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今後さらに広がる!リハビリにおける姿勢推定を活用した取り組みとは

今後さらに広がる!リハビリにおける姿勢推定を活用した取り組みとは

リハビリを受けるときに、高度なリハビリを受けるためには専門の施設に行かなければならなかったり、辛いリハビリを続けていてもイマイチ効果が実感できない等、リハビリに対するモチベーションを下げる問題が存在しますよね。

しかし、既にリハビリの現場ではAI(人工知能)による姿勢推定を活用した取り組みがされていて、これらの問題が解決されつつあります。AI(人工知能)による姿勢推定は、理学療法士がより患者さんである私たちに良いリハビリのプランを提案できます。さらに自宅にいながら高度なリハビリが受けられたり、自分が行っているリハビリがどれだけの効果を上げているのか目に見えてわかるので、もし実用化されたらとても便利に違いありません。

そこで今回はリハビリにおけるAI(人工知能)による姿勢推定技術についてお伝えします。

姿勢推定とは

姿勢のイメージ
簡単に説明すると、姿勢推定とはAI(人工知能)や画像認識を用いて人物の姿勢を骨格や関節を捉えてどのような状態にあるのかを表す技術で、イメージとしてはゲームや動画配信で使われているモーションキャプチャを特別な機器を使わずに画像や動画から読み取るというものです。

モーションキャプチャでは関節部などに位置の検出装置をつけたり複数のカメラを使い全身をきちんと把握しなければいけませんが、姿勢推定ではAI(人工知能)が一台のカメラで記録した画像や動画から人物の骨格や関節を検出し、それをもとに人物がどのような姿勢か推定し分析します。そのため、特別な機材が必要なくカメラも一台で済む姿勢推定は非常に導入のハードルが低いというメリットがあります。

また、AI(人工知能)が行う姿勢推定には、ボトムアップ型とトップダウン型の2種類があります。ボトムアップ型は画像や動画中にある関節をすべて検出し、その関節をつなぎ合わせて人物の姿勢を推定する手法。ボトムアップ型は最初にすべての関節を検出するためにトップダウン型よりも計算量が少なくすみますが、複数の人物の姿勢を推定する場合、人物と人物が重なりあった部分などの精度が低くなります。

これに対してトップダウン型は画像や動画中の人物を検出し、その人物がどのような姿勢か推定する手法です。トップダウン型は最初に人物を検出するので人物と人物が重なりあった部分でも高い精度で姿勢を推定できますが、人物が増えるにつれて計算量が増えてしまいます。

このようなAI(人工知能)による姿勢推定は特別なカメラや機器が必要なく、画像や動画から読み取れるということはコストパフォーマンスに優れ、スポーツや医療、セキュリティ様々な分野で活躍しています。

なぜ、リハビリで姿勢推定を使うようになったのか

人に説明するイメージ

リハビリにおいて大事なことは適切な運動を適切な量行う事、そしてモチベーションの維持ですが、AI(人工知能)を用いた姿勢推定を使えばこれらを助ける大きな力になります。これが、リハビリで姿勢推定を使うようになった理由です。

リハビリの中には効果が見えづらく地味で、さらには痛みや不便さを伴うものがあります。はじめのうちは「しっかりとリハビリして早く元気になるぞ!」と意気込んで臨んでいてもリハビリ期間が長引くにつれ多くの人がモチベーションの低下を招いてしまいかねません。モチベーションの低下は必要な運動量を減らし、人によってはリハビリ自体をやめてしまうほどなのだとか。

姿勢推定は人物の姿勢を検知し、データ化し分析できる技術ですが、その技術はリハビリにおいて非常に有益なものです。というのもリハビリ患者が行う運動が適切な動作であるのか検知した骨格をもとに判定し、無理のない動作を提案できるようになるためです。

またリハビリは患者本人に負担がかかるハイペースな運動は厳禁ですが、こちらも分析したデータを基にリハビリ患者に合った適切なペースを導き出す事により、患者ひとりひとりに合ったリハビリプランの提案が可能になりました。

さらにリハビリ患者の骨格を姿勢推定の技術で検知し関節の動き等を分析し数値化することで、リハビリ療法士が、今後のプランや現状を患者さんに説明しやすくなります。これによりリハビリ患者の現状の理解を助け、日々の成果が目に見えるようになればモチベーションの低下を防ぎ、前向きにリハビリに取り組む助けとなるでしょう。

