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【2021年版】最新リハビリテーションでのIoT技術活用事例5つ

【2021年版】最新リハビリテーションでのIoT技術活用事例5つ

この数年で、さまざまな業種にAI(人工知能)などの最新デジタル技術の活用が進んでいる話を聞くようになりましたよね。そしてリハビリでも、その1つであるIoTの活用がはじまっています。

リハビリとはリハビリテーションの略称で、病院などで患者の体を回復に向かわせるための機能回復訓練のこと。IoTとは、「モノのインターネット」という意味で、パソコンやスマートフォンだけでなく、さまざまな機器をインターネットでつないで仕事や生活の利便性を向上させるネットワークになります。

例えばIoTを用いた工場だと、製造ラインの稼働状況を離れた場所から確認でき、機械を遠隔操作できます。一般生活では、外出先からスマートフォンでエアコンを操作して、帰宅前に自宅の室内を適温にすることも可能です。そしてリハビリでも、そんな便利なネットワークのIoTの活用が本格的になりはじめました。

では、リハビリにIoTをどのように活用しているのでしょうか。これから誰でもリハビリを受ける可能性はあるので、そのことについて知りたいですよね。そこで今回は、IoT技術を活用した最新のリハビリを5つの事例を用いてお伝えします。

今までのリハビリテーションてどんなの?

リハビリのイメージ
リハビリとは、ケガや病気で治療を受けたあとに、体をもとの状態に回復させるための機能回復訓練のことです。機能回復訓練は、理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職によって、筋肉トレーニングや歩行訓練、ストレッチなどが施術されます。これまでのリハビリではリハビリ専門職が一人一人の患者に合わせたリハビリを立案し、施術、経過観察をすべて手作業でしていました。

しかし、リハビリの部門では人手不足が問題になっていました。そのため従来の方法では、一人一人のリハビリ専門職が余裕を持てなくなり、高い質のリハビリを患者に提供するには限界が見えています。

そして現在、リハビリを進化させて、このような課題を解決しているのがIoTの活用です。例えば、IoT機器を使用して、リアルタイムで患者の状態を数値データや画像データで可視化できるシステムが実現しています。これにより、患者の正しい体の状態を把握できるようになり、リハビリ専門職ではなくシステムが、患者に適切な内容のリハビリを自動で算出して提案できるようになりました。

また、リハビリを受ける患者にもメリットがあります。自分の体の現状を数値や画像で示されるので、目で見て理解しやすくなりリハビリに対するモチベーションアップになるのだとか。

このように、リハビリ専門職と患者のどちらにもメリットになるのが、IoTの活用です。では、実際にリハビリのIoT活用がどのように進められているのか、それがわかる5つの事例を紹介しましょう。

最新リハビリテーションIoT技術活用事例その1:IoT身体機能計測サービス「モフ測」

身体のイメージ

「モフ測」は、株式会社Moffが開発した、ウェアラブル端末「モフバンド」と専用アプリで行うIoT身体機能計測サービスです。このサービスでは体で計測したい部位にモフバンドを装着して、歩行やバランス・上肢の動作・可動域などをリアルタイムで計測し、そのデータを専用アプリで数値や画像で身体機能の状態を確認できます。

モフ測の利用はリハビリ専門職にとって、これまで手作業だった計測や記録を自動化できるので業務負担を軽減します。また、患者から見るとリハビリの進捗状況が目で見てわかるので、回復に向けたモチベーションアップするでしょう。

2019年に株式会社Moffと、三菱総合研究所、国立病院機構大阪南医療センターとで、モフ測を利用した共同研究の成果が発表されました。この研究は大腿骨骨折患者を対象に、歩行訓練開始から退院までを観測。そして、従来のリハビリよりもモフ測を利用したリハビリが、平均7日間の観測でリハビリ時間が平均156分も多くなった研究結果が出ました。

この結果からは、まず患者がリハビリに対して前向きに取り組めたことと、リハビリ専門職の業務効率が向上したことがわかります。モフ測は2018年のサービス開始以降、医療機関や介護施設などで利用されており、この結果を受けて今後もモフ測は、活躍の場を広げていくでしょう。

最新リハビリテーションIoT技術活用事例その2:Moffとトヨタが開発を進める新しいリハビリ支援サービス

リハビリの進化のイメージ
先ほどのモフ測の株式会社Moffは、大手自動車メーカーのトヨタ自動車株式会社の未来創生センターと、2019年に新しくリハビリ支援のサービスの共同開発をはじめました。

