AI(人工知能)が靴を選んでくれる、そんな便利なことがすでに現実のものになりつつあります。
靴屋さんで自分に合ったサイズの靴を買ったつもりだったのに、思いのほか履き心地がよくなかったなんてこともありますよね。最悪の場合、靴擦れができていることもあったりしますから、靴選びは慎重にやりたいものです。
インターネットで気に入ったデザインの靴を見つけたのに、自分に合うサイズの靴がなかったなんてこともあるでしょう。
しかしAI(人工知能)がピッタリの靴を見つけてくれたり、あるいはAI(人工知能)が靴のソールを調節して最高の履き心地を提供してくれるという機能がすでに実現しようとしているのです。
そこで今回はピッタリのサイズの靴、最高の履き心地を与えてくれる靴などを提供してくれるという、AI(人工知能)による靴選びがどのようなものであるのか見ていきましょう。さらに靴を探す機能だけでなく、歩き方や走り方をアドバイスしてくれるというAI(人工知能)を搭載した靴についてもお伝えします。
AIが靴を選ぶ基準とは
AI(人工知能)が靴を選ぶ基準、すなわち履き心地がよい靴というのはどういうものなのでしょうか。ここではランニングシューズを例にあげて、履き心地と密接に関わる靴の要素を簡単に説明していきます。
- 靴のサイズ:一般的な靴のサイズは「足囲」、足の横幅は「足幅」。
- アッパー:靴の上側を覆う部分やつま先、靴ひもなどの総称。
- ソール:靴が地面と接する部分やその周辺。
靴を選ぶ時によく見るサイズ、たとえば25cmとか26cmというのは「足囲」であり、これは足の周りの長さにあたります。しかし同じ足囲25cmでも、細長い足の人もいれば太い足の人もいますから、このサイズだけ見て靴を購入しても合わないことがあるのです。靴のサイズには足の横幅「足幅」というのもありますから、足囲と足幅の両方を見て靴を選ばなければいけませんよね。
アッパーは簡単に言って靴の上側と言っていいでしょう。靴の部位ではいちばん目立つ部分ですよね。
ソールは靴底やその周囲にあたる部分で、直接地面に接する部分である「アウトソール」、エアーなどの衝撃を吸収する素材が入っている「ミッドソール」、靴の中敷きを表わす「インソール」に分けられます。
いずれの部位も履き心地に関わる部分ですが、AI(人工知能)による靴選びで特に重要となるのはサイズの他に、ソールの部分があげられます。靴底がピッタリとフィットして柔らかい感触であれば足が痛くなりにくいですし、足の疲れも抑えることができますよね。
それではAI(人工知能)がどのように靴を選んでくれるのか、見ていくことにしましょう。
「FlicFit」でAIがピッタリな靴を提案してくれる
「FlicFit」は日本のFlicFit社によって製作された、足のサイズを計測してAI(人工知能)がサイズに合った靴を提案してくれるというシステムです。
3Dスキャナに足をセットすると4つのセンサーで足の形などのデータを撮影し、10秒程度という短時間で足の3Dデータを解析します。このデータはiPadなどのiOS端末に自動送信され、登録してある靴の内寸データと照合して計測した足の3Dデータに最も近い靴を提案してくれるのです。
このシステムの強みは、やはりネットショッピングでの靴の購入ですよね。一度足の3Dデータを登録してしまえば、AI(人工知能)が靴を提案してくれるだけでなく、購入までの一連の流れをすべてネット上で済ませることができるでしょう。
すでに靴の形や色、値段を絞り込む機能もついているそうですから、好きなデザインの靴をネット上で探して購入することも簡単にできそうですよね。
「QUANT-U」でAIが靴のミッドソールを製作して履き心地アップ
「QUANT-U」はデンマークのECCO社によって製作された、AI(人工知能)が靴のミッドソールを自動で製作してくれるというシステムです。
こちらも3Dスキャナで足の3Dデータを作成するのですが、約30秒かかるかわりに足の形だけでなく、靴内の温度や湿度のほか圧力センサーや加速度計による歩き方の特徴までもデータ化することができるのです。こうして得た足の形や歩行の特徴などを数値化して3Dプリンタに出力し、シリコン素材を使ったミッドソールが自動で製作できるという仕組み。
ソールの中でもミッドソールは歩く時の衝撃を吸収してくれる部位であり、歩き心地に直接関わるところですよね。人によって変わる歩き方まで計測して、AI(人工知能)が靴の重要な部分であるミッドソールを全自動で作ってくれるのですから、これは凄いシステムといえるでしょう。
まだ日本での実用化のメドが立っていないというのが残念です。
AIは靴だけでなく、正しい歩き方や走り方も教えてくれる