リハビリに姿勢推定を使っている事例

病院のイメージ
では、実際にリハビリに姿勢推定を使っている事例について解説しましょう。

エクサウィザーズ北原病院グループが共同で開発したオンライン遠隔リハビリサービスが、今試験導入をしています。このサービスはタブレット端末にインストールした専用アプリで利用者の運動の様子を撮影します。その動画を担当セラピストが確認し、利用者の状況に応じたフィードバックをアプリに送ることにより、自宅にいながら施設でのリハビリと同じような体験ができます。

また専用アプリはAI(人工知能)を用いた姿勢推定の技術により利用者の手の動きを認識し、画面に触れることなく操作が可能で、今後は利用者の運動の様子を解析することで利用者ひとりひとりに合ったトレーニングプランを提供する機能と、利用者から送られた動画をAI(人工知能)が解析しセラピストへアドバイスをする機能を搭載予定とのこと。これによって今まで病院でしか受けられなかった質の高いリハビリが、自宅で受けられるようになるでしょう。

他にも株式会社ネストが持つ「VisionPose」というAIエンジンを用いてトヨタ自動車(株)が開発したリハビリ支援ロボット「ウェルウォークWW-2000」があります。こちらは脳卒中などによる下肢麻痺のリハビリ支援を目的とし、歩行に特化したものとなっています。

これはロボット脚という装置を麻痺した脚に装着することによって膝の曲げ伸ばしをサポートします。さらに姿勢推定の技術を使い歩行状態を利用者正面に設置されたモニターでリアルタイムでの確認ができ、他にもゲーム機能など様々な機能もあるとのこと。

これなら、リハビリのモチベーション維持に役立ちますよね。実際に、ロボットを使うことによって療法士の負担を減らすとともに利用者自身も療法士による介助が減り、「自分で歩く」という実感を強めることに繋がっているとのこと。

このように利用者と理学療法士双方の助けとなる姿勢推定技術は、既にリハビリの現場でも活用され始めているのです。

今後のリハビリ、姿勢推定の未来

人のケアのイメージ
今後、さらに姿勢推定技術が発展、拡充していけばリハビリ職の人たちの負担をやわらげ大いに役立つことが予想されます。しかし、このまま技術が進化していくことでリハビリ職の仕事がなくなってしまうのではないかという懸念が出てきますよね。そこで大事なのは、AI(人工知能)と人間との分業です。

これまでリハビリにおける運動の質、量の確保やモチベーションの低下を防ぐのに有用な技術として姿勢推定を紹介しましたが、リハビリには人間と人間のコミュニケーションもとても重要です。

リハビリは身体だけでなく心にも負担を強います。そんな辛い時に必要なのはコミュニケーションによる心と心の繋がり。いくらAI(人工知能)が姿勢推定技術を用いて効率的なリハビリのプランニングを提示したとしても、リハビリ患者の心に寄り添っていなくては意味がありません。

また、AI(人工知能)を使った姿勢推定の技術は、複数の研究チームが現在の姿勢から0.数秒先の未来を予測するという研究もされていて、これが実用化されればリハビリ中の転倒防止などの危険防止に役立ち、今以上に利用者とリハビリ職の人たちの負担を軽減することでしょう。

今後さらに発展した姿勢制御技術による正確な分析と効率的なプランニングやそれによって確保できるリソースで行われる人と人とのコミュニケーションによる心のケアが必要になるでしょう。分業されることによってこのふたつが両立し、人間対AI(人工知能)ではなく人間とAI(人工知能)というより良い未来になるに違いありません。

まとめ

さて、今回はリハビリにおけるAI(人工知能)による姿勢推定技術についてお伝えしました。

姿勢推定とはAI(人工知能)を用いて人物や関節を検知し、その人物がどのような姿勢なのかを推定しデータ化する技術です。そのデータをもとにリハビリを効率化し、リハビリ患者とリハビリ職に就く人の負担を減らすという取り組みがすでに行われていること。実際にオンライン遠隔リハビリサービスやVisionPoseを使ったリハビリ支援ロボットが活用されつつあります。

また未来におけるリハビリと姿勢推定の在り方では技術の進化による効率化とそれによって確保できるリソースをコミュニケーションに費やし、リハビリ患者の心のケアに充てることが大事だということ。

このように、リハビリにおいて姿勢推定は非常に有益に違いありません。高齢化が進みリハビリ需要が増える世の中で、姿勢推定技術のさらなる活躍と発展が楽しみですよね。

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