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シンギュラリティは来ない! AIにおける未来予測に対する誤解まとめ

シンギュラリティは来ない! AIにおける未来予測に対する誤解まとめ

AI(人工知能)の進歩は著しいものがあり、すでに生活の身近な部分にもAI(人工知能)を使っているものがありますよね。また将棋や囲碁の世界では、プロ棋士をAI(人工知能)が打ち負かすほど、AI(人工知能)の性能は飛躍的に向上しました。

AI(人工知能)の専門家たちは、今後もAI(人工知能)は進化を続け、いずれは人間の知能を超える「シンギュラリティ」が到来すると予想しています。しかしその発言をメディアが過剰に取り上げ、いずれ人間はAI(人工知能)に仕事を奪われる、AI(人工知能)に支配されるようになるなど、不安をあおる形となってしまいました。

とはいえ最近になって、このような風潮に警鐘を鳴らし、そもそもシンギュラリティなど来ない、来ても人間を危機に陥れることはない、といった予想をする専門家も多く登場しました。そこで今回は、人間を脅かすシンギュラリティは来ないという専門家たちの発言を紹介し、AI(人工知能)における未来予測への誤解を解きましょう!

まずはシンギュラリティについて、ざっと解説!

予言のイメージ

まずは、シンギュラリティについておさらいしましょう。シンギュラリティとは、AI(人工知能)の世界的権威であるレイ・カーツワイルさんが予測した、AI(人工知能)における未来予測の概念です。

カーツワイルさんはかねてより、AI(人工知能)が爆発的に進化することを予想してきました。これまでにも検索エンジンの登場や、チェスなどのゲームで人間のプレイヤーを圧倒するといった予想をし、的中させています。

さらに2020年代には、ナノサイズの超小型AI(人工知能)や現実と変わらないほどのVR(仮想現実)が実現。2030年代には脳にAI(人工知能)を埋め込む技術や、人間の生活の基盤がVRに移ると述べています。

そして2045年にはAI(人工知能)の知能が人間を追い越し、AI(人工知能)が自分自身をアップデートしていくようになると予想。この2045年を、シンギュラリティ(技術的特異点)と呼んでいるのです。

やがてAI(人工知能)の進歩を報じるニュースが世間の注目を浴びるとともに、シンギュラリティという言葉もメディアで多く使われるようになります。しかし、一部メディアではSF映画を引き合いに出し、いずれAI(人工知能)が自我を持って人間に敵対するなど、危機をあおる報道をしたところもありました。

極端なメディアの論調に警鐘を鳴らすかのように、多くの専門家がこれに反論。さらにシンギュラリティそのものが来ない、と予想する人も現われました。ちなみにカーツワイルさんも自らの著書で、AI(人工知能)は人間と敵対するようなシンギュラリティ後の世界は来ないと述べています。

シンギュラリティは2045年には来ない説

椅子のイメージ

シンギュラリティは2045年には来ないと言うのは、ロボット掃除機として有名な「ルンバ」を開発したコリン・アングルさん。2045年にシンギュラリティが到来するという説を、バカバカしいと言い切っています。

アングルさんによれば、まずシンギュラリティについて語っている人のほとんどが、AI(人工知能)の開発に携わっていないことをあげました。AI(人工知能)の開発者であれば、AI(人工知能)が人間の知能を上回ることはありえないと言うのです。

たとえば、AI(人工知能)はイスを認識することは可能でも、なぜイスが必要なのかを理解することができません。人間のような論理的な思考をすることができるAI(人工知能)は、まだないというのがその理由です。

アングルさんは、シンギュラリティそのものが来ないとまでは言及していません。カーツワイルさんが予想したようなAI(人工知能)が社会にもたらす影響も、いずれは技術的に可能になるだろうと見ています。しかし、それが人間を危機に陥れるかのような論調には賛同できない、ということでしょう。

そもそもシンギュラリティは来ない! その理由は?