トヨタ自動車株式会社の未来創生センターとは、産業用ロボット技術を応用して、体の不自由な人、高齢者を支援するロボット研究をしている機関です。その未来創生センターと株式会社Moffが手を組んで開発をはじめたのが、IoTを活用した医療から介護までシームレス(つながっている)なリハビリ支援サービス。

今回、開発するサービスの具体的な内容とは、株式会社Moffが開発した医療機関向けのIoT機器「Moff Band」を利用して、患者へのエビデンス(科学的根拠)に基づくリハビリ提供と、経過状態を可視化するサービスです。このサービスの実現により病院・介護施設・在宅と、リハビリを受ける環境が変わっても、データを引き継ぎながら適切で継続したサービス提供が可能になります。

このIoTリハビリ支援サービスが実現すれば、効果的なリハビリによる早期回復も期待できます。そして今後、IoT技術とサービスの進化で、リアルタイムで患者の体の容態を把握し急変した場合は、いち早く適切な対応が取れるサービスに発展する可能性もあるでしょう。

最新リハビリテーションIoT技術活用事例その3:遠隔心臓リハビリシステム「リモハブ」

リモハブのイメージ

大阪大学・大学院医学系研究科の坂田泰史教授らの研究グループは、株式会社リモハブが開発した心臓疾患に有効な心臓リハビリを在宅で実施できる、遠隔心臓リハビリシステム「リモハブ」の治験を開始しました。株式会社リモハブが開発したリモハブは、専用アプリ搭載のタブレット端末、ウェアラブル心電計、そして運動量を計測するIoT搭載のスマートバイクで構成したシステム。このシステムは心臓疾患の患者が在宅で心臓リハビリを行い、再入院を防ぐのが目的です。

心臓疾患は、日本人の年間総合死亡数の第2位になる15.2%(約120万人)の原因であり、再入院率も年35%と、比較的高くなっています。そこで、再入院を防ぐための1つが、心肺機能を改善できる心臓リハビリです。

実際に心臓リハビリを実施すると、再入院を約4割下げた効果がでていますが、5万人の患者を対象とした調査では心臓リハビリの実施率はたったの7%。その理由は、「医療機関に設備がない」「スタッフ不足」、患者側では通院が困難などの理由がありました。

そこで在宅でリハビリできれば、これらの問題が解決できるという考えから開発されたのが、遠隔心臓リハビリシステム「リモハブ」です。リモハブは治験の前にパイロットスタディ(少人数を対象にした調査)を実施し、リモハブを70代~90代の高齢の心不全患者10人に週3回、3か月利用してもらいました。その結果、リハビリで適している6分間の歩行距離が約50mもアップしました。

現在も治験は進められていますが、治験終了後は、2~3年後にレンタル提供を想定した製品化を目指すとのことです。

最新リハビリテーションIoT技術活用事例その4:パーソナルヘルスケアサービス「Fit with AI Trainer」

パーソナルトレーナーのイメージ

2017年にソニーネットワークコミュニケーションズは、IoTを活用した健康を支援するパーソナルヘルスケアサービス「Fit with AI Trainer(FAIT:ファイト)」を開発し、サービス提供をしています。Fit with AI Trainerは、「日常活動の記録」と「毎月の体力・認知機能の測定」をもとにAI(人工知能)が学習して、個人に最適なトレーニングをアドバイスするサービスです。

「日常活動の記録」ではIoT機器の防水腕時計型アクティビティトラッカー「FAIT」を身に付けて生活し、歩数や睡眠時間、食事時間などの日常活動データを記録します。そして「毎月の体力・認知機能の測定」は、タブレットと専用のスポーツセンサーを使用して体力・認知機能の測定を実施。そして、日常活動データと体力・認知機能の測定結果をAI(人工知能)が解析して、個人に合わせたトレーニングメニューを自動提案します。

そして、サービス開始からFit with AI Trainerは、老人ホームやデイサービスへ導入されています。実際に株式会社ベネッセスタイルケアでは、自社が運営する介護施設に導入しました。

サービスを利用したある一人の女性入居者は、18か月間で初期のころより、持久力や筋力、反応速度、認知機能などすべての測定項目が向上。例えば、右足での片足立ちは最初の計測で50.07秒でしたが、18か月後には60秒まで立てるようになりました。

