを始めても、せっかく集めた貴重なデータが宝の持ち腐れになるかもしれません。こうならないためにも、DX推進に精通した人材の確保が急がれます。

レガシーシステムが負担になる

比較的歴史の新しいEC業界でも、レガシーシステム(旧型システム)を利用している企業は少なくありません。それは、システム担当や経営者の頭の中には「今まで成功してきたからこのままでよい」という意識がまだ根付いているからです。

しかし、レガシーシステムは旧式のテクノロジーを採用しているため、爆発的に増えるデータを収集しきれず、AI(人工知能)によるデータ解析も困難になります。しかも、機能のつぎはぎが繰り返されることで複雑化し、新しいシステムとの連携に問題が生じることも。もちろん、保守運営や維持費などのランニングコストもかかります。こうしたレガシーシステムはDX実現の大きな壁になるでしょう。

では、どうすればDX施策がスムーズに進むのか次でお伝えします。

DX(デジタルトランスフォーメーション)施策をうまく取り組むには

企業のイメージ

ここではDX施策を成功に導くための具体的な取り組みを解説します。

ビジョンや戦略を明確にする

DX施策を進めるのは簡単なことではありませんが、成否を分ける最大のポイントは経営層にあります。そんな経営層に求められるのは、「新しい事業を展開して継続的に売れるしくみをつくる」など、ビジネス改革で何を達成したいのか、目標を明確にして社内に浸透させることです。

こうして目指すべき目標が明らかになれば、それに向けてどんなデータを蓄積すればよいのか、どんなツールが最適なのかなど、様々な方法や手段が見えてくるでしょう。さらに、現場からもアイデアを出し合い、経営層と情報共有しながら連携してDXを進めることが大切です。

実行に向けた体制を強化する

経営層がいくらビジネス変革を示しても、DXは現場主導で実施するので、中心となって動くエキスパート人材がいなくてはうまく進みません。すなわち、DXにおいて最も重要なのは、デジタル技術を活用してどのような問題をどう解決するかを設計できる人です。

しかし、日本ではこうした人材が圧倒的に不足しています。なので、組織内でデータを活用できる人材を再教育したり、ITに知見があり、業務改革の推進力がある人物を集めてプロジェクトチームをつくるなど、DXを実現させる体制を整えることが重要です。

従来の企業文化を変える

従来の日本企業では失敗を許容する文化がありませんでしたが、DX施策をうまく進めるには、その文化を打ち破る前向きな姿勢が大切です。特に、DXは成果が表れるまで数年かかるとも言われますが、まずは小さなトライから始め、失敗したらそこから得た学びを次に生かしてチャレンジを繰り返す、というサイクルが基本になるでしょう。

それに日本企業は、ハンコや紙文化など慣れ親しんだものからの脱却が苦手だと言われています。ですが、競争の激しいEC企業では、使い慣れた古いシステムを思い切って刷新するなど、時代の流れに沿った柔軟性が必要です。そして、とにかくやってみるというスピード感ある改革で、競合他社との差別化を図りましょう。

EC企業の未来

ショッピングのイメージ

時間を選ばず好きな場所で買い物できるという利便性の良さから、EC市場は今後も伸びると予想されます。しかし、EC通販が当たり前になればなるほど、競争が激化し自社のサービスの質が問われるでしょう。

そんな中、これから注目したいのはECサイトとリアル店舗の連携です。ECサイトはどこにいても商品が簡単に購入できるメリットがありますが、一方で商品を実際に手にとって確認できない、洋服を試着できない…などのデメリットもあります。しかし、ECサイトとリアル店舗を同時に運営すれば、ECサイトではできなかった買物体験が可能になります。

例を挙げると、「Yahoo!ショッピング」の商品を実際に体感しながら、オンラインで購入できる「QRECS」(SBエンジニアリング、ジョルダン)という次世代店舗がすでに展開されています。これは、オンラインで販売されている商品を実際に商品棚から手に取って確認でき、表示されるQRコードをスマホで読みとれば、そのままオンライン上で購入できるというもの。商品は後日、自宅に配送されるので重い荷物を持ち帰る煩わしさもありません。

これから先、消費者ニーズがますます多様化する中、ECサイトとリアル店舗両方のメリットを生かしたDX戦略は急速に拡大するでしょう。そして、顧客に満足してもらえる上質な買い物体験を提供し続ければ、「この会社の商品ならずっと買いたい」という多くの固定客をつかみ、EC企業の大きな強みになるに違いありません。

まとめ
さて今回は、EC企業でDXを進めるための具体的な施策や施策への取り組み方をお伝えしました。

では、もう一度内容を振り返りましょう。

近年では、欲しい物が簡単に手に入るという利便性の良さからインターネット通販の利用者が激増しています。それに伴い、ECの市場規模が拡大して企業間競争も激化しています。そんな中、EC企業が競合他社に勝ち抜くには、顧客対応の向上や顧客が求める商品の提案など、顧客のニーズに合った新たな価値を提供する必要があります。

そこで、EC企業に求められるのがDXです。DXとは単にデジタル化を進めるだけでなく、AI(人工知能)やIoT、5Gなどの最新技術を使って、売上げや利益を伸ばす仕組みを新しく創ることです。

そんなDXの実現に向けて、EC企業が取り組むべき主な施策は以下の通りです。

  • ユーザーの行動データを分析する
  • デジタルツールで顧客との接点を増やす
  • 決済方法の選択肢を広げる
  • 物流インフラを強化する

しかし、DX施策を行っても必ずしも成功するとは限らず、次のような問題が起こることもあります。

  • 経営戦略が曖昧でビジネス変革につながらない
  • DXを進める人材が足らない
  • レガシーシステムが負担になる

ですから、DX施策を成功に導くには以下のような取り組みが必要です。

  • ビジョンや戦略を明確にする
  • 実行に向けた体制を強化する
  • 従来の企業文化を変える

今後もEC市場は拡大し、成長し続けると予測されます。なので、EC企業がさらなる差別化を図るには、ECサイトとリアル店舗、双方のメリットを取り入れたDX戦略が必須になるでしょう。そして、いかに心地よい買い物体験を顧客に提供できるか、どれだけ多くの固定客をつかめるかが生き残るカギになるに違いありません。そのためにも、早速DX施策を実行に移して、多くの熱心なファンを獲得しましょう。

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