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本当にシンギュラリティは近いのか?ちょっと気になる3つの疑問

本当にシンギュラリティは近いのか?ちょっと気になる3つの疑問

AI(人工知能)に興味ある方であれば、シンギュラリティについてご存知の方も多いでしょう。「2045年にAI(人工知能)が人間を超えて予測不可能な存在になる」と言われているわけですから、これはとても気になりますよね。

シンギュラリティとは、AI(人工知能)の成長が爆発的なスピードに達して成長が止まらなくなることにより、人間に代わってAI(人工知能)が文明進歩の主役になる「時点」のことを意味しており「技術的特異点」とも呼ばれています。

シンギュラリティの考え方は19世紀頃より存在していましたが、2005年に発明家で未来学者であるレイ・カーツワイルによる書籍「シンギュラリティは近い」の影響により、2045年までに到来するとの説が現在有力視されています。さらに2012年以降のディープラーニングの爆発的な普及を契機に、シンギュラリティは現実味を持って議論されるようになり、現在は2045年問題とも呼ばれています。

※シンギュラリティについて詳しく知りたい方はこちら

2045年といえばそんなに遠い未来ではありませんよね。はたして、本当にシンギュラリティは近いのでしょうか?現在のAI(人工知能)の状況を考えると「2045年にAI(人工知能)が人間を超える」なんて、ちょっと信じられないような気もしますよね。

ということで、今回は本当にシンギュラリティは近いのか、ちょっと気になる3つの素朴な疑問について一緒に考えてみましょう。

素朴な疑問その1:今後、AI(人工知能)は急激に進化するのか?

シンギュラリティのイメージ(1)

「シンギュラリティは近い」によると、2045年までにAI(人工知能)が人間に代わって文明進歩の主役になってしまうようです。ということは、それまでにAI(人工知能)が急激に進化することが予想されます。

最初の素朴な疑問は「今後、AI(人工知能)は急激に進化するのか?」です。

結論から申し上げると、今までの私たち人間による科学技術の進化スピードの特長から考えると、進化は緩やかな線形(緩やかな右上がり直線)パターンとなることが予想され、急激な進化は難しいかもしれません。

なぜ急激な進化が難しいのか、その理由を説明しましょう。

科学技術の進化スピードの特長:
科学的進歩に伴い、ある分野における研究開発の困難さは指数関数的に増大する

…といってもわかりにくいですよね。「指数関数的に困難さが増大する」をかなり単純に説明すると、「ねずみ算的に、すごいペースで難しさのハードルが上がる」ということになります。

科学者の人数と使用するコンピュータリソース、また、そこから生み出される論文数や特許件数が指数関数的に増加しているのに対し、今までの科学技術の進化は緩やかな線形で進化してきました。

これは、科学的進歩および時間の経過に伴い、ある分野において科学的発見により成果を出し続けることが、指数関数的に困難になってしまうことによるものです。

なぜなら新しい研究分野の開拓者達が、最も重要な(比較的取りやすい)成果のほとんどを刈り取ってしまうため、その後に同じ研究分野で新しい成果を生み出すためには何倍もの努力が必要となります。つまり、ある研究分野の成熟に伴い論文のテーマはますます狭く、かつ複雑になる傾向があります。

レイ・カーツワイルが「シンギュラリティは近い」で指摘している「収穫加速の法則」(一つの重要な発明は他の発明と結び付き、次の重要な発明の登場までの期間を短縮し、イノベーションの速度を加速する [Wikipediaより引用])による効果は、上記研究開発の困難さにより相殺されてしまう可能性があります。

(参考)「収穫加速の法則」への批判 [以下、Wikipediaより引用]
イノベーションの定義において厳密さを欠いており科学的でなく、本当に技術進歩が加速し続けているかは定かではない、という批判が挙がっている。

はたして今後、AI(人工知能)は急激に進化するのか、ちょっと気になるところですよね。

さて、次の素朴な疑問ですが、仮に今後AI(人工知能)の進化が予想以上のペースで進んだとして、どこまで進化できるのか考えてみましょう。

素朴な疑問その2:人間が自分より賢いAI(人工知能)を作れるのか?

人工知能ロボットのイメージ

2つ目の素朴な疑問は、仮に今後AI(人工知能)の進化が予想以上のペースで進んだとして、「人間が自分よりも賢いAI(人工知能)を作れるのか?」です。

Google DeepMindが開発したコンピュータ囲碁プログラム・AlphaGoは「碁を打つ」ことに関しては確かに人間の能力を超えましたが、少なくともAlphaGoは人間が書いたプログラムの範囲内でしか行動できません。AlphaGoがいきなり癌の治療方法について研究を始めるといったことはありません。他にも画像認識などの特定の分野で人間よりも有能なAI(人工知能)は既に存在していますが、同じようにすべて人間が書いたプログラム範囲内での行動です。

ところが「AI(人工知能)が人間を超える」は、AI(人工知能)が特定の分野だけでなく、全ての分野において私たち人間を超えることを意味していると思われます。

つまり、AlphaGoのような特定の分野や業務に特化した「特化型人工知能(弱いAI(人工知能))」ではなく、人間と同様の知能を持ち、自分自身で考えることができる「汎用人工知能(強いAI(人工知能))」を私たち人間が作り出すことができるということになります

弱いAI(人工知能)と強いAI(人工知能)についてはこちら

しかも、レイ・カーツワイルの「シンギュラリティは近い」によると、2045年において「1000ドルのコンピューターは全ての人間を合わせたより知的である(Wikipediaより引用)」とあり、AI(人工知能)の知能レベルは人間を遥かに超えたレベルに到達してしまうようです。

