AI(人工知能)とファイナンス

AI投信が今人気急上昇しているけど、信じて大丈夫?その注意点3つ

AI投信のイメージ

「AI(人工知能)関連企業に対する投信をすれば利益が入る!」と、最近のAI(人工知能)に対する世間の期待度の高まりからこのように感じる人もいますよね。

投信とは投資信託の略で投資家から集めたお金を巨大な資金とし、専門家によって運用されていく投資のこと。資金の運用を専門家に任せられ、そこで得た利益を投資額に応じ全て得られるのがメリットです。

しかし、AI(人工知能)を対象とした投信であればと大丈夫という方、ちょっと待ってください。注目されている技術だからこそ危険性が潜んでいます。

新たなテクノロジーに対する期待から多くの投資家が集まったものの、後に大損失を被る例が過去に何回かありAI(人工知能)でもその悲劇が繰り返されないとは言い切れません。

そこで今回は、AI(人工知能)の投信の危険とはどういうことなのか、市場規模の拡大と関連企業の株価の関係性からお伝えしましょう。

価格競争の激化!?市場規模の拡大イコール関連企業の株価上昇ではない!

クリーンエネルギーのイメージ

まずはじめに、AI(人工知能)関連の企業への投信をする上で初めに前提となることがあります。それは、AI(人工知能)の市場が大きくなったからといって株価も一緒に大きくなることとは関係がないということ。

そこを踏まえずAI(人工知能)の企業だからとすぐに投信と飛び込むのは非常に危険です。

それではクリーンエネルギーを例に見てみましょう。

経済界のトレンドとして2000年代にクリーンエネルギーの将来性に注目が集まったことがありました。世界中でそれと関連性のある企業が注目されるようになり、株価の上昇は相当なものとなっていました。

わかりやすい例では、太陽光パネルで多くの投資家が将来性を見据えて企業の株を買っていたということがあります。国内でも都市部から地方に至るまで多くの建物の屋上や屋根に設置されるなど市場の拡大は非常に大きなものでした。しかし、破竹の勢いで進む市場の発展の裏ではとんでもない悲劇が起きていたのです。それは2012年4月に起きたQセルズという大手企業の経営破綻。
Qセルズはドイツにあった太陽光パネルの開発や製造を行なっていた会社で、2007年と2008年にはセルという太陽光パネルで欠かせない太陽電池素子の生産量で世界第一位になるなどの大きな実績を上げていたのですが、そういった会社が経営破綻した理由に、価格競争の激化がありました。市場は拡大し続けていましたが低価格を強みとする中国メーカーとの競争やドイツ政府が太陽光発電電力の買取価格を見直すなどの影響を受け利益を上げられなくなったのです。

これは、人気の業種になると多くの新規参入があり、期待されているほどの利益を得られなくなり、株価が暴落するというパターンが顕在化した例になります。

ですからAI(人工知能)の市場は大きくなっていますが投信の対象とするには期待が先行しすぎている企業や、まだ利益を出していない企業など玉石混淆となっている場合があるのです。

今後大成功する企業も出てくる可能性はありますがそこを引き当てるには市場に関する知識だけでなく、AI(人工知能)に対する専門的な知識が必要となるので、人気に乗じて投信といくには注意が必要でしょう。

頭と尻尾はくれてやれ?!ITバブルに見る流行を察知する難しさ

投信を始めるイメージ

そして、AI(人工知能)関連企業に対する投信をする上で注意するべきもう1つのポイントは、AI(人工知能)というトレンドがいつまで流行るかわからないということ。

まずは株式相場の中である「頭と尻尾はくれてやれ」という格言をご紹介しましょう。この言葉は株式の売買について、欲張らずほどほどのところで手を打つべきだという意味があります。

取引されている株式を買う時はどのタイミングが一番安いかわからないのでギリギリのところまで待つのではなくある程度の段階にするということ。逆に株式を売る場合はどこまで高値で売れるかという変動の限界を見定めるのは難しいので買う時と同様早い段階で利益を確定させるべきだと示唆しています。

この格言を象徴する出来事が1990年代の終わりから2000年代の初め頃まであった「ITバブル」とその終焉です。

当時インターネットに対する期待が非常に高くアメリカを中心にIT関連企業の株価が非常に高くなっていました。この時開発され流行したのが「IT関連投信」、つまりIT関連企業の株式を集めた投資信託です。

具体的な例としてあげられるのは、まさにバブル真っ最中の1999年11月に認定された「netWIN ゴールドマン・サックス・インターネット戦略ファンドAコース(為替ヘッジあり)」。投資信託の一口あたりの値段である基準価額が1万円だったのに対し、2000年3月には1万3,745円まで上がるなど初期の運用成績は非常に良好でした。しかしその後ITバブルは崩壊し2002年10月には2,104円まで乱降下しその過程でIT関連投信の流行は途絶えることとなったのです。

確かに現在は回復傾向にはあるので売却しないで持ったままにしていれば少しだけでも利益が出ている方もいるでしょう。しかし、基準価額が約80%も下落していく状況を静観するのは精神的にかなりの負担がかかります。

「頭と尻尾はくれてやれ」という言葉が示すように、流行の始まりと終わりのタイミングを見極めて売買するのは素人には非常に難しいものとなります。

現在AI(人工知能)関連企業への投信が流行していますがタイミングを間違えると大きな損失を被る可能性があるので注意が必要です。

最後まで信託報酬と手数料に縛られる!

手数料のイメージ

ここまでAI(人工知能)関連企業への投信の注意点として市場規模の拡大イコール関連企業の株価上昇ではないこと、そして流行の入り目と切れ目を見極めることの難しさを言及してきました。投信をする上でさらなる落とし穴があるので注意しなくてはいけません。それは信託報酬と手数料があるからです。

前章で言及した「netWIN ゴールドマン・サックス・インターネット戦略ファンドAコース(為替ヘッジあり)」の信託報酬は年率2.052%。一方で日経平均株価に合わせた値動きを目指しているインデックスファンドの信託報酬は安くて年率約0.2%。

基準価額が約80%も落ちたという話をしましたが、回復するまで待つと大きな負担がそのまま続くのでかなりの損失となる恐れがあります。

AI(人工知能)関連企業への投信の中には年率約1.5%という例もあり無闇に長期保有しようとするとITバブルから回復するまでの悲劇を繰り返しかねません。だから長期保有だと損するリスクがあるならば、短期決着でいけばいいかというとそうではありません。短期投資という選択をする場合運用期間あたりの販売手数料の負担が大きくなるケースが多いからです。
いわゆる「いいタイミング」を見定めるのはプロでさえも難しいこと。長期運用でうまくいかない運用商品は短期でもうまくいかない、そして高い販売手数料も取られて損をする可能性が高いので慎重に考える必要があります。

 

投信のイメージ

今回は「AI投信が今人気急上昇しているけど、信じて大丈夫?その注意点3つ」と題しAI(人工知能)への期待度の高まりから投信へと飛びついてしまうことの危険性を過去の事例をもとに言及してきました。

AI(人工知能)の市場規模が大きくなったからといって関連企業の株価の上昇と直結するわけではありません。また、「頭と尻尾はくれてやれ」という言葉が象徴するようにAI(人工知能)に対する流行や期待度がいつまで続くかがわからないのでタイミングを見誤ると大きな損失になる危険性があります。

再び注目されるまでそのまま粘ったり初めから短期決着で行こうとしても信託報酬と手数料という負担がそれぞれありどちらにせよ決して小さい額ではありません。

これらの注意点を踏まえた上でAI(人工知能)投信について適切に進めていけるといいですよね。

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