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今後増える?シンギュラリティを肯定するシンギュラリタリアンとは

シンギュラリタリアンのイメージ

急激な進歩を続ける半導体技術により、AI(人工知能)が指数関数的に進化を続けていることはみなさんもご存知のとおりでしょう。ですから、このAI(人工知能)の発達に関して「シンギュラリタリアン」というスタンスをとる人が今後増えるのではないかと言われています。

しかしこの「シンギュラリタリアン」とはどういう人なのでしょうか。

2045年ごろには、進化を続けたAI(人工知能)が人間の知能を圧倒的に上回る高度な知能を持つAI(人工知能)が誕生すると考えられており、これを「シンギュラリティ(=技術的特異点)」と呼び、「シンギュラリタリアン」とは、この「シンギュラリティ」を肯定する立場の人たちのことを指す言葉。

しかし未来のことは誰にもわからないはず。にもかかわらず、「シンギュラリタリアン」が存在するのでしょうか。そして、彼ら「シンギュラリタリアン」の主張とは一体どんなものなのでしょうか。

そこで今回は、そんな知られざる「シンギュラリタリアン」の存在についてお伝えしましょう。

「シンギュラリティ」、その根拠とは?

シンギュラリティが2045年に訪れるという仮説の根拠のひとつに「ムーアの法則」があります。この「ムーアの法則」は、1965年にインテルの共同創業者であるゴードン・ムーア氏が発表した論文に基づくもので、コンピュータのCPUに使用されるマイクロプロセッサの性能は18か月ごとに2倍の性能に進化するというものです。

ただこの法則は、彼の経験則に基づくものであり、具体的な数字についてはさまざまな議論がなされているもよう。

仮に今後「ムーアの法則」に則ってマイクロプロセッサが進化していけば、AI(人工知能)が人間の知能を上回るのがちょうど2045年ごろになります。

つまり、今後の半導体技術の進歩がシンギュラリティの行方を左右するということに。ですから、進化の度合いによってはもっと時間がかかる場合もあれば、逆に2045年を待たずにシンギュラリティがやってくる可能性も十分にあるのです。

半導体技術の進化がカギを握るシンギュラリティ。そんなシンギュラリティを一貫して肯定するシンギュラリタリアンの主張とは一体どのようなものなのでしょうか。ここからは、シンギュラリタリアンたちの見解について紐解いてみることにしましょう。

ある発明家の主張から始まった「シンギュラリティ」論争

論争のイメージ

アメリカの発明家、実業家、未来学者であるレイ・カーツワイル博士が2005年に発表した著書「シンギュラリティは近い−人類が生命を超越するとき」において、初めて「シンギュラリティ」という概念が提唱されました。

つまり、彼は代表的なシンギュラリタリアンというわけですよね。同書では、2045年という具体的な年代までもが特定され、物議を醸すことに。

なお、彼以外にも近い将来必ずシンギュラリティが訪れるという主張を持っている著名人は数多く存在します。

例えば、マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツ、Googleの共同創業者ラリーペイジ、テスラの共同設立者イーロン・マスク、イギリスの理論物理学者スティーブン・ホーキング博士、さらに日本ではソフトバンクグループの会長である孫正義氏などです。

ただ、彼らは全員シンギュラリティの到来には肯定的ですが、彼らの中にはシンギュラリティに対する捉え方が大きく2つに分けられます。

まずひとつはシンギュラリティを悲観的に捉えようとする人たち。

ホーキング博士は「完全な人工知能(AI)の開発は、人類の終焉をもたらす可能性がある」と語り、ビル・ゲイルは「私も人工知能に懸念を抱く側にいる一人だ」と発言しました。さらに、イーロン・マスクに至っては「人工知能(AI)によって、人類は悪魔を呼び出そうとしている。人類は悪魔を操ることができると確信しているようだが、実際にはそれは不可能だ」と、シンギュラリティに対して明確に警鐘を鳴らしているのです。

彼らが予想するシンギュラリティはまさにディストピア。ターミネーターのように、AI(人工知能)が人類の敵となって暴走し始め、やがて人類は滅亡へと向かっていく、というSF映画お決まりのパターンですよね。
一方でシンギュラリティの到来に対して楽観的に捉える立場をとる人たちもいます。

