最近、「AI(人工知能)が人間よりも進化する」という「シンギュラリティ」という言葉をよく耳にするようになりましたよね。もしシンギュラリティが来た場合、私たちに起こりうることについてはいろんな予測があります。例えばAI(人工知能)が私たちの代わりに働いてくれたり、私たちの脳の内容がコンピュータとつなぐことができるようになったり・・・などなど。
それを聞く皆さんは「シンギュラリティが来て、少しでも仕事が楽にならないかな・・・」とか、「AI(人工知能)が私たちを支配するようになるかも、怖い!」など、いろんなことを考えるかもしれません。そして、一般的にはシンギュラリティが来るのは「2045年頃」だと言われています。なんとなくまだ先のことだから大丈夫だろう、と考える人も結構多いはず。
と・こ・ろ・が!ここ最近AI(人工知能)の進化がすごいので、「シンギュラリティが来るのが早まる」という話がささやかれるようになりました。「えっ、今より近づくってなるともうすぐシンギュラリティ来るの!やばい!」と驚く人もいたり、「もし本当だったら、今から何か備えなければいけないのでは・・・!」とあわててしまう人もいるでしょう。
でも一旦立ち止まってみましょう。「シンギュラリティが来るのが早まる説」、それってそもそも本当なのでしょうか。また、そもそもなぜシンギュラリティが来るのが早まるのか、気になってきますよね。
ということで今回は、「シンギュラリティは2045年より早まるって言われているけど、それって本当なのか」について検証していきましょう。
もしかしたらシンギュラリティは早まるのは「本当」かもしれない説
もともとシンギュラリティが来るのは2045年頃だと一番最初に話したのは、レイ・カーツワイル博士でした。レイ・カーツワイルが書いた本「ポスト・ヒューマン誕生」の中で、「AI(人工知能)が成長していくうちに、人間の予想できない程度に成長する時」を数学的用語を用いて「シンギュラリティ(技術的特異点)」と呼んでいます。
※詳しくはこちらでも解説しています
レイ・カーツワイルがこのシンギュラリティ理論を唱えたのは2005年。ところが、その10年後にレイ・カーツワイルは「2029年にコンピュータが知能を超えるのではないか」と発言しました。その発言を聞いた人にしてみれば、「あれ、最初に言ったことと矛盾しているじゃん!」と感じますが、レイ・カーツワイルがなぜ2029年と直したかというと、「AI(人工知能)の発展がすごいから」。
最近AI(人工知能)を開発する技術やAI(人工知能)をつなぐ技術(IoTもその一つです)、AI(人工知能)自身も進化しています。IBMが開発したWatsonがクイズ王に勝ったり、AlphaGoが囲碁の王者に勝った、などのニュースがAI(人工知能)の進化を証明していますよね。
※詳しくはこちら
このレイ・カーツワイルの発言がなぜ実現するかもしれないかと思われているかと、それは過去に予言がいくつかすでに実現しているからなんです!例えばレイ・カーツワイルが1999年に書いた本「スピリチュアルマシーン」で取り上げているものは、「現実と全くかけ離れた映像を見ることができる」「仮想現実と現実を重ねるモードができる」という機械が登場すると予言しました。これはそれぞれVR(仮想現実)・ARとしてすで誕生しています。
※VRについてさらに簡単に違いを知りたい方はこちら
VRが登場した最初は、「VRゴーグルって高そう」「VRってなんだか怖そう」というイメージがあった人も多いかもしれません。しかし今ではスマホのアプリをダウンロードしてVRゴーグルをつければVRを楽しむこともできます。また、「自遊空間」や「アイ・カフェ」など一部の漫画喫茶ではVRのゴーグルをレンタルしていたり、VRアトラクションが入った遊園地も次々にできています。
さらに、そのVRのバーチャル世界と現実を連動させたものが、「AR」です。これは現実の世界の中にバーチャルの情報を表示することです。わかりやすい例でいうと「ポケモンGO」で、スマホで電柱等を撮ると、画面の中にポケモンが出てきますよね。これは、ポケモンの世界とスマホの位置情報が連動しているからできることなのです。
※ARについてさらに知りたい方はこちら
VRが普及したのは最近で、ARを使ったポケモンGOも2014年にリリースしていますが、それを1999年の段階で予言していたのはすごいですよね!
