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SFの世界が現実に!マイクロチップを埋めた人間の一日とは

指先でマイクロチップを使うイメージ

マイクロチップを使って人間の五感や筋力をパワーアップするというアイデアは、SFの中でのサイボーグ手術の一つの形としておなじみですよね。一昔前は空想の産物だったこんな技術が、電子デバイスの製造技術が進歩した現在では、あながち夢物語とはいえなくなってきました。実際に体の中にマイクロチップを埋め込んでいる人間は、既に実在しています。

「マイクロチップ・インプラント」といわれるこの技術。人間以外の動物への埋め込みは1990年代から実用化されていました。ペットのIDや飼い主の情報をチップに書き込んで皮下注射でペットの首の皮のあたりにマークすることで、迷子になったペットの保護や予防注射の履歴を確認するためなどに役立ちます。

しかしながら、人間の体にマイクロチップを埋め込むようになったのは最近のこと。今回はこの「ヒューマン・マイクロチップ・インプラント」の技術と、実際にマイクロチップを埋め込んだ人間について、見てみることにしましょう。

自分の体にIDチップを埋め込む

マイクロチップを使うイメージ

スウェーデンやドイツではすでに6000人以上の人がマイクロチップを埋め込んでいるといわれています。この代表といえるのが一部の「バイオハッカー」たち。人間の体にバイオテクノロジーなどの科学技術を作用させて、生物としての人間の能力を高めることに積極的な考えを押し進める人たちです。

彼らが埋め込むのは、米粒ほどのマイクロチップ。これをガラスのケースに封入したカプセルを手の親指と人差し指の間のひだの部分に注射器でインストールします。このチップは自分のIDを発信する通信デバイスになっており、個人情報の認証は受信側のデバイスに触れたり手をかざしたりするだけ

スマートフォンのロック解除や、自宅のドア、会社のセキュリティロックなども触るだけでOK。オフィスのPCやプリンタなどのOA機器のネットワークのセキュリティも同様です。キーやIDカードを持ち運ぶ必要はありません。希望に応じて他の機能も付け加えることも。ある人はスマートフォンに触るだけで妻に電話がかかるように設定したチップを埋め込みました。

スウェーデンの国有鉄道では、

乗客の旅客運賃の課金にこのバイオメトリック・チップの利用を開始。車内で手をスキャンするだけで運賃の精算は完了します。

アメリカ、ウィスコンシン州の自動販売機製造会社、Three Square Market。

この会社は社内のセキュリティ認証を簡略化するため、世界で始めて従業員にマイクロチップ埋め込みの「ベネフィット」を提供。希望する従業員にはインプラント費用$300を会社がサポート。

チップを埋め込んだ従業員は、このIDチップで社内のドアの開錠、事務機の認証ができるほか、ネットワークへのログインや社内での買い物にも使える認証ツール。このベネフィットを使っているのは、従業員85名のうち約50名。もちろん、一度埋め込んだチップは、本人の希望があればいつでも取り出せます。

DuoSkin はMITのメディア研究者とマイクロソフトが共同で開発した、導電性タトゥー。

金属光沢を放つこの宝石のようなタトゥーを肌に貼り付けると、その部分に指で触れることでスマートフォンのトラックパッドのような情報ツールに。ファッションショーのモデルの腕にDuoSkinを貼れば、来場者はこのタトゥーをスマーチフォンでスキャンするだけで欲しい情報が手に入ります。

医療用マイクロチップ、そして脳チップへ

医療のイメージ

医療の世界では、治療目的でマイクロチップを人間に埋め込むことが行われています。

継続して治療が必要な患者の腕にマイクロチップを埋め込み、個人情報や治療歴にアクセスできるIDコードを登録。このVeriChipは患者が出先でも正しい投薬、治療を受けるためのデータベース。チップから得られる個人情報を病院に照会すれば詳細な医療データにアクセスできます。

スイスのEPFL(Ecole Polytechnique Fédérale de Lausanne ローザンヌ連邦理工学院)の開発したマイクロチップは14mm×2mmという小型のセンサーチップ。

このチップは皮膚の下に埋め込むことで人間の体内の化学物質の濃度を測定。データは、スマートフォンにリアルタイムで表示されます。
医師はコレステロールや蛋白質、血糖値や投薬した薬物の血中濃度などを見て、患者の状態に応じた治療ができますよね。

アメリカではパーキンソン病の患者に対し、脳内に電気刺激を与える「脳チップ」を埋め込む治療が行われています。

DBS(脳深部刺激療法)といわれるこの治療法は、脳の運動野を直接刺激して、この病気特有の体の震えを抑えるもの。既に100,000人を超える患者にこの脳チップが埋め込まれました。

このDBSは強迫神経症のような障害の治療にも有効とされ、FDAは今後も脳チップの利用を進める方針です。DBSは重度の鬱病やPSTD(心的外傷後ストレス障害)の治療にも役立つと期待されており、DARPA(アメリカ国防高等研究計画局)などによる研究が進められています

アメリカのブラウン大学を中心に20年以上研究が進められているBrainGate。

マイクロチップを人間の脳に埋め込み体外のコンピュータを無線で接続するという技術です。2006年には脳チップを移植した患者が、「思う」ことでコンピュータモニター上のカーソルを動かすことに成功。その後、四肢が麻痺した患者が車椅子を動かすしたり、マジックハンドを操ってコーヒーを飲んだりできることが実証されています。

 

マイクロチップを使いこなす家族のイメージ

体にマイクロチップを埋め込むことで自分の認証を自動化するバイオハッカーたち。自動化されてしまった認証はセキュリティーがかけられていないため、使用できる範囲は日常的な領域にとどまり、言ってみれば「顔パス」の代わりのようなものとして使われています。

握手をすれば相手に自分の個人情報が伝わってしまうような技術が必要な人は限られるでしょう。スマホに触っただけで誰かに電話がかかってしまうような機能は、実用的とは思えません。

技術的にはこのマイクロチップにクレジットカードのような決済機能を持たせることは可能です。実際にそのようなサービスオプションも用意されていますが、登録する人は少数。触っただけで買い物をしてしまうような「手」と一緒では、怖くて街を歩けませんよね。手で触るものが全て金に変わってしまう王様の話を思い出しませんか。

現時点で実用化されているバイオチップは、ほとんどがオープンループといわれるタイプ。チップ自体は一方的に作動しているだけで、人間の体から情報を受けとって何かをするようなクローズループのチップは実用化されていません。

人間の体内にクローズループのマイクロチップを埋め込むことについては、セキュリティ上の問題だけでなく、個人情報について解決すべき社会的な問題が数多くあります。一方で、脳チップが孕む人道的、倫理的な視点に及んでは、一般的なレベルでの解決は中期的に期待できません。

医療用途のマイクロチップ・インプラントは限定された範囲ですが治療に使われる機会が広がっていきます。一方で、セキュリティの問題が解決されない限り、個人レベルで行うマイクロチップ・インプラントは、趣味のアクセサリー程度での用途を出ないでしょう。バイオニック・サイボーグの登場はまだ遥か先のようです。もしかすると、将来は問題が解決して日常で使われる未来が来るかもしれませんよね。

参照元 For The First Time, a US Company Is Implanting Microchips in Its Employees

Thousands of people in Sweden are embedding microchips under their skin to replace ID cards
DARPA’s Brain Chip Implants Could Be the Next Big Mental Health Breakthrough — Or a Total Disaster
Leaders in Pharmaceutical Business Intelligence (LPBI) Group

Hacking The Brain: The Future Computer Chips In Your Head

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