「シンギュラリティ」の提唱者となったレイ・カーツワイル氏をはじめ、彼の設立した「シンギュラリティ大学」について「私が学生だったら、こここそが私が行きたい場所」と語ったラリー・ペイジ、そして毎年開催しているソフトバンクグループのイベント基調講演でAI(人工知能)の明るい未来を主張する孫正義氏などです。

彼らの主張は、シンギュラリティの到来によって人類はAI(人工知能)と手を結び、互いの足りない部分を補完し合って一層の繁栄を見せるというもの。そして人類は単調な労働から解放されて、最終的には不老不死の体を手に入れたり、自然の摂理を操ったりと、人間が神のような存在になるであろうという、楽観的にもほどがあるものです。

ここまで思想になると、恐怖すら感じてしまいますよね。神に近づこうとして、神の怒りに触れ、天災などで人類が滅亡させられるといった話も昔からよくあるものですから。

シンギュラリティは「善」か「悪」か?

善悪のイメージ

このように、シンギュラリタリアンと呼ばれる人達の中にはシンギュラリティを楽観的に捉える人たちと、悲観的に捉える人たちが存在しています。では実際のところ、どちらの主張が正しいといえるのでしょうか。

シンギュラリティに至るまでにはさまざまな過程を経ることになるでしょう。人間社会に対して大きな影響を与える出来事がいくつか起きるはずです。

このようにシンギュラリティ以前に人間社会に起きる影響は「プレ・シンギュラリティ」(=社会的特異点)と呼ばれ、スパコン開発ベンチャーPEZYグループの創設者である齊藤元章氏によって提唱されました。そしてこの「プレシンギュラリティ」はすでに現在進行形で起こり始めているのです。

2020年代初頭、スーパーコンピューター「京」の100倍速の処理(エクサスケールコンピューティング)が可能になると、次のような社会にとって革新的な出来事が起こると、齊藤氏は述べています。

  • エネルギーがフリーになる
  • 食料、衣類がフリーになる
  • 人間が労働から解放される

いかにしてこのような状態に至るのかについてはここでは割愛しますが、いずれも人類において革新的過ぎるといえる出来事ですよね。しかし、革新的過ぎることは時として負の側面も持っているものです。

例えば「人間が労働から解放される」という状態になったとき、すべての仕事をAI(人工知能)に任せてしまうとどうなるでしょう。社会を動かしていくのはAI(人工知能)となり、我々人類はAI(人工知能)に従うしかなくなり、やがて奴隷のようになる可能性はないでしょうか。すべての仕事をAI(人工知能)に委ねるかそうでないか、この判断によって人類の未来は大きく左右されるかもしれません。

このように、今後起きるプレシンギュラリティにおいて、人類がどのような選択をとるかによって、シンギュラリティが「善」となるか「悪」となるかが決定されます。まるでYes/Noで質問を辿っていく診断テストのようですよね。

 

シンギュラリティのイメージ

今回は、AI(人工知能)が人間の知能を超える「シンギュラリティ」を肯定する人たち「シンギュラリタリアン」の主張について解説してきました。ひと言で「シンギュラリタリアン」と言っても、楽観的に考える人、悲観的に考える人、さまざまな「シンギュラリタリアン」が存在することがおわかりいただけたのではないでしょうか。

未来のことは決して断言することはできませんが、現在のAI(人工知能)技術の目まぐるしい進化を見る限り「シンギュラリタリアン」の主張が正しかった、と言える未来がやってくる可能性は十分にあるでしょう。そしてそれを楽観的に捉えることも決して悪いことではありません。

ただ、人間は人間の倫理感、ロボットはロボットの倫理感、互いにそれに基づいて行動することが、本当に幸せな「シンギュラリティ」が訪れるための必須条件ではないでしょうか。

手塚治虫作「ブラック・ジャック」の中のセリフに次のような一節があります。

「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね」

人間も、ロボットも、神になってはいけないということなのでしょう。互いに手を取り合って助け合う、そんな「シンギュラリティ」を期待したいものです。

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