企業の経営では、様々な不測のリスクに備える必要がありますよね。例えば病気の流行や取引先の倒産、物流がストップする、市場の波にのり遅れる・・・など様々なリスクがあります。現代ではこのようなリスクを乗り越えるため、企業のデジタル化や経営の多角化を行うようになりました。
そんな中、今「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」という言葉が注目を浴びています。最近登場している言葉で「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」がありますが、DXとはデジタル社会に適用するために企業が行うビジネスモデル・経営の変化を指します。このSXも、そんな企業のリスクや変化に生き残るための手段です。でも、「DXとどう違うの?」「そもそもSXって何?」「具体的にどんなことをやるの?」など、様々なことが気になるかもしれません。
ということで今回は、「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」についてと、その実現させようとする企業の事例についてお伝えしましょう。
SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは
まずは、そもそもSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とはどういう意味なのかを紐解きましょう。
経済省発行の「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間取りまとめ~サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の実現に向けて~」では、SXを次のように定義しています。(以下引用)
- 「稼ぐ力」の持続化・強化:企業としての稼ぐ力を(強み・競争優位性・ビジネスモデル)を中長期で持続化・強化する、事業ポートフォリオ・マネジメントやイノベーションに対する種植え等の取り組みを通じて、企業やサステナビリティを高めていく
- 社会のサステナビリティを経営に取り込む:不確実性に備え、社会のサステナビリティ(将来的な社会の姿)をバックキャストして、企業としての稼ぐ力の持続性・成長性に対する中長期的な「リスク」と「オポチュニティ」双方を把握し、それを具体的な経営に反映させていく
- サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)とは、企業と投資家の対話を通じて実現していくものであり、〜中略〜「伊藤レポート 2.0」や「価値協創ガイダンス」で無形資産への投資の重要性、ESG 投資や持続可能性も踏まえて具体化された、企業の稼ぐ力(強み・競争優位性)を中長期でどう確保・向上させていくかという「中長期の価値創造ストーリー」を、不確実性の高まりを踏まえて、経営の在り方・対話の在り方として、より具体化するものであり、企業と投資家の対話を通じた中長期の「企業価値協創」の中核に位置づけられるべきもの
と言っても、「何がなんだかさっぱりわからない」と感じますよね。ざっくりまとめると、SXとは「経営上におけるリスクや変化に対して、企業が利益を出す力を維持するための取り組み」というイメージで良いでしょう。
SXにおいて大切な存在は、「投資家」
もともと「サステナブル」という言葉には「持続可能な」「ずっと続けていける」という意味があります。「トランスフォーメーション」とは、構造が変化することを指しています。これがビジネスの意味に転じて、企業がずっと耐えられるように企業の利益を出す構造を変化させること、という意味合いになりました。
そしてこのSXにおいて、大事な存在なのが「投資家」。というのも、2014年に経済産業省から発表された「伊藤レポート」では、以下のように述べています。ちなみにこの「伊藤レポート」とは、企業が成長するにはどのような投資が望ましいのかについてまとめた報告書のことです。(以下引用)
「中長期的に企業価値を高めていく企業に投資することで、持続的な収益(リターン)を求める。これを資金の出してである家計や年金の資産運用として見れば、そのような投資収益こそが国民一人一人の資産形成、ひいては国富の維持をもたらすものと言える。」
これがどういうことか、をまとめましょう。投資家が企業を選ぶときは、財務報告書やIRなどの資料を読み、「この企業は成長するかどうか」「この企業は今後も維持できるかどうか」で判断しますよね。こうして投資家から選ばれている以上、企業は利益を出し続ける必要があります。このようなお金の動きは「インベストメント・チェーン(投資の連鎖)」と呼ばれ、経済を循環させるにはとても重要なのだとか。
さらに伊藤レポートでは、このような投資判断において企業の成長・維持できるかどうかだけではなく、「ESG(環境・社会・ガバナンス)」や企業にどんな社会的な問題が解決できるか、などの基準も関わるとしています。
例えば当メディア(AIZINE)の運営会社であるお多福ラボでは、「AI(人工知能)で企業の課題を解決する」という目標を立てています。また、グループ会社や社内の管理体制をしっかり整えているので、ありがたいことに企業として信頼を得て経営できています。
このような場合を考えると、企業と投資家で互いにコミュニケーションをとりつつ、投資がしやすい環境をつくる必要があります。企業は単独で利益を出し続けるだけでなく、投資家による応援という名の投資があってこそ、支えられていると言えるでしょう。
SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)が求められる理由
では、なぜSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)が必要になったのかについて解説します。
