AIとは何か

AI(人工知能)とは?人によって異なるその定義をまとめてみた

AI(人工知能)

AI(人工知能)ってどういう意味だったっけ・・・と思って定義を調べてみたら、どこを見ても「明確なものはない」とか「定まっていない」とか。そんなふうに前置きしつつも一応説明はあるのですが、どうしてちゃんとした定義がないのか不思議ですよね。

試しにSiriに尋ねてみたら長―い説明が始まり、「もういいー!」と慌ててストップ。(Siriさん、もうちょっとわかりやすい言葉で説明をお願いします)

まぁ文字を見れば「人工的に作った知能」だと見当はつくのですが、一言でズバリわかりやすい言葉が欲しい。でも、調べてみるとAI(人工知能)の定義は人によって随分違うのです。それは「研究分野」だったり「メカ」だったり「システム」だったり。

そこで今回は「どうしてAI(人工知能)の定義は人によって異なるのか」に焦点を当てて調べてみました。AI(人工知能)についての基礎知識も、できるだけ優しく解説。

AI(人工知能)の意味が「”ぼんやり“としかわからない」というあなた、ここを読めばその「ぼんやり」している原因がハッキリとわかります。自分の知能をスッキリさせて、早速みていきましょう。

AI(人工知能)とは


AI(人工知能)は、「Artificial Intelligence(アーティフィシャルインテリジェンス)」の略語。

Artificial(人工的な)、Intelligence(知性、知能)、これを直訳すると「人工的な知能」で、すなわちAI(人工知能)というわけです。日本では「エーアイ」とか「人工知能」と呼ばれています。

ではAI(人工知能)の定義を「人工知能学会」はどのように説明しているのでしょうか。

「人工知能とは何か」という問いに対する答えは,単純ではない。(中略)一言でまとめると,「人間と同じ知的作業をする機械を工学的に実現する技術」といえるだろう
引用元:一般社団法人「人工知能学会」https://www.ai-gakkai.or.jp/comic_no1/

このように、「人工知能学会」は、AI(人工知能)の定義を説明するのは「単純ではない」としています。でもこんなによく使われている単語なのに、どうして単純に言い表すことができないのか、不思議ですよね。

それを理解するために、まずはAI(人工知能)の歴史を振り返っておきましょう。

AI(人工知能)の歴史について

AI(人工知能)の歴史は意外と古く、始まりはなんと1956年。ダートマス会議で命名されたのが最初です。

たなべ吹き出し
たなべ

まだ東京タワーも完成していない頃に生まれた言葉なんですね

AI(人工知能)は誕生から今までの間に、3回の「ブーム」と「冬の時代」を繰り返してきました。それぞれのブームを時代背景とともにみていきましょう。

第1次AI(人工知能)ブーム

  • 1956年代後半~1960年代
  • イメージ:考えるのが早いAI(人工知能)
  • 時代背景:カラーテレビが放送開始(1960年)

第1次AI(人工知能)ブームでは迷路など、まだ子供のゲーム程度の能力。それでも当時は話題になりましたが、すぐに「この程度か」という失望から冬の時代へ。

第2次AI(人工知能)ブーム

  • 1980年代
  • イメージ:もの知りなAI(人工知能)
  • 時代背景:パソコンが普及し始める/ファミリーコンピューター発売(1983年)

第2次AI(人工知能)ブームでは、「エキスパートシステム」が開発されて医療分野などで活躍。しかしこの頃のパソコンの能力は今のスマホよりずっと劣っていました。人間が一つずつ知識を書きこんでいましたが、量が膨大で全く追い付かず、再び冬の時代へ。

第3次AI(人工知能)ブーム【機械学習】

  • 2013年~現在
  • イメージ:データから学習するAI(人工知能)
  • 時代背景:インターネットの普及

第3次AI(人工知能)ブームはまさしく今。インターネットの普及、IoT(モノのインターネット化)でビッグデータを扱うことが可能になり、ディープラーニングによって、AI(人工知能)のできることは一気に広がりました

このようにAI(人工知能)は、発想自体は60年以上も前からあったもののコンピュータの能力が追い付かず、本格的に実用化され始めたのはインターネットが普及したここ数年ということになります。

たなべ吹き出し
たなべ

そんなに昔からAI(人工知能)の発想があったなんてすごい!