さらに「通信装置は至るところに埋め込まれている」というのは、Wi-fi飛ばす機械が埋め込まれているなどはもちろん、「体にマイクロチップを埋め込む」なども含まれています。まだまだ一般的ではないものの、少しずつ埋め込んでいる人が増えているとか増えていないとか・・・。ちなみに弊社の社長が手にマイクロチップを埋め込んでいます。
他にもレイ・カーツワイルの予言で、
- ニューラルネットワークとアルゴリズムが使われている(今のAI(人工知能)を支える技術となっていますよね)
- コンピュータはどこにでもある。自分のコンピュータを持っていなくても大丈夫(確かに漫画喫茶や学校にパソコンあります)
- 生徒が物理的、地理的に離れていても集まることができる(今どきの大学生はSkypeとかLINE電話でオンライン会議しているんだとか)
- ほとんどの働いている人は、新しいスキルを身につけるために日々勉強している
- 三次元ホログラフィ・ディスプレイが登場する
- AI(人工知能)やロボットに対して、何か不安を持っている
- 公共の場もプライベート空間も、事件が起きないようにAI(人工知能)によって監視されている(AI(人工知能)同士が連携したり、監視カメラ同士でネットワークをつないで追っている犯人の居場所を特定することもできたり、インターネットの個人情報も集められたりしています)
などなど、実は結構実現しているんです。
となると、一番最初に出てきた「シンギュラリティは2029年に早まる」説は本当なのかも・・・!?と感じてしまうのではないでしょうか。
いやいや、そもそもシンギュラリティは早まるどころか、来るわけがない。
ところが、その一方で「シンギュラリティは来ない」という人も結構います。というか、この記事を読んでいる皆さんも「本当にシンギュラリティは来るのか?」と疑問を持っている人もいるはず。
実際に、新井紀子の「AI vs 教科書の読めない子どもたち」では「AI(人工知能)が人間を超えることはない」と主張しています。
ざっくりいうと、AI(人工知能)に東京大学の受験を試したのですが結果的にうまく行かなかった事例の紹介です。このうまく行かなかった原因は「読解力」がなく、AI(人工知能)が与えられた文章の「意味」を理解できない点にありました。
※詳しくはこの記事でも取り上げています
逆のことを言うと、AI(人工知能)になくて人間が優れているところは、「文脈」や「意味」を理解するところだと言えますよね。実はAI(人工知能)にとって、この「文脈」や「意味」をわかるようになることが結構難しいんです。
わかりやすい例として、「Google翻訳」を使って説明しましょう。例えば
これをGoogle翻訳をかけると・・・
と出てきます。この文を読むと、「う〜ん、ちょっとわかりにくい・・・」となる人が多いですよね。特にあとの文章の「傘を持っていったのが【残念】です」で、「残念ってなんだ・・・?」と疑問を感じるでしょう。そこで、「残念」→「後悔」に置き換えると
と置き換えることができます。これは私たちが「文脈」「意味」を理解しているからこそ、文の前後から
- 「regret」は「残念」だけでなく「後悔」という意味もある
- この言葉は「傘を持って外に出たけど、いまは晴れている」に対する感情が入る
- だからこの「残念」は「後悔」といいたいんだ
と理解できるのです。
でも、現時点でのAI(人工知能)にはこの言い換えや推測ができません。このようにAI(人工知能)にできていない点があるからこそ、人間を超えるシンギュラリティは来ないという主張があるのです。
とはいえ、「シンギュラリティ」ではなくても、「シンギュラリティ」の前段階は来るかもしれない、という予言もあるんです。それを次で見ていきましょう。
シンギュラリティが早まることがなくても、「プレシンギュラリティ」は来るかもしれない
先程も登場したレイ・カーツワイルが「2029年は人間と同じように考えることができる人工知能が出てくる年になるだろう」と予測しており、これがいわゆる「プレ・シンギュラリティ」になると予測しているのが、神戸大学の松田卓也先生です。そこで、「人類を超えるAIは日本から生まれる」において紹介されている内容から、少しだけ私の考えをお伝えしていきます。
松田先生は2029年までに、次のようなことが起こるのではないかと予想しています。まずひとつ目が「実用化を目指しているAI(人工知能)、ロボットの開発がどんどん進む」ことです。確かに多くの企業がどんどんAI(人工知能)の開発を進めていって、工場や企業をはじめとしてあらゆる場所でAI(人工知能)が導入された事例が増えていますよね。
※実際に導入されている事例はこちら
(会社などで導入されている例)
次に予想されていることが「AI(人工知能)にどんどん仕事が取って代わられて、失業が進む」こと。これはコールセンターや事務など、単純な作業をやっている人はどんどんAI(人工知能)に奪われていくことです。