しかしながら現時点では、私たちが強いAI(人工知能)を作ることができる目処は全く立っていません。本当にシンギュラリティは近いのであれば、2045年頃までにAI(人工知能)研究において何らかのパラダイムシフト(その時代に当然とされていた考え方が大きく変わること)が起きる必要がありますが、今のところそれがどういったものなのか、残念ながら私たちには想像することもできません。

ところで、AI(人工知能)というと私たちの脳に対応する技術と思われがちですが、人間の脳はあくまでも知能を構成する一部と考えられており、知能獲得においては「身体」の役割の重要性が指摘されています。私たちは「身体」を通して様々なことを「経験」することにより学習することができます。

(参考)子猫のゴンドラ実験
生後間もない子猫2匹を使用した心理学実験です。1匹は自由に動き回れるようにして、もう1匹はゴンドラ(もう1匹の子猫の動きに連動して動く、つりかごのようなもの)に乗せて受動的にしか動けないようにした結果、ゴンドラに乗せられた猫はモノにぶつかる、自分に近づいてくるモノをよけることができない、餌を食べる時の餌との距離感が正しく把握できないといった症状が現れました。
空間認識を正常に形成するためには、見える景色を脳で認識するだけではだめで、身体を使って能動的に動くことも欠かせないことが明らかになりました。

強いAI(人工知能)実現のためには、脳と身体との連携も必要となるため、身体を持ったAI(人工知能)であるロボットに関する技術も大きく進化する必要があるかもしれませんね。はたして、そのようなパラダイムシフトが2045年頃までに起きるのか?気になるところです。

では、最後の素朴な疑問である「AI(人工知能)に技術開発できるのか?」についてお伝えします。

素朴な疑問その3:AI(人工知能)に技術開発できるのか?

シンギュラリティのイメージ(2)

レイ・カーツワイルの「シンギュラリティは近い」によると、2045年に技術的特異点に到達すると、その後の技術開発は人間に代わってAI(人工知能)が行うことになるようです。

例えば、AI(人工知能)が難病を解決する場合を考えてみましょう。この場合、AI(人工知能)が世界中の全ての文献を読んで考えに考え抜いたとしても、現実世界で問題を解決できる方法を生み出すことは出来ないでしょう。それはなぜでしょうか。
例えば、難病を克服するために新薬開発に取り組むとします。新薬開発のためには、まず現実世界において大量の実験と検証を繰り返すことにより実用に耐えうる仮説を生み出し、さらに現実世界において実際に人間に対する効果および副作用などについて、臨床実験により繰り返し検証する必要があるからです。

確かにAI(人工知能)は、人間には思いもつかないユニークなアイディアを生み出してくれる可能性はありますが、科学において新事実にたどり着くためには、現実世界における大量の実験と試行錯誤が欠かせません。技術開発の進歩における「思考」の役割は一部、しかも予想以上に小さい一部でしかありません。

そのように考えると、ここでも身体を持つロボットに関する大きな技術進化が欠かせないように思います。2045年頃までに、人間に代わって実験と検証を行ってくれるロボットは誕生するのでしょうか。かなり気になるところですよね。

シンギュラリティのイメージ(3)

以上、今回は本当にシンギュラリティは近いのか、ちょっと気になる3つの素朴な疑問について一緒に考えてきました。

●素朴な疑問その1:今後、AI(人工知能)は急激に進化するのか?
今までの私たち人間による科学技術の進化スピードの特長(科学的進歩に伴い、ある分野における研究開発の困難さが指数関数的に増大する)を考えると難しいかもしれません。

●素朴な疑問その2:人間が自分より賢いAI(人工知能)を作れるのか?

残念ながら現時点では私たちが強いAI(人工知能)を作ることができる目処は全く立っていません。何らかのパラダイムシフトが起きる必要があります。

●素朴な疑問その3:AI(人工知能)に技術開発できるのか?

技術開発のためには現実世界における大量の実験と試行錯誤が欠かせません。AI(人工知能)が世界中の全ての文献を読んで考え抜いただけでは、成果を出すことは難しいでしょう。

これらの結果から、今のところ「AI(人工知能)が人間を超える」という技術的根拠が私たちには全く見えていないため、もし本当にシンギュラリティが近いなら、ある日突然、AI(人工知能)が私たちより高い知能を持ってしまうような印象がありますよね。このため「シンギュラリティは近い」と言われても、なかなか受け入れることができないのではないでしょうか。

今回、素朴な疑問について考えてみましたが、残念ながら「シンギュラリティは近い」については、ちょっと悲観的な感想になってしまいました。

もしかするとシンギュラリティは近くないかもしれませんが、遠い将来、AI(人工知能)が私たち人間と同レベルの知能を持つ日はいずれ来るでしょう。ただし、その時には私たちにも少しずつ技術的根拠が見えて来ることに加えて、AI(人工知能)が私たちの生活をより良いものにしてくれる存在であることが実感できているため(例:私たちを労働から解放してくれるなど)、「2045年問題」といったネガティブな印象はいずれはなくなってゆくと思われます。

今まで、私たちの生活は科学技術の進歩によって便利で豊かなものになってきました。科学技術であるAI(人工知能)も同様に私たちに豊かさをもたらしてくれるはずであり、シンギュラリティは決して悪夢などではなく、むしろ私たちの技術目標として捉える必要があると思います。

 

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