CG(コンピュー・グラフィック)やVR(バーチャル・リアリティ)映像のリアル感を表現するために必要な姿勢推定の技術は、姿勢の歪みをチェックできるシステムにも活用されるようになりました。なんだかずいぶん身近な存在になってきましたよね。
現代人の多くは肩こりや腰痛などの悩みを抱えていて、その原因のほとんどは姿勢の歪みから引き起こされています。
仕事がデスクワークをしていると、一日中座りっぱなしでパソコンに向かうので前傾姿勢になって背骨に歪みが生じやすくなります。このように人間の体は「悪い姿勢」を続けたり、「同じ動作」繰り返したりしていると姿勢が歪んでしまうのです。
しかし自分の姿勢が歪んでいるかどうかは全身を鏡で見ても分かりにくいでしょう。
そこで自分の姿勢がどのような状態なのかをチェックできるのが「姿勢推定」。
例えば、姿勢の歪みを治療するために整体を受けたとすると、整体を受ける前・受けた後に姿勢推定を行いどれだけ歪みが改善しているのかをチェックできると経過観察として利用ができます。
しかし、姿勢推定を用いたCGやVR、姿勢のチェックは一部の事例です。今後はもっと、さまざまな分野での活用が期待されています。
そこで今回は、姿勢推定とは何か、その活用事例や気軽に姿勢推定を受けられるサービスについて分かりやすくお伝えしましょう。
そもそも姿勢推定とは
冒頭で姿勢推定について少しお伝えしましたが、まだ姿勢推定という言葉にピンとこない方はいますよね。ではモーションキャプチャと聞くとどうでしょう。先ほどよりもイメージが湧いてきた方は多いのではないでしょうか。
以前はモーションキャプチャの撮影にマーカーの取り付けが必要でしたが、最近では技術が進化してマーカーを使用しないシステムが開発されています。そして姿勢推定では1台のカメラで撮影した映像の動きから姿勢を推定する技術が確立されており、それを可能にしたのがAI(人工知能)技術のディープラーニング(深層学習)。
この姿勢推定にディープラーニングをプラスしたことで、動画だけでなく画像イメージからもかなり精度の高い姿勢推定を可能にしたというわけです。
姿勢推定モデルとは︖
現在ディープラーニングはAI(人工知能)技術の中でもっとも盛んに研究されている技術。
このディープラーニングとは、ニューラルネットワークと呼ばれる人間の脳の仕組みを真似たシステムを用いて、集められたデータを自動で分析し特徴を抽出し近い将来を予測します。ですからディープラーニングの登場は、AI(人工知能)の進化を一気に加速させ始め、すでにさまざまな分野で活用されるようになりました。そしてどの分野においても大きな効果をもたらしており、それは姿勢推定でも同じことが言えるのです。
それでは姿勢推定モデルについて、2つのアプローチについて見ていきましょう。
トップダウン型
ボトムアップ型
現在はディープラーニングを搭載した姿勢推定システムが数多く実用化され、中でもカーネギーメロン大学が発表した技術のOpenPose や、フェイスブックが開発した DensePoseが有名です。
そしてそれらの姿勢推定システムはさまざまな分野で活用され始めています。
姿勢推定が使われている事例
モーションキャプチャは2009年に公開された映画「アバター」でCGキャラクターのリアルな動きが話題になり、この映画をキッカケに脚光を浴びましたよね。そして現在は、姿勢推定もCGやVRに欠かせない技術になっています。
それではこの姿勢推定が使われている分野を一部ご紹介しましょう。
- スポーツ
スポーツではさまざまな競技で選手のフォームを分析して身体の状態の確認や比較に活用されています。
- さまざまな作業者の動きのマニュアル化
製造業での熟練の作業者やサービス業のベテラン店員の動きを分析しマニュアル化するために使用しています。このように、作業者の動きをマニュアル化することもできるのです。
- リハビリ
リハビリの分野では、リハビリの改善経過の可視化や、平常時と異常時との行動の違いの分析などで実用されています。
- ゲームや映画
そしてアバターのように、CGキャラクターやVR映像の作成に姿勢推定を活用しているのです。
簡単な装置で姿勢推定ができるPosen
ここまでは今使われている分野についてお話をしました。もちろんこの他にも様々な分野で使われているます。そこでその中で1つ事例をご紹介しましょう。
Posenは、株式会社お多福labが開発した姿勢の歪みをチェックできるシステムです。
このように誰でも扱うことができ、すぐに体の状態を把握できるシステムなので、医療施設やフィットネスジムの利用者や企業の従業員の健康管理や経過観察に最適でしょう。
以上、現在姿勢推定はこのような分野で活用されています。
姿勢推定の活⽤が今後期待されそうな分野
今度は、今後に期待されている姿勢推定の分野についてお話しましょう。
近い将来に姿勢推定が活用されそうな一つ目の分野は監視カメラ。
現在、街中やさまざまな施設で監視カメラが設置されています。しかしそのカメラもただ映像を撮影し記録をしているだけでしょう。
ですからすでに監視カメラに姿勢推定を取り入れていく動きは出始めているのです。
二つ目は自動運転車での活用。
そして、自動運転の開発にはディープラーニングの姿勢推定での開発研究は取り組まれていますので、今後本格的な活用が期待できるでしょう。
そして3つ目は動物への使用です。
最近は猿やイノシシ、シカなどの野生動物が人里を騒がすことが多くなりましたよね。これら野生動物の生態を探るために姿勢推定を個体識別などへ応用することも考えられています。
このように姿勢推定はその対象が人間だけでなく自動車や動物にも活用され始めており、さらに幅広い分野での応用も進められていくでしょう。
姿勢推定は画像や動画から人間の姿勢の状態を知ることができるシステムです。
姿勢推定にはAI(人工知能)技術のディープラーニングが搭載されているのでマーカーの装着や複数のカメラが必要なく、スマートフォンやタブレット端末で操作し撮影した画像や動画から姿勢推定を行えるようになっています。
以前は私たちに関わりのない技術でしたが、ポーズンのようシステムを利用することで姿勢をチェックして健康管理や経過観察に使用できるようになり、姿勢推定が身近な存在になってきました。
この他ではスポーツやダンスなどでフォームのチェックやリハビリ、ゲーム、VR映像など幅広い分野に普及しており、今後は監視カメラ、自動運転車でも高い能力を発揮し私たちに恩恵をもたらしてくれるでしょう。
そして姿勢推定の活用はこれらだけにとどまらず、今後もっとその幅を広げていきます。ひょっとしたらメガネに姿勢推定システムが搭載されて目の前の人をメガネが認識すると、その人の情報がすべてレンズに映し出されるそんな時代が訪れるかもしれません。
このように、姿勢推定によって私たちの生活は良いものへと発展していくでしょう。