毎日のように私たちに話題を提供し続けるAI(人工知能)、今もなお活躍するシーンを増やし続けており、今後もさらなる発展が期待でき、新しい技術がリリースされるのが楽しみですよね。
このようなAI(人工知能)の発展の裏には技術の開発が必要となりますが、AI(人工知能)技術の開発にはこれらの2種類に分けられます。
- 人間がAI(人工知能)をソフトウェア(プログラム)の開発
- AI(人工知能)がより高速に処理するためのハードウェアの開発
どちらかと言うと、AI(人工知能)を制御するためのソフトウェア開発をイメージする人が多いと思われますが、実はここ最近は、ハードウェアの開発が熱を帯びてきているのです。
その背景には、人間の脳の動きに近づきつつあるAI(人工知能)が、ビッグデータと言われる大量のデータを扱ったり、機械学習をするようになり、膨大な量の計算を同時にすることが要求されているからです。
このような要件に応えるためには、ソフトウェアの開発もさることながら、AI(人工知能)専用のハードウェアの開発が必要とされるようになりました。特にAIに特化したハードウェ アはAIチップと呼ばれて、近年多くの大手IT企業が開発に着手しています。
AIチップを開発している企業は、現在シェアトップのNVIDIAをはじめ、Intel、Google、Amazon 、Apple、そしてFacebookなど、そうそうたる顔ぶれです。これだけ多くの企業が開発を進める AIチップとは何なのでしょうか?パソコンに搭載されているCPUとは何が違うのでしょうか。そこで今回は、今後のAI(人工知能)の発展には欠かすことのできないAIチップについて解説いたします。
コンピュータの基礎知識
まず、AI(人工知能)の定義とは、人間の持つ知能や知性を人工的に作り出すことです。こ れを実現するため私たちはコンピュータを使って人工知能を開発しています。それでは、改めてコンピュータの基本的な仕組みと処理の流れについてイメージ図(筆者自作)をご覧ください。
1 ハードディスクにあるデータを取り出して、メモリに移動 2 CPUがメモリ上のデータを読み取って演算 3 演算した結果のデータをメモリに返却 4 メモリにあるデータをハードディスクに移動
一般的に、高度なAI(人工知能)であればあるほど、より多くのデータが読み込まれて演算されます。しかし、あまりに多くの演算要求が重なると、忙しいCPUは処理が追いつかなくなってきます。そのCPUを助けるために活躍するのがこの後にご紹介するGPU、そしてAIチップなのです。このGPUやAIチップはCPUの演算機能を請け負う役目を持っています。
CPUとGPU、そしてAIチップ
CPUは、Central Processor Unit(中央演算処理装置)と呼ばれるように、コンピュータ内で中心的な役割を担っています。プログラムの命令を元に演算を行って、メモリ、ディスプレイ、マウス、キーボード、プリンタなどを制御しながら命令を実行しています。このようなマルチな才能を持ったCPUは、ドラクエで言うところの勇者です。
ご存知の通り、勇者は武力も魔法も使えますが、戦いを本業とする戦士に比べると体力や武力は低く、魔法を本業とする魔法使いと比べてもMPや使える魔法が少ないなど、やはり専門家と比べると見劣りしてしまいます。
当然ですが、強い敵を倒すためには攻撃力の高い戦士に任せるのがセオリーです。ここでAI(人工知能)の演算処理に話を戻しますと、勇者CPUを助けるのは、演算能力に長けているGPUという名の戦士なのです。
GPUとはGraphics Processing Unit(画像演算装置)の略称で、コンピュータグラフィックスの演算などを行う画像処理装置のことです。20世紀末に半導体のメーカーであるNVIDAが開発しました。 文字データとは異なり、画像データの演算自体は特徴があり、単純な計算を同時に並行して実行する必要があります。そのため、この処理に特化した装置としてGPUが誕生しました。
GPUは単純な作業を並列に行うことを得意としています。3Dグラフィックスなどの画像処理は、単純な計算を大量に行う必要があるためGPUが向いています。 例えて言うならば、工場の単純作業を1つの優秀なCPUに任せるよりも、たくさんのGPUに任せた方が作業がはかどるということです。


GPUはAI(人工知能)の演算だけではなく、ビットコインのマイニングにも応用されています。
2010年代になりAI(人工知能)の性能要件が高まるにつれて、ハードウェアに対する要求が高まってきました。つまり、AI(人工知能)がスマートフォンに搭載されるようになり、物理的に小さくて高性能なハードウェアのニーズが高まってきました。
もともとAI(人工知能)は、汎用性の高いコンピュータをカスタマイズしてAI(人工知能)を作ってきたのですが、パソコンの延長ではなくAI専用のハードウェアが必要になる時代になってきたということが言えます。
例えば、iPhoneの場合、ここ数年リリースされている機種はアップルが独自に開発したAIチップが搭載されております。
このAIチップは、主にiPhoneのカメラ周りの機能を充実させるためのものと言えます。
例えば、顔認証システムFace IDや、カメラで背景を自動的にぼかしたりする技術に使われています。
特に、Face IDは新しいスマートフォンの認証方法として使用され、iPhoneのロック解除としても使うためとても重要な機能となります。
Face IDで本人の顔をロック解除のキーとして使用した場合、そっくりさんの顔や双子の兄弟の顔、または本人の顔写真で認証しても、ちゃんとNGを出すようにしなければいけません。その厳しい要件を実現しているのがAIチップなのです。
そのAIチップのおかげで、Face ID使用時にはカメラが捉えた画像を解析し、パーツの生合成を確認するだけではなく、顔の凹凸までも判断して認証しているのです。
このように、スマートフォンという小さいデバイスの中で、これだけ多くの情報を瞬時に判断する必要があるため、専用のハードウェアであるAIチップが必要となるのです。
今回はAIチップと題して、AI(人工知能)の技術に貢献しているハードウェアの解説をいたしました。これからのAI(人工知能)技術のの発展のためには下記の理由でAIチップが必要と考えられています。
- 物理的制約
スマートフォンという限られたスペースの中に収める必要があります。 - 消費電力
スマートフォンのバッテリーの持ちに直結するため、より低い電力で処理をこなす必要があります。 - CPU構造の限界
単純だけど並行して同時に演算するアーキテクチャーが必要です。
AIチップの開発の歴史はまだ浅く開発が始まったばかりと言えます。ここしばらくはAIチップのデファクトスタンダードを取るために、各社は懸命になってAIチップの開発を進めることでしょう。今後さらに研究が続けられることによって、私たちが想像もつかなかったAI(人工知能)技術が世に出ることを期待しましょう。
これからのAIチップの進化は要チェックです!