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サイボーグ化が現実に!脳にチップを埋め込むことでもたらす未来とは

サイボーグ化が現実に!脳にチップを埋め込むことでもたらす未来とは

サイボーグと聞くと、「まるでSFの世界だ、まだまだ未来の話で今は関係ないでしょ」と考える人がほとんどですよね。しかし、実はそう遠くない未来に、脳にチップを埋め込むという形でサイボーグ化が実現する世界が待っています。

えぇ!まさかそんなことができるの・・・と驚きを覚え、新しい技術が浸透していくことは楽しみだ、とか、なんだか怖くて不安だな、とか、感じ方もさまざまでしょう。

私たちがどう感じるかは一旦置いておいて、着々とサイボーグ化の世界は近づいており、否が応でもその流れに乗らざるを得なくなるのが現実です。そうなると、脳にチップを埋め込む技術がどのような流れにあるのか、また、どのような未来が待っているのか気になるところ。そこで今回は、脳にチップを埋め込むことの現在の状況とその未来についてお伝えしましょう。

まずは、脳にチップを埋め込む動きはちょっとした未来どころか、現在すでに始まっているという事実についてです。

脳にチップを埋める動きはすでに始まっている

医療のイメージ

脳にチップを埋め込むとは、すなわち脳に電気的な刺激を与えるということですが、この技術自体は目新しいものではなく、以前から主に医療現場で見られるものというのは驚きかもしれません。そこでこれまでの歴史を振り返ってみましょう。

1960年代からすでに脳に電気的な刺激を与える装置の研究はなされていて、その時点ではヘッドセット(頭部に着けるヘッドフォンのようなもの)を頭部に装着し、脳波を読み取ってコンピュータを操作できるようにする程度でしたが、10年ほどの年月が経つと、外部スイッチで刺激を与える脳チップが考案され、視覚障害やパーキンソン病などの治療に用いられてきました。その後、外部からの刺激を与えずとも脳波を読み取るチップの開発が進み、現在に至ります。

余談ですが、このようなヘッドセットや脳内チップはBCI(ブレイン・コンピュータ・インターフェース)やBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)と呼ばれる技術の一種で、今後脳チップについて情報を得たい場合は覚えておいて損はありません。

ここまで、脳チップの流れについて振り返り、すでに実際に用いられていることを確認しました。脳の病気に馴染みのない人にとっては意外な事実であったかもしれません。次に、脳チップを使って神経麻痺を改善した話を始めとし、医療における脳チップの動向についてお伝えしましょう。

神経麻痺を改善!医療での脳チップの動き

マイクロチップのイメージ

脳にチップを埋め込む動きは、医療の現場で多くみられ、例えば四肢の神経麻痺の改善に使われています。脳をチップによって直接刺激することで治療の困難な神経麻痺が改善されるなんて驚きですよね。

実際に脳にチップを埋め込むことで神経麻痺を回復した例として、オハイオ州立大学の研究があります。この研究では首の骨折で肩から下がマヒした男性に、脳から筋肉に信号を働きかけるチップを脳に埋め込むことで、男性が指を動かせるようになった、というもの。脳にチップを埋め込んだ男性は、右手で小さいものを掴んだり、グラスの水をそそいだり、なんとギターのゲームを楽しむことまで可能になったというのですごいですよね。

他にも、脳にチップを埋め込むことで治療の可能性を見出せそうな病気に、パーキンソン病やアルツハイマー病、統合失調症があげられています。このことに言及しているのは、AI(人工知能)関連の実業家、エンジニアとして第一線で活躍するイーロン・マスク氏で、脳に埋め込むAI(人工知能)チップによって、他にも記憶障害や自閉症など、脳に関わる病気ならどんなものでも治せるだろう、と語りました。

しかし、自閉症は病気ではない、という一部反対意見もあり、テクノロジーはどこまで人間を修正していいのか、どこからどこまでが治療となるのか、問題提起がなされています。

ともあれ、けがによる神経麻痺や神経疾患・精神疾患が改善する見込みがあるというのは患者に希望を与えますよね。倫理的側面に気を付けながら、より良い方向に脳にチップを埋め込む研究が進むことを期待しましょう。

さて、チップの中でも、特にAI(人工知能)チップを脳に埋め込むプロジェクトはどうなっているのか気になるところ。続いて、そのプロジェクトについてお伝えします。

脳にAI(人工知能)チップを入れるプロジェクトとは

人間を拡張するイメージ

脳にAI(人工知能)を搭載したチップを埋め込むプロジェクトはいくつか立ち上がっており、先ほど述べたような神経麻痺の治療に革命をもたらそうとイーロン・マスク氏が持つ会社のNeuralink社が挑戦中です。Neuralink社は脳にAI(人工知能)チップを埋め込む技術を動物実験で成功させており、人間に対する臨床試験の申請を2019年におこない、2020年には実施されるとのこと。最初の目標は脊髄損傷や先天性疾患など神経麻痺を持つ患者の支援で、髪の毛より細い糸に電極が取り付けられた外科用器具を埋め込むというものです。

