テクノロジー

日本の自動運転開発は遅れている?実用化にむけて超えるべき壁はこれだ

日本の車のイメージ

自動運転といえば中国やアメリカが先んじているイメージがありますよね。実際テスラモーターズは公道での試験走行を行っていますし、中国でも無人バスが公園を走行したりしています。

ところが日本では私有地内で走行実験を行っている自動運転車はあるものの、公道での走行はまだ先になりそう。

そもそも自動運転車に必要なのは、道路状況や道路の周辺状況が確認できる大量のデータです。そのためには公道での試験走行が必要不可欠ですが、日本では公道での試験走行は許可されていません。

しかしアメリカや中国では、おそらく人が運転するよりもAI(人工知能)に運転を任せた方が事故率が低くなることは分かっていて、それを実行に移しています。ですから諸外国に比べて日本の自動運転開発は遅れていると言えるのです。では自動運転実用化に向けて超えるべき壁とはいったいなんなのでしょうか。

そこで今回は、この自動運転実用化に向けて超えるべき壁についてお話ししましょう。

壁その1:自動運転のために法規制が必要

法律のイメージ

日本は自動運転が活発な国に比べて公道での自動運転に対する規制が厳しいと言われています。もちろん、医薬品の認可や外来種の規制など人の生命、健康に密接にかかわる事柄に関しては厳しい認可でよいのですが、自動運転のテクノロジー分野ではそれと区別して考える必要があるでしょう。

なぜなら、テクノロジー分野というのは一言でいうなら見切り発車が常識の業界だからです。

こうするとうまくいくんじゃないかということで仮説を立て、それを実行していきます。

実際、アプリやシステムの開発を行っていく際にはデバック作業というものが工程上必ず存在しますよね。(このデバック作業とは、設計書に基づき開発を進める中で生じたバグや想定外の仕様を取り除く作業のことを言います。開発の一連の流れとして、まず全体の仕様を考え、設計図を作り、それを基にソフトウェアならばコードを打ってプログラムを作っていきます。そして、開発の要所要所でテストをし、不具合がないか確認していくのです。)

デバック作業が存在する理由は、最後にまとめて行う統合テストだけではいざ不具合が発生したときに、バグの箇所を探すのに時間を取られるからで、そのようなテストの際にも実際にプログラムを動かしつつ行います。

このような開発方式をアジャイル開発といいますが、この意味として、市場にプログラムを出す前に製品を完璧にして出すのではなく、各工程において開発からテストまでのサイクルを回します。

テクノロジーへの理解が深い米国などではこの開発方式に対応して自動運転の公道走行試験などに柔軟な法規制が設定されていますが、日本は高度経済成長期に自動車など生命の安全に直接かかわる産業が発達してきたためか、完璧な仕上がりになるまでは製品を市場に出さないようにする法規制となっているのです。

比較的政府からの信用が大きいと思われる大手の自動車会社さえ、自動運転の公道上での試験運転を認可されていない法規制。

このようにITの開発方式と自動車の開発方式は真逆とも言ってよい性質を持っているため、統合させるにはなかなか骨が折れそうですよね。

以上から、現状日本での打開策としては、中国の産業特区のように一定の道路を封鎖して公道試験用のエリアを設けるのが良いのではないでしょうか。

その際には歩行者や標識など実際の道路状況をどれだけ再現できるかが重要。自動運転において現状のAI(人工知能)技術だと大量のデータが必要です。ですからここでのデータは現実の道路状況になるべく類似したものが良いでしょう。

壁その2:事故時の責任が不明瞭

責任のイメージ

ところで、自動運転でないレベル2(システムがステアリング操作、加減速どちらもサポートする)まではもし事故を起こしてしまった時の責任の行方は人ということで疑いはありませんよね。(もちろん、ブレーキやハンドルの不具合ならメーカーの責任となります。)

しかし、レベル3以降の自動運転車となると気候条件や道路の視界の良好さ、渋滞していないなどの条件はあれどそれらを満たせば運転をコンピュータに任せることが可能です。

そうすると事故を起こしたのが誰の責任かということで問題が生じます。

コンピュータに制御を任せていたのだから、事故が起こった責任は車のメーカーにあると損害賠償責任などはメーカー側になりそうと思った方もいるでしょう。逆に手動運転モードにしたうえで事故を起こしたのなら運転手に責任があるという意見もあります。

ですが、交通事故を大幅に削減できる見込みがあるし、高齢ドライバーや運転したくない人でも気軽に交通手段として使うことができるので、どちらにしても最終的には全て自動運転に変わった方が良いかもしれません。

そして、前述の法規制でも述べましたが、自動運転はAI(人工知能)を使うので路面状況や周囲の道路状況などの大量のデータが必要です。そのためには、完全自動運転のレベル5になるのを待たずに、レベル3の段階から試験走行できる区画を設け、どんどん走らせてデータを取る必要があります。

壁その3:自動車自体の安全性能の向上

自動車事故のイメージ

今度は3つ目の壁についてお話しましょう。

自動運転車の試験走行はまず高速道路から始まると言われています。なぜなら、高速道路というのはずっと同じような景色が続く単純な構造になっているから。

その点、一般道の場合は高速道路に比べてはるかに複雑になるのは想像に難くないでしょう。

信号は点在しているし、何よりもっとも予測が難しいと言っても良い「人」がいます。その人たちは道路を急に横断してくるかもしれません。

とはいえ前述したとおり、現在は人による運転から自動運転車への過渡期の段階です。

この過渡期で一番問題となるのはドライバーが自動運転のシステムを信頼しすぎてしまって緊急時の対応ができなること。
実際、アメリカでの自動運転車の公道を使った試験走行で事故が起きた原因は、運転手の過失にあったとされています。そこで早めに完全自動運転に移行する必要があるわけ。なにより人による運転よりも全自動化した方がドライバーが高齢化している現状では事故は激減する可能性が高いですよね。
自動運転車が人と比べて優れている一つとして、やはり人が見ることができない死角にある車や人でもカメラやセンサーを駆使して対応することが可能という点でしょう。

実際ディープラーニングを使った画像認識により、車線変更の際に死角になる車の斜め後ろの状況が分かるだけでなく、その誤認率も大幅に減ってきています。

あとは、何度も前述したようにAI(人工知能)では多くの計測データが必要です。

もちろん、例えば人が突然飛び出してきたときにはセンサーによる回避も必要ですが、自動車が高速で走り、また障害物などを考えると、事前にどのような地形で人が飛び出してきやすいのかなどを予測することも重要となるでしょう。

 

車のイメージ

ここまで日本で自動運転を普及させるために障害となっていることについてお話しました。

今回お伝えした壁を確認してみると、日本で自動運転をバンバン走らせるようにするにはやはりハードルは高そうですよね。

しかし、交通事故率を下げるためには完全自動運転にするしかないので、まずは規制緩和から進めていくべきではないでしょうか。何度もお伝えしましたが、AI(人工知能)は実験データを多く集める必要があるのでやはりいかに実際に車を走らせ、道路状況のデータを集めるかが今後の日本で自動運転を導入するには重要なことです。

そうすれば、民間企業の開発も進み、さらに試験走行ができるという好循環がうまれるのではないでしょうか。ですので、まずは道路交通法の改正され、自動運転車が普通に利用できるようになると良いですよね。

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