Fit with AI Trainerには、ゲーム感覚で気軽に取り組める特徴があります。そのため、例の女性入居者も気軽に取り組めたので運動への意識が高くなり、身体機能が向上する結果になったのでしょう。

この例からも、気軽に取り組めるFit with AI Trainerには、高齢者に介護予防のためのリハビリ効果が期待できます。そして、今後もFit with AI Trainerは介護予防だけでなく、病院や自宅でのリハビリへ活用領域を広げるでしょう。

最新リハビリテーションIoT技術活用事例その5:歩行センシングインソール「A-RROWG(アローグ)」

靴のイメージ
大手電機メーカーのNEC株式会社FiNC Technologies と組んで、新たなヘルスケアサービスの開発をスタート。その一環としてIoT技術を用いた歩行センシングインソール「A-RROWG(アローグ)」の提供を開始しました。

近年、社会的に健康に対する関心度は高くなっています。そして、多くの人たちが健康のため行っているのがウォーキング。人間にとって歩くことは、健康を増進させる効果があります。

しかし、歩行バランスが悪いと、反対に健康を損ねてしまいます。そこで、誰もがより効果的ウォーキングができるように開発されたのが、A-RROWGです。

このサービスでは、靴底にインソールとして取り付けたNECのA-RROWGで、その人の歩行速度、歩幅などのデータを取得して歩容状態(歩行の質)を解析。その解析結果をもとに株式会社FiNC Technologiesが理想的な歩行姿勢になるようアプリ上でアドバイスします。

A-RROWGは、株式会社マクアケのクラウドファンディングサービス「Makuake」を活用して事業展開を進行中。現在、個人向けにサービス提供をしていますが、今後は病院や介護施設、企業などの法人向けにも注力するとのことで、リハビリの歩行訓練などで活用されるケースも増えるでしょう。

まとめ
さて、今回はIoT技術を活用した最新のリハビリテーションについてお伝えしました。

リハビリは、ケガや病気で治療を受けたあとに、体をもとの状態に回復させるための機能回復訓練で、理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職によって、筋肉トレーニングや歩行訓練、ストレッチなどが施術します。これまでのリハビリでは、リハビリ専門職が個々の患者に合わせたリハビリを立案し施術、経過観察をしていました。

しかし、人材不足により、これからの時代で質の高いリハビリの提供には限界が見てきました。そして現在、IoTの活用がはじまり、このような課題を解決する新しいリハビリテーションがスタートしています。そこで今回は、5つの最新リハビリテーションを紹介しました。

事例その1:株式会社Moff が提供するIoT身体機能計測サービス「モフ測」
「モフ測」はIoT機器「モフバンド」と専用アプリで、歩行やバランスなどの体の状態をリアルタイムで計測し、専用アプリから数値や画像で身体機能の状態を確認できる。

事例その2:株式会社Moffとトヨタが開発を進める新しいリハビリ支援サービス
株式会社Moffとトヨタ自動車株式会社の未来創生センターとが共同で開発中。株式会社Moffが開発したIoT機器「モフバンド」を利用して、継続できる医療から介護までのリハビリ支援サービスを目指す。

事例その3:遠隔心臓リハビリシステム「リモハブ」
株式会社リモハブの遠隔心臓リハビリシステム「リモハブ」は、IoT技術を活用して心臓疾患に有効な心臓リハビリを在宅で実施できる。

事例その4:パーソナルヘルスケアサービス「Fit with AI Trainer」
ソーニネットワークコミュニケーションズが開発したFit with AI Trainerは、ゲーム感覚で気軽に取り組めて、日常活動や体力・認知機能のデータを解析し適切なリハビリを提案。介護予防のリハビリに効果があり。

事例その5:歩行センシングインソール「A-RROWG(アローグ)」
靴底にインソールとして取り付けたNECのA-RROWGで、歩行データを取得して解析。その結果を株式会社FiNC Technologiesが理想的な歩行姿勢になるようアプリ上でアドバイス。

どの事例にも共通しているのが、従来よりもリハビリが手軽にできること。IoTが利用できる機器とシステムで、リハビリの自動化を実現しています。それによって、リハビリ専門職では業務の効率化、質の良いリハビリを提供でき、患者は自身に最適なリハビリが受けられ、弱った体の早期の回復が可能になります。

ただし、現段階でリハビリのIoT活用は、まだ本格的ではありません。そのため、リハビリにIoTが普及するにつれて、これから質の高いリハビリテーションの実現ができることを期待しましょう。

【お知らせ】

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