では次に、AI(人工知能)の種類についてみてみましょう。

AI(人工知能)の種類

AI(人工知能)の分け方には「意思の有無」による分類と「用途」による分類の2種類あります。

強いAI(人工知能)と弱いAI(人工知能)

AI(人工知能)は「意思の有無」による分類で、次の2つに分けられます。

  • 強いAI(人工知能):人間のように意思を持ち、感情を理解できるAI(人工知能)
  • 弱いAI(人工知能):人間の思考を表面的に模倣するAI(人工知能)

人間のように意思を持っている強いAI(人工知能)というのは、ドラえもんやターミネーターをイメージするとわかりやすいでしょう。もちろんまだ実現していませんし、実現するかどうかも意見の分かれるところです。今あるAI(人工知能)は全て「弱いAI(人工知能)」です。

特化型人工知能と汎用人工知能

次は「用途」による分類(”できることに”による分類)で、こちらも2つに分けられます。

  • 汎用人工知能:人間のようにいろんなことに対応できるAI(人工知能)
  • 特化型人工知能:特定の用途に特化した領域で活躍するAI(人工知能)

特化型AI(人工知能)は、画像認識や音声認識といった特定の用途で活躍するAI(人工知能)。一方、汎用AI(人工知能)は人間のようにいろんなことができるAI(人工知能)。今あるのは特化型AI(人工知能)のみです。

使い方はどちらもほぼ同じ

AI(人工知能)をどのような視点でみるか、とらえ方の違いなので実際は同じように扱われることが多いでしょう。

  • 強いAI(人工知能)≒汎用AI(人工知能)
  • 弱いAI(人工知能)≒特化型AI(人工知能)

よく見かけるのは「汎用人工知能(強いAI)」、「特化型人工知能(弱いAI)」といった表記。

このように、分け方だけみても2種類あってわかりにくいですよね。この2種類の分け方は、「AI(人工知能)をどう定義するか」による違いから生まれたものだとも考えられます。AI(人工知能)を「意識や感情」といった面からとらえるか、「できること」に注目してとらえるか・・・。

たなべ吹き出し
たなべ

複雑ですね

次はいよいよAI(人工知能)の定義についてです。

AI(人工知能)の定義をそれぞれ解説

ではここから、AI(人工知能)の定義についてお話していきます。

専門家が定義するAI(人工知能)とは

最初にもお話しましたが、AI(人工知能)の定義は人工知能学会でさえ「単純ではない」としています。そこで、まずは国内の主な専門家の意見をみてみましょう。

研究者(所属) 定義
中島秀之(公立はこだて未来大学) 人工的につくられた、知能を持つ実態。あるいはそれを作ろうとすることによって知能自体を研究する分野である
武田英明(国立情報学研究所) (上記、中島秀之氏に同じ)
西田豊明(京都大学) 「知能を持つメカ」ないしは「心を持つメカ」である
溝口理一郎(北陸先端科学技術大学院) 人工的に作った知的な振る舞いをするためのもの(システム)である
長尾真(京都大学) 人間の頭脳活動を極限までシミュレートするシステムである
堀浩一(東京大学) 人工的に作る新しい知識の世界である
浅田稔(大阪大学) 知能の定義が明確でないので、人工知能を明確に定義できない
松原仁(公立はこだて未来大学) 究極には人間と区別がつかない人工的な知能のこと
池上高志(東京大学) 自然にわれわれがペットや人に接触するような、情動と冗談に満ちた相互作用を、物理法則に関係なく、あるいは逆らって、人工的につくり出せるシステム
山口高平(慶應義塾大学) 人の知的な振る舞いを模倣・支援・超越するための構成的システム
栗原聡(電気通信大学) 人工的につくられる知能であるが、その知能のレベルは人を超えているものを想像している
山川宏(ドワンゴ人工知能研究所) 計算機知能のうちで、人間が直接・間接に設計する場合を人工知能と呼んで良いのではないかと思う
松尾豊(東京大学) 人工的に作られた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術。人間のように知的であるとは、「気づくことのできる」コンピュータ、つまり、データの中から特徴量を形成し現象をモデル化することのできるコンピュータという意味である
出典)松尾豊「人工知能は人間を超えるか」(KADOKAWA)p.45より