Neuralink社の目の前の目標は医療現場で脳にAI(人工知能)チップを埋め込むことにありますが、長期的な目標としてはAI(人工知能)と人間との共生です。そこに至るまでの目標として、例えば脳とマシンをつなぎ、思い浮かべるだけで文字が入力できるようにするとのこと。つまり、脳にAI(人工知能)チップを埋め込むことで、人間のできることをAI(人工知能)によって広げていくというものです。

日本国内でも脳にAI(人工知能)チップを埋め込むプロジェクトとして、東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二教授による「ERATO池谷脳AI融合プロジェクト」があります。このプロジェクトは、AI(人工知能)を用いた脳の潜在能力開拓を行ない、まだまだ引き出されていない脳の能力をAI(人工知能)との融合で発揮するというもの。

具体的には、ネズミの脳にチップを埋め込み地磁気や血圧の変化といった感知が難しい情報を脳に伝え、脳がどのような反応するか研究する、脳とインターネットや電子機器とつなぎ、ウェブ検索や家電操作をする、など。

いずれも、これからのAI(人工知能)時代を豊かにしそうな、大変興味深い研究ですよね。脳にどれほど手を加えていいのか、危険性はないのか、など倫理的課題や医学的課題は残りますが、課題を何とかクリアして、生活を変えるような技術を実現してほしいですよね。

とはいえ、脳にチップを埋め込むことは現在一般的ではなく、実現化もいつになるのかわかりません。しかし、そう遠くない未来に脳にチップを埋め込むことは当たり前な社会になる可能性も。最後にその可能性についてお伝えします。

脳にチップを埋め込むことは当たり前になるかもしれない

未来のチップのイメージ

当たり前に脳にチップを埋め込むようになる可能性の一つは、これまで繰り返し紹介してきた医療的側面からです。すでに技術的に存在するとはいえ、神経麻痺やパーキンソン病、アルツハイマー病などの神経疾患の治療で脳チップはまだ一般的とはいえません。しかし、これからさらに患者に負担が少なく、精度の高い効果的な脳チップが開発されれば、幅広く医療の世界で使われることになり、特に高齢化社会が叫ばれる日本において、神経疾患を患った多くの高齢者が脳にチップを埋め込んでいる社会も考えられますよね。

また、脳の能力増強・拡大という側面からも脳チップが当たり前になる可能性を秘めています。脳は未知数の臓器であり、AI(人工知能)もまた未知数の技術であり、両方を掛け合わせることで想像しないことが成し遂げられるかもしれません。例えば、記憶力が高まったり、先ほども述べたように考えるだけで機械の操作ができたり、脳内のイメージをそのまま相手に伝えることも可能になることも。

一方で、倫理的・技術的な問題も立ちはだかります。人間は人間らしさ、人格をつかさどる部分であり不可侵の領域である、人格を変えてしまいその人らしさを失ってしまうかもしれない、副作用が未知数である、など。ただ、どんな技術でも最初は倫理的・法的・社会的問題がつきものなので、十分な議論をして、より良く脳チップを使いましょう。

 

さて、今回は脳にチップを埋め込むことの現在の状況とその未来についてお伝えしました。現在注目を集める脳チップの研究ですが、すでに使われていること、どんどん私たちの生活に広まっていく可能性があるでしょう。

脳チップはこれまで、そして現在、主に医療で使われており、これからもしばらくは医療の世界で使われるものと考えられます。対象となる疾病は神経麻痺やアルツハイマー病で、AI(人工知能)の第一人者であるイーロン・マスク氏いわく、今後統合失調症などの治療にまで広がっていくとのことです。医療は私たちとは切っても切れない関係にあるので、ますますの発展を祈るばかりですよね。

一方で、脳チップを用いて脳から直接文字を入力したり、家電操作をおこなったりと、まさにSFの世界のようなことを実現しようとする研究も見られます。私たちの生活が豊かになったり、人間の可能性を広げていったりする技術なだけあって、これから注視していきたい点です。脳は特別な臓器だと一般的に考えられているため、倫理的な問題もありますが、上手く折衷案を見つける必要があるでしょう。

これからますます発達していくだろう脳チップ。行く末が楽しみですよね!

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