恐ろしい映画のイメージ

著書「人間さまお断り」の中で、AI(人工知能)が人間の仕事を奪うと述べたジェリー・カプランさんですが、彼は韓国で行われた特別講義において「シンギュラリティは来ない」と断言しました。

カプランさんはまず、映画やドラマといったフィクションを引き合いに出した、何の根拠にも基づいていない記事や報道が過剰に行われていることを指摘。これによってAI(人工知能)の情報が誇張されたり、ゆがめられていると述べました。

またアングルさんと同様、AI(人工知能)には物事を理解する能力がなく、また人間のような欲求がないので、自分自身を高めていくことはできないとも言っています。

また日本でも、シンギュラリティは来ないと断言する人がいます。かつて「東ロボくん」というAI(人工知能)を開発し、AI(人工知能)に東大合格をさせるというプロジェクトを立ち上げた国立情報学研究所のセンター長・新井紀子さんです。

東ロボくんは5年にわたって東大合格に向けた挑戦を行ってきましたが、結局は東大入試を突破できないまま、プロジェクトは終了となりました。

※詳しくはこちらの記事でも取り上げています

その最大の原因は同様に、東ロボくんが「理解する能力」を持っていなかったこと。文章の意味を理解することができないため、過去に学習していない問題に対応することができず、また論理的な思考を必要とする問題に太刀打ちできませんでした。

またAI(人工知能)自身が能力や問題点を理解することもできないため、苦手分野を克服するという行動ができません。これでは、AI(人工知能)が自分自身を改良し、知能や性能を向上させていくことなどできないでしょう。

画像認識や音声認識の精度が上がり、あたかもAI(人工知能)が自分で考えているかのような錯覚に陥りがちですが、実際にはパターンを認識しているだけで、AI(人工知能)自身が物事を考えているわけではありません。

シンギュラリティが来てもAI(人工知能)に人間がとって代わる日は来ない

AIと人間が一緒に生きるイメージ

シンギュラリティでは、AI(人工知能)が人間の知能を追い越す時のことですが、AI(人工知能)が人間の知能よりも高くなることはないという人も。

「AI(人工知能)の教科書」の著者で、Googleの研究本部長であるピーター・ノーウィグさんは、AI(人工知能)の進歩が永久に続くことはなく、必ずどこかで限界が来ると言います。

現状では、AI(人工知能)がどれだけ知識を蓄積することができても、その知識をもとに導き出した対応策が、周囲にどのような影響を及ぼすかまで考えることはできません。ノーウィグさんもまた、AI(人工知能)に理解する能力はないと述べており、このあたりがAI(人工知能)の限界と考えています。

一方で、AI(人工知能)が進化すると同時に人間も進化するというのは、ゲーム「ファイナルファンタジー15」のAI(人工知能)を開発した三宅陽一郎さんです。

三宅さんは、進化したAI(人工知能)を人間が装備することで人間の知能や身体能力も飛躍的に向上するため、シンギュラリティが来ても、AI(人工知能)の知能が人間の知能を追い越していく日は来ないと述べました。

シンギュラリティを提唱したカーツワイルさんも、人間の脳に超小型AI(人工知能)を移植できるようになると予想しています。確かに、AI(人工知能)の知性や情報処理能力が加われば、人間の知能は凄まじいものになるでしょう。

人間の脳がAI(人工知能)と一緒になれば、勉強しなくてもすべての言語を話せるようになったり、VR空間に自分の意志だけで出入りできるようになったり、また言葉を話さずテレパシーのようにAI(人工知能)同士で意思疎通を行うなんてこともできるようになるかもしれません。

まとめ

さて今回は、人間を脅かすシンギュラリティは来ないという専門家たちの発言を紹介してきました。

  • シンギュラリティとは、AI(人工知能)の知能が人間を追い越す時期のことで、提唱者であるカーツワイルさんは、2045年に到来すると予想している
  • ルンバの開発者であるアングルさんは、AI(人工知能)には理解する能力がないため、シンギュラリティが2045年に来ることはないと予想している
  • 「人間さまお断り」の著者であるカプランさん、「東ロボくん」の開発者新井さんは、AI(人工知能)に理解能力がないこと、自分自身を向上させる意思がないことから、シンギュラリティは来ないと予想している
  • Googleの研究本部長ノーウィグさんは、AI(人工知能)の進歩には限界があるため、FF15のAI(人工知能)開発者である三宅さんは、人間がAI(人工知能)を装備することで人間の知能も向上するため、AI(人工知能)の知能が人間を追い越すことはないと予想している

そもそもシンギュラリティを提唱したカーツワイルさん自身も、著書の中でAI(人工知能)が人間と敵対する未来は来ないと述べており、AI(人工知能)が人間を支配するというような予想は、一部のメディアが話題作りのために誇張して伝えたものが広まってしまったと考えられます。

未来のことはまだわかりませんが、不安をあおられてビクビクする必要はありません。AI(人工知能)のことを正しく理解していれば、AI(人工知能)がもたらすエキサイティングな未来にワクワクできますよね。

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