AI(人工知能)が靴を選んでくれるというだけでなく、AI(人工知能)を靴そのものに搭載するという試みも行われています。
靴のさまざまな部分にセンサーを搭載し、歩いたり走ったりしている時に足にかかる圧力や時間あたりの歩数などからその人の歩き方や走り方を解析。そしてそれをもとに疲労や健康状態を教えてくれたり、あるいは正しい歩き方や走り方をコーチしてくれたりといった機能が備わっているのです。
普段歩いている時に疲れやすい、足が痛くなりやすいという時は靴に原因があることもありますが、歩き方に問題があることもありますよね。姿勢が前かがみになっていたり、左右どちらかに傾いていたりといった悪い姿勢では疲れやすくなってしまいます。
AI(人工知能)が靴以外の原因、姿勢や歩き方を分析して教えてくれれば疲労を軽減することもできますし、またジョギングやランニングでも疲れない走り方、スピードを上げられる走り方を教えてくれれば、とても役に立ってくれますよね。
「OLPHE TRACK」はAIが靴底から歩き方をアドバイス
「ORPHE TRACK」は日本の株式会社no new folk studioが開発したシステムで、AI(人工知能)を搭載したセンサーモジュールが靴底にセットされています。このモジュールは靴底から取り外すことが可能で、靴そのものがモジュールをセットできる仕組みになっていればモジュールを使いまわすこともできるのです。
モーションセンサー以外にも気圧センサーや振動モーターなどを搭載しており、足の動きから歩き方や走り方を分析。姿勢や健康状態のチェックやランニングフォームのコーチなどをAI(人工知能)が靴底からしてくれるというわけです。
いずれは行動の解析や移動経路の解析から、保険業や介護の分野などとの連携も視野に入れているとのこと。
「Stridalyzer」は足への負担を教えてくれるAI搭載の靴インソール
「Stridalyzer」はインドのReTiSecse社が開発したAI(人工知能)搭載の靴インソールです。
インソールには多数のセンサーも搭載され、足がどのように着地して地面をどのように蹴っているかを分析するとともにピッチやストライドなどのデータを表示。また足や膝にかかっている負担を計測して、注意やコーチングをしてくれます。
さらに距離やペース、消費カロリーなどから「パフォーマンススコア」、足や膝への負担や足のひねりなどから「フォームスコア」というわかりやすい測定基準を提示しています。表示されるデータ量が多すぎてチンプンカンプンという人でも、これなら簡単にペース配分やフォームの修正ができますよね。
「Digitsole」はAIが靴の内部の温度を調節
ちょっと変わった商品としては、フランスのDigitsole社が開発した靴のつま先やかかとなどの温度を調節できるインソール「Digitsole」があります。
スマートフォンと連動することによって、アプリから靴の内部の温度を自由に調節することができるのです。冬の寒い時期であれば靴の内部の温度を上げて、足元をポカポカにすることができそうですよね。
またAI(人工知能)がこの靴インソールにも搭載されており、歩数や移動距離、消費カロリーなどから歩き方のクセや疲労度などを解析して教えてくれるという機能も備えられています。
さて、AI(人工知能)が靴を選んでくれたり、AI(人工知能)が靴そのものに搭載されて歩き方や走り方を教えてくれるシステムをお伝えしましたがが、どれもたいへん便利なものでしたよね。
- 靴はサイズだけでなく、ソールも履き心地に影響する。
- 「FlicFit」は足のサイズを3Dデータ化し、AI(人工知能)がピッタリの靴を自動で提案してくれる。
- 「QUANT-U」は足の3Dデータから、AI(人工知能)が靴のミッドソールを自動で製作してくれる。
- AI(人工知能)は靴を選んでくれるだけでなく、AI(人工知能)が靴そのものに搭載されて歩き方や走り方を教えてくれるものがある。
- 「ORPHE TRACK」は歩き方や走り方を教えてくれるシステムで、AI(人工知能)を靴から靴へ使いまわすことが可能。
- 「Stridalyzer」はペース配分やフォームをわかりやすく教えてくれる、AI(人工知能)搭載の靴インソールである。
- 「Digitsole」は歩き方を教えてくれるだけでなく、靴の内部の温度を調節することができるAI(人工知能)搭載の靴インソールである。
AI(人工知能)が靴の分野に与える影響はただ欲しい靴を選ぶことができるということにとどまらず、スポーツや健康の分野にまで影響することがわかりました。今後はさらに広い分野にまで活躍を広げることができるかもしれませんよね。