あらゆる環境の変化に企業が生き残るため
SXが必要な理由は、「不確実な変化に対応するため」です。例えば最近、新型コロナウイルスの流行により経営が不調になったり、倒産する企業が増えていますよね。
特に飲食やイベント、旅行関係が大きく影響を受けたと言われています。私も知り合いにイベントの音響関係の企業を経営している人がいるのですが、仕事がないことを嘆いていました。
現代では、このような環境の変化が予期せぬところで起きます。そして、それに対して経営が傾く可能性もあります。このような変化の中で、企業が利益を出す仕組みやビジネス上のでの強みを持ってうまく生き残るようになりたいはず。それを企業や投資家を含めて、どうすれば生き残れるのか、それをESG(環境・社会・ガナバンス)とうまく両立しながら経営を図るのが、SXです。
経済の成長には、企業が利益を出し続けることが不可欠だから
また企業が利益を出し続ける、ということは経済の成長にもつながります。日本ではリーマン・ショックやコロナウイルスの影響で経済の流れが鈍ったり、少子高齢化による労働の担い手が少なくなったりして、危機的な状況にあります。
特にこのご時世では、旅行・観光業・飲食店を回すために政府が旅館・旅行会社・旅行者・飲食店に補助金を出す「Go To キャンペーン」が記憶に新しいかもしれません。これはまさに、経済を回すために行っているものです。
また先ほどの投資家の例に近いものがありますが、「投資家」は何も株を買う人だけに限った話ではありません。例えば私たちが買い物をするときに、「このブランドだと信頼できる」「この商品は質が良い」などの理由で買うことがありますよね。見方を変えれば、この「物を買う」行動も一つの投資。買うことによって、商品を作った企業・商品を売っているお店の両方にお金が入ります。こうして経済を回して成長するのが、今の日本に求められています。
つまり私たちが物を買ったり遊びに行ったりしてこそ、経済が活性化します。そして企業は私たちに「買ってもらう」「行きたいと思わせる」などの工夫をしながら、「社会に何か影響を与える」必要があります。そのために、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)によってビジネスを変化させて、世の中に影響をあたらえられるようにしましょう。
SX実現、というのはどんな定義か
SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)の実現の一つとして、最近企業でも取り組みが始められているのが「SDGs」。このSDGsとは、貧困や飢餓、経済成長やジェンダーなどの地球規模の課題を解決する国際目標のことです。
SDGsは2015年9月の国連サミットにおいて採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を元にして、2030年までに達成する目的で作られました。このアジェンダ名を元に、SDGsは「持続可能な開発目標」とも言われています。
なぜこの目標が作られたのかというと、このままでは私たちの住んでいる地球が危ないからです。例えば私たちが使っている車の多くは、ガソリンで走っていますよね。しかし、この原料である石油はあと50年でなくなる可能性があるのだとか。さらに、車から出る排気ガスも環境問題につながります。
この他にも、異常気象、温暖化、砂漠化、水不足などの環境問題や、貧困、飢餓、差別などの社会問題も残っています。それを放置してしまうと、環境だけでなく戦争によって地球の危機になってしまう可能性もあるでしょう。そのため、これらの問題を解決するために目標が立てられました。
この目標を、今多くの企業がこの目標を達成しようと試みています。なぜ企業がこの目標に取り組みのかというと、企業の信頼を得るため、また社会に貢献するためです。
ご自身が企業に勤めている、または家族が企業勤めの方がいる場合は、その勤めている企業がなるべく倒産せず続いて欲しいですよね。ビジネスでも、激しい競争に生き残るために様々な工夫が必要になります。そこでSDGsに取り組むと、ビジネスチャンスにつながったり、企業のイメージが良くなったりする効果があります。これによって、企業が生き残るためのSXにつながるでしょう。
ちなみにお多福ラボでも、「福を生み出し、沢山の人に振り撒く」をモットーに目標を掲げています。例えばストレスチェックのツールの開発で人々の健康を守ろうとする、プログラミングスクールを開催して子供たちへの教育に貢献する・・・など、取り組みを行っています。
それでは、次からそんなSDGsを達成するために活動している企業について解説しましょう。
SX実現のために活動する企業の事例
では、実際にSDGsを元に、SXを実現しようとしている企業の例について解説しましょう。
「使い捨て」はもうサヨナラ!傘のシェアリングサービス
傘を持っていないけど、突然雨が降ってくるというシチュエーションは多くの人が遭遇したことがありますよね。この時にコンビニでビニール傘を買う人もいるかもしれません。しかし、そのビニール傘は電車やバスの中に忘れたり、あるいはゴミ箱に捨てられる傾向があります。そうなると、資源が無駄になってしまいます。
そんな中で、今傘のシェアリングサービスが広がっています。株式会社Nature Innovation Groupが開発した「アイカサ」では、1日70円、月額280円で傘がレンタルできます。
ビニール傘が1本500円と考えると、これはとても安いですよね。
レンタルする方法も、アイカサのLINE@の公式アカウントをフォローし、傘を借りたい場所と本数を調べて、その場所でQRコードを読み取ってもらうだけ。すぐに借りられるので、とても便利でしょう。
実際に、アイカサのサービスを導入して駅・コンビニなど約900箇所で傘が置かれるようになりました。このサービスが広がれば、傘が捨てられることも少なくなるに違いありません。
お菓子製造から海外の子供に支援!