このように、AI(人工知能)の定義は専門家によって随分違っています。

専門家の意見が分かれる7つの論点

どうしてこのように専門家でさえ意見がバラけているのか、論点が別れているポイントをまとめました。

  1. 知能とは何か
  2. 人工知能(AI)とは何か
  3. 人工知能(AI)研究とは何か
  4. 人工知能(AI)に身体性は必要か
  5. 意識とは何か、心とは何か
  6. 知識とは何か
  7. スーパー知能とシンギュラリティについて
出典)「人工知能とは」人工知能学会監修(近代科学社)

AI(人工知能)の定義がいろいろあるのは、上のような論点によるもの。1つずつみていきましょう。

ただ、研究者レベルの話なので、とにかく難しいです。1つ1つ「こんな点で違うから定義がバラバラなんだ」という程度の理解で読み進めてください。

論点①知能とは何か

定義がバラけている原因として、まず1番に挙げられるのがそもそも「知能」の定義が人それぞれだから。

知能は「生物が生き残るための能力」、「問題をうまく解く能力」といった考え方や、「個人(生物)の知能と社会的に必要な知能を分けて考えるべき」、「知能はあくまで個人のもの」といったように、方向性や範囲がさまざまなのです。

たなべ吹き出し
たなべ

人間の知能がそもそも説明しにくいからなんですね

論点②人工知能(AI)とは何か

これは定義そのものなので、上記の表をご覧ください。代表的な考え方は溝口氏、西田氏、長尾氏あたりです。

個性的なのは堀氏の、知能だけでなく環境も含めて「世界」としている点。池上氏は「先に人工生命を作れば副産物として知能も出現する」という、面白い考え方をされています。

論点③人工知能(AI)研究とは何か

AI(人工知能)は研究分野として定義されることも多くあります。学問を一言で説明するのは非常に難しいのですが、研究分野としての「知能」は、「作る」と「知る」の大きく2つに大別。

「作る」の方は、動作原理、「知る」の方は説明論理に基づいています。「作る」の方で例を挙げると、解説者とスポーツ選手、経営学者と経営者の場合、後者がAI(人工知能)という考え方。

論点④人工知能(AI)に身体性は必要か

これはわかりやすいですよね。身体性というのは、人間でいうと「脳みそ」人工知能(AI)でいうと「ロボット」です。

これも専門家の間で意見が分かれていて、「将棋などゲームに身体性は必要ない」という考え方も。

論点⑤意識とは何か、心とは何か

心や意識を説明するのも学問的で話が難しくなります。

人間の「意識」だけみてみても、「自己意識は制御可能」という考え方や、「意識は無意識下の計算によって支えられているが気づかずにいる」という考え方など。

論点⑥知識とは何か

専門家の意見を簡潔にまとめつついくつか取り上げると「類似の情報が記憶され抽象化されると知識となる」、「脳神経の興奮パターンが意識化して言葉になる仕組み」など。AI(人工知能)に期待することの方向性によっても違ってきます。

