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大手企業も会員参加する人工知能学会はどんな所?注目の内容を説明

AIのイメージ

世の中には、数えきれないほどの業界団体や学会などが存在し、各々が独自の活動を行っていることは皆さんもご存じのとおりでしょう。もちろん人工知能(AI)に関する学会というのも存在します。それが、「一般社団法人人工知能学会」です。

学会と言いますと、論文誌の発行や、研究発表などを活動内容として思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。人工知能学会でもこういった活動は積極的に行われていますが、他にも人工知能(AI)に関する学会ならではのユニークな活動や、人工知能(AI)初心者を対象とした入門講座など、その活動は非常に多岐にわたっています。

そこで今回は、名だたる大手企業も会員として参加する「人工知能学会」の活動内容についてお伝えします。

実は結構老舗なんです!人工知能学会の歴史とは

歴史のイメージ

まずは成り立ちについてお話ししましょう。人工知能学会の歴史は意外にも古く、設立は今から30年以上も前にさかのぼります。

1982年に日本では「第5世代プロジェクト」と呼ばれる本格的な人工知能(AI)研究がスタート、それを受けて1986年7月、第2次人工知能ブームと呼ばれていたちょうどそのころ、学会は産声を上げました。

当時の人工知能(AI)界隈のトレンドと言えば「エキスパートシステム」。

ある分野に特化して膨大な知識や情報を学習し、専門家のように推論や判断を行う人工知能(AI)を活用したコンピュータシステムです。また、今ではおなじみとなった機械学習の基盤となるアルゴリズムである「ニューラルネットワーク」が注目され始めたのもこの頃でした。

学会の誕生と時を同じくして、日本国内での人工知能(AI)に対する関心は一気に高まり、日本は世界の人工知能(AI)研究の表舞台へと躍り出ることになります。その後、「データマイニング」や、「ディープラーニング」などの様々な画期的な技術の進歩によって今日の人工知能(AI)技術が確立されてきたことは皆さんもご存じのとおりでしょう。

人工知能学会のここがスゴイ!驚くべき活動内容とは

人工知能学会のイメージ

ではここからは、人工知能学会では具体的にどのような活動が行われているのか、見ていくことにしましょう。

全国大会の開催

人工知能学会の全国大会は年1回開催されています。

33回目を迎えた2019年度は、新潟県の朱鷺メッセで開催されました。4日間の会期中、数多くの研究発表や講演が行われ、さらにはランチセッションや、ナイトセッションなども行われました。まさに人工知能(AI)漬けの4日間となったようです。

2019年度の全国大会では、人工知能(AI)の医療分野への応用、自然言語処理などをテーマとした研究発表が多く見られました。このように研究発表のテーマには、まさに現在の人工知能(AI)界隈のトレンドともいえるキーワードがずらりと並んでいますよね。

そんな中、ひときわ異彩を放つセッションを発見しました。それは「脳波から音声言語を抽出・識別する」と題して行われたこのセッション。人間が言葉を発しているときの脳波の状態を観察し、言語と脳波の関係性をディープラーニングを用いて解析、脳波の動きから人間が想起した言語をテキストデータとして抽出しようという試みです。

毎年開催される人工知能学会全国大会は、その研究発表テーマを見れば、現在の、そしてこれからの人工知能(AI)研究の進むべき方向性が浮かび上がってきます。

なお、発表された研究論文は、全国大会のホームページに掲載されているタイムテーブルのページからも閲覧することができますので、関心を持った研究テーマを見つけたら、論文に目を通してみるのもいいでしょう。

国際シンポジウムの開催

次に国際シンポジウムの開催についてお話しましょう。こちらも2009年から年1回開催されている、学会の主要イベントのひとつで、毎年、国内外の多くの人工知能(AI)研究者たちが一堂に会し、活発な議論を行います。

この国際シンポジウムで高い評価を得た論文は、ドイツの国際的な科学・工学・医学関連書籍出版社であるシュプリンガー・サイエンス・アンド・ビジネス・メディア社の「Lecture Notes」にて刊行されます。

学会誌・論文誌の発行

学会誌は、年6回隔月で刊行されています。その名も「人工知能」。

シンプルなネーミングにも驚きですが、内容も非常に興味深いものばかり。最近刊行されたものでは、あの大手レシピサイト「クックパッド」も参加した「料理情報の知的処理」、採点におけるセンシング技術の活用や敵対的生成ネットワークによるプレーの生成など、人工知能(AI)関連の技術をスポーツに適用しようとする「スポーツ競技とAI」など興味深い特集が数多く組まれています。

タイトルを見ただけで、どうしても内容が気になる!という方もいますよね。そんな方には朗報です。こちらの学会誌、バックナンバーをAmazonで購入することができるで、気になった方は、今すぐチェックしてみてはいかがでしょうか。

また人工知能学会では、人工知能(AI)に関する新たな研究成果をまとめた論文誌も発行しています。こちらの論文は、オンラインジャーナル提供システム「J-STAGE」にて閲覧可能で、無料の会員登録をすれば、データベースが利用することができます。こちらもぜひチェックしてみましょう。

人工知能セミナー・AIツール入門講座の開講

人工知能学会では、セミナーや講座などによる教育支援・啓蒙活動も積極的に行っており、年に1~2回のペースで開催されている「人工知能セミナー」は2019年3月で76回目の開催となりました。

人工知能の最新の研究開発動向を知ることのできる貴重な機会で、こちらは参加費が必要となりますが、人工知能学会の会員でなくても参加することが可能です。
一方、不定期で行われているAIツール入門講座では、テキストマイニングのための統合環境「TETDM」や、音声インタラクションシステム構築ツールキット「MMDAgent」、ロボット用ソフトウェア開発のためのミドルウェア「RTミドルウェア」など、人工知能(AI)周りの開発環境やツールなどについて学習することができます。こちらも、プログラミングなどある程度の専門知識が必要となりますが、非会員であっても参加することが可能です。

研究会の開催

最後に研究会についてもお伝えしましょう。研究会は、人工知能学会内に組織されている、各々の分野に特化したいわゆる分科会のようなもので、「言語・音声理解と対話処理研究会」や「金融情報学研究会」、「医用人工知能研究会」など20を超える研究会が存在しており、各研究会ごとに定期的に研究発表やシンポジウムが開催されています。

人工知能(AI)の「倫理観」についてそろそろ本気で考えよう

人工知能学会倫理委員会のイメージ

以上が、人工知能学会の主な活動内容です。

そして、もうひとつ学会を語る上で欠かすことのできない活動があります。それが「人工知能学会倫理委員会」

人工知能(AI)がさまざまな分野に活用される一方で、開発者の意図しない差別的な発言を行うなど、悪影響を及ぼすリスクも孕んでいます。そこで、人工知能学会が立ち上げたのがこの「人工知能学会倫理委員会」なのです。

同委員会では、倫理綱領を公表しています。綱領では序文で「人工知能は、その汎用性と自立性から開発者の想定しえない領域でも人類に影響を与える可能性があり、人間社会や公共の利益にとって有害なものとなる可能性もある」とし、人工知能(AI)研究に携わる研究者が守るべき10の項目を示したのです。
この10項目には、「差別を行わないこと」「他社の情報や財産に危害を加えないこと」「人工知能の潜在的な危険性について警鐘を鳴らすこと」などが盛り込まれています。

人工知能(AI)と人類が共存する理想の社会を実現するには、人工知能の「倫理観」という問題は避けては通れないものなのかもしれませんよね。

 

AIのイメージ

今回は、人工知能の「知」の結集ともいえる「人工知能学会」の活動内容について詳しくご紹介してきました。

1986年の発足以来、30年以上の長きにわたり日本の人工知能研究をリードし、支え続けてきた人工知能学会。その功績があまりにも偉大であることはもはや言うまでもありません。そして第3次人工知能ブームと言われるいま、改めて人工知能学会の存在意義が示される時なのではないでしょうか。

そして、この先人工知能(AI)が台頭する社会、人工知能(AI)と人類が共存する社会において学会の有する研究知見、倫理綱領は大きな意義を果たすこととなるでしょう。

ですから今後も、人工知能学会の活動、そして動向を注意深く見守っていけると良いですよね。

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