※AI(人工知能)の失業について、もっと知りたい方はこちら
しかし松田先生の予想は「失業が進むことで失業者があふれるとは限らない。むしろ人手不足が深刻になる」とあります。日本は少子高齢化が進んでいるので、これからどんどん働く人口が減っていきますよね。そのためどんどん人手不足が進んでいくので、失業した人が新しく職を見つける可能性があるので、AI(人工知能)によって仕事が奪われる影響はあまりないかもしれない、とのこと。
うーん、実際そうなったらいいな・・・。
※詳しくはこちら
こんな話をしていると、シンギュラリティが都市伝説っぽくてなんだか現実に起きるような気がしない方もいるかもしれません。その中で松田先生がシンギュラリティ後の未来の予想として、「一家に一台AI(人工知能)がやってくる」という話をしています。
確かに、今でもアプリや家電でもAI(人工知能)搭載のものが増えたり、AI(人工知能)の開発や導入はどんどん進んでいます。私たちも今まではAI(人工知能)なんて遠い存在で、そもそも「AI(人工知能)ってなにそれ?」とAI(人工知能)という言葉を聞いたことがなかった人が圧倒的に多かったはず。でも、今じゃAI(人工知能)はアプリや家電などに多く入っていたり、ニュースでも毎日AIAI言っているように、すっかり身近な存在になっているなぁ、と感じているでしょう。
とはいえ、AI(人工知能)導入の何かを買う、となるとまだ値段が高かったり使い方が難しい!となってハードルが高い!と感じる人や「AI(人工知能)は嫌い」など、抵抗感を持つ人が多いですよね。
それを考えると、AI(人工知能)が開発されても一家に1台のように身近な存在になるのはやっぱり2045年ぐらいになるでしょう。
ということで、「シンギュラリティは起きてもおかしくないけど、やっぱり私たちの身の回りに起きると変化を感じるのは2045年ぐらいで、早まることはないのでは」と考えています。
やっぱり「シンギュラリティは2045年より早まる」説もある
そういえばこの話をしているときにはっと思い出したのが、「シンギュラリティサロン」にで話を聞いたときのことです。(ちなみに先ほどの話題に登場した神戸大学の松田先生も、この記事に登場しています)
※詳しくはこちら
この話で塚本昌彦先生が「自分は10年後にサイボーグになっている」と予告していました。塚本先生によると、シンギュラリティが起こったあとの世界では「人間の体にコンピュータを埋め込んで、人間とAI(人工知能)が一緒に生きる」という未来が来るとか。このときに、塚本先生は最初「15年後」に来ると話していたが、「10年後」にそんな未来が来ると直しています。
それはやはり、先ほどのレイ・カーツワイル氏の予測と同じようにAI(人工知能)の発展がすごいこと、「ウェアラブル・コンピュータ」の開発・進化がどんどん進んでいることも原因の一つなのです。
この話では、今年はいろんな会社が「ウェアラブル・コンピュータの新製品を発売する」と話をしています。もしそのウェアラブル・コンピュータが一般的に広まって、「いつの間にかApple Watchをつけているのが当たり前になった」とかなることもありうるでしょう。
そうやっていくうちに、シンギュラリティが起きたあとは私たちがコンピュータを身につけるだけではなく、自分の体にコンピュータを埋め込んでいる・・・という未来もありえるかもしれません。それが最初に塚本先生が予言していた「10年後」なのです。
となるとやっぱり、シンギュラリティが早まる可能性があるかもしれません。
シンギュラリティが来るかどうか、信じるか信じないかはあなた次第・・・ふふふ・・・っ。
さて、今回は「シンギュラリティが早まる説は本当かどうか」をあれこれ検証してみました。内容をふり返ると、
- シンギュラリティ説を唱える本人が「シンギュラリティは早まる」といっているので本当かも
- いや、そもそもシンギュラリティが来るというのがウソだわ
- シンギュラリティが早まる、というのはウソかもしれないけど、2045年には来るかも
- やっぱりシンギュラリティは早まるかもしれない
と、なんだか本当なんだかどっちなんだかという感じですよね。つまり、シンギュラリティが来るのは実際にそのときになってみないとわからない、というのが結論でした。シンギュラリティはあくまで「未来予測」なので、どんな未来が来るかはさまざまなのですから。
つまり真相はシンギュラリティが来るまで謎ということです・・・ううむ・・・。
「シンギュラリティが早まる」となっても早まらなくても、はたまた来ないということになるかもしれません。とはいえ、私たちが今後どうやって生きるかを考える上でシンギュラリティのことを頭に入れておいても損はないですよね!
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