「知識」と聞いて意味がわからない人はめったにいないと思いますが、AI(人工知能)に結び付けて考えると途端に複雑に。

たなべ吹き出し
たなべ

混乱してきて思わず「知識とは」でググってしまいました

論点⑦スーパー知能とシンギュラリティについて

「スーパー知能」とは人間の能力を超えた知能。シンギュラリティは技術的特異点のことで簡単に言うと「AI(人工知能)が人間の知能を超える時点」。

これからどんなふうにAI(人工知能)が進化していくのか、確かなことは専門家でも意見は分かれています。

以上、AI(人工知能)の定義が人によって異なるポイントを7つ取り上げてご説明しました。

たなべ吹き出し
たなべ

全てを理解するには専門家レベルにならないと無理ですね。

AI(人工知能)の定義がいろいろある理由

AI(人工知能)の定義はどうして人によって違のか、わかりやすくまとめると次のとおり。

  • そもそも「知能」や「意識」、「心」などにそれ自体の定義がない
  • 研究者の専門分野によってとらえ方が違ってくる
  • 身体性(ロボットなど)が必要かどうか
  • どの知能レベルをAI(人工知能)とするか

以上4点が主な理由。この中で最後の「どの知能レベルをAI(人工知能)とするか」についてご説明します。

例えば50年前にAI(人工知能)と呼ばれていた、子供のおもちゃのようなゲーム。今はもうレベルが低すぎてとてもAI(人工知能)とは呼べませんよね。同じように今AI(人工知能)と呼ばれているものも、やがて知能とは呼べない当たり前の存在になるでしょう

また、「汎用人工知能(強いAI)こそが真のAI(人工知能)で、今AI(人工知能)と呼ばれているものは研究過程でしかない」という考え方も。

このように「どの知能レベルをAI(人工知能)とするか」も専門家によって考え方が違ってくるのです。

たなべ吹き出し
たなべ

「知能」について考えていたら、私の脳は疲れ果てました

結局、AI(人工知能)の定義とは

結局、AI(人工知能)の定義は何なのでしょうか。ここは寄らば大樹の陰、権威あるところの2つを例に挙げておきます。

人工知能学会:人間と同じ知的作業をする機械を工学的に実現する技術

総務省:人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、あるいは人間が知的と感じる情報処理・技術(令和元年版情報通信白書より)

もちろん、上記どちらも「確立した定義はない」などと前置きがしてありました。いつか分かりやすい定義が決まればいいのに・・・なんて思ってしまいますよね。

では最後に、AI(人工知能)の今後について考えてみましょう。

AI(人工知能)の今後

AI(人工知能)はディープラーニングが開発されてから飛躍的に進化しました。今後もますます研究は進んでいくでしょう。

でもせっかくの技術が、日本ではまだ産業分野にほとんど活かされていません。その原因の一つとして、年功序列社会が考えられます。

海外で急成長している企業は20代から30代の若者が決定権を持っている場合が大半。日本も若い人たちがもっと活躍して社会を牽引していってくれたら、AI(人工知能)の活用が進みそうです。

そしてドラえもんのような汎用人工知能(強いAI)の実現は・・・専門家の間では「今ある技術の延長線上にない」と否定的な意見が多数。もし実現するとしても、ずっとずっと先のことになるでしょう。

人間を超えるAI(人工知能)は、アニメや映画の世界でじゅうぶん・・・というのが皆本音ですよね。

 

まとめ

今回はAI(人工知能)の定義を「どうして人によって異なるのか」に焦点を当ててお話しました。ここでポイントをおさらい。

AI(人工知能)の定義が人によって異なる理由

  • そもそも「知能」や「意識」、「心」などにそれ自体の定義がない
  • 研究者の専門分野によってとらえ方が違ってくる
  • 「ロボット」など身体性が必要かどうか
  • どの知能レベルをAI(人工知能)とするか

このような理由でAI(人工知能)の意味を誰もはっきりと説明できない、ということがわかりました。

AI(人工知能)の定義を説明することは難しいけれど、研究自体は1950年代から始まって、ここ数年は劇的に進化しています。今はAI(人工知能)の3度目のブーム、もう「冬の時代」は来てほしくないですよね。

このままAI(人工知能)の急成長が続くことを祈りつつ、AI(人工知能)に負けないよう自分の知能レベル向上にも努めていきましょう。

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