私たちのいる日本では、毎日栄養がある食事ができる方が多いですよね。遠くアジアの国では、都市と農村における格差が広がっています。実際にカンボジアでも、過去の内戦や政治上の混乱などがあり貧困に苦しむ人も多いとのこと。そのカンボジアで、今5歳未満の子供の3割以上が栄養失調になっていることが課題でした。
私が子供のころでも、保健室のポスターで「朝食は食べなさい」とありました。それは、まさに授業に集中するためなのですね・・・。
学歴がないと、将来の選択肢が狭くなり貧困から抜け出しにくくなってしまいます。
そこで、NOM POPOKでは大豆やお砂糖などカンボジアの農村で取れた食材を使ったお菓子を幼稚園・小学校や病院に届ける活動をしています。お菓子なら、子供たちも喜んで食べれますよね。
この他にも、カンボジアでは栄養に対する教育が行き届いていないことも課題でした。そこでNOM POPOKでは、2021年以降にカンボジアでの栄養教育ができるように進めています。
遠く離れた海外の課題を解決するに当たって、もしかしたら私たちにもできることがあるかもしれません。
AI(人工知能)に関する知識を広める!
当メディア(AIZINE)の運営会社であるお多福ラボでも、SDGsに向けての取り組みを行っています。お多福ラボはもともとAI(人工知能)の開発なのですが、実は、このAIZINEもSDGsの活動にも含まれています。
多くの人がAI(人工知能)という言葉を聞くと、「なんだか難しそう」「遠い世界の話でしょ?」と感じがちでしたよね。しかし、最近ではAI(人工知能)を搭載した家電、アプリなどがどんどん登場するようになりました。
AIZINEでは、そんな身近な家電の話や「AI(人工知能)とはどんなものなのか」など、AI(人工知能)に関する知識を発信してきました。これによって、AI(人工知能)に対する不安や疑問を解消し、AI(人工知能)に対する興味をもつ人が増えました。さらに、企業でAI(人工知能)開発に関する問い合わせも続々と来ています。
お多福ラボでは、この他にも面白い取り組みを行っています。気になる方はまずこちらからみてみましょう。
SXの今後
ここまでで、企業がSX(SDGs)に向けて取り組んでいる例を解説しました。今後も、このようなSXに取り組む企業が増えることは間違いありません。
リーマン・ショックや昨今の新型コロナウイルスの影響で、様々な企業が倒産しました。そして生き残った企業でも、様々な競争を強いられています。企業の良いイメージを与えて消費を促進させつつ、事業で社会貢献を行うことが企業の役目。SXは、まさに企業が生き残るための必須の手段となりつつあります。
まだSXについて取り組んでいない、またSDGsに向けて何もやっていない、という企業さんがあるかもしれません。ぜひ、今後に向けて取り組みましょう。
さて、今回は「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」についてと、その実現させようとする企業の事例についてお伝えしました。では、今回のポイントをざっくり振り返りましょう。
- SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは、経営上の様々なリスクでも生き残れるように企業が利益を出す力を維持するための取り組みのこと
- SXが必要な理由は、「あらゆる環境の変化のリスクに生き残るため」「経済の成長には、企業が利益を出し続けることが不可欠だから」
- SX実現において、今多くの企業が取り組んでいるのが「SDGs」
- SX実現の事例として、傘のシェアリングサービスの登場、カンボジアでのお菓子の支援、AI(人工知能)に関する情報発信がある
- SXに取り組む企業は、今後も増える
変化の多い環境の中で、企業が生き残るには努力が必要です。SXは、その変化に耐えられるだけの力をつけるのに役立ちます。またそのようなSXが広まっていく中で、私たちにあった商品やサービスが誕生するかもしれません。今後も、様々な企業の動きを気にしていきましょう。
サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)こそ、DXよりはるかに重要な理由
「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」中間取りまとめを行いました
サステナブルとは
お多福ラボのSDGsへの取り組み
コロナ禍でのSDGs活動、日本に決定的に足りないもの
SDGsとは? 話題になっている理由をわかりやすく解説
傘のシェアリング「アイカサ」で雨の日の常識が変わる?
【企業のSDGs事例】カンボジアの子どもに健康的な食生活を!お菓子製造企業NOM POPOKの取り組み
社会企業 NOM POPOK | ピースインツアー [ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマーへの海外旅